【R18】Ωな私の恋は忍ばない

7．★番のしるし

「ひっ……！」
　
　ハヤトの指が感触を確かめるよう、入り口をゆっくり撫でる。慣れない感覚に戸惑いはあっても、決して嫌悪はなかった。

　浅く指が埋まると、小さな水音がくちりと響く。


「ぬるぬるだ。痛くない？」

「痛く……ない……、あっ、気持ちいい……」
　

　答えるとハヤトの指が中をかき混ぜるように動き出した。そう広くない部屋にくちゅくちゅと卑猥な音が響く。

　とてつもなく恥ずかしくて耳を塞ぎたくなったけれど、理性はやっぱり脆く崩れていくだけ。

　はしたない蜜は自分でも驚くほど溢れて、控えめだった水音はどんどん大きくなっていった。
　

「あ、あっ、ハヤト……、だめ、熱くて、溶けちゃう……っ

」

　もっと彼が欲しい。それだけが思考の全部になっていく。

　発した声はさっきよりも甘ったるく、それこそ蜜のようだと思った。それにアヤメでも感じ取れるくらい、甘いオメガのフェロモンが充満している。

　期待を込めた視線を送れば、強い熱情を宿した琥珀の瞳がアヤメをじっと見つめ返した。
　

「は……、本当にごめん。アヤメ、俺の……俺だけのものになって」

「んうっ！」
　

　ハヤトが言い終わるより早く、蜜壺に熱く硬い杭が押し当てられる。

　どきりと心臓が跳ねたのは嬉しくて仕方なかったから。　

　思っていた以上の質量にアヤメは息を吐く。力の抜けた腕では体を支えることができない。突っ伏すアヤメは畳に爪を立てる。

　だけど様子見ながら割って入る熱杭に痛みはなかった。

　腰が進むたび、アヤメの喉から小さな声がもれた。
　

「大丈夫？　アヤメの中、熱くて、気持ちよくて、すぐに出そう……」

「あっ、ハヤトぉ……、私も、気持ちい……」


　しとどに濡れているおかげか、それともオメガの体質なのか、強い快感だけが押し寄せてくる。

　内側で感じる脈動は心地よく、本能はもっと奥での繋がりを求めている。

　それはハヤトも同じようで、深いところに到達した杭がアヤメの体内を押し上げる。

　びっくりした体は跳ねて、逃げようとした腰がハヤトの手によって引き戻される。


「逃げないで」

「あ、奥……っ、や、ああぁっ！」


　再び奥を抉られ、頭の先までびりりとした電流に似た快感が駆け抜ける。目の前はチカチカ瞬いて、口の端からぽたりとよだれが垂れて落ちた。

　びくびく震えるアヤメのうなじを舐め、ハヤトは軽く歯を押し当てる。尖る犬歯が食い込んでいるのは気のせいだろうか。

　
「アヤメ……、ごめん、どうか俺を許して」

「ゆるす……？」
　

　なにを？

　聞こうとしたのに、うなじに鋭い痛みが走って、アヤメの口から小さな悲鳴が漏れる。

　
　なにが起きたのか一瞬わからなかった。

　だけど、
　

「ああ、アヤメは血も甘いね。これで完全に俺のものだ」


　そんなうっとりしたハヤトの声で、今の痛みがなんだったのかを理解した。
　

「あ、番の……契約」


　涙を浮かべるアヤメが顔を後ろに向けると、そこには見たこともないほど色香をまとったハヤトが妖艶に微笑んでいた。

　精悍な頬に汗が伝う。いつも後ろで結われている少し長めの黒髪がほどけ、壮絶な色気を醸し出している。


　思わず見惚れてしまったアヤメだが、再び開始された容赦のない律動に高い声を上げた。