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最終章 笑顔の絶えない世界

最後の希望

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 「…………は?」



 未だ舞い上がる土煙の中、エジタスの体に鋭い斬激が走った。エジタスの右腕とあばら骨数本が消し飛ばされた。



 「な、何だ……と……」



 「あ、当たった!?」



 何が起こったのか分からなかった。斬られたエジタスだけで無く、斬った本人であるサタニアでさえ、驚きの表情を浮かべていた。



 「…………っ!!」



 さすがに分が悪いと判断したエジタスは、一旦その場から離れた。



 「サタニア!!大丈夫!?」



 「マオ……う、うん……僕なら平気……」



 エジタスに、ダメージを与えられた事に対して呆気に取られていると、一部始終を目撃していた真緒がサタニアの側に駆け寄って来た。



 「そんな事より、いったいどうやってエジタスにダメージを与えたんだ!?」



 真緒に引き続き、他の者達もサタニアの側へと駆け寄って来た。そしてサタニアを取り囲む様に、どうやってエジタスにダメージを与えたのか問い掛ける。



 「……えっと……只、土煙が舞い上がって辺り一面何も見えなくなっちゃって……そうしたら突然、目の前に舞い上がっていた筈の土煙が、左右に切り裂かれたんだ。まるで、そこを何かが通り過ぎたかの様に……」



 「「「「「「「…………」」」」」」」



 「それで咄嗟に、持っていたティルスレイブで目の前の空を斬ったんだ……その結果、エジタスにダメージを与えられたんだと思う……」



 「それってつまり……土煙が師匠の居場所を特定させたという事……?」



 「そうなるね…………」



 偶然の産物。ドラゴンが倒れたお陰で、辺り一面に土煙が舞い上がった。そんな土煙が広がる中、エジタスがサタニアを殺そうと肉眼では捉えきれない速度で近づいて来た。しかしその結果、微粒子を含んだ空気の塊である土煙は、エジタスが通り過ぎる抵抗を受けて、切り裂かれる様に左右に不自然な形で広がってしまったのだ。



 「それが本当ならこの戦い、俺達にも勝機があるぞ!!」



 「ほほ。これもドラゴンが倒れてくれたお陰じゃな」



 「グォオオオオオ!!!」



 「まぁ、結果的に……だけどな」



 見え始める勝利への一筋。一同の諦めない想いが思いがけない奇跡を生んだ。







***







 「(そう言う事か……何となく想像は付いていたが……確信に変わった)」



 一方エジタスは、舞い上がる土煙から少し離れた場所で、消し飛ばされた右腕を再構築していた。



 「(全く……相変わらず間抜けな連中だ……あんな大声で種明かしするとは……お前達は戦いを甘く見過ぎているんだよ)」



 そう心の中で思いながら、再構築された右腕が正常に動くかどうか、何度も動かして確認する。



 「(さてと……取り敢えずまずは、目障りな土煙を吹き飛ばすとするか!!)」



 右腕の動作を確認し終わると、体を強く捻り左足を軸に、右足を大きく振り払った。



 「…………」



 右足を大きく振り払ったその瞬間、凄まじい風が巻き起こり、舞い上がっていた土煙を瞬く間に吹き飛ばした。



 「…………!?」



 両足に力を込め、再び肉眼では捉えきれない速度で攻撃を仕掛け様とする。しかし吹き飛ばされた土煙の中から突如、大量の水がエジタス目掛けて押し寄せて来た。



 「な、何だと!?」



 突如押し寄せる大量の水に、エジタスは咄嗟に空中へと跳び上がり回避した。



 「そう来ると読んでいたぜ!!」



 「!!?」



 空中へと跳び上がった途端、真後ろから声が聞こえて来た。慌てて後ろを振り返るとそこには既にシーラ、フォルス、そして鳥人族の族長とドラゴンが率いる鳥人族が待ち構えていた。



