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決意
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「あの時はオレ、ユウトに見捨てられたんだと思ってたから。ユウトの気持ちも今なら分かるけど、それでもやっぱりあの言葉は……オレにはどうしようもなく辛かった」
「あの時はそう思われた方が良かったんだ。俺のことを嫌いになってくれれば、俺もお前から離れやすくなれると思っていたから」
「それは無理だよ! 何があってもオレがユウトを嫌いになれる訳がないし、家族はずっと一緒なんだと思ってた。だって……信じてたんだ。ユウトはそう、約束してくれたから」
その約束と、結局中途半端になってしまった自分の行動のせいで、アキラはずっとひとりで悩み苦しんでいた。
その悩み抜いた結果が『女』なるという選択だった。
なのに、自分は今までそのことに全く気付けずにいたのだ。
ユウトにはそれがとてつもなく心苦しかった。
「そうだな。俺たちは家族だったから……お前の場合、本当の家族の事故のせいで、大切な誰かに置いて行かれることに対しての恐怖が強かったんだな。だからあの時も、あんな無茶してでも俺について来ようとしたんだろ」
自分の知らない所で大切な人を失う、そんなとてつもない恐怖。
それは、ユウトも経験していたことだった。
「ごめんな……俺は本当に身勝手で、お前に辛い思いばかりさせてきた」
「謝らないでよ、それはオレも同じだから。ユウトの言うことを全然聞こうとしないで、勝手なことばかりして……こんな怪我したのだって、自業自得ってやつだよね。ホントにごめんなさい」
「そんな、違うだろ! 自業自得ってのは……」
元はと言えば、追い詰めてしまった自分のせいだと、ユウトはそう言おうとしたのだが。
「や、やっぱり違ってた?」
「え……何が?」
「いや、自業自得の使い方?」
「…………」
突然、ユウトがふるふると小刻みに震えだす。
「え? 何で笑うの?」
「だ、だってお前、真面目に話してる時にそんな……い、いや合ってたよ? 合ってたけど」
そんなユウトにアキラは少しムッとした。
「合ってるならいいじゃん! これでもオレ真面目なんだけど!」
「分かってるよ、ごめんごめん」
ユウトが軽く笑いながらまた謝る。
「何だよ、もう。でも……はは、合ってて良かったあ。それに、ユウトがそんな風に笑うなんてね」
アキラもほっとしたように、つられて笑顔になった。
「あの時はそう思われた方が良かったんだ。俺のことを嫌いになってくれれば、俺もお前から離れやすくなれると思っていたから」
「それは無理だよ! 何があってもオレがユウトを嫌いになれる訳がないし、家族はずっと一緒なんだと思ってた。だって……信じてたんだ。ユウトはそう、約束してくれたから」
その約束と、結局中途半端になってしまった自分の行動のせいで、アキラはずっとひとりで悩み苦しんでいた。
その悩み抜いた結果が『女』なるという選択だった。
なのに、自分は今までそのことに全く気付けずにいたのだ。
ユウトにはそれがとてつもなく心苦しかった。
「そうだな。俺たちは家族だったから……お前の場合、本当の家族の事故のせいで、大切な誰かに置いて行かれることに対しての恐怖が強かったんだな。だからあの時も、あんな無茶してでも俺について来ようとしたんだろ」
自分の知らない所で大切な人を失う、そんなとてつもない恐怖。
それは、ユウトも経験していたことだった。
「ごめんな……俺は本当に身勝手で、お前に辛い思いばかりさせてきた」
「謝らないでよ、それはオレも同じだから。ユウトの言うことを全然聞こうとしないで、勝手なことばかりして……こんな怪我したのだって、自業自得ってやつだよね。ホントにごめんなさい」
「そんな、違うだろ! 自業自得ってのは……」
元はと言えば、追い詰めてしまった自分のせいだと、ユウトはそう言おうとしたのだが。
「や、やっぱり違ってた?」
「え……何が?」
「いや、自業自得の使い方?」
「…………」
突然、ユウトがふるふると小刻みに震えだす。
「え? 何で笑うの?」
「だ、だってお前、真面目に話してる時にそんな……い、いや合ってたよ? 合ってたけど」
そんなユウトにアキラは少しムッとした。
「合ってるならいいじゃん! これでもオレ真面目なんだけど!」
「分かってるよ、ごめんごめん」
ユウトが軽く笑いながらまた謝る。
「何だよ、もう。でも……はは、合ってて良かったあ。それに、ユウトがそんな風に笑うなんてね」
アキラもほっとしたように、つられて笑顔になった。
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