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第三章 冒険編 オオラカ村の笑わない少女

真緒パーティー VS ゴブリン軍団(前編)

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 「……って言ったはいいけど、何処にいるのか知らない」



 真緒達はあの憎きハイゴブリンから、アメリアの大切な七色に輝く玉を取り返すべく、村を勢いよく飛び出したのだった。しかし、肝心のハイゴブリンの居場所を知らなかった。



 「戻っで、村の人達がら聞いでみるがぁ?」



 「あんな自信満々で取り返すって、言ったのにですか?」



「四の五の言ってても仕方ないだろ、どうやってあのゴブリンを、見つけ出すか考えるんだ」



 「ん~、そうですね~」



 各々が頭を捻り、考え始める。



 「……そうだ!こういうのはどうでしょう?」



 「どういうのだ?」



 真緒は閃いた自身の考えを皆に伝える。







***







 「グギャア!!」



 真緒達は今現在、数匹のゴブリン達と戦闘している。



 「はぁ!」



 真緒がゴブリンを斬り倒し、残るは最後の一匹になった。



 「ギィィ……」



 ゴブリンが真緒達の予想以上の強さに、狼狽えていると……。



 「ふぅ、さて残るはあなただけですね。ですが、あなたは殺さないであげましょう」



 「?」



 「意味が分かりませんか?あなたには、伝達役になってほしいのですよ。あなたのボスに伝えなさい!私達はゴブリンを全滅させる者だと!!」



 「……ギィ!」



 生き残りのゴブリンは一目散に逃げていった。



 「行ったな……」



 「それじゃあ、追いかけましょうか」



 そう言うと、真緒達は逃げ出したゴブリンに、気づかれない程度の距離を保ちつつ、追いかけ始めた。



 「じがじ、よぐ思いづいだだね」



 「敵のゴブリンを一匹だけ生かして、アジトの案内役にさせてしまうんですから」



 「頭が良いな」



 「感心しましたよ~」



 「えへへ、そんな大したことではありません」



 真緒の考えた作戦は、そこら辺にいるゴブリン達と戦闘をして、わざと一匹だけ残せば、助けを求める為に一度アジトに戻るだろうから、それを追いかければあのハイゴブリンに会える筈、というものだった。



