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伝わらない想い

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「だいたい俺に言い寄ってくる女は、顔がいいからとか、頭がいいからとか――単純なんだよ」

 ユウトは鏡をあまり見ない。
 自分の顔が、今でも許せないあの女――母親によく似ているから。

「最初から中身までは見えないよ。だから外観から入っちゃうんだ」

「そう思ったから、とりあえずはみんなと付き合ってみたけど、結局一度も恋すらできなかった。まあ、社会勉強くらいにはなったのかもな」

「え、恋できてないって……一度も?」

 ユウトの意外な言葉に、アキラは驚いた。

「多分、理想が邪魔をしてできなかったんだと思う」

「何で? あれだけいろんな女の子がいたのに」

「俺の理想は高いんだよ。だから今まで付き合った誰にも当てはまらなかった」

「何それ、贅沢」

「はは、本当だよな」

 アキラは今どんな顔をしているのだろう。
 少し気になりながらも、手当をしてくれているアキラの方を振り向けずにいる。

 ぽん、とアキラの手が軽くユウトの背中を叩いた。

「はい、終わった」

「ああ、ありがとう」

 そう言ってそのまま後ろは振り向かず、服の袖に手を通しながらユウトは話の続きをし始めた。

「いろんな女の子と付き合ってる内に分かったんだけど、自分のことを心から理解してくれてる人間とじゃないと、俺には恋愛なんて無理らしい。まあ、一人だけいたんだけどな、そんな理想通りのやつが」

「え……いたの? いたのに、どうして?」

 少しショックを受けたようなその声に、ユウトは思わず笑いが込み上げた。

「その時は、どう考えても無理だったんだ。だってそいつは『男』だったから。いつも傍で俺の心配ばっかしてくれて……こいつが『女』だったらいいのにって、ずっとそんなことを思っていたよ」

 そう言ってユウトが後ろを振り向くと、そこには真っ赤な顔をして固まっているアキラがいた。

「あの、それって……オ、オレ……なの?」

「そんなの当たり前だろ? でもお前鈍いからなぁ、ここまで言って分からなかったらどうしようかと思った」

 ユウトは嬉しそうにアキラの顔を覗き込んだ。
 呆然としているアキラへとそのまま顔を寄せ、優しく唇を重ねる。

「でも奇跡が起こった。やっぱり俺はあっと言う間に心を奪われて……今やっと、好きな女と初めての恋をしてるんだ」

「ずっと、とかって……う、嘘だよね?」
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