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安堵の夜

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 そんなユウトの想いはそっちのけに、アキラは安心しきった顔でじっと目を閉じて何かに聞き入っている。

「……アキラ?」

「本当言うとね……不安なんだ、何だか色々ありすぎて。だから……今はユウトにこうしていたい」

 その気持ちは分かるが、それでもこれではこちらの身が持たない--
 今すぐにでも抱きたい女に抱き付かれたまま硬直し、ユウトは心の中で泣きそうになっていた。

「でもね、小さい時からユウトの鼓動を聞くと安心したんだ。ずっと一緒にいたからかな……やっぱり、すごく気持ちが落ち着く」

「え……? そ、そうだったのか?」

「うん。いつもなら背中にするんだけど、ユウト今怪我してるしね」

 確かに、子供の頃はいつも一緒に寝ていたけれど。
 正直、寝ていた時のことなどはあまり覚えていない。

 けれども、、アキラのその台詞には何だかドキリとした。
 その心音もアキラに聞かれただろうか。

(あれ? ちょっと待てよ?)

 ふと、ある疑問がユウトの中に浮かび上がった。

「いつもなら……って? え、もしかして、最近も俺の寝床に潜り込んでた……?」

「うん最近は毎日だよ、気付いてなかった? ふふ、ユウトいつも爆睡だからなぁ」

 けろっとしたアキラの返答に、思わず絶句した。

(全く気付かないで、好きな女に抱き付かれながら寝てる俺って……情けなさすぎる)

 愕然とすると共に、納得もした。
 いつも背中を襲われる理由も、あの二枚の毛布の意味も。

「……ああもう! どうなっても知らないからな!」

 そのままベッドへ横になると、胸元にいたアキラをぐいと更に抱き寄せた。

「んー……いい……おやすみ……」

「いいって……適当すぎるだろ。安心しきりやがって、もう寝ぼけてんのか、コラ」

 そんな言葉も、既にアキラには届かない。
 すやすやと眠ってしまったアキラの髪に、ユウトは顔を埋めてみた。
 ふんわりとやわらかい良い香りが鼻腔をくすぐる。

「今日は俺本当、コイツに振り回されっぱなしだ……」

 そのままウトウトと、温かく心地のいい眠りに誘われる。
 アキラを胸に抱き寄せたまま、その日のユウトはあっという間に眠りに落ちることができた。 
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