 「取り敢えず、第一段階は成功だな。あとはあいつが、ハイゴブリンの所に行くかどうかだが……」



 「そこは天に祈りましょう」



 真緒達はそのまま、逃げるゴブリンを追いかけていく。







***







 しばらく追いかけていると、ゴブリンはそこそこ大きな、洞穴へと入っていった。



 「あそこが目的地かな?」



 真緒達は洞穴の入口前で止まった。



 「少し、中の様子を覗いてみよう」



 「うんだな」



 「そうしましょう」



 真緒達は洞穴の中を見るため、顔だけ覗かせた。すると……。



 「ギィィ」「ギャギャ」「キシシシ」



 「クキキ」「グギャギャ」「ギャジジ」



 そこには大量のゴブリン達が、巣くっていた。



 「あんなに沢山いたんですか!」



 「多ずぎで、数えられないだぁ……」



 「これじゃあ、どれがあのハイゴブリンか分かりませんよ……」



 「いや、分かるぞ。あの一番奥にいるふてぶてしい奴だ」



 フォルスが指差した方向には他のゴブリンよりも、頭一つ分大きいゴブリンが座っていた。



 「あ、本当だ!確かに、あいつです!絶対に許しません!!」



 「落ち着け、まだその時じゃない。作戦では夜中に侵入して、玉とポーションを奪還するんだろ?それまで堪えろ」



 「うう、分かっていますけど……」



 そう、真緒の作戦では戦闘をしない。目には目を、歯には歯を、盗みには盗みでやり返すつもりだ。



 「ギャキャ!」



 見逃したゴブリンが、ハイゴブリンの下まで辿り着いた。



 「あアん?いったいドウした?」



 「ギギギ、グギャグギ」



 ゴブリンは先程あった真緒達の、伝言を伝えた。



 「成る程~ソレで俺にわざワザ、伝えに来てクレタのカ……」



 するとハイゴブリンは、見逃したゴブリンの肩に手を乗せて、そのまま腹にナイフを突き刺した。



 「ギィギャア!?」



 「敵の罠にまんマト嵌まりヤがっテ!チょっト考エレば、尾行されテイルって気づクダロウが!!こノ、面汚しガ!」



 何度も何度もナイフを突き刺すと、次第に、見逃したゴブリンは動かなくなった。



 「フー、おい!ソコにいるのは分かっテル。出てこイ」



 ハイゴブリンの目線はしっかりと、真緒達のいる場所を捉えていた。バレてしまった以上、盗むのは不可能。真緒達は大人しく出ていった。



 「オンや~誰かト思えば、昨日のバカどもじゃネェか?」



 「どうして……」



 「あア?」



 「どうして殺したんですか!?仲間じゃないんですか!?」



 真緒は、無惨にも殺されたゴブリンに対して、同情していた。



 「そうイウコトカ……バカかお前?こいツラは俺様の手下ナンだよ。仲間ナンカよりもずっト扱いヤスい道具ナンだよ」



 その言葉には一切の暖かみは感じられず、そしてまた、ゴブリン達もそれが当たり前だと思っている。



 「……許せない。あなたみたいな、仲間を道具としか見ていない奴は、絶対に許さない!」



 真緒の言葉から、強い怒りの感情が読み取れる。



 「許さナイだぁ?それはコッチのセリフだ!勝手に俺様のアジトに足を踏み入れタンダ、覚悟は出来てるンダロうな?」



 逃げられないように、真緒達の周りをゴブリン達が取り囲む。



 「テメーら、コノ小生意気な連中ヲ殺せー!!」



 「ギャギャッア!!!」



 ゴブリンの大群が、真緒達へと襲い掛かる。



 「はぁあ!」



 真緒は咄嗟に剣を抜いて、襲い掛かるゴブリンの一部を斬り伏せ、身を守った。



 「私だってやれば出来るんです……“スネークフレイム”!



 「ギィィ!?」



 リーマの魔導書から、炎で形成された蛇が生み出され、ゴブリン達に放たれる。ゴブリン達は炎に身を包まれて、悶えながら死んだ。



 「おりゃゃゃ!!」



 ハナコは持ち前の手の大きさを利用して、張り手感覚で薙ぎ倒していく。



 「スキル“ロックオン”からのスキル“急所感知”……そら!」



 「グギャア!?」



 フォルスはスキルのロックオンと急所感知を巧みに操り、数は少ないが確実に減らしていく。



 「ほい、そい、は~い、他の人ばかり見ては駄目ですよ~私を見てください。スキル“滑稽な踊り”」



 「ギィギィ……!」



 エジタスは、ゴブリン達の猛攻を難なく避けていく。そして、スキルを発動すると突如エジタスが踊り始める。それはとても変な動きで、ゴブリン達は目を離したくても、離せなくなってしまった。そのゴブリン達の隙を突き、他のメンバーが止めを刺す形になっていた。



 「オい!何やっテル!一斉に攻撃を、仕掛ければいいだろうが!!」



 ハイゴブリンの助言により、一斉に襲い掛かるゴブリン達。



 「不味いだぁ!このままじゃ殺られぢまう!!」



 「この人数に弓矢は厳しかったか……」



 「どうしましょう!?」



 「皆!私の側を離れないで!」



 真緒の言葉に従って、一塊になる。そして、ゴブリン達が一斉に飛び掛かってきた。



 「スキル“ロストブレイク”!!」



 「キギィ!?」



 その瞬間、大量のゴブリン達が吹き飛ばされた。



 「な、ナンだありゃ!?」



 あまりに突然の出来事に、ゴブリン達は動きを止めて、ハイゴブリンも動揺を隠せない。



 「……チッ、構うこトハナイ!一斉に襲い続けろ!!」



 ハイゴブリンの言葉に、ゴブリン達は再び一斉に飛び掛かってきた。



 「スキル“ロストブレイク”!」



 それを吹き飛ばす真緒。このやり取りが何回か繰り返され、遂にゴブリン達は全滅した。あのハイゴブリンを残して……。



 「はぁ、はぁ、はぁ、さぁ追い詰めたよ。あとはあなただけだよ!」



 「…………」



 無言。真緒の言葉に反応を示さない。観念したのかと思ったが……。



 「ギッシャシャシャ!!追い詰メタ?追い詰めラレタの間違いだろ!」



 観念するどころか、挑発までしてきたハイゴブリン。



 「お前達は、越えテハいけナイ一線を、越えタンダよ!……いいぜ、ココからは俺様自らが相手してヤルよ!!」



 今まで座っていたハイゴブリンが、遂に立ち上がった。黄金のナイフを、先程刺し殺したゴブリンの死体から引き抜いた。



 「皆、気を引き締めて行くよ!あの時の借りをここで返す!!」



 「泣いて詫びタッテ、もう遅いカラナ!!」
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