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悪役令嬢の去った後、残された物は
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「シルビア、貴様との婚約を解消して、貴様の妹ジョセフィーヌと婚約する事をここに宣言する」
「嬉しいわ、ボナボナ様」
私の誕生日パーティーでそう宣言する私の元婚約者と、その元婚約者にしなだれかかる妹を、私は冷たい目で見ているのだろうなと思いつつ、次の言葉を待った。
「ジョセフィーヌを虐めた罰として、貴様は公爵家の籍を剥奪、この国からも出て行ってもらう」
私は思わずニヤケそうになるのを必死に隠して俯いた。
ボナボナは第一王子で、金髪碧眼で見た目の良い男。だけど、おつむもおまたも緩い人だから、そろそろ見た目だけ美人の妹が手を出してくるだろうなって思っていた。それでも、まさか私の誕生日パーティーで婚約破棄とは……最高のプレゼントだわ。
「ジョセからシルが虐めをしていると聞いた時の私の気持ちが解るか?
もはや親子でもない、出て行きなさい」
そう言って扉を指差すのは私の実父、私はあまりの嬉しさにスキップしそうになるのを我慢して、何も言わずにその場を後にした。
私が、公爵邸を出ると私の専属執事のラーファが馬車を用意して待っていた。
ラーファは単眼鏡の奥を一瞬鋭く公爵邸に向けた後、何時ものように会釈をし、馬車の扉を開けた。
「ありがとう、知ってると思うけど、この国から出てエディアンに向かいます。
後の処理はお願いね」
「かしこまりました。」
ラーファは綺麗な礼をし、主を見送ると、髪型を整え踵を返し、公爵家のパーティー会場へと入っていた。
ラーファの姿を見つけると、ニコニコと揉み手をしながら父ニヤが大きな腹を揺らして小走りに駆け寄ってきた。
「おお!ラーファ殿!良くぞおいでくださいました。
今日はジョセフィーヌとボナボナ様の婚約パーティーとジョセフィーヌの誕生日パーティーでしてな」
しかし、参加していた鼻の効く貴族はラーファの姿を見ると、急用を思い出し逃げるように会場から去って行った。
「そうですか……それは安心いたしました。」
「うん?安心とは?」
ラーファの言葉に不思議そうな顔をするニヤ
「ええ、今日が公爵家の借金の返済日でございまして、王家とのご婚約であれば、返済に困られる事は無いですな」
そう言って数枚の契約書を取り出すラーファを、信じられない物を見るような目で見るニヤ
「な!い、今はめでたいパーティー、せめて明日にしてはもらえないだろうか?
いや、むしろ祝いにチャラにするべきだろう!」
そう言って契約書を奪い取り破ろうとするが、その刹那、契約書から電撃が起こり、ニヤは絶叫を上げ転げまわる。
倒れた時に手放した契約書は宙に浮き、恐ろしい勢いでニヤを追い掛け回す。
「借金をチャラには出来ませんな、商業神様と契約神様に誓ったではありませんか。返済日も一秒たりとも遅らせられないのもご存知ですよね」
「ラーファよ、今宵はめでたい日だ、どうにかせよ!
