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3.私の彼は素敵だから

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「本当に綺麗な人……」

 少し離れた距離からでもわかる踊り子のしなやかで蠱惑的な体型。
 リルは思わず自らの体を眺めてぷるぷると首を振る。

「関係ないわ。ルークはいつも可愛いって言ってくれるもの」

 楽しそうに話す二人に少し躊躇したが、ルークの元へと駆けてゆくと、リルに気付いた彼が明るく微笑んで手を振った。

「リル!」

 パタパタと駆け寄り、ルークの腕にぎゅっとしがみついたリルを少し驚いた踊り子が眺めて、ふっと笑みを漏らす。
 その余裕のある態度にリルの眉が僅かに吊り上がったけれど、幸か不幸かルークは気付かない。

「彼女かしら? 残念」
「あはは、揶揄わないで下さいよ」
「……リルです」
「ルシアよ。よろしくね」

 興が削がれたかのように「じゃあまたね」と去っていくルシアをいつまでもじっと眺めているリルに、ルークは首を傾げた。

「どうかした?」
「綺麗な人ね……」
「そうだな。あんな派手な美人、初めて見た」
「ふぅん……」

 間を置かず同意するルークにリルはチクリとした視線を送る。
 わかってはいてもルークの口から聞くと面白くない。

「俺はリルが一番だけど!」
「調子いいんだから」

 少し拗ねたフリをしてルークにしがみつき、リルは残念と言ったルシアを思い出す。

――私のルークは素敵だから気になるのは仕方がないけど、それでもちゃんと見張っておかなくっちゃ。

 ぴったりとくっ付くリルの機嫌を直すように黒髪を撫でていたルークを見上げる。
 少し気まずそうな顔に微笑んで見せれば安心したようにルークはホッと息を吐いた。
 その顔にリルの心もほっと和む。

「ねえ、ルシアさんはいつまでここにいるのかしら?」
「さあ? 地味な町だし、一か月もいないんじゃないか?」
 長い。リルにとってそれは長過ぎる。
「一か月か……。もう少し早く出て行ってくれないかな……」

 ポツリと思わず呟いた言葉は風に攫われて、上手く聞き取れなかったルークが聞き返す。
 首を傾げる彼に何でもないよと、リルはとろりとした黒瑪瑙のような瞳を可愛らしく綻ばせた。
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