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しおりを挟む「ん………」
イヌはゆっくりと目を開いた。どうやら寝ていたらしい。目の前には白いふわふわしたもの。甘えるように頬を寄せる。ふわふわ。
と、そこで気がついた。
「ここ…」
どこだろう。主の寝室のクッションではない。それよりもっと柔らかくて、温かい。そしてこのふわふわ。
ゆっくりと上半身を起こす。広い部屋だった。そこのベッドの上。やはり主の部屋ではない。主の部屋よりここの方が広い。
横を見るとあの大きな狼がいた。心配そうにこちらをみつめている。
ふわふわは狼だったのだ。きっとここに運び、それから横にいてくれたに違いない。
「助、け、てくれ、て…あり、とう」
狼は静かに目を細めた。やはり言葉が分かるのだろうか。
(それにしても、ここは一体……あ!)
自分は大きめのシャツを着せられていた。第一ボタンまで閉められていたけれど、それでも胸元まで開いている。とんでもなく大きい。きっとこの服の持ち主は身長だけでも二十センチ以上違うのだろう。袖も長い。でもきちんと折り返されていた。一体誰がーー。いや、ということは。
「狼、さん!」
イヌはバッと布団を捲り狼の体を確かめた。
「…よかった」
狼の足にはきちんと包帯が巻かれ、治療を受けたことが伺えた。治るのに時間はかかるかもしれないが、治療がされているかどうかでは治りも違うだろう。
狼を見ると目を細めていた。やはり言葉がわかるのだろうか。
イヌが疑問に思っていると、ベッドから遠く離れたドアがノックされた。
(ここから返事をして聞こえるだろうか)
そう思うほど部屋は広い。
イヌはベッドを降りると四つん這いでドアに近づいた。そしてこちらからドアを開ける。
「あ…」
ドアの外には長い金色の髪の男がいた。女性と見間違えそうなほどに綺麗な顔立ちをしているが、身長や体格からしても男には違いないだろう。
身長は主より高いようで、見上げると首が痛い。でも交わっている視線をこちらから逸らすなんて失礼なことはできなかった。ーーそういえば、この服はこの人のものだろうか。
分からないことばっかりだ。
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AYANE様
おはようございます!
ご感想ありがとうございます😍
ふわふわもふもふの季節が近付いて参りましたのでぜひふわもふに触れながら(なんなら頬擦りしながら)「あーこんな感じ」と思いながらお読みいただければ…!笑
イヌが脱犬できるのか、見守っていただけますと幸いです😆