王太子の命令だ」
そう言ってボナボナが偉そうに声をかけてきたが
「申しわけありません、神々との契約は変更が出来なくなっております。
それにボナボナ様もこのように明日が返済日の契約書が、此方は翌日、翌々日と全部で10枚ございます」
そう言って何処からとも無く契約書を取り出すラーファから、契約書を取り戻そうとするボナボナだが、ニヤと同じ様に雷に打たれて不細工なダンスを踊る羽目になっていた。
「公爵様は本日は白金貨10枚(10億円)明日には白金貨5枚、明後日には白金貨200枚で返済終了でございます。
もし最終返済日から4日過ぎた場合は御領地をいただくことになっております」
「た、たしかに約束したが、そんなものは無効だ!」
そういった途端3枚の契約書が浮かび上がり、厳かな声が響き渡った。
「ニヤ・フォン・ブランハ公爵、契約神の名において契約違反により領地をシル商会へ委譲する。
今後シャーケ王国から独立した土地とする」
そして少し太い声でもう一つの声が聞こえる
「ニヤ・フォン・ブランハ公爵はシル商会の商業権利を犯したと認める、今後ブランハの血縁に商業神の名において今後一切の商業権を停止する」
その言葉にニヤは愕然として膝をつく。
「おや?早い判決が出ましたな。ボナボナ様の借金は明日王城へ取りに参りますので、私はこれにて失礼いたします」
そう言って綺麗な会釈をして去っていくラーファを、海上に居た者達は呆然と見送るしかなかった。
なぜなら、全員がシル商会に借金していたからだ。返済日が近いので、どうにかするために逃げ帰るように去っていった。
「お父様!お祝いにシル商会のネックレスを買ってください!お安くて白金貨1枚ですの」
「……無理だ、我が家はお仕舞だ」
「なにいってるの?私がボナボナ様の婚約者になって、更に発展するのだから、更に贅沢できるわよ」
出来るか!と叫びたいニヤだったが、もう声も出ず床に倒れた。
翌日ボナボナは国王に呼び出され、暢気に国王の執務室に向かうと、ラーファと父である国王が話をしている最中だった。
「うん?ラーファ、こんな所まで催促か、嘆かわしい。
私の借金など直ぐに返してくれるわ!父が」
そう言ってふんぞり返るボナボナだったが、父王は静かに首を横に振った。
「ボナボナよ、貴様は調子に乗って白金貨100枚もの借金をしおって……我が国の国家予算は白金貨1000枚、王族に割かれる予算が年白金貨5枚だ!それを大きく上回る借財など払えるわけが無かろう!!」
次第に激昂していく国王に、ボナボナは少し顎をなでて
「なら税を上げるか、国家予算から流用しましょう、王族の権限です」
机を強く叩いて父王が立ち上がり、指を指して怒りを露にする。
「な!バカを申すな!増税など愚の骨頂!国家予算も動かす余地など無いわ!」
「なら父上は私にどうしろと言うのですか?無い袖は触れませぬよ」
国王はイスにどかっと音を立てて座り込み、大きくため息をつくと。
「貴様の資質は良くわかった。契約書の通り貴様を王籍から追放、子爵としブランハ近郊のコップハーゲン一帯を領地とする。」
「な!私は王太子です!そんな事は許されるはずはありません」
いきなりのことに慌てて反論するボナボナに、父王は疲れたように頭を軽く横に振った。
「元々王太子はビナビナである。
それに借財が返済出来ぬ場合は、王族を捨てるやもらった領地で支払うと、貴様が、貴様が!契約書に書いたのではないか!」
「私は王族です、そんなもの無効です!」
「バカを言うな、契約神との契約は絶対で王家でも反故にすれば国が滅びる!
貴様が破れば履行するまで死ねず、恐ろしい責め苦を受けることになる!
契約とはそれほど重いのだ。
庶民でも知っている常識だ!
愚か者が!!」
「な!そんな事は知りませんよ!
とにかくどうにかして支払いを」
「無理だ!貴様には罰も必要だ!
法衣貴族として席は残る、それがワシから親としての最後の情じゃ。
ラーファ殿、これで契約完了になるだろうか?」
「ええ、契約書も完了を示しております、なお……」
「なら、引き渡した領地を今すぐ奪い取り……が!ぐごぉぉぉぉぉぉぉぉ」
いきなりボナボナは喉をかきむしり、床に両手足をバタつかせて暴れ狂う。
「はぁ、まるで常識が無い……何故こうなったのだ」
「なお、いただいた領地に関しては我らが商会に帰属し、一切の手出し無用に願います」
コメカミを揉みながら、父王は疲れたように
「解っておる、こうは成りたくないのでな……」
「では、これにて」
ラーファは綺麗な会釈をしその場を去っていった。
その後、シル商会会頭シルビアがガラスの透明度を極限まで高めたブランハガラスやコップハーゲンの街の名を冠した美しい陶磁器などを生み出し、隆盛を極めた。
一方シャーケ王国は次第に国土をシル商会に飲み込まれ、極小国として辛うじてその名を残すのみになったという。
「嬉しいわ、ボナボナ様」
私の誕生日パーティーでそう宣言する私の元婚約者と、その元婚約者にしなだれかかる妹を、私は冷たい目で見ているのだろうなと思いつつ、次の言葉を待った。
「ジョセフィーヌを虐めた罰として、貴様は公爵家の籍を剥奪、この国からも出て行ってもらう」
私は思わずニヤケそうになるのを必死に隠して俯いた。
ボナボナは第一王子で、金髪碧眼で見た目の良い男。だけど、おつむもおまたも緩い人だから、そろそろ見た目だけ美人の妹が手を出してくるだろうなって思っていた。それでも、まさか私の誕生日パーティーで婚約破棄とは……最高のプレゼントだわ。
「ジョセからシルが虐めをしていると聞いた時の私の気持ちが解るか?
