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第五章 冒険編 幸運の巣窟
リベンジの時(前編)
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「あれは……?」
ギャブラーと交渉の末、見事リベンジの機会を手に入れた真緒達は決戦の場へと案内されていた。辿り着いたその部屋には一軒のボロボロな家が建っていた。つまり建物の中に建物という異様な光景が広がっていたのだ。
「あそこは俺が成り上がる切っ掛けとなった言わば始まりの場所……今や各国の王族や貴族に食い込む程の金を手に入れているが、決して初心の頃の貪欲さを忘れてはいけない戒めとして残しているんだ」
「(そっか……そんな事を思いながら残していたんだ……)」
実の所を言えば、真緒はこの場所を知っていた。真・変化の指輪によってギャブラーの記憶を読み取った事で、事前に知っていた。しかし残した理由や思いなどは明確されておらず、何故残しているのかずっと疑問に感じていた。そんな疑問が今になって解けたのだ。
「(てっきり師匠との思い出を形として残しているのかと思った……)」
こんな状況でも愛した人物の事を第一に考える真緒。今の言葉を仲間達が聞けば、ドン引きは避けられない。因みに真緒と同じ人物を愛したサタニアは共感するであろう。
「勝負は中で行う」
そう言いながらギャブラーは扉を開け、家の中へと入って行く。その後に続く様に真緒達も中に入る。
「中はもっとボロボロだな……」
フォルスの言う通り、内装は外装よりもボロボロで所々にカビが生えていた。
「本当ですね……あれ?」
その時、リーマは奥の方に誰かがいるのに気が付いた。それは先日、真緒達がギャブラーの情報を聞き出す為に色仕掛けを仕掛けた三人だった。只前と違うのは、三人とも生首の状態で壁に打ち付けられている事である。
「いやぁあああああ!!!」
「こ、これは!!?」
「うっ……気持ぢ悪いだぁ……」
「酷過ぎる……」
「惨いわね……」
真緒達全員が絶句している中、真緒達の様子に気が付いたギャブラーが、気の抜けた返しをする。
「あぁー、まぁ自業自得ってやつ? 仕方無いよね、俺を裏切って情報を流すんだからさ」
「あなたには良心というのが無いんですか?」
「あったよ、前まではね。捨て子だった俺を育ててくれたから、一応稼いだ金のおこぼれを与えていたんだけど……もう充分恩返しは出来たと思うし、そろそろ良いかなって」
王族や貴族を手玉に取るギャブラーにとって、あの三人は最早目の上のたんこぶだった。しかし育てて貰った恩がある手前、中々切り捨てる事が出来ずにいた。しかし今回の情報流出によって、処分する大義名分が生まれたのだ。つまりあの三人が情報を流してしまった時点で、生き残るのは不可能だったという訳だ。
「そう言う意味では、お前達に感謝しているよ。これで憧れであるエジタスに一歩近付けた気がする」
「……何も分かっていませんね」
「何だと?」
「師匠だったら育ての親とかそんな心情に左右されずに、迷い無く片付けますよ。所詮、あなたの様な形から入るタイプでは一生師匠に近付く事は出来ません」
「ふん、お前みたいなガキに何が分かる……毎日が綱渡り、劣悪な環境からいつまで経っても抜け出せない絶望感。何度死にたいと思ったか……そんな時にエジタスから生きる糧を貰った。エジタスが先に死ぬか、俺が先に死ぬか……俺は足掻いた、エジタスよりも長く生き残る為に必死になって足掻いた。利用出来る物は何でも利用した、あの三人がいい例だ。そんな俺の半生を頭ごなしに否定する事なんて誰にも出来ないんだよ」
「不幸自慢は済みましたか? あなたの半生など私には全く興味がありません。早い所、勝負を始めましょう」
長々と語ったギャブラーの心情をバッサリと切り捨てる真緒。ここまで強く出るのは本当に興味が無いのか、はたまたエジタスと関わったという嫉妬からか。
