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第八章 冒険編 狂乱の王子ヴァルベルト
深い深い霧の中
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「うわぁー、濃い霧だなぁ……」
真緒達は現在、“ピースマーシュ”の入口に来ていた。目線の先には沼全体を包み込む程の濃い霧が立ち込めていた。そのあまりの濃さに先の方が全く見えなかった。
「ここが“ピースマーシュ”ですか……」
「スゥーさん達には大丈夫って言いましたけど、いざ目の前にすると少しだけ怖く感じますね……」
「今さらぐだくだ言っても始まらないだろ、覚悟を決めるしか無い」
「そうですよね……よし、行きましょう!!」
フォルスの言葉に励まされ、真緒達は覚悟を決めて深い霧の中へと足を踏み入れた。
***
「それにしても、本当に何も見えませんね……」
「ああ、ちゃんと真っ直ぐ歩けているのかさえ分からないな」
しばらく霧の中を歩いていた真緒達だったが、周りが見えない為方向感覚がおかしくなり始めていた。
「どわぁああ!!」
「ハナちゃんどうしたの!?」
突如、ハナコの悲鳴が聞こえ急いで振り返るもハナコの姿は見当たらなかった。
「ハナちゃん、何処なの!?」
「ハナコさん!?」
「ハナコ、何処にいるんだ!?」
「ハナコさ~ん、何処にいるんですか~?」
「ご、ごごだよー…………」
声のする方向を見ると、近くの沼に落っこちていた。
「ハナちゃん!今、引っ張り上げるからね!!」
徐々に沈んでいくハナコを、真緒達全員で沼から出ている両腕を掴み、引き上げた。
「あ、ありがどう……」
「間に合って良かったよ……」
「でも、このまま闇雲に進むのは危険じゃありませんか?」
リーマの言う通り、何の策も無しに進めばハナコの様に沼に落ちてしまうのは明白だった。
「と言ってもな……」
「…………あ、そうだ!!」
「何か思い付きましたか?」
「いや、実はあの鑑定した時に新しい光魔法を覚えていたので、もしかしたらそれに突破口があるかもしれないと思って…………スキル“鑑定”」
一筋の希望を託して、真緒は新しく覚えた光魔法の内容を確かめた。
光魔法
ライト ホワイトボディ クリアアイ
クリアアイ
目の中を光魔法で浄化し、全ての物を見透かす。視界を遮る物や隠された真実を見抜く事が出来る。
「これは、使えるかもしれませんよ!」
「本当か!?」
「さすが、マオさん!」
「早速使うよ、目に光魔法を集中させて…………“クリアアイ”!」
すると真緒の目が透き通り始め、まるでガラス玉の様な輝きを放った。
「お、おお!!これは……!」
「マオさんの目が光輝いています……」
「綺麗だなぁ……」
「美しいですね~」
「ちょっ、ちょっと皆、そんなに見つめられると恥ずかしいよ…… 」
真緒は透き通った目をじっと見つめられ、恥ずかしさで頬を赤く染める。
「それで……どうなんだ?何か見えるのか?」
「そうですね…… 」
真緒が辺りを見回すと、さっきまでの濃い霧が嘘の様に晴れており、奥の奥まで見えていた。
「見えます!くっきりはっきりと全てが見えますよ!!」
「それは凄いな!!」
「これでもう、沼に落ちる心配は無さそうですね」
「それを聞いてホッとしただぁ……」
「それじゃあ皆、離れず後ろから付いて来てね」
真緒のクリアアイのお陰で、迷う事無く真っ直ぐ進める様になった。そして、それからしばらく歩き続けた。
「…………今日はここで野宿しようか」
「やったー!漸く休む事が出来ます!」
「結構歩いて来たからな」
「もう、足がパンパンだよぉ……」
「周りは何も見えませんが、取り敢えず焚き火だけでも付けときましょうか~」
そう言うとエジタスは、鞄から事前に用意していた薪を取り出して火を起こした。
「あー、暖かい…………ふぁああ、何だか眠くなって来ちゃった……」