 「一斉射撃……開始!!」



 「「「うぉおおおおお!!!」」」



 フォルスの掛け声と共に、エジタス目掛けて一斉に降り注がれる矢の雨。



 「それが……どうした!!」



 エジタスは、自身に命中するであろう矢だけに限定して右手を振り払い、降り注がれる矢の雨を弾いた。



 「やはり空中だと、そこまで速くは動けないみたいだな!!スキル“スコールスピア”!!」



 「今度は“槍”か!?」



 矢を弾いた直後、シーラのスキル“スコールスピア”によって、エジタス目掛けて槍の雨が降り注がれる。



 「まだ俺には、左手も残っているんだよ!!」



 そう言いながらエジタスは、使っていない左手を振り払い、自身に命中するであろう槍だけに限定して、降り注がれる槍を弾いた。



 「ほほ。ならばドラゴンのブレスならどうかな?」



 「グォオオオオオ!!!」



 「!!?」



 降り注がれる矢と槍に対して、それぞれ右手と左手を用いて弾いた。しかしまたしてもその直後、今度は鳥人族の族長がエジタス目掛けてドラゴンのブレスを仕掛けて来た。



 「(くそっ!!防ぎ切れない!!)」



 既に両手を使ってしまい、ドラゴンのブレスを防ぐ手立てが無かった。



 「ぐっ……がはぁ!!!」



 「よし!!当たった!!もう一度、一斉射撃……開始だ!!」



 「こっちも行くぜ!!スキル“スコールスピア”!!」



 ドラゴンのブレス、降り注がれる矢と槍の雨。エジタスの骨を確実に削りながら、地上へと叩き落とす。



 「このまま押し切れ!!」



 「調子に乗るなよ……低俗な爬虫類と鳥頭の猛禽類が!!」



 地上に落下しながらエジタスは両足に力を込め地面に足が着いた瞬間、肉眼では捉えきれない速度でその場から離れる。



 「(地上に出ればこっちの物……串刺しにしてやる!!)」



 自身の右腕を鋭利な刃物に変形させて、地上から空中にいるフォルス達目掛けて串刺しにしようと狙いを定める。



 「“ウォーターキャノン”!!」



 「!!?」



 フォルス達を地上から串刺しにしようとしたその時、真横から巨大な水の塊がエジタス目掛けて飛んで来た。



 「……嘗めるな!!」



 そう言うとエジタスは、迫り来る巨大な水の塊に対して鋭利な刃物に変形させた右腕を勢い良く振り下ろし、真っ二つに両断した。両断された巨大な水の塊は、それぞれ左右の地面に着弾して染み込んだ。