「……そうだな、これ以上御託を並べるのもいい加減疲れた……始めようか」
そう言いながらギャブラーは部屋の中央に置かれていた丸テーブルに手を置く。丸テーブルの上には二種類に分けられたカードの束を中心に黒いコインが二十枚ずつ奥と手前にそれぞれ置かれていた。
「勝負内容は……“インディアンポーカー”だ」
「インディアンポーカー?」
「取り敢えず座ろうじゃないか、代表の者が座れ」
ギャブラーに促されながら、代表として真緒が丸テーブルの手前に置かれている椅子に腰を下ろす。それを確認したギャブラーは真緒と相対する様に奥の椅子に腰を下ろす。
「手順は簡単だ、まず親を決め、それから毎回ゲームを行う為に参加費用として各々がコインを一枚置く。その後、中央に置かれているカードの束から一枚カードを引く。引いたカードの数字が見えない様、カードを額に当てる。そして互いの額に当てているカードの数字を確認し、親の方から“ビッド”、最低一枚から最大十枚までのコインを出す。もしくは“ドロップアウト”、これは勝てないと判断した場合、ゲームから降りる事が出来る。親がビッドを宣言した場合、片方は同じだけコインを出す“コール”か、より多く出す“レイズ”を選ぶ。この時、レイズを選んだ場合は親の方もコールかレイズを選ぶ。互いにレイズの宣言は一回まで、誰もレイズを宣言しなかったらゲーム開始だ。額に当てているカードを一斉に公開する。そしてカードの数字が強い方が賭けた分だけ総取りする事が出来る。強さの序列は強い方からA〉K〉Q〉J〉10〉9〉8〉7〉6〉5〉4〉3〉2の順番だ。ジョーカーはAと同等の強さとする。第一ゲームが終了したら親を交代して第二ゲームを始める。これらの手順を繰り返し、どちらか一方の手持ちのコインが全て無くなった時、決着とする。どうだ? 非常に分かりやすい手順だったろ?」
「えぇ、非常に分かりやすい説明でした」
そうは言ったが今のルール説明、一切確認の動作が無かった。全て口だけで説明していた。真緒達がカジノの初心者という事を利用して、専門用語を交えながら長々と説明した。現にハナコは首を傾げながら、頭を抱えていた。一度の説明だけじゃ、理解が追い付かなかったのだろう。
「(まさかルール説明の段階から攻めて来るとは……中々侮れませんね)」
しかしこれ位の事、真緒は想定していた。だからこそ、全神経を集中させてギャブラーの言葉を理解しようとしたのだ。
「さて、ゲームを始める前に万が一お前達がゲームに勝った時、何が欲しいのか教えて貰おうか?」
「私達が勝った時はあなたが奪った私達の所有物全て、そして師匠から託されたロストマジックアイテムである幸運のコインを渡して貰います」
「……それで? 俺が勝った時は?」
「……あなたが望まれる物を……」
「そうだな……それじゃあ、お前達の命と引き換えに……というのはどうだ?」
「「「「「!!!」」」」」
その言葉に真緒達全員の顔が強張る。
「くくく、怖じ気づいたか?」
「……いえ、分かりました。その条件で勝負しましょう」
が、元より覚悟の上でカジノに乗り込んだのだ。真緒達は二つ返事でその条件を呑んだ。
「いい覚悟だ。それじゃあ始めるとしよう。親は……お前が先で構わない」
「分かりました」
「あっと、その前にだ。そこにいる取り巻き連中は味方に数字を教えたり、数字に対してリアクションを起こすのは禁止だ」
「……分かった」
「分かりました」
「分がっだだぁ」
「仕方無いわね」
そう言うと真緒とギャブラーは、互いに手持ちのコインを一枚、丸テーブルに置いた。そしてそのまま流れる様に各々、カードの束からカードを一枚引き、額に当てる。
「(ギャブラーの数字は“7”……強くも弱くも無い数字……負ける可能性もあるけど、勝てる可能性だって充分あり得る。まずは様子を見て……)……ビッド」
真緒は手持ちのコインから二枚抜き取り、丸テーブルの上に置いた。
「ふーん、成る程ね……じゃあレイズ」
「!!?」
するとギャブラーは、最大枚数の十枚を賭けて来た。