「おそらく光魔法を目にずっと集中させていたから、疲労が溜まってしまったのでしょう。今日はもう遅いですし、眠って明日から頑張るとしましょう」
「そうですね……じゃあ、悪いですけど先に寝させて貰います……」
余程疲れていたのか、横になるとすぐに眠りについてしまった。
「私も寝させて貰います」
「おやすみなさ~い」
「…………」
「…………」
続けてリーマとエジタスが眠ったが、フォルスとハナコの二人は眠らず、お互いそれぞれ別の場所へと歩き出した。
「この辺でいいか……」
「ごの辺でいいだがなぁ……」
それぞれ違う二ヶ所で、立ち止まった。
「空を飛べる様になり、三連弓という強力な弓も手に入れたのにも関わらず、この前の戦いでは真緒達を助ける事が出来なかった…………」
「皆、確実に強ぐなっで行っでいるのに……オラだけ中途半端なままだぁ……」
自身の伸び代に不安を抱き、仲間達の為に何をすべきなのか頭を悩ませていた。
「だが、俺は俺にしか出来ない事をするだけだ!それに……今考えている技を完成させられれば、大きな成長に繋がる筈だ!さぁ、今日も秘密の特訓を開始するぞ!!」
そう言うとフォルスは、空高く舞い上がり地面に向かって弓を構えた。
「“ウィンド”!!」
風魔法を唱えて何かをしようとするが、バランスを保てず地上へと落下する。
「くそっ!!また失敗か……俺は諦めないぞ。何度だって挑戦してやる…………待ってろよマオ!!すぐにお前に追い付いてやるからな!」
真緒の事を思い浮かべながら、特訓を続けるフォルスであった。
「スキル“熊の一撃”!!」
一方ハナコは、唯一のスキルである“熊の一撃”を連発していた。
「“熊の一撃”“熊の一撃”“熊の一撃”!!……はぁ、はぁ、はぁ…………」
スキルの連発に疲労を感じ、息切れするハナコは仰向けに倒れた。
「オラには、ごのスキルじが無い…………でも、それもあの氷像にはびぐどもじでいながった……」
ハナコは、氷像の時の事を思い出していた。
「皆、成長じでいるのに……オラだけ何も変わっでいないだぁ……マオぢゃん達の足手まどいになっでるだよなぁ……」
仲間の為に貢献出来ていない事に落ち込んでしまうハナコ。
「はぁー、オラこのパーティーに必要ざれでいるのがなぁ……」
どんどん悲観的な考えに落ちてしまうハナコだった。
***
「うーん、おはよう!皆いる?」
朝、朝と言っても周りは霧に囲まれ光も届かない為、今が朝なのか夜なのかも分からない。真緒の加減で朝と決め、仲間達がいるかどうか点呼を取る。
「いますよ」
「ああ、いるぞ」
「いるだよぉ……」
「勿論、私もいますよ~」
「よかった。皆いるみたいだね、早速出発しよう!」
皆の声を確認した真緒は、再びクリアアイを発動させながら濃い霧の中を歩いて行く。
「そう言えば思ったんですけど、四天王ってどれだけ強いんですか?」
「おいマオ…………お前、本気で言っているのか?」
「それは、さすがに無いですよ……」
「無知は恐ろじいだなぁ……」
四天王の強さを尋ねた真緒は、仲間達から驚きの声を上げられた。
「四天王は、各国を揺るがす程の強さを持っていると言われています。特に、狂乱の王子ヴァルベルトは五百人あまりの王国兵士をたった一人で全滅させたと言われる実力者です」
「へ、へぇー……そ、それは凄いね…………」
途方も無い数字に、気が遠くなりそうになった真緒。
「もし、出会う事があるなら、なるべく戦闘は避けたいですね」
「全くだ……」
「…………」
「どうじだだぁ、マオぢゃん?」
歩いていた一行だが、先頭の真緒が立ち止まった。
「もう……手遅れかもしれない……」
「「「「えっ?」」」」
真緒が指差す方向に目を凝らすと、濃い霧の中から巨大な城が目の前に現れた。
「ま、まさかここが……」
城は魔王城よりは禍々しくは無いが、魔王城には無い不気味さが漂っていた。恐ろしい程の静けさと、霧から突然現れたのがより不気味さを際立たせていた。
