6 / 300
第一章 魔王
シーラ
しおりを挟む
部屋の中は素晴らしいの一言だった。中央の壁には暖炉があり、その前に大きなソファー。左端には整えられた豪華なダブルベッドとその横に見事なドレッサー。小窓も付いておりそこに小さなテーブルと椅子が置かれていた。
「ほほ~これはまた素晴らしいお部屋ですね~あとでサタニアさんとクロウトさんにお礼を言わなければ」
ある程度見て回ると豪華なダブルベッドへとダイブした。
「うわぁ~お、ベッドですよベッド。ここ最近野宿ばかりだったので嬉しいですね~しかもフカフカで最高です………………ん?」
しばらくベッドで横になっていたが、何処からか何か聞こえてきた。正体を探すべく音の発生源に近づく。
「………う……ま」
先程より音が聞こえてくる。さらに近づく……。
「ま……う………さ……ま……」
さっきよりハッキリと聞こえ始めた。さらに近づく……。
「まおうさま…………」
どうやら女性の声のようだ。この声には聞き覚えがある。玉座の間で会ったシーラという白い鱗の龍だ。そのシーラの独り言が聞こえてくる。
「魔王様、魔王様~ああ早く会いたい。でも、さっきあんな形で出ていっちゃったからな~」
聞いてはいけないものを聞いてしまったエジタスだが、気になって壁に聞き耳を立てる。
「というか、元はと言えばあのエジタスってやつのせいじゃないか!」
「(私の話に移り変わりましたね……)」
「だいたいアイツが魔王城まで来なければよかったんだ!そりゃあ……まぁ、魔王様を助けてくれたことには感謝してるけどさ………………!」
突然声が聞こえなくなり、ドタドタという音が響いてきた。
バン!
「何奴!!」
「おわぁ!?」
勢いよく扉が開き、鎧に身を包んだシーラが乗り込んできた。あまりの大きな音に驚きの声をあげるエジタス。
「なんだ貴様だったのか。一瞬気配がしたから敵かと思ったぞ、こんなところで何をしている?」
「あ、いや~この度四天王に就任しまして、どうやらここが私のお部屋のようなのです」
「そういうことか……って!私の隣ではないか!クロウトめ、後で文句言ってやる。ところで貴様、何か聞こえたか?」
「いえ、何にも?」
「……そうか。まあ、どっちでもいい。私はまだ貴様を認めた訳じゃないからな」
「そんな~どうしたら認めてくださるんですか~」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに目を見開く。
「私についてこい」
「?」
シーラとエジタスは部屋を出て、歩き始める。
***
「あの~何処まで行くんですか?」
「こっちだ」
しばらく歩いたが目的地も知らされてないため疲労が溜まる。
「ここだ」
それは大きな扉だった。門よりは少し小さいがそれでも城内にあるどの扉よりも大きかった。
その扉を開けるとそこはだだっ広い部屋だった。いや、部屋というよりホールに近い。家具などは一切置かれておらず、あるのは多種多様の武器の数々が壁に飾られていた。
「おお~ここは……」
「ここは魔王軍の特別鍛練場だ。普通の鍛練場とは違い魔王様と四天王だけが使うのを許されている」
「は~、とても頑丈そうですね」
「当然だ。魔王様、四天王全員が暴れても傷一つ付かない様に設計されている」
「すごいですね~……それでここでいったい何をするんですか?」
その言葉にニヤリと不適な笑みを浮かべるシーラ。
「貴様が本当に魔王様の側近、四天王に相応しいかどうか確かめてやる」
そう言うとエジタスに背を向けて歩きだす。
「?、相応しいかどうかならクロウトさんにしていただきましたよ」
「ああ……アイツのは心。私が確かめるのは……」
持っていたであろう槍を片手で回し、柄の部分を床に落とし、カァン!っと鳴らす。
「力だ!!」
発せられた一声は鍛練場全体に響き渡った。
「力……ですか?」
「ああ、四天王ってのは言わば魔王様の手足だ。その手足が弱かったら魔王様に示しがつかない。だから私と模擬戦をして実力を確かめてやる」
「そんな~私、戦うのはあまり得意ではありませんよ~」
「つべこべ言わず、さっさと武器を選べ」