 「スキアリデス!!センセイ!!」



 するとゴルガが隙を突き、エジタス目掛けて自身の巨大な拳を勢い良く突き出した。



 「不意打ちなら無言でやれ!!このデカブツ!!」



 「!!!」



 しかし、そんなゴルガの巨大な拳はエジタスの左手によって、容易く受け止められてしまった。



 「死ね」



 そう言いながらエジタスは、鋭利な刃物に変形させた右腕をゴルガ目掛けて突き刺そうとする。



 「“タイタルウェイブ”!!」



 「!!?」



 その瞬間、エジタスとゴルガ目掛けて巨大な津波が襲い掛かって来た。体重差からゴルガより軽いエジタスだけが、そのまま押し流されてしまった。



 「くそっ!!次から次へと……!!」



 巨大な津波に呑まれながら、ゴルガとの距離を離れて行くエジタス。



 「ご無事ですか!?」



 「オマエハ……」



 重たい体重から、押し流されずに済んだゴルガの元に人魚の女王が駆け寄って来た。



 「スマン……タスカッタ……」



 「お怪我が無くて何よりです」



 「オマエガ、ココニイルトイウコトハ、サクセンハウマクイッテイルノダナ……」



 目立った怪我は無いと、安堵する人魚の女王はゴルガの問い掛けに真剣な表情を浮かべた。



 「はい……私達に出来るのはここまで……後は“あの方々”に全てを託す他ありません……」



 「ヤッテクレル……カナラズ……」



 ゴルガと人魚の女王は、残りの者達に想いを託すのであった。







***







 「鬱陶しい!!!」



 人魚の女王が放った巨大な津波に、押し流されるエジタスは、両腕を大きく振り上げると自身の体を押し流す津波目掛けて勢い良く振り下ろした。



 「はぁ……はぁ……」



 強い衝撃から水飛沫が舞い上がり、押し流していた津波が雨の様に降り注ぐ。そんな水飛沫に体を濡らしながら、エジタスは息を荒くしていた。



 「往生際の悪い奴らだ……何故……幸せを……平和を望まないんだ……」



 「それはあんたが、本当に“笑顔の絶えない世界”を望んでいないからじゃないか?」



 「!!?」



 真後ろから声が聞こえる。慌てて振り返るとそこには、白い肌をしたスゥーが立っていた。



 「これはこれは……ずっと穴蔵で生活して、太陽を拝まないスゥーさんじゃありませんか?」



 「その憎たらしい口調……相変わらずの様だね」



 エジタスに憎まれ口を叩かれながらも、冷静な態度を取るスゥー。



 「奪われた“炎の王冠”を取り戻しに来たのか?……残念だったな!!炎の王冠はもう、この世界の何処にも存在しない!!」



 「あぁ、さっきマオ達から聞いたよ……本当に残念でならない……正直、今すぐにあんたの首を締め上げてやりたいよ…………でも、あんたの今の姿を見て考えを改めた……あんたは可哀想な男だよ……」



 「……何だと」



 スゥーの言葉に対して、エジタスは並々ならぬ怒りの感情が湧き上がった。鋭い眼光で、スゥーを睨み付ける。



 「今まであんたは散々、この世界を笑顔の絶えない世界にすると言って来たらしいけど……あんたは本当にそれを望んでいるのか?」



 「どう言う意味だ…………」



 「あんたの言う通り、この世界は虐めや差別や戦争が渦巻いている……その為に、この世界を笑顔の絶えない世界にしたいというのも分かる……だが、それはあんたが望んでいるというより世界全体が望んでいる事の様にも捉えられる……」



 「つまり……何が言いたい……」



 スゥーの考察に、エジタスは歯切れの悪い問い返しをした。



 「つまり……あんた自身は本当に“笑顔の絶えない世界”を望んでいるのか?」



 「!!!」



 それは明確的な驚きであった。図星だったのか、スゥーの問い掛けに対して何も言う事が出来ないエジタス。



 「あんたが本当に望んでいる物が何なのか……私には分からない……今の私に出きるのは、あんたを止める事だけさ……“アイスボール”!!」



 「…………っ!!!」



 スゥーは言うだけ言うと、右手を突き出して氷の玉を生成した。そしてエジタス目掛けて勢い良く発射した。



 「甘いわ!!」



 「…………」



 迫り来る氷の玉に対して、エジタスは回し蹴りで粉々に叩き壊して見せた。



 「デタラメな言葉で、俺の事を混乱させるつもりだった様だが、そんなメチャクチャな作戦は効かないぞ!!」



 「メチャクチャ……ね……そう思いたいならそう思いなさい……少なくとも、あんたを止めるのは本気よ!!」



 そう言いながらスゥーは、両手をエジタスに向けて突き出した。



 「この俺を凍らせるつもりか?……無駄だ!!この体になってもシバリングは使える。例え凍らされても、すぐに溶かす事が出来るんだよ!!」



 「そんなの予想済みよ……私が凍らせるのはあんたじゃない……“アイスフロント”!!」



 「!!!」



 その瞬間、エジタスの立っている地面が凍り付いた。そして急速に周りの地面も凍り始めた。



 「ば、馬鹿な……いくら氷魔法が強力だとしても……こんなにも速く凍り付く筈がない……近くに水が無い限り……!!?」



 「気が付いた?さっきのリーマが放った“ウォーターキャノン”や、人魚の女王が放った“タイタルウェイブ”はあんたでは無く、正確にはあんたの立っている地面を狙っていたのさ……私の氷魔法が効率良く発動する様に……」