「ヴァルベルトの城…………」
真緒達は既に引き返せない所まで進んでしまっていた。
真緒達は現在、“ピースマーシュ”の入口に来ていた。目線の先には沼全体を包み込む程の濃い霧が立ち込めていた。そのあまりの濃さに先の方が全く見えなかった。
「ここが“ピースマーシュ”ですか……」
「スゥーさん達には大丈夫って言いましたけど、いざ目の前にすると少しだけ怖く感じますね……」
「今さらぐだくだ言っても始まらないだろ、覚悟を決めるしか無い」
「そうですよね……よし、行きましょう!!」
フォルスの言葉に励まされ、真緒達は覚悟を決めて深い霧の中へと足を踏み入れた。
***
「それにしても、本当に何も見えませんね……」
「ああ、ちゃんと真っ直ぐ歩けているのかさえ分からないな」
しばらく霧の中を歩いていた真緒達だったが、周りが見えない為方向感覚がおかしくなり始めていた。
「どわぁああ!!」
「ハナちゃんどうしたの!?」
突如、ハナコの悲鳴が聞こえ急いで振り返るもハナコの姿は見当たらなかった。
「ハナちゃん、何処なの!?」
「ハナコさん!?」
「ハナコ、何処にいるんだ!?」
「ハナコさ~ん、何処にいるんですか~?」
「ご、ごごだよー…………」
声のする方向を見ると、近くの沼に落っこちていた。
「ハナちゃん!今、引っ張り上げるからね!!」
徐々に沈んでいくハナコを、真緒達全員で沼から出ている両腕を掴み、引き上げた。
「あ、ありがどう……」
「間に合って良かったよ……」
「でも、このまま闇雲に進むのは危険じゃありませんか?」
リーマの言う通り、何の策も無しに進めばハナコの様に沼に落ちてしまうのは明白だった。
「と言ってもな……」
「…………あ、そうだ!!」
「何か思い付きましたか?」
「いや、実はあの鑑定した時に新しい光魔法を覚えていたので、もしかしたらそれに突破口があるかもしれないと思って…………スキル“鑑定”」
一筋の希望を託して、真緒は新しく覚えた光魔法の内容を確かめた。
光魔法
ライト ホワイトボディ クリアアイ
クリアアイ
目の中を光魔法で浄化し、全ての物を見透かす。視界を遮る物や隠された真実を見抜く事が出来る。
「これは、使えるかもしれませんよ!」
「本当か!?」
「さすが、マオさん!」
「早速使うよ、目に光魔法を集中させて…………“クリアアイ”!」
すると真緒の目が透き通り始め、まるでガラス玉の様な輝きを放った。
「お、おお!!これは……!」
「マオさんの目が光輝いています……」
「綺麗だなぁ……」
「美しいですね~」
「ちょっ、ちょっと皆、そんなに見つめられると恥ずかしいよ…… 」
真緒は透き通った目をじっと見つめられ、恥ずかしさで頬を赤く染める。
「それで……どうなんだ?何か見えるのか?」
「そうですね…… 」
真緒が辺りを見回すと、さっきまでの濃い霧が嘘の様に晴れており、奥の奥まで見えていた。
「見えます!くっきりはっきりと全てが見えますよ!!」
「それは凄いな!!」
「これでもう、沼に落ちる心配は無さそうですね」
「それを聞いてホッとしただぁ……」
「それじゃあ皆、離れず後ろから付いて来てね」
真緒のクリアアイのお陰で、迷う事無く真っ直ぐ進める様になった。そして、それからしばらく歩き続けた。
「…………今日はここで野宿しようか」
「やったー!漸く休む事が出来ます!」
「結構歩いて来たからな」
「もう、足がパンパンだよぉ……」
「周りは何も見えませんが、取り敢えず焚き火だけでも付けときましょうか~」
そう言うとエジタスは、鞄から事前に用意していた薪を取り出して火を起こした。
「あー、暖かい…………ふぁああ、何だか眠くなって来ちゃった……」
「おそらく光魔法を目にずっと集中させていたから、疲労が溜まってしまったのでしょう。今日はもう遅いですし、眠って明日から頑張るとしましょう」
「そうですね……じゃあ、悪いですけど先に寝させて貰います……」
