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地下研究所

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 ◇◆◇


「いやいや、すまなんだ。綺麗な歌声が聞こえてきたもので、つい外が気になってのう。ちゃんと確認もせずに扉を開けてしもうたんじゃ」

「え、扉……?」

 ユウトたちのいる瓦礫の側にあったそれは、かなり頑丈な金属で作られていると思しき扉。

「うむ。その振動が原因で、瓦礫が崩れてしまったのじゃろう」

「振動って、まさか自動開閉? 電気が通っているんですかここ!?」

 老人の力では到底開けられそうもないその扉の奥には、一メートル幅程の階段が続いている。
 いわゆる地下シェルターだった。

「良かったら寄っていきなされ。お詫びにお茶の一つも出させてもらわんとな。それに、そっちの兄さんの傷の手当てもしてやらんと」

「あ、そうだよ! ユウト、背中見せて!」

 老人の言葉に促されるように、アキラは未だ寝転がったままのユウトの体を起こそうとしたが

「…………!」

 気付くと、ユウトは反射的にその手を拒んでしまっていた。

「え、ユウト?」

「あ……ご、ごめん」

「分かってる、大丈夫だよ。でも、オレには見せられるでしょ?」

 そう、そのはずだった。

 ユウトの背中には、他人には知られたくない忌まわしい過去がある。
 他人には隠し続けているその古傷のことを、アキラはもちろん知っていた。
 今更後込みすることではないはずなのに、今のアキラには何故だか見せたくない自分がいて――

「……うん。そうだよな、分かった」

 やはり、自分の中で何かが狂っている。
 アキラを今まで通りに見ることができない自分がいる。


「うわ……」

 アキラがそう声を上げるほど、Tシャツは見事ボロボロになっていた。
 背中は打ち身に擦り傷、そして軽い火傷を負っているだけのようだ。

「ああ、オレのせいで……やっぱり痛そう! ゴメンね、ユウトォッ!」 

 そう言ってユウトの背中にすがりつく。

「いてててててて! お前、もしかしてわざとやってないか!?」 

「ち、違うよ! でもホントにごめん!」

 そのやり取りを、老人はほくほくと興味深そうに眺めていた。

「いやいや、微笑ましいのー。仲が良いのはええことじゃ」 

 その時、初めて他人の目があることを思い出し、二人は思わず顔を赤らめた。
 それは久し振りに味わう感覚だった。
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