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7.★不思議な瞳
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「リィラ、どうする?」
「あ……っ、い、嫌じゃないときは、どうしたら、いいの……?」
聞いておきながらも、赤く色づいている胸の頂きをいじる指は少しも止まらない。おかげで呼吸は乱れ、問う声は途切れ途切れになってしまった。恥じいるリィラの耳元でシリウスが小さく笑う。
「なら、俺に身をゆだねればいい」
「あ、それ、だめ……」
耳を掠める吐息が下腹部をじんじんと疼かせる。
これは本当に、人畜無害に見えたシリウスなんだろうか。抑えた声はいつもよりずっと艶があるし、触れる手からは火のような熱が伝わってくる。
彼は今どんな表情をしているのだろう。後ろを振り向けば思っていたより近い位置に顔があって、すぐにくちびるを塞がれた。
合わさる粘膜は触れる手よりもっと熱い。重なったくちびるから溶けて、自我がなくなってしまいそうだ。
「シリウス……。お前の、目が……見たい……」
「目?」
さっき一瞬見えた瞳はいつもより赤く感じた。それをもう一度確かめたくてキスの合間に催促をすると、シリウスは不思議そうな声を出す。それでも腕の中で向きを変えられ、今度は向き合う形で腰を抱かれた。
リィラを抱えなおすくらい、力も背丈もあるシリウスには軽い動作のようだ。子どものようにひょいと抱えられ驚いたものだが、おかげで希望どおり熱っぽい瞳がよく見える。
じっと見上げるリィラは褐色の頬を両手で包みこんだ。
「いつもより赤みが増してる。不思議な色だ……」
「そうか? セフィドの民にとっては普通のことだ。気が昂ると赤みがさす」
たしかにシリウスの呼吸もいつもより荒い。赤みが増した紫の瞳だって潤んで見える。
きっと自分も変わりない表情をしているのだろう。自覚し、思わず赤くなったリィラは、ふいと視線を逸らす。
「シリウスも……興奮、しているのか?」
ぽつりと聞けばシリウスは少し照れたように笑った。
「そりゃ、するだろ」
そうしてすぐに吐息が重ねられる。
くちびるにゆるく噛みつかれると心地よくて、お返しにリィラも同じように軽く歯を立ててみた。
じゃれあうようなキスは楽しい。くすくす笑うと、シリウスも同じように微笑む。
それから軽く触れるようなくちびるが首を伝う。彼が肌に吸いつくたびに小さな痛みがチクリと走る。心地よさと、ぞくりとしたこそばゆい感覚。
くちびるも指も、触れる全てがリィラの熱を引き上げていく。
魔王の娘として生を受けたリィラは常に気高い存在でいることを求められていた。
誰かに翻弄されるなんて想像もできなかったし、弱い姿を見せることにも抵抗があった。
なのにシリウスの動作一つで肩が跳ねて、誰にも見せたことのない無防備な顔や声を晒している。
「あ……っ、い、嫌じゃないときは、どうしたら、いいの……?」
聞いておきながらも、赤く色づいている胸の頂きをいじる指は少しも止まらない。おかげで呼吸は乱れ、問う声は途切れ途切れになってしまった。恥じいるリィラの耳元でシリウスが小さく笑う。
「なら、俺に身をゆだねればいい」
「あ、それ、だめ……」
耳を掠める吐息が下腹部をじんじんと疼かせる。
これは本当に、人畜無害に見えたシリウスなんだろうか。抑えた声はいつもよりずっと艶があるし、触れる手からは火のような熱が伝わってくる。
彼は今どんな表情をしているのだろう。後ろを振り向けば思っていたより近い位置に顔があって、すぐにくちびるを塞がれた。
合わさる粘膜は触れる手よりもっと熱い。重なったくちびるから溶けて、自我がなくなってしまいそうだ。
「シリウス……。お前の、目が……見たい……」
「目?」
さっき一瞬見えた瞳はいつもより赤く感じた。それをもう一度確かめたくてキスの合間に催促をすると、シリウスは不思議そうな声を出す。それでも腕の中で向きを変えられ、今度は向き合う形で腰を抱かれた。
リィラを抱えなおすくらい、力も背丈もあるシリウスには軽い動作のようだ。子どものようにひょいと抱えられ驚いたものだが、おかげで希望どおり熱っぽい瞳がよく見える。
じっと見上げるリィラは褐色の頬を両手で包みこんだ。
「いつもより赤みが増してる。不思議な色だ……」
「そうか? セフィドの民にとっては普通のことだ。気が昂ると赤みがさす」
たしかにシリウスの呼吸もいつもより荒い。赤みが増した紫の瞳だって潤んで見える。
きっと自分も変わりない表情をしているのだろう。自覚し、思わず赤くなったリィラは、ふいと視線を逸らす。
「シリウスも……興奮、しているのか?」
ぽつりと聞けばシリウスは少し照れたように笑った。
「そりゃ、するだろ」
そうしてすぐに吐息が重ねられる。
くちびるにゆるく噛みつかれると心地よくて、お返しにリィラも同じように軽く歯を立ててみた。
じゃれあうようなキスは楽しい。くすくす笑うと、シリウスも同じように微笑む。
それから軽く触れるようなくちびるが首を伝う。彼が肌に吸いつくたびに小さな痛みがチクリと走る。心地よさと、ぞくりとしたこそばゆい感覚。
くちびるも指も、触れる全てがリィラの熱を引き上げていく。
魔王の娘として生を受けたリィラは常に気高い存在でいることを求められていた。
誰かに翻弄されるなんて想像もできなかったし、弱い姿を見せることにも抵抗があった。
なのにシリウスの動作一つで肩が跳ねて、誰にも見せたことのない無防備な顔や声を晒している。
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