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第二章 勇者

旅立ち

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 魔王城玉座の間。エジタスが転移”で一瞬で戻ってくると、そこにはサタニアを初めとしてクロウト、四天王の三人が出迎えてくれた。



 「エジタスー!!」



 サタニアは嬉しさのあまり、玉座から跳び降りて、エジタスに抱きついた。



 「サタニアさん、お久しぶりですね~」



 「本当だよ、偵察しに行ってから全然、帰って来ないから心配してたんだよ!」



 「すみませんね~ご迷惑をお掛けしてしまって…………」



 エジタスが謝罪すると、シーラが鼻を鳴らした。



 「ふん!私は別に貴様が帰って来なくても、構わなかったんだがな」



 「あら?そんなこと言って、一番心配していたのはシーラちゃんじゃない。心配しすぎて人間の国に乗り込もうとして……「アルシアさん!」」



 「おほほほほほ、照れなくてもいいじゃな~い」



 事実を言われ、大声で叫ぶシーラを宥めるアルシア。すると、クロウトが話を進めた。



 「……それで、何か収穫はあったのでしょうか?」



 「ふふふ、実はですね~……」







***







 「僕は反対だよ!」



 エジタスがこれまでの経緯を話す中で、真緒達と供に旅することになったと話すと、サタニアは強く否定した。



 「サタニア様、落ち着いてください」



 「だって、供に旅するってことは、これまで以上にエジタスに会えないんでしょ?そんなの嫌だよ!」



 「しかしですね~、約束してしまいましたので……」



 「大体、何でそんな約束しちゃうの?エジタスは四天王なんだよ!断るのが普通でしょ!」



 「いや~、一度は断ったのですが……。あまりの熱意に圧されてしまいました」



 「第一、そのマオって人は、僕達を倒すのが目的ではないんでしょ?だったら、エジタスが関わらなくてもいいじゃないか!」



 次々とサタニアの全否定する言葉が、飛んでくる。涙目になりながら、必死に行かないように説得する。



 「……でも、エジタスちゃんはその子が一番、魔王ちゃんを倒せる可能性を秘めていると、考えているのよね?」



 「は~い、その通りです」



 「それなら、こういうのはどう?そのマオちゃんが、魔王ちゃんの脅威になるかどうか、見極めるために旅のお供として同行するの」



 「アルシア!さっきから言ってるけど、僕はエジタスが行くのが反対なの!」



 アルシアの提案に即座に反対の意思を示すサタニア。



 「話は最後まで聞いてちょうだい…………そして、その調査報告をしてもらうため、エジタスちゃんには定期的に、魔王城まで戻ってきてほしいのよ」



 「成る程、そいつらのスパイをしろってことだな!」



 「その通りよ、シーラちゃん。どうかしら?これなら二人とも、納得してもらえたんじゃない?」



 アルシアの提案は、両者の願いを叶える最良案であった。サタニアは無言で再び、エジタスに抱きつく。



 「…………エジタス、ちゃんと戻ってきてよ?」



 「勿論ですとも、一ヶ月に一度は必ず帰るようにしますよ」



 「…………間……」



 「え?」



 「一週間に一度にして…………」



 サタニアはエジタスの服を強く握り締める。



 「……分かりました。一週間に一度、必ず帰って来ますね」



 「うん!」



 サタニアの目は涙で腫れていたが、笑顔であった。







***







 「それじゃあ、行ってきますね」



 魔王城場外。またあの時と同じメンバーが、見送りに来ていた。



 「エジタスちゃん、あっちでも頑張ってね」



 「はい、応援しててください」



 「軟弱な貴様だ、すぐ根をあげて戻ってくるだろうな」



 「大丈夫ですよ、こう見えて我慢強いですから」



 「…………そうか」



 「センセイ、ドウカゴブジデ」



 「心配してくださり、ありがとうございます」



 「いいですか、くれぐれも四天王だとバレないように行動してください」



「分かりました。肝に命じておきます」



 「エジタス殿のご活躍を楽しみにしています」



 「青毛の奴と同じ意見です」



 「お二人とも二度目のお見送り、感謝感激です。…………それでは言って参ります」



 エジタスが“転移”を発動させようとすると…………。



 「エジタス!」



 「?」



 サタニアの声に反応するエジタス。



 「行ってらっしゃい!」



 「行ってきます!」



 エジタスは、パチンと指を鳴らして、カルド王国へと向かった。



 「行っちゃったわね…………」



 「うん……」



 感傷に浸っていると、クロウトが渇を入れる。



 「はいはい、それでは皆さんそれぞれの持ち場に戻ってください!」



 クロウトの言葉で全員が戻る中……。



 「あ、クロウトは先に行ってて、僕はちょっとアルシアと二人きりで話があるから…………」



 「そうですか?では先に戻っています」



 少し気になったが、深くは尋ねずクロウトは城の中へと戻った。



 「…………それで魔王ちゃん、話ってなんなの?」



 サタニアとアルシア、二人だけの空間。何か思い詰めた表情をするサタニアが口を開いた。



 「アルシア…………僕、病気かもしれない」



 「え!?」



 いきなりの病気発言に驚いてしまったアルシア。しかしそれを冷静に対処出来てこその魔王の手足だ。



 「何処か痛むの?」



 「うん、エジタスがマオって人と、常に一緒にいると思うと、胸が苦しくなるんだ…………」



 「ん?それって…………」



 アルシアの顔がにやける。全身骨なので変わっていないのだが、そう思わせるような雰囲気が出ている。



 「あらあらあらあら…………」



 「ねぇ、アルシア。これって病気なのかな?」



 「ええ、とても深刻な病よ」



 「やっぱり…………病名、病名は何て言うの?」



 「その病の名は…………恋患いよ」



 「……ええっ!!?そ、そんな筈ないよ。だって僕、男だよ!?」



 まさかの恋患いという言葉に、顔が赤く染まっていくサタニア。



 「恋をするのに種族や年齢、性別は関係ないわ。大事なのはその人を心から愛しているかどうかよ」



 「ぼ、僕がエジタスに恋…………」



 ようやく自分の気持ちに気づいたサタニアは、高鳴る心臓を必死に抑えていた。



 「魔王ちゃんが恋ね~。…………エジタスちゃんも隅に置けないわね~」



 「僕がエジタスに恋…………」



 「そうと分かれば、話は早い。早速準備に取りかかるわよ!」



 そう言うとアルシアはサタニアの腕を引っ張っていく。



 「え、準備ってなんの?ちょ、ちょっとアルシア!?」



 そのまま、サタニアとアルシアは城の中へと戻った。







***







 カルド王国周辺の草原。エジタスが着くとそこにはまだ誰も来ていなかった。



 「おや~、私が一番乗りですか?」



 辺りを見渡すが人の気配はしないため、しばらく待つことにするエジタス。それから、数時間後……。



 「師匠~!」



 「エジタスざーん」



 真緒とハナコの二人。



 「皆さん、お待たせしました」



 リーマ。



 「遅れてすまない。少々準備に手間取ってしまった」



 フォルスの順番に集合した。



 「皆さん、よく集まってくださいました。準備はバッチリですか?」



 エジタスが聞くと、全員が頷いた。



 「私達は今後の旅に必要だと思い、水と食料を買ってきました」



 真緒とハナコの袋には大量の水と食料が、詰め込まれていた。



 「私はおじさんの店に戻って、いくつかポーションを頂きました」



 リーマの袋には緑色と青色のポーションが、それぞれ入っていた。



 「俺は一度家に帰って、予備の弓と矢を補充して来た」



 フォルスの袋には、弓と矢が大量に入っていた。



 「ちゃんと準備していて、安心しました~」



 「それじゃあ、いよいよ出発の時ですね!」



 ついに旅立ちの時を迎えた、真緒達五人は草原を歩き始める。



 「まだ知らぬ世界へと出発進行!」



 こうして真緒達の果てしない旅が始まったのである。

































 オオラカ村。二人の男女が見つめ合っている。そして、男の方が静かに口を開く。



 「アメリア……どうしたら君は笑ってくれるんだ」
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