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20:元クズ令嬢、夢の平民スローライフを満喫する。
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「はぁ~、今日もたくさん採れましたね」
私はそう言って、大量の人参を手に息を吐きました。
どれも色が良く美味しそう。この量だと後でご近所さんに配って回った方がいいかも知れませんね。きっと皆さん喜んでくださいます!
――私は今、夢の平民スローライフを満喫中です。
あの時にオネルドの提案を受け入れ駆け落ち、そして王城から離れた農村地帯に逃げてきて、そこで適当な家を見つけ移住しました。
お金は私のドレスがあれば何の問題もありませんでした。あれを換金しただけで家が一つ買えたのですから、よほど殿下のくださったドレスはお高かったのでしょうね。
殿下には感謝をしなくてはです。
そうして家を買い、残りのお金で畑も買って、農家の夫婦として私たちは暮らし始めました。
立派なものはできませんでしたが、きちんと結婚式も挙げましたよ。
基本、オネルドが農作業を担当しますが、こうして私が手伝うこともあります。農作業は意外に楽しく、スローライフ最高です!
「ダスティーさ……ダスティー、人参の収穫が終わったらこっちも手伝ってくれ」
「はーい。わかりました!」
オネルドはもう私の夫です。
ですから、様付けで呼ぶのは禁止にしています。そして敬語もなし。もはや私たちの関係は、令嬢と執事ではありません。
私は急いでオネルドの元へ走って行きました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そういえば先日、私たちを訪ねて来た人の姿がありました。
その人物は子爵夫妻。私の両親だった方々でした。
彼らは私を探し回り、やっとのことで見つけたそうです。
どうか子爵家へ戻ってほしいと懇願されましたが、キッパリ断りました。
「だって私、この生活がとっても気に入っているんです!」
そして少し、彼らからスペンサー殿下たちの話を聞くことができました。
どうやら私が逃げ出した後、彼はリーズロッタ様と婚約を結び直したようです。そして結婚なさり、幸せにやっているのだとか。
一方の聖女ダコタ様はと言えば、新たに王太子になられました第二王子殿下とのご婚約が決まったとのこと。あのダコタ様がスペンサー殿下を諦めたことに驚きはありますが、ともかく丸く収まったようで何よりです。
私はきっとスペンサー殿下との未来もあったでしょう。
しかしオネルドとのこのスローライフが私にとって今、一番の幸せなのです。畑を耕し作物を育て、家に帰れば料理をして一緒に食卓を囲む。それだけで満足でした。
私の意思がもはや曲がらないであろうことを察し、子爵夫妻は帰って行きました。
もう彼らと会うことはきっとないでしょう。少し寂しくは思いましたが、しかし私にはオネルドがいるので何も心配はありません。
私をクズ令嬢などと呼ぶ者は、もうどこにもいません。
私は平凡な農家の若夫婦の妻として、ご近所さんなどに支えられながら、平民としての人生を送って行きたいのです。
「オネルド、愛してます」
「こんな畑のど真ん中でそれを言われると締まらないな」
私たちは小さく笑うと、また農作業を始めたのでした。
《完》
私はそう言って、大量の人参を手に息を吐きました。
どれも色が良く美味しそう。この量だと後でご近所さんに配って回った方がいいかも知れませんね。きっと皆さん喜んでくださいます!
――私は今、夢の平民スローライフを満喫中です。
あの時にオネルドの提案を受け入れ駆け落ち、そして王城から離れた農村地帯に逃げてきて、そこで適当な家を見つけ移住しました。
お金は私のドレスがあれば何の問題もありませんでした。あれを換金しただけで家が一つ買えたのですから、よほど殿下のくださったドレスはお高かったのでしょうね。
殿下には感謝をしなくてはです。
そうして家を買い、残りのお金で畑も買って、農家の夫婦として私たちは暮らし始めました。
立派なものはできませんでしたが、きちんと結婚式も挙げましたよ。
基本、オネルドが農作業を担当しますが、こうして私が手伝うこともあります。農作業は意外に楽しく、スローライフ最高です!
「ダスティーさ……ダスティー、人参の収穫が終わったらこっちも手伝ってくれ」
「はーい。わかりました!」
オネルドはもう私の夫です。
ですから、様付けで呼ぶのは禁止にしています。そして敬語もなし。もはや私たちの関係は、令嬢と執事ではありません。
私は急いでオネルドの元へ走って行きました。
◆◇◆◇◆◇◆◇◆
そういえば先日、私たちを訪ねて来た人の姿がありました。
その人物は子爵夫妻。私の両親だった方々でした。
彼らは私を探し回り、やっとのことで見つけたそうです。
どうか子爵家へ戻ってほしいと懇願されましたが、キッパリ断りました。
「だって私、この生活がとっても気に入っているんです!」
そして少し、彼らからスペンサー殿下たちの話を聞くことができました。
どうやら私が逃げ出した後、彼はリーズロッタ様と婚約を結び直したようです。そして結婚なさり、幸せにやっているのだとか。
一方の聖女ダコタ様はと言えば、新たに王太子になられました第二王子殿下とのご婚約が決まったとのこと。あのダコタ様がスペンサー殿下を諦めたことに驚きはありますが、ともかく丸く収まったようで何よりです。
私はきっとスペンサー殿下との未来もあったでしょう。
しかしオネルドとのこのスローライフが私にとって今、一番の幸せなのです。畑を耕し作物を育て、家に帰れば料理をして一緒に食卓を囲む。それだけで満足でした。
私の意思がもはや曲がらないであろうことを察し、子爵夫妻は帰って行きました。
もう彼らと会うことはきっとないでしょう。少し寂しくは思いましたが、しかし私にはオネルドがいるので何も心配はありません。
私をクズ令嬢などと呼ぶ者は、もうどこにもいません。
私は平凡な農家の若夫婦の妻として、ご近所さんなどに支えられながら、平民としての人生を送って行きたいのです。
「オネルド、愛してます」
「こんな畑のど真ん中でそれを言われると締まらないな」
私たちは小さく笑うと、また農作業を始めたのでした。
《完》
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2022/10/01 完結済み
☆お品書き
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【第二章】喪われし魂の救済を求めて、最期まで心を焦がしてやまなかった彼と。
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【第七章】死ぬ前に一度だけ、セックスをしたかったあの人と。
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【第八章】そして死ぬ前にただ一度だけ、セックスをしたあの人と。
・最終章後編
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