上 下
24 / 187
運命の日

しおりを挟む
 ◇◆◇


 日も暮れかけて、辺りは薄暗くなっていた。

 二人は施設には立ち寄らず、例の秘密基地へと直行した。
 その秘密基地は、大きく目立つ桜の樹の下にあるにも関わらず、未だ誰にも見つかったことがなかった。

 ユウトはその理由を知っていたが、誰にも言っていない。
 アキラにさえも。

(ほら、やっぱり――)

 樹の根元には、大人一人入るのが精一杯と言った大きさの穴がぽっかりと開いている。
 中に入ると、昔二人で遊んだままの状態が保たれていた。と言うより、更に充実した空間になっているようにユウトは感じた。

「もしかしてお前、ここに来てた?」

「へへーわかった? 時々来て色んな物持ち込んでたんだ。アウトドアグッズなんかもあるし、なんだったらここに泊まれちゃうよ。ねえユウトお腹空いてない? 何か食べる?」

「いや、さっさと話終わらせたいから、いい」

 袋をガサガサとさせていたアキラの手が止まった。

「……何の話? オレの聞きたくないこと?」

 何かを感じ取って、そう聞いてきた。

「多分……そうかな」

 ユウトはあまり間を置かずに、直球で話し出した。

「俺、三年になったらアメリカに留学するんだ」

「え……! 聞いてないよそんな話!」

 アキラは驚きを隠せないでいた。当然だった。

「だから、今言った」

「ユウト……もしかして、目のことでオレに気を使ってる?」

 ユウトの身体がピクリとする。
 いきなりアキラに図星を指されたことに驚いた。

「何で……気付いてたのか?」

「気付くよ! ずっと一緒にいたんだから! ほとんど見えてないんでしょ? そんなんで……どうして一人でアメリカになんか行くんだよ」

「向こうで治療も行う予定なんだ。これ以上お前に迷惑かけたくないんだよ。俺の為にいつも一人で走り回ってさ。もういいだろ」

「迷惑なんて思ったことないし、そんなの当たり前じゃん。だってオレたち家族だろ? そう言ってくれたのはユウトだよ?」


「でも……どんな家族だって、いつかはバラバラになるんだよ」 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

隣の席の女の子がエッチだったのでおっぱい揉んでみたら発情されました

ねんごろ
恋愛
隣の女の子がエッチすぎて、思わず授業中に胸を揉んでしまったら…… という、とんでもないお話を書きました。 ぜひ読んでください。

懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。

梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。 あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。 その時までは。 どうか、幸せになってね。 愛しい人。 さようなら。

今夜は帰さない~憧れの騎士団長と濃厚な一夜を

澤谷弥(さわたに わたる)
恋愛
ラウニは騎士団で働く事務官である。 そんな彼女が仕事で第五騎士団団長であるオリベルの執務室を訪ねると、彼の姿はなかった。 だが隣の部屋からは、彼が苦しそうに呻いている声が聞こえてきた。 そんな彼を助けようと隣室へと続く扉を開けたラウニが目にしたのは――。

車の中で会社の後輩を喘がせている

ヘロディア
恋愛
会社の後輩と”そういう”関係にある主人公。 彼らはどこでも交わっていく…

【R18】もう一度セックスに溺れて

ちゅー
恋愛
-------------------------------------- 「んっ…くっ…♡前よりずっと…ふか、い…」 過分な潤滑液にヌラヌラと光る間口に亀頭が抵抗なく吸い込まれていく。久しぶりに男を受け入れる肉道は最初こそ僅かな狭さを示したものの、愛液にコーティングされ膨張した陰茎を容易く受け入れ、すぐに柔らかな圧力で応えた。 -------------------------------------- 結婚して五年目。互いにまだ若い夫婦は、愛情も、情熱も、熱欲も多分に持ち合わせているはずだった。仕事と家事に忙殺され、いつの間にかお互いが生活要員に成り果ててしまった二人の元へ”夫婦性活を豹変させる”と銘打たれた宝石が届く。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

処理中です...