成人の儀―特別侍従―

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5.イけない苦しみ

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5.イけない苦しみ


 苦しい。出したい――。
「んっ、ふ、んむ、ン」
「そうだ、それでいい。歯を立てぬように唇を丸め込みなさい」
「ンンッ」
 リゲンスに言われたとおりに舌を動かす。
 初めて張り型を口にしてから、もう一週間が経った。
 どれほど練習をしようと口内が広くなるわけではない。けれどさすがに慣れたようで、リアルな張り型を口に入れる戸惑いはなくなった。愛おしいとも思わないけれど。
「そなたは根元も好きだろう」
「っ……」
「触れてみなさい」
 口淫の練習をする時だけは自分の男根に触ることを許されている。それは刺激するためではなく快感を得られる場所を確認するためだけなのだが、興奮が高まりすぎた時は指先が当たるだけでも絶頂してしまいそうで、そんな時はそれをやり過ごすために手を根元にやっていた。だからどうやらそれで根元も感じる場所だと思い違いをされてしまったようだ。
「口に入らない部分は手でしごきなさい」
「ん、は、んんっ」
 指示をされる度に体の熱が高まる。
 豪勢な部屋の中でケネルだけが肌をさらし、リゲンスは少し離れたところからボタン一つ外すことなく正装のまま、淫靡(いんび)な指示を飛ばしている――その現実を意識する度に決して許されない絶頂を求め、腰がびくんびくんと揺れてしまう。
「単調な動きではいけない。力加減やスピードを適宜変えながら施しなさい」
 口内がいっぱいで返事ができないので、涙がこぼれ落ちないよう意識しながらリゲンスを見上げる。
「……淫らな顔をしている。男根に口内を犯されて感じているのか」
「んふ、ん……」
 違う、と首を振る。だってケネルを犯しているのはリゲンスだ。その鋭い視線に射抜かれるだけで体はほてり、男根は蜜を垂らす。しかし当然そんなことは言えないし、ケネルの仕事は艶やかに王子を誘うこと――ケネルがいやらしくなればなるほどリゲンスの評価が上がるのだ。
(そうだ、仕事だ……)
 だから、違うなんて思ってはいけない。今自分は、王子の男根に口内を犯されて悦んでいるのだ。
 言葉で答えるため、張り型を口から出す。
「……はい。口の中が気持ちいいです」
 答えてすぐにもう一度口に含み、自分の男根を触りたい欲をこらえて張り型をしごく。
 どうして絶頂を求める自分の男根ではなく、体温もない張り型を扱いているのだろう……。
 舌を動かしながらしゅっ、しゅっと竿をこすっていると、このまま続けていては自分の体がおかしくなってしまうような気がして怖くなった。
(出したいっ……!)
 もう限界だ。射精したい。張り型ではなく、自分の男根を思い切りこすりたい。
 触れてしまおうか――震える手をそっと張り型から放そうとした時だった。
「――そこまで。今日はこれでしまいだ」
(ぁ……)
 リゲンスの手が後孔に入った張り型を握った。ずるずると抜かれると、後孔が勝手に引き止めようとしてしまう。
「力を抜きなさい」
「や、あの、その、勝手にっ……」
「ああ……ここも淫らになってきたな」
 リゲンスの指が後孔のシワを撫でた。そこに触れられたのは久しぶりだ。下腹部がきゅーっと締まるのを感じる。
「……この後孔なら王子もきっとお悦びになるだろう」
「っ……」
 王子という言葉を聞く度に胸が苦しくなる。三か月後には顔も見たことのない王子に――。
「だが、口淫はまだまだだ。それに後孔もまだ狭すぎる」
「はい」
 成人の儀を終えれば村に帰れる。だからそれまでの我慢。最初はそう思っていたはずなのに、今ではこの時が続けばいいと思っていた。絶頂を許されない苦しみは耐えがたいが、それよりもリゲンスとの時間を過ごせることの方が――だから、まだ未熟だと言われるとほっとしたような気持ちになってしまう。
「明日、張り型の太さを変える。寝る前に後孔をマッサージしておきなさい」
「……はい」
 しかしケネルが順調にこなせればリゲンスの仕事が楽になる――頑張りたい。
 相反する自分の気持ちに蓋をして足を開き、膨らんでもなお小さな男根が貞操帯に戻されるのを眺めた。



 眠れない。男根が起ち上がろうとしているのに、それが金属によって阻まれ痛みをもたらしている。
 快感が欲しい。思いきりこすって激しく射精したい。中が空っぽになるまで白濁を撒き散らしたい。
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