「(い、いきなり十枚!!? まさか私の数字って弱過ぎる!!?)」
「あぁ、そうそう言い忘れていたが……相手がレイズを宣言した後、危険を感じてドロップアウトで降りる事も出来るからな。もしそうした場合、参加費用のコイン一枚を相手に渡すんだ」
「(ここでルールの追加!!? やりたい放題ね!!)」
十枚賭けのレイズに突然のルール追加。真緒の心は乱れまくっていた。顔に出ないだけ奇跡と言えた。
「(どうする……ここは危険を避けてドロップアウトするべき? それともギャブラーのハッタリと割り切って勝負を仕掛けるか……いやでも……)」
降りるか勝負か、真緒が頭を悩ませていると一筋の光が差し込む。それは素朴な疑問だった。
「(……そう言えばギャブラーはどうして今更ルールの追加をしたんだろう? 私を動揺させてドロップアウトさせる為? いやもしかして……)」
「おい、いつまで待たせる気だ? 決めるのなら早く決めろ」
「……レイズ」
「!!?」
すると真緒は何とギャブラーと同じく、最大枚数である十枚を賭けて来た。
「さぁ、あなたの番ですよ。コールか、ドロップアウトか……」
「…………ちぃ、ドロップアウト」
ギャブラーは諦めた様にドロップアウトを宣言した。それにより第一ゲーム終了、額に当てている互いのカードが公開される。結果は……
ギャブラー……7
真緒……A
「これは……なかなかの策士ですね」
真緒の数字はA、序列の中では最も強い数字だった。つまりこの数字が出た時点でギャブラーに勝ち目は無かった。しかし敢えて強気な勝負に出る事で、真緒に弱い数字なのではという揺さぶりを仕掛けて来たのだ。
「あの追加ルールは私をドロップアウトさせる為だけじゃなく、自分が追い込まれた時の逃げ道として追加したんですね」
「ふん、ほらコイン一枚だ」
作戦が上手く行かなかった事に不機嫌になりながらも、ギャブラーは真緒にコインを一枚手渡した。
「いい気になるなよ、まだゲームは始まったばかりだ」
こうして静かに始まったゲームは、真緒がコイン一枚をリードした状態になるのであった。
ギャブラーと交渉の末、見事リベンジの機会を手に入れた真緒達は決戦の場へと案内されていた。辿り着いたその部屋には一軒のボロボロな家が建っていた。つまり建物の中に建物という異様な光景が広がっていたのだ。
「あそこは俺が成り上がる切っ掛けとなった言わば始まりの場所……今や各国の王族や貴族に食い込む程の金を手に入れているが、決して初心の頃の貪欲さを忘れてはいけない戒めとして残しているんだ」
「(そっか……そんな事を思いながら残していたんだ……)」
実の所を言えば、真緒はこの場所を知っていた。真・変化の指輪によってギャブラーの記憶を読み取った事で、事前に知っていた。しかし残した理由や思いなどは明確されておらず、何故残しているのかずっと疑問に感じていた。そんな疑問が今になって解けたのだ。
「(てっきり師匠との思い出を形として残しているのかと思った……)」
こんな状況でも愛した人物の事を第一に考える真緒。今の言葉を仲間達が聞けば、ドン引きは避けられない。因みに真緒と同じ人物を愛したサタニアは共感するであろう。
「勝負は中で行う」
そう言いながらギャブラーは扉を開け、家の中へと入って行く。その後に続く様に真緒達も中に入る。
「中はもっとボロボロだな……」
フォルスの言う通り、内装は外装よりもボロボロで所々にカビが生えていた。
「本当ですね……あれ?」
その時、リーマは奥の方に誰かがいるのに気が付いた。それは先日、真緒達がギャブラーの情報を聞き出す為に色仕掛けを仕掛けた三人だった。只前と違うのは、三人とも生首の状態で壁に打ち付けられている事である。
「いやぁあああああ!!!」
「こ、これは!!?」
「うっ……気持ぢ悪いだぁ……」
「酷過ぎる……」
「惨いわね……」
真緒達全員が絶句している中、真緒達の様子に気が付いたギャブラーが、気の抜けた返しをする。
