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逃避

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 ◇◆◇


 暗い廊下を引きずられるようにして、よたよたと進む。
 痛みで意識が朦朧として、どこをどう歩いたのかもよく分からない。

 アキラが連れて来られたのは、紫と黒を基調とした趣味の悪い装飾の施された部屋。
 部屋の中は薄暗く、廊下より幾分マシな程度だ。
 壁に飾られた拘束具の類は、中世の拷問部屋を彷彿とさせる。
 正直一秒たりとも留まっていたくはない、そんな空間だった。

(なにこの部屋……)

 ぼんやりそんなことを考えていると、突然強引に腕を引っ張られた。

「ほらあ、そんなとこに突っ立ってんなよ」

「あっ……!」

 感想を述べる間も無く、アキラは乱暴にベッドへと放り込まれた。
 その衝撃で、傷を負った肋が軋む。

「く……あ、あ……」

 アキラはその痛みを必死に堪えた。
 相手への気遣いなどは微塵もない。
 キョウにとって、女はまさに『物』だった。

 手錠はベッドに繋がれて、更に身動きを取れなくされた。
 腕を上げる形になり、脇腹の痛みも更に増す。
 呼吸をするだけで精一杯だった。

「いつもはドラッグ使って大人しくさせんだけど、君はいらないか。もうすでに弱ってるもんね」

 そう言ってキョウはアキラに馬乗りになると、少しの躊躇もなくその衣服を無造作に引き裂いた。
 布の裂ける嫌な音が部屋中に響く。

「……っ!」

 思わずきつく目を閉じて、顔を背ける。
 その音にアキラは恐怖を掻き立てられた。

「君、ホントにキレイな顔してるよね。恐怖に引きつってるその顔も、すごくソソられる」

 アキラは咄嗟に目を開けると、キッとキョウを睨み付けた。
 どんな仕打ちをされても、この男の言いなりにだけはなりたくない。

「そうそう、その気の強そうな所もイイよねえ! いろんな表情を見せてくれるから面白いよ君」

 この男には自分が何をしても逆効果になってしまう。
 アキラは落胆の色を隠せなかった。

「それに一番気に入ったのは君の声だよ、すごくキレイだった。きっとイイ声で啼いてくれんだろうなあ。俺はそれが聞きたいんだ」

 うっとりそう言うと、キョウは更に覆い被さってきた。 
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