余程疲れていたのか、横になるとすぐに眠りについてしまった。
「私も寝させて貰います」
「おやすみなさ~い」
「…………」
「…………」
続けてリーマとエジタスが眠ったが、フォルスとハナコの二人は眠らず、お互いそれぞれ別の場所へと歩き出した。
「この辺でいいか……」
「ごの辺でいいだがなぁ……」
それぞれ違う二ヶ所で、立ち止まった。
「空を飛べる様になり、三連弓という強力な弓も手に入れたのにも関わらず、この前の戦いでは真緒達を助ける事が出来なかった…………」
「皆、確実に強ぐなっで行っでいるのに……オラだけ中途半端なままだぁ……」
自身の伸び代に不安を抱き、仲間達の為に何をすべきなのか頭を悩ませていた。
「だが、俺は俺にしか出来ない事をするだけだ!それに……今考えている技を完成させられれば、大きな成長に繋がる筈だ!さぁ、今日も秘密の特訓を開始するぞ!!」
そう言うとフォルスは、空高く舞い上がり地面に向かって弓を構えた。
「“ウィンド”!!」
風魔法を唱えて何かをしようとするが、バランスを保てず地上へと落下する。
「くそっ!!また失敗か……俺は諦めないぞ。何度だって挑戦してやる…………待ってろよマオ!!すぐにお前に追い付いてやるからな!」
真緒の事を思い浮かべながら、特訓を続けるフォルスであった。
「スキル“熊の一撃”!!」
一方ハナコは、唯一のスキルである“熊の一撃”を連発していた。
「“熊の一撃”“熊の一撃”“熊の一撃”!!……はぁ、はぁ、はぁ…………」
スキルの連発に疲労を感じ、息切れするハナコは仰向けに倒れた。
「オラには、ごのスキルじが無い…………でも、それもあの氷像にはびぐどもじでいながった……」
ハナコは、氷像の時の事を思い出していた。
「皆、成長じでいるのに……オラだけ何も変わっでいないだぁ……マオぢゃん達の足手まどいになっでるだよなぁ……」
仲間の為に貢献出来ていない事に落ち込んでしまうハナコ。
「はぁー、オラこのパーティーに必要ざれでいるのがなぁ……」
どんどん悲観的な考えに落ちてしまうハナコだった。
***
「うーん、おはよう!皆いる?」
朝、朝と言っても周りは霧に囲まれ光も届かない為、今が朝なのか夜なのかも分からない。真緒の加減で朝と決め、仲間達がいるかどうか点呼を取る。
「いますよ」
「ああ、いるぞ」
「いるだよぉ……」
「勿論、私もいますよ~」
「よかった。皆いるみたいだね、早速出発しよう!」
皆の声を確認した真緒は、再びクリアアイを発動させながら濃い霧の中を歩いて行く。
「そう言えば思ったんですけど、四天王ってどれだけ強いんですか?」
「おいマオ…………お前、本気で言っているのか?」
「それは、さすがに無いですよ……」
「無知は恐ろじいだなぁ……」
四天王の強さを尋ねた真緒は、仲間達から驚きの声を上げられた。
「四天王は、各国を揺るがす程の強さを持っていると言われています。特に、狂乱の王子ヴァルベルトは五百人あまりの王国兵士をたった一人で全滅させたと言われる実力者です」
「へ、へぇー……そ、それは凄いね…………」
途方も無い数字に、気が遠くなりそうになった真緒。
「もし、出会う事があるなら、なるべく戦闘は避けたいですね」
「全くだ……」
「…………」
「どうじだだぁ、マオぢゃん?」
歩いていた一行だが、先頭の真緒が立ち止まった。
「もう……手遅れかもしれない……」
「「「「えっ?」」」」
真緒が指差す方向に目を凝らすと、濃い霧の中から巨大な城が目の前に現れた。
「ま、まさかここが……」
城は魔王城よりは禍々しくは無いが、魔王城には無い不気味さが漂っていた。恐ろしい程の静けさと、霧から突然現れたのがより不気味さを際立たせていた。
「ヴァルベルトの城…………」
真緒達は既に引き返せない所まで進んでしまっていた。
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