世界は地球の手のひらで踊る

日常

２

「な、何よ、那月なつきくん！　今日は部活お休みなんだから、別にもう帰ったっていいでしょ！」

「あ、いや……用があるのは水瀬さんじゃなくて、ユウトの方なんだけど」

　アミはアキラの所属するサッカー部のマネージャーをしている。
　キッと睨み付けるアミに遠慮をするように、アキラはユウトの方を見た。

「俺に何か用か？」

　歩みを止めずにユウトが言う。

「何か用かじゃないよ。今日はオレたちが僚の食事当番なんだけど……買い出しのこと、やっぱ忘れてる？」

　それを聞いたユウトがピタリと歩を止めた。

「え？　今日ってお前が飯作んの？」

「お前じゃないよ、ユウトも！　当番はオレたちなんだから」

　そこに、同じ僚仲間の土屋と海野が割り込んで来た。

「よう！　今日の食事当番って那月だよな！　すっげー楽しみにしてっから！」

「ホントホント！　お前の料理、マジ美味いもん！」


　そう、アキラは料理が大の得意。
　料理以外にも家事全般を器用にこなしてしまう。

　ユウトはというと、実はかなりのズボラで家事の一切は今までもずっとアキラが担ってきた。
　ほとんどユウトの『専属家政夫』と言った感じだ。

　そんなアキラの作る料理に、すでにユウトは胃袋を掴まれてしまっている。


「しかも今日はユウトの好きなハンバーグなんだけど」

「な……！　ハンバ……」


「「いやったーーっ！」」

　ユウトの言葉は、土屋と海野の歓喜の声に掻き消された。
　このままでは自分の分までこいつらに食われてしまう。
　そう思って二人の前にユウトは身を乗り出そうとした、その時。

「大丈夫！　守地くんの分は私が作ってあげるから！」

　そう言いながら、アミがユウトの腕にグッとしがみついてきた。