「あぁー、まぁ自業自得ってやつ? 仕方無いよね、俺を裏切って情報を流すんだからさ」
「あなたには良心というのが無いんですか?」
「あったよ、前まではね。捨て子だった俺を育ててくれたから、一応稼いだ金のおこぼれを与えていたんだけど……もう充分恩返しは出来たと思うし、そろそろ良いかなって」
王族や貴族を手玉に取るギャブラーにとって、あの三人は最早目の上のたんこぶだった。しかし育てて貰った恩がある手前、中々切り捨てる事が出来ずにいた。しかし今回の情報流出によって、処分する大義名分が生まれたのだ。つまりあの三人が情報を流してしまった時点で、生き残るのは不可能だったという訳だ。
「そう言う意味では、お前達に感謝しているよ。これで憧れであるエジタスに一歩近付けた気がする」
「……何も分かっていませんね」
「何だと?」
「師匠だったら育ての親とかそんな心情に左右されずに、迷い無く片付けますよ。所詮、あなたの様な形から入るタイプでは一生師匠に近付く事は出来ません」
「ふん、お前みたいなガキに何が分かる……毎日が綱渡り、劣悪な環境からいつまで経っても抜け出せない絶望感。何度死にたいと思ったか……そんな時にエジタスから生きる糧を貰った。エジタスが先に死ぬか、俺が先に死ぬか……俺は足掻いた、エジタスよりも長く生き残る為に必死になって足掻いた。利用出来る物は何でも利用した、あの三人がいい例だ。そんな俺の半生を頭ごなしに否定する事なんて誰にも出来ないんだよ」
「不幸自慢は済みましたか? あなたの半生など私には全く興味がありません。早い所、勝負を始めましょう」
長々と語ったギャブラーの心情をバッサリと切り捨てる真緒。ここまで強く出るのは本当に興味が無いのか、はたまたエジタスと関わったという嫉妬からか。
「……そうだな、これ以上御託を並べるのもいい加減疲れた……始めようか」
そう言いながらギャブラーは部屋の中央に置かれていた丸テーブルに手を置く。丸テーブルの上には二種類に分けられたカードの束を中心に黒いコインが二十枚ずつ奥と手前にそれぞれ置かれていた。
「勝負内容は……“インディアンポーカー”だ」
「インディアンポーカー?」
「取り敢えず座ろうじゃないか、代表の者が座れ」
ギャブラーに促されながら、代表として真緒が丸テーブルの手前に置かれている椅子に腰を下ろす。それを確認したギャブラーは真緒と相対する様に奥の椅子に腰を下ろす。
「手順は簡単だ、まず親を決め、それから毎回ゲームを行う為に参加費用として各々がコインを一枚置く。その後、中央に置かれているカードの束から一枚カードを引く。引いたカードの数字が見えない様、カードを額に当てる。そして互いの額に当てているカードの数字を確認し、親の方から“ビッド”、最低一枚から最大十枚までのコインを出す。もしくは“ドロップアウト”、これは勝てないと判断した場合、ゲームから降りる事が出来る。親がビッドを宣言した場合、片方は同じだけコインを出す“コール”か、より多く出す“レイズ”を選ぶ。この時、レイズを選んだ場合は親の方もコールかレイズを選ぶ。互いにレイズの宣言は一回まで、誰もレイズを宣言しなかったらゲーム開始だ。額に当てているカードを一斉に公開する。そしてカードの数字が強い方が賭けた分だけ総取りする事が出来る。強さの序列は強い方からA〉K〉Q〉J〉10〉9〉8〉7〉6〉5〉4〉3〉2の順番だ。ジョーカーはAと同等の強さとする。第一ゲームが終了したら親を交代して第二ゲームを始める。これらの手順を繰り返し、どちらか一方の手持ちのコインが全て無くなった時、決着とする。どうだ? 非常に分かりやすい手順だったろ?」
「えぇ、非常に分かりやすい説明でした」
そうは言ったが今のルール説明、一切確認の動作が無かった。全て口だけで説明していた。真緒達がカジノの初心者という事を利用して、専門用語を交えながら長々と説明した。現にハナコは首を傾げながら、頭を抱えていた。一度の説明だけじゃ、理解が追い付かなかったのだろう。