もはや親子でもない、出て行きなさい」
そう言って扉を指差すのは私の実父、私はあまりの嬉しさにスキップしそうになるのを我慢して、何も言わずにその場を後にした。
私が、公爵邸を出ると私の専属執事のラーファが馬車を用意して待っていた。
ラーファは単眼鏡の奥を一瞬鋭く公爵邸に向けた後、何時ものように会釈をし、馬車の扉を開けた。
「ありがとう、知ってると思うけど、この国から出てエディアンに向かいます。
後の処理はお願いね」
「かしこまりました。」
ラーファは綺麗な礼をし、主を見送ると、髪型を整え踵を返し、公爵家のパーティー会場へと入っていた。
ラーファの姿を見つけると、ニコニコと揉み手をしながら父ニヤが大きな腹を揺らして小走りに駆け寄ってきた。
「おお!ラーファ殿!良くぞおいでくださいました。
今日はジョセフィーヌとボナボナ様の婚約パーティーとジョセフィーヌの誕生日パーティーでしてな」
しかし、参加していた鼻の効く貴族はラーファの姿を見ると、急用を思い出し逃げるように会場から去って行った。
「そうですか……それは安心いたしました。」
「うん?安心とは?」
ラーファの言葉に不思議そうな顔をするニヤ
「ええ、今日が公爵家の借金の返済日でございまして、王家とのご婚約であれば、返済に困られる事は無いですな」
そう言って数枚の契約書を取り出すラーファを、信じられない物を見るような目で見るニヤ
「な!い、今はめでたいパーティー、せめて明日にしてはもらえないだろうか?
いや、むしろ祝いにチャラにするべきだろう!」
そう言って契約書を奪い取り破ろうとするが、その刹那、契約書から電撃が起こり、ニヤは絶叫を上げ転げまわる。
倒れた時に手放した契約書は宙に浮き、恐ろしい勢いでニヤを追い掛け回す。
「借金をチャラには出来ませんな、商業神様と契約神様に誓ったではありませんか。返済日も一秒たりとも遅らせられないのもご存知ですよね」
「ラーファよ、今宵はめでたい日だ、どうにかせよ!
