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第九章 冒険編 雲の木の待ち人

立ち向かう勇気

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 「“虚空”!!」



 クラウドツリーから飛び降りた真緒は、“虚空”の力を発動させて浮遊した。



 「…………どうしよう……」



 勢いに任せて飛び降りたは良いものの、具体的な策は何も思い付いていなかった。



 「今さら皆の所に戻る事なんて出来ないし…………どうしたら……」



 真緒が腕組みしながら考えているその時だった。真緒の真横を、二つの影が勢い良く落下する。



 「えっ!?今のって…………?」



 「うわぁあああ!!!」



 「きゃあああ!!!」



 「ハナちゃん!?リーマ!?」



 真緒が落下する二つの影を確認すると、それは真緒に続いて飛び降りたハナコとリーマだった。



 「マオ!!」



 真上から声が聞こえる。真緒が見上げるとそこには、翼を広げて浮遊するフォルスがいた。



 「フォルスさん!!これはどういう事なんですか!?」



 「話は後だ!今はとにかく、ハナコとリーマを助けるんだ!!」



 「はい!!」



 唯一飛ぶ事の出来る真緒とフォルスは、落下しているハナコとリーマの元に急いで近寄る。



 「ごごが雲の上だっだ事、ずっがり忘れでいだだぁ!!」



 「こ、このままだと地面に激突して死んでしまいます!!」



 最悪の結末を想像してしまった二人は、激突だけは避けようと必死に手足を動かす。



 「リーマ!落ち着いて!!」



 「うんん!…………えっ……マ、マオさん!?」



 必死に手足を動かしていたリーマだったが、いつの間にか真緒の両手が両脇から入り受け止められていた。



 「もう大丈夫だからね」



 「あ、ありがとうございます」



 「ぐぉおおおおお!!!」



 「「あっ…………」」



 助かった事に真緒とリーマが喜んでいると、隣から悲鳴の様な叫び声が聞こえる。声のした方向に顔を向けると、そこには鉤爪でハナコを受け止め、死にもの狂いで翼をばたつかせるフォルスがいた。



 「フォルスざん、ありがどうございまず」



 「ぐぉおおおおお!!!」



 ハナコの言葉は、フォルスの耳には届いていなかった。それもその筈、約120kgもあるハナコをフォルス一人だけで持ち堪えているとなると、その辛さは想像絶する。



 「い、急いで地上に降りましょう!」



 「そ、そうだね!!」



 フォルスが限界を迎える前に、真緒達は急いで地上へと降りる事にした。







***







 「ぜぇー、はぁー、ぜぇー、はぁー、ぜぇー、はぁー…………」



 今まで見た事が無い程に、息切れを起こしているフォルス。



 「フォルスざん、大丈夫だがぁ?申じ訳無いだぁ……オラのぜいで余計な体力を使わぜでじまっで……」



 「い、いや……お前が気にする事じゃ無い……俺の力不足も原因だからな……」



 罪悪感を感じているハナコに、フォルスは気遣いの言葉を掛ける。



 「それにしても……皆どうしてこっちに来たの?」



 真緒はフォルス、ハナコ、リーマの三人が何故一緒に飛び降りて来たのか疑問に感じていた。



 「何言っているんだ、一緒に魔食と戦う為に決まっているだろ?」



 「えっ!?」



 「マオぢゃん、水臭いだよぉ……オラ達だっで諦めだぐは無いんだぁ」



 「死ぬ時は一緒ですからね」



 「皆……ありがとう……」



 仲間達の言葉が心の奥深くに染み渡り、真緒は仲間の素晴らしさを噛み締めた。



 「さて……村人の避難は、エジタスさん達がやってくれるから安心だが……」



 「あんな巨大な生き物をどうやって倒すつもりなんですか?」



 「実は……何も考えていない……」



 クラウドツリーから降り立つ事には成功したが、これといった作戦は思い付いていなかった。



 「はぁー、マオさんらしいと言えばらしいですけど……」



 「もう少し考えてから、行動してもいいんじゃないか?」



 「はい…………」



 もはや、仲間達から当たり前の事として認識されていた。



 「取りあえず、近くまで行きましょう!」



 「「「了解!!」」」



 そうして真緒達は、魔食に駆け寄るのであった。







***







 「お……お、大きい…………」



 村の外。魔食の側まで近寄った真緒達は、その予想以上の大きさに驚愕していた。



 「これが……魔食…………」



 クラウドツリーからでは上半身しか見れなかった為、地上から改めて確認する。足の大きさはクラウドツリーの幹と同じ位あり、このまま歩いて行けば確実に村は踏み潰される事が分かった。



 「私達は……勝てるのでしょうか……?」



 「勝てる勝てないじゃない……勝たなきゃ駄目なんだ……この巨大な生き物に今立ち向かえるのは、俺達しかいないんだからな…………」



 絶対負けられない戦い。目の前にいる巨大な生き物に対して真緒達は、勇気を持って立ち向かうしか無い。



 「そうだね…………行こう!!魔食を倒して村を救うんだ!!」



 「「「おお!!!」」」



 真緒達は、圧倒的存在に果敢に立ち向かうのであった。







***







 「もうおしまいだー!!」



 「みんな死ぬのよー!!」



 真緒達が魔食に立ち向かっている中、村ではパニックが起こっていた。突如現れた巨大な生き物に、村人は慌てふためく。



 「落ち着いて!!慌てず騒がず避難して下さい!!」



 「押さない、駆けない、喋らない。皆さん慎重に行動しましょう~」



 エジタスとアーメイデが、避難を必死に呼び掛けるが村人は中々落ち着きを取り戻さない。



 「う~ん、避難が滞っていますね~?」



 「仕方ないわよ……あんな巨大な生き物が現れたら、慌てない方がおかしいもの…………」



 結局アーメイデは、真緒達を追い掛けずにエジタスと一緒に避難を呼び掛けていた。



 「やっぱり……エピロも呼んだ方が効率的だったんじゃないの……?」



 「何言っているんですか~。エピロさんには、戻って来たマオさん達の為にご馳走を作って待って頂くという、大切な役目があるのですよ」



 避難誘導に不安を感じたアーメイデは、エピロも呼ぼうとするがエジタスに引き止められた。



 「…………あなたはマオ達が戻って来ると思っているの?」



 「勿論です!私はマオさんの師匠ですからね~。弟子を信じるのは当たり前の事です」



 エジタスの自信溢れる発言に、アーメイデは微笑んだ。



 「何か……あんた変わったわね……」



 「そうですか~?」



 「昔のあんたは、もっと冷たい感じだったけど……今はこうやって村人を避難させたり、仲間の帰りを信じて待っているんだから……」



 「…………私は何も変わっていませんよ……」



 「そうかい…………さぁ!マオ達が頑張っている間に、私達も出来る限りの事を済ませるとするかね!!」



 そう言いながら、アーメイデは村人の避難を呼び掛ける。



 「…………ずっと……ずっと……変わっていませんよ……」



 このエジタスの呟きは、避難を呼び掛けるアーメイデの耳には届かなかった。
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