「(まさかルール説明の段階から攻めて来るとは……中々侮れませんね)」
しかしこれ位の事、真緒は想定していた。だからこそ、全神経を集中させてギャブラーの言葉を理解しようとしたのだ。
「さて、ゲームを始める前に万が一お前達がゲームに勝った時、何が欲しいのか教えて貰おうか?」
「私達が勝った時はあなたが奪った私達の所有物全て、そして師匠から託されたロストマジックアイテムである幸運のコインを渡して貰います」
「……それで? 俺が勝った時は?」
「……あなたが望まれる物を……」
「そうだな……それじゃあ、お前達の命と引き換えに……というのはどうだ?」
「「「「「!!!」」」」」
その言葉に真緒達全員の顔が強張る。
「くくく、怖じ気づいたか?」
「……いえ、分かりました。その条件で勝負しましょう」
が、元より覚悟の上でカジノに乗り込んだのだ。真緒達は二つ返事でその条件を呑んだ。
「いい覚悟だ。それじゃあ始めるとしよう。親は……お前が先で構わない」
「分かりました」
「あっと、その前にだ。そこにいる取り巻き連中は味方に数字を教えたり、数字に対してリアクションを起こすのは禁止だ」
「……分かった」
「分かりました」
「分がっだだぁ」
「仕方無いわね」
そう言うと真緒とギャブラーは、互いに手持ちのコインを一枚、丸テーブルに置いた。そしてそのまま流れる様に各々、カードの束からカードを一枚引き、額に当てる。
「(ギャブラーの数字は“7”……強くも弱くも無い数字……負ける可能性もあるけど、勝てる可能性だって充分あり得る。まずは様子を見て……)……ビッド」
真緒は手持ちのコインから二枚抜き取り、丸テーブルの上に置いた。
「ふーん、成る程ね……じゃあレイズ」
「!!?」
するとギャブラーは、最大枚数の十枚を賭けて来た。
「(い、いきなり十枚!!? まさか私の数字って弱過ぎる!!?)」
「あぁ、そうそう言い忘れていたが……相手がレイズを宣言した後、危険を感じてドロップアウトで降りる事も出来るからな。もしそうした場合、参加費用のコイン一枚を相手に渡すんだ」
「(ここでルールの追加!!? やりたい放題ね!!)」
十枚賭けのレイズに突然のルール追加。真緒の心は乱れまくっていた。顔に出ないだけ奇跡と言えた。
「(どうする……ここは危険を避けてドロップアウトするべき? それともギャブラーのハッタリと割り切って勝負を仕掛けるか……いやでも……)」
降りるか勝負か、真緒が頭を悩ませていると一筋の光が差し込む。それは素朴な疑問だった。
「(……そう言えばギャブラーはどうして今更ルールの追加をしたんだろう? 私を動揺させてドロップアウトさせる為? いやもしかして……)」
「おい、いつまで待たせる気だ? 決めるのなら早く決めろ」
「……レイズ」
「!!?」
すると真緒は何とギャブラーと同じく、最大枚数である十枚を賭けて来た。
「さぁ、あなたの番ですよ。コールか、ドロップアウトか……」
「…………ちぃ、ドロップアウト」
ギャブラーは諦めた様にドロップアウトを宣言した。それにより第一ゲーム終了、額に当てている互いのカードが公開される。結果は……
ギャブラー……7
真緒……A
「これは……なかなかの策士ですね」
真緒の数字はA、序列の中では最も強い数字だった。つまりこの数字が出た時点でギャブラーに勝ち目は無かった。しかし敢えて強気な勝負に出る事で、真緒に弱い数字なのではという揺さぶりを仕掛けて来たのだ。
「あの追加ルールは私をドロップアウトさせる為だけじゃなく、自分が追い込まれた時の逃げ道として追加したんですね」
「ふん、ほらコイン一枚だ」
作戦が上手く行かなかった事に不機嫌になりながらも、ギャブラーは真緒にコインを一枚手渡した。
「いい気になるなよ、まだゲームは始まったばかりだ」
こうして静かに始まったゲームは、真緒がコイン一枚をリードした状態になるのであった。
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