王太子の命令だ」
そう言ってボナボナが偉そうに声をかけてきたが
「申しわけありません、神々との契約は変更が出来なくなっております。
それにボナボナ様もこのように明日が返済日の契約書が、此方は翌日、翌々日と全部で10枚ございます」
そう言って何処からとも無く契約書を取り出すラーファから、契約書を取り戻そうとするボナボナだが、ニヤと同じ様に雷に打たれて不細工なダンスを踊る羽目になっていた。
「公爵様は本日は白金貨10枚(10億円)明日には白金貨5枚、明後日には白金貨200枚で返済終了でございます。
もし最終返済日から4日過ぎた場合は御領地をいただくことになっております」
「た、たしかに約束したが、そんなものは無効だ!」
そういった途端3枚の契約書が浮かび上がり、厳かな声が響き渡った。
「ニヤ・フォン・ブランハ公爵、契約神の名において契約違反により領地をシル商会へ委譲する。
今後シャーケ王国から独立した土地とする」
そして少し太い声でもう一つの声が聞こえる
「ニヤ・フォン・ブランハ公爵はシル商会の商業権利を犯したと認める、今後ブランハの血縁に商業神の名において今後一切の商業権を停止する」
その言葉にニヤは愕然として膝をつく。
「おや?早い判決が出ましたな。ボナボナ様の借金は明日王城へ取りに参りますので、私はこれにて失礼いたします」
そう言って綺麗な会釈をして去っていくラーファを、海上に居た者達は呆然と見送るしかなかった。
なぜなら、全員がシル商会に借金していたからだ。返済日が近いので、どうにかするために逃げ帰るように去っていった。
「お父様!お祝いにシル商会のネックレスを買ってください!お安くて白金貨1枚ですの」
「……無理だ、我が家はお仕舞だ」
「なにいってるの?私がボナボナ様の婚約者になって、更に発展するのだから、更に贅沢できるわよ」
出来るか!と叫びたいニヤだったが、もう声も出ず床に倒れた。
翌日ボナボナは国王に呼び出され、暢気に国王の執務室に向かうと、ラーファと父である国王が話をしている最中だった。
「うん?ラーファ、こんな所まで催促か、嘆かわしい。
私の借金など直ぐに返してくれるわ!父が」
そう言ってふんぞり返るボナボナだったが、父王は静かに首を横に振った。
「ボナボナよ、貴様は調子に乗って白金貨100枚もの借金をしおって……我が国の国家予算は白金貨1000枚、王族に割かれる予算が年白金貨5枚だ!それを大きく上回る借財など払えるわけが無かろう!!」
次第に激昂していく国王に、ボナボナは少し顎をなでて
「なら税を上げるか、国家予算から流用しましょう、王族の権限です」
机を強く叩いて父王が立ち上がり、指を指して怒りを露にする。
「な!バカを申すな!増税など愚の骨頂!国家予算も動かす余地など無いわ!」
「なら父上は私にどうしろと言うのですか?無い袖は触れませぬよ」
国王はイスにどかっと音を立てて座り込み、大きくため息をつくと。
「貴様の資質は良くわかった。契約書の通り貴様を王籍から追放、子爵としブランハ近郊のコップハーゲン一帯を領地とする。」
「な!私は王太子です!そんな事は許されるはずはありません」
いきなりのことに慌てて反論するボナボナに、父王は疲れたように頭を軽く横に振った。
「元々王太子はビナビナである。
それに借財が返済出来ぬ場合は、王族を捨てるやもらった領地で支払うと、貴様が、貴様が!契約書に書いたのではないか!」
「私は王族です、そんなもの無効です!」
「バカを言うな、契約神との契約は絶対で王家でも反故にすれば国が滅びる!
貴様が破れば履行するまで死ねず、恐ろしい責め苦を受けることになる!
契約とはそれほど重いのだ。
庶民でも知っている常識だ!
愚か者が!!」
「な!そんな事は知りませんよ!
とにかくどうにかして支払いを」
「無理だ!貴様には罰も必要だ!
法衣貴族として席は残る、それがワシから親としての最後の情じゃ。
ラーファ殿、これで契約完了になるだろうか?」
「ええ、契約書も完了を示しております、なお……」
「なら、引き渡した領地を今すぐ奪い取り……が!ぐごぉぉぉぉぉぉぉぉ」
いきなりボナボナは喉をかきむしり、床に両手足をバタつかせて暴れ狂う。
「はぁ、まるで常識が無い……何故こうなったのだ」
「なお、いただいた領地に関しては我らが商会に帰属し、一切の手出し無用に願います」
コメカミを揉みながら、父王は疲れたように
「解っておる、こうは成りたくないのでな……」
「では、これにて」
ラーファは綺麗な会釈をしその場を去っていった。
その後、シル商会会頭シルビアがガラスの透明度を極限まで高めたブランハガラスやコップハーゲンの街の名を冠した美しい陶磁器などを生み出し、隆盛を極めた。
一方シャーケ王国は次第に国土をシル商会に飲み込まれ、極小国として辛うじてその名を残すのみになったという。
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