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第七章 冒険編 大戦争

真緒パーティー VS ヴォイス軍団

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 「“フレア”」



 教団員の一人が両手を合わせ、魔法を唱えると、両手が赤く光始めた。そして迫り来る真緒達目掛けて、合わせていた両手を開いた。すると無数の火の粉が飛び散り、真緒達に襲い掛かって来た。



 「危ないだぁ!!」



 咄嗟にハナコが前に飛び出し、真緒とリーマを庇った。飛び散った火の粉が、ハナコの体を燃やし始める



 「あぢぃ!! あぢぢ!!」



 「ハナちゃん!!」



 慌てて火の粉を振り払うハナコだったが、熊人族特有の体毛が災いし、火の手が早く回った事で火傷を負ってしまった。



 「大丈夫!!?」



 「な、何どがぁ……」



 「マオさん、相手はどうやら魔法も扱える様です!!」



 すると数十人の教団員が、後衛から魔法を放とうと構えていた。



 「私が敵陣に突っ込んで魔法を食い止めるから、リーマは魔法で援護して!!」



 「わ、分かりました!!」



 純白の剣を片手に、一人で敵陣に突っ込んで行く真緒。前衛の数十人が真緒に斬り掛かり、進行を食い止めようと試みる。



 「退いて!!」



 「「ぐはぁ!!!」」



 「邪魔だよ!!」



 「「がはぁ!!!」」



 「くっ……このままじゃ、間に合わない……」



 「「「「「“フレア”」」」」」



 「し、しまった!!」



 それを次々と薙ぎ倒して行く真緒だったが、とうとう間に合わず、後衛の数十人が一斉に真緒目掛けて魔法を唱えた。視界を多い尽くす程の火の粉。最早、避けるのは不可能だった。



 「“ウォーターピラー”!!」



 「!!!」



 その瞬間、真緒と火の粉の間に巨大な水の柱が出現した。それにより火の粉は全て水の柱に吸い込まれ、消火されるのであった。



 「リーマ、ありがとう!!」



 「礼には及びません。早い所、片付けてフォルスさんの後を追い掛けましょう」



 「そうだね、こんな所で油売っている場合じゃないよね」



 「そんな悠長な事を言っている暇があるんですか?」



 「!!!」



 助かったのも束の間、ヴォイス司教を含む数十人の教団員に取り囲まれていた。



 「さすがのあなたでも、これだけの人数に襲われれば耐えられないでしょう。まだ遅くありません。供に世界を変えましょう」



 「……ふっ、ふふふ……」



 ヴォイス司教の言葉に、思わず笑みが溢れてしまう真緒。



 「何が可笑しいんですか?」



 「だって、人数の多さで勝敗が決まるとか思っているなんて……ヴォイスさん、優しいのも結構ですが、もう少し考えてから物を言った方が良いですよ?」



 「…………殺せ」



 その一言で、一斉に襲い掛かる教団員。真緒は純白の剣を握り直すと、片っ端から斬り伏せていく。



 「はぁあああああ!!!」



 「「あがぁ!!!」」



 「マオさん、援護しますよ!! “スネークフレイム”!!」



 リーマの魔導書から、炎で形成された蛇が生み出され、教団員目掛けて放たれる。



 「「「ぎゃああああ!!!」」」



 「ナイスサポート!!」



 「オラだっで、頑張るだぁ!! スキル“鋼鉄化(腕)”」



 教団員の魔法によって、火傷を負っていたハナコだったが真緒に加勢し、鋼鉄に変化させたその拳で薙ぎ倒していく。



 「ヴォイス司教!! このままでは全滅です!!」



 「慌てる事はありません。全て計画通りです」



 次々と倒されていく教団員。そのあまりの強さから、ヴォイス司教に助けを求めるが、当の本人は涼しげな表情を浮かべていた。



 「で、ですが……」



 「あなた達は黙って斬られていれば良いのですよ」



 「そ、そんな!!!」



 「何ですか? まさか断るつもりじゃ無いでしょうね!? このヘッラアーデ13支部の司教であるヴォイスの言葉を無下に扱うつもりじゃないでしょうね!?」



 「め、滅相も無い!!」



 「良かった。もし、出来ないなんて言っていたらどうなっていたか……」



 「…………」



 まるで家畜を見るかの様な、冷たく何の感情も籠っていない目線。思わず息を飲む程の威圧感であった。



 「それならさっさと行きなさい。もしかしたら、一撃位は当てられるかもしれませんよ」



 「は、はい……分かりました……」



 殺られると分かっていながら、向かわなくてはならない。正に決死の覚悟で真緒へと斬り掛かった。



 「スキル“乱激斬”!!」



 「「「ぐはぁ!!!」」」



 が、やはりと言うべきか、他の教団員同様に殺られてしまった。



 「よし!! 後もう少しで全部片付く!! このまま押し切ろう!!」



 「分がっだだぁ!!」



 「任せて下さい!!」



 勢い付く真緒達を止める術を持ってはおらず、三十人近くいた教団員は遂にヴォイス司教を含めて三人になってしまった。



 「ヴォイス司教……も、もう駄目です。これ以上は……」



 「我々だけでは歯が立ちません!! 一旦、退却して増援を待ちましょう!!」



 勝ち目は無いと悟り、撤退を提案する教団員。その目には、最早闘志は感じられ無かった。



 「……そうですね、もう戦わなくて良いですよ。あなた達二人は、先にいって待ってて下さい」



 もう戦わなくて済む。命が助かったと、二人は安堵の息を漏らした。そして次の瞬間……。



 「「あ……あ……あ……」」



 「「「!!?」」」



 「…………」



 ヴォイス司教が唯一生き残った二人の教団員の胸にナイフを突き立てた。教団員二人は、訳が分からないままその場に倒れ、そして苦しみ悶えながら息を引き取った。



 「な、何やってるんですか!!?」



 ヴォイス司教による突然の奇行。流石の真緒達も、動揺が隠せなかった。



 「だから先に“逝って”貰ったんですよ。出来る事なら、敵に一矢報いてから死んで欲しかったんですけどね」



 「だからって、どうしてわざわざ殺す必要があるんですか!!?」



 「そりゃあ勿論、あなた達を殺す為ですよ」



 そう言うとヴォイス司教は、懐から小さな小瓶を取り出した。中には真っ黒なネバネバした液体が入っている。



 「全てはエジタス様の為に……」



 小瓶の蓋を開け、中の真っ黒な液体を教団員の死体に垂らした。



 「「「!!!」」」



 すると真っ黒な液体は、地を這う様に次々と教団員の死体へと取り付き、三十人という死体が一つの肉団子に変化した。



 「な、何あれ……」



 「死体を食ってる……おぇ……」



 あまりの気持ち悪さに、吐き気すら覚えた。そんな中、ハナコだけが真緒とリーマの二人とは違う反応を示していた。



 「ぞんな……まざが……あれっで……」



 「ハナちゃん、見覚えがあるの?」



 「一年前の魔王城での戦い……アルシアざんど一緒に戦っだだぁ……」



 「そう……これはエジタス様による二千年前からの贈り物……マオさん達も、一度戦っているだろう? “クラウドツリー”で……」



 「クラウドツリー……って、まさか!!?」



 それは決して忘れる事の出来ない記憶。二千年前、世界を滅亡寸前まで追い詰めた恐怖の象徴であり、真緒達が大きく成長する切っ掛けにもなった。



 「さぁ、ご覧あれ。我らヘッラアーデの最高傑作、“実験体M-005”だ」



 真っ黒な液体が纏わり付いた巨大な肉片が、うにょうにょと怪しく蠢いていた。
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