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6.私だったら嬉しいもの

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 くすくすと笑うリルは恐怖に震え悶えながら声にならない叫びを上げるルシアを眺め、しばらくしてパチンと手を叩いて魔法を解除した。

「これ以上やると、きっと壊れちゃうから……。ねえ、出て行ってくれます?」

 はあはあと激しく肩で息をし、力なく項垂れたままガタガタ震えるルシアの側にしゃがみ込んだリルは感情のない瞳で小さく首を傾げる。

 いつもの隙のないメイクが涙で流れて蒼白な顔のルシアが震えながら激しく頷くと、リルはにっこりと無邪気に笑う。
 だけどしばらく見ていても、いつまでも震えるだけのルシアに再び首を傾げてリルは小さく声を上げた。

「いけない……。声も返してあげます。大切なお仕事の道具なのに、ごめんなさい」

 リルがルシアの喉に手を当てるとグラマラスな体が恐怖に大きく震えたが、気にせず魔法を解除する。
 声が戻り、ルシアの意思とは別のところで一瞬悲鳴が響きそうになった。
 その声は寸前でリルに口を押さえられて、すぐに止められた。

「大丈夫。もう何もしないから。あなたはすぐに出ていけばいいの」

 ね? と優しく微笑むリルから這うように逃げるルシアはまだガタガタと震えている。

「こ、こんな……ルークくんは……町の人は……知ってるの? あなたのこと……」

 ルシアが必死で絞り出した震える声はいつもの張りのある美しい声とは程遠い。
 彼女の美しさが損なわれているのは少し残念だわ。
 リルは他人事のように、ただそう思った。

「ルシアさんに使った魔法なら、さっき初めて使いました。だって今まで私からルークを盗る人なんていなかったもの」
「い、言ってやるわ……さっきの、こと……」
「誰に? ルークに?」

 こくこくとまた激しく頷くルシアにリルは不思議な顔をして、可愛らしく首を傾げる。

「いいですよ? だって私だったらとっても嬉しいもの。ルークだってきっとそうだわ」

 もしルークがリルのために恋敵を屠ってくれたら……。
 
 そう妄想してリルは幼い顔立ちに不似合いな、妖艶で恍惚とした表情を浮かべる。
 そうして悩まし気な吐息を漏らし、ぞくぞくと快感のようなものが駆けた体をリルは自分で抱きしめた。
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