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二人で

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 ◇◆◇


「やっぱ帰りたくないな……やっと邪魔者のいない所で二人きりになれたのに」

 乗り置いていた車へと近付いて来ると、ユウトは桜の巨樹を振り返りながら、溜め息混じりにぼそりとそんな呟きを漏らした。

「おじいちゃんに会うまでは、今まで散々二人きりだったじゃん」

「それは俺たちがこんな関係になる前の話だろ? あの頃の俺は、好きな女を毎日目の前にして、自分を抑え込むのに必死だったんだ……まあ、お前は分かってなかったろうけど」

「え……が、我慢してくれてたってこと……?」

 アキラの顔がぼんっと赤くなる。
 それを見たユウトは、満更でもない、という笑みを浮かべた。

「とりあえず、早めに教授の研究所近くにでも、二人で住めそうな所を捜さないとな。このままいつまでも、教授のとこに居候する訳にはいかないし」

 早い話が、容易にアキラと二人きりになれる環境が欲しい。
 現状こんな所まで来なければいけないようでは、この先が思いやられる。

「え? 何も二人で住まなくても。大勢の方が安全だし楽しいよ?」

「えーとな……お前はそうかも知れないけど、オレにとっては苦痛なんだ。もうホントいろんな意味で」

 正直今も研究所に戻るのが怖い。このまま帰りたくないと言うのは本音だ。
 きっといろいろと詮索されて、からかいのネタにされるに決まっている。

 教授もキャシーもいい人ではあるのだが……これ以上おもちゃにされるのは正直たまったものではない。

「それに俺たちも十八になったんだし、もう子供じゃないだろ?」

 それを聞いて、アキラはきょとんという顔をした。

「十八……って、もうオレたち誕生日来てたの? ホントに? え、いつ?」

 ぴたり、ユウトは足を止め「はあ……」と落胆の色を見せる。

「お前やっぱり分かってなかったんだな。わざわざその日に合わせてここへ連れて来たのに」

「え、じゃあ今日なの? オレたちの誕生日」

「正確には昨日。俺たちは昨日十八になってんだよ」

 ユウトは明らかな仏頂面。

「そうだったんだ。だって今って学校も無いし、季節感も曜日感覚も何にも無いから……ごめんね、全然気にしてなかった」

「だからって、自分たちの誕生日くらいはチェックしとけよ……」

「だからごめんってば。そんなに拗ねないでよ」

「べ、別に拗ねてはないけど!」
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