 「……こんな……こんな事が……」



 エジタスは、慌ててその場から離れ様とするが、両足が滑ってしまい上手く歩く事が出来なかった。



 「諦めな!!いくら動きが速いと言っても、足元が悪い環境では正常に動く事は出来ない!!」



 肉眼では捉えきれない速度で動くからこそ、下手に動く事が出来ない。少しでも動けば高速な摩擦で、両足を滑らせて転んでしまう。そうなれば回避不可能なのは確実である。



 「それがどうした!!こんな氷、すぐに叩き割れば済む話だ!!」



 「その行動を、この“二人”が素直に見逃してくれたらだけどね」



 「な、何!?」



 スゥーの左右を勢い良く通り過ぎる二つの影。二つの影は、足元が滑らない様に空を飛びながらエジタスの元へと近づいて来た。



 「師匠!!」



 「エジタス!!」



 「!!!」



 真緒とサタニア。まともに動けないエジタス目掛けてそれぞれ、純白の剣とティルスレイブを構える。



 「スキル“ロストブレイク”!!」



 「スキル“ブラックアウト”!!」



 「がはっ!!!」



 真緒のスキルとサタニアのスキル。二つの強力なスキルが、エジタスの体に叩き込まれるのであった。







***







 「はぁ……はぁ……はぁ……」



 息を荒くして片膝を付くエジタス。全身の骨にはヒビが入っており、最早動ける状態では無かった。そんなエジタスの目の前に真緒達、サタニア達が立っていた。



 「師匠…………」



 「まだ……だ……まだ俺は負けていない……俺は……俺はこの世界を……この世界を笑顔の絶えない世界にするんだ……こんな……こんな奴らに負ける筈が無いんだ……」



 「エジタス…………」



 弱々しく話すエジタスに、一同は哀れみの眼差しを向ける。既に勝敗は決していた。



 「エジタス……もう終わりにしよう……エジタスは充分頑張ったよ……」



 「サタニアの言う通り、師匠はこの世界の為に……色んな物を犠牲にして頑張って来ました……ですが、師匠のやり方では本当の幸せは得られません……」



 「…………」



 真緒とサタニアの二人が、エジタスの側へと歩み寄り優しく語り掛ける。



 「勿論、本当の幸せが何なのか……私達はその答えを持ち合わせてはいません……ですが、一緒に探し求める事は出来ます」



 「エジタス……エジタスさえ良ければ、僕達と一緒に……この世界にとっての本当の幸せは何なのか……探し求めない?」



 「…………」



 片膝を付くエジタスに対して、真緒とサタニアはそれぞれ手を差し伸べる。



 「ですがその前に、皆さんに謝りましょう……そうする事で初めて、心の内を打ち明けられる物です……大丈夫、私も一緒に謝ります……師匠が謝るのに、弟子の私が謝らないのは可笑しいですからね」



