7 / 75
1-7
しおりを挟む篠崎が寝室を出るのを見送りテディを抱き込む。
もう、セックスしたいと思っていることは確信していた。篠崎とセックスをしたい。篠崎に抱かれたい――けれど勃起すらないまま十数年経ってしまっていて、本当にできるのだろうか。途中で怖くなってしまったら?途中で過去を思い出してしまったら?セックスしましょうとなって、いざ股間に触れられて、そのときに同級生の顔が頭に浮かんでしまったら。
盛り上がった篠崎の気持ちも無駄にさせてしまう。それだけは避けたかった。自分はセックスをしたいという気持ちを最後まで持ち続けることができるのだろうか。
そう思う一方で、先ほどの篠崎の艶っぽい声が頭の中で響いていた。いつもより少し低い声。熱い視線。裸をあんな目で見られたら。身体を撫でられながらあの声で可愛いと言われたら。
思い出したらまた勃起してしまった。
「諒」
いつの間に入室したのだろう。気付かなかった。
「ぁ……」
「やはり眠れなかったか。大丈夫か」
「今何時ですか」
「二時だよ」
「……遅くまでお疲れ様です」
ありがとうと言いながら篠崎がベッドに入ってくる。
「おいで」
「あの……」
「ん?」
篠崎はもういつもの状態と変わらない。当たり前だ、仕事を終えたところなのだ。
「……なんでもないです、おやすみなさい」
「諒、おいで」
「……え、と……」
「起ってる?」
「……はい……」
「辛くないか」
「はい……」
「出したいとは?」
「その、よくわからなくて」
「そうか」
射精したいとは思わなかった。でもそれはきっと困惑しているからだ。この憂いがなくなったらきっと射精したいと、させてほしいと思うようになるのだろう。でももうそれが怖いとは思わなかった。
「ならいいだろう。いつもみたいに抱っこで寝よう」
篠崎はいいのだろうか。安西は勃起に触れられたくないと思っているわけではない。ただ何となく気後れしてしまって。
「おいで」
あぁ、いいのだ。篠崎は大丈夫。きっと気にしないでくれる。気にしないふりを通してくれる。
素直に擦り寄るといいことまた褒められた。抱きしめてもらって御礼を言わなきゃいけない立場なのに、褒められてしまう。でもそれが嬉しかった。
腕の中にいると途端に睡魔が襲ってくる。色々考え過ぎて少し疲れてしまったのかもしれない。
「しのざき……」
「うん……おやすみ」
おやすみなさい、と言えたかどうかはもう覚えていなかった。
0
お気に入りに追加
242
あなたにおすすめの小説
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
大嫌いな歯科医は変態ドS眼鏡!
霧内杳/眼鏡のさきっぽ
恋愛
……歯が痛い。
でも、歯医者は嫌いで痛み止めを飲んで我慢してた。
けれど虫歯は歯医者に行かなきゃ治らない。
同僚の勧めで痛みの少ない治療をすると評判の歯科医に行ったけれど……。
そこにいたのは変態ドS眼鏡の歯科医だった!?
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる