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壊れそうな心

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 その時、銃を持つユウトの手の上に、誰かの手がそっと添えられた。

「ダメよユウちゃん、これ以上は。アキラちゃんが悲しむわよ」

 キャシーだった。

「何で……こんなやつ、いない方がいいに決まってる!」

「それでも、あなたが自分の為に人を殺したなんて知ったら、アキラちゃんはもっと傷つくんじゃないかしら?」

 確かにそうだろう。
 そんなことをすれば、アキラはきっと悲しむに違いない。

「……だったら、だったら俺はどうすればいいんだよ!?」

 怒りのぶつけ所が無くなって、ユウトは混乱しそうになっていた。

「アキラちゃん言ってたわよ。思い出したって。あなたとずっと一緒にいたくて、その為に自分は『女』になりたかったんだって」

「え……」

 ユウトの手から力が抜けた。



 ドオオオオン!!


 地響きと共に、どこかで爆破音が聞こえた。
 五人衆の一人が部屋に駆け込んで来た。 

「ドラッグの貯蔵庫を爆破したぞ! ここも崩れるかもしれん、撤退だ!」

「ちょっとダーリン! そういうことは、ちゃんと安全を確保できてからにしてよね!」

 キャシーが文句を言う。

「ま、待って! お、俺も連れて行ってくれ!」

 キョウが慌てて懇願する。
 その姿を冷めた目で見ていたユウトが、一度は収めた銃をまたキョウに向け、今度は躊躇無く引き金を引いた。

『ドン!』

「ひいいいい~~っ!」

 悲鳴と銃声が同時に鳴り響き、硝煙の臭いが辺りに漂う。

「え……? あ、あれ?」

 よく見ると、銃口はキョウの手錠に向けられており、弾はその鎖を弾き飛ばしていた。

「勝手に何処へでも行けよ。その代わり、そのツラ俺たちの前に二度と見せんな。さもないと――」

 ユウトが再び銃を向けると、キョウはまた叫びながら部屋を飛び出して行った。

 そんなキョウの後ろ姿を、ユウトは少し複雑な思いで見送る。
 何が正解かなんて分からない。
 けれど、アキラが悲しむようなことだけはしたくない。
 ただそれだけだ。 

 
 ユウトはアキラに駆け寄り、その身体を抱き起こした。
 自分の着ていたシャツを着せ、背中へと担ぐ。

「う……っ」

 思わず声が漏れる。

(背中の傷がまだ……それに、男になるとさすがに重い……)

 そんなことを感じながら、チビを連れてこの悪趣味な部屋を後にした。 
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