 「それなら僕も一緒に謝るよ。エジタスは四天王であり、魔王である僕の配下だからね。エジタスの為ならその位簡単さ」



 「…………」



 新たなスタート。真緒とサタニアは、エジタスと供に新たな一歩を踏み出す覚悟であった。腹の内を見せ合った今だからこそ、お互いの事を心から信頼出来る。



 「師匠…………」



 「エジタス…………」



 「…………」



 差し伸べられた二人の手が、今まさにエジタスの両手を握ろうとした。しかし……………。



 「ふざけるな」



 「「!!?」」



 エジタスは、二人の手をそれぞれ右手で弾き返した。



 「“一緒に謝ろう”……だと?それはつまりあれか……俺の二千年間行って来た事は……“間違い”だったと言いたいのか……ふざけるな……ふざけるな!!!」



 「し、師匠……」



 「エジタス……ご、誤解……!!?」



 そんな事は全く思っていない。誤解である事を説明しようとしたその時、赤黒い物体が真緒とサタニアの間を通り過ぎ、エジタスに癒着した。



 「こ、これは!!?」



 それは、エジタスが削ぎ落とした肉片だった。まるで生き物の様に蠢き、エジタスの体全体を覆い尽くす。



 「……やはり……元の体の方が動きやすくて良いな……」



 そこに立っていたのは、全身骨の姿では無く、元の化け物としての姿が立っていた。元に戻ったエジタスは、ゆっくりと立ち上がる。それにより、全員が一歩後ろへと下がった。



 「さてと……最早考えている余裕は無い……正直な話……もう体は限界に来ている……このままでは本当に敗北してしまう……だが、それもここまでだ」



 するとエジタスは、両足に力を込めて真緒達、サタニア達が豆粒程になるまで高く飛び上がった。



 「“これ”を使うのは少々抵抗があるが……もうどうでもいい……あいつらを殺せれば後はどうにでもなる……“強制細胞分裂”」



 その瞬間、地上にいる一同は目を疑った。空中に飛び上がったエジタスの体が、徐々に大きくなり始めたのだ。それも世界中の肉片をかき集めた時のとは、比べ物にならない程の大きさ。空一面がエジタスの体で覆い隠されてしまった。



 「(自信の細胞を強制的に分裂させ……肉体的な大きさの許容量を消滅させる……そうする事で実質無限に巨大化する事が出来る……しかし、無理矢理細胞を分裂させている為、全身には多大な負荷が掛かる。更に元に戻る時には、何かしらの後遺症が残ってしまう……まさに……“禁じ手”という名に相応しい)」



 するとエジタスは、空一面を覆い尽くす程の大きさになると、体全体をボールの様に変形させてゆっくりと地上目掛けて落下し始めた。



 「(言わば、超巨大な隕石……破壊不可能……地上に落下すれば……地上に済む全ての生き物は死に絶えるであろう!!!)」



 落下し始めたエジタスの体は、重力に従って次第にその速度を高めて行く。風を切る音が世界中に響き渡る。



 「おいおい!!こんなの有りかよ!!?」



 「も、もうおしまいだわ!!私達は皆、ここで死ぬ運命なんだわ!!」



 「嫌だ!!まだ死にたくねぇよ!!」



 その時地上では、落下して来る超巨大なエジタスに対して真緒達、サタニア達、ジェド達は落下して来るエジタスを見上げる中、ジェド海賊団の船員達や鳥人達や人魚達は、絶望した表情を浮かべながらパニックになっていた。



 「逃げましょう!!」



 「何処に逃げるって言うんだよ!!あんな超巨大な落下物、逃げたって衝撃波で死ぬのがオチだろ!?」



 「そうだよ!!もっと考えてから物を話せ!!この馬鹿!!」



 「な、何よ!!あんた達みたいな頭の悪そうな連中には言われたく無いわよ!!」



 「そうよ!!そうよ!!」



 「何だと!!!」



 「何よ!!!」



 「お前達、いい加減にしろ!!」



 「「「「「「!!!」」」」」」



 一触即発の雰囲気の中、ジェドが怒鳴り声を上げて事態を鎮圧させた。



 「今は言い争っている場合じゃないだろう!!生き残りたければ、あの超巨大な落下物をどう対処するか一緒に考えろ!!」



 「「「「「「…………」」」」」」



 ジェドの怒鳴り声で、一斉に黙り込む。そして一緒になって落下して来るエジタスを見つめて、その対処を考え込む。



 「……とは言った物の……実際の所……どうしようも無くないか……これは……」



 「あの大きさ……並大抵のスキルや魔法では……太刀打ち出来ないでしょうね……」



 「ほほ。それにあの高さ……ワシら鳥人族やドラゴンの翼を持ってしても……近づけないぞ……」



 「例え近づいたとしても、その時には落下の衝撃と速度で攻撃を与える事すら出来なくなっているだろうね……」



 「私の氷魔法でも……受け止めるのは難しいわね…………」



 万事休す。最早打つ手は残されていない。漸く収めた筈の勝利は、呆気なく終わりを迎えてしまった。ジェド達は、諦める様に見上げていた首を、静かに下ろし始める。



 「まだ……終わっていません……」



 「「「「「えっ……?」」」」」



 真緒の小さな一言に、ジェド達は下ろし始めていた首を上げ、真緒に目線を向ける。そんなジェド達と目線を合わせる様に、真緒は見上げていた首を下ろす。



 「私達にはまだ……最後の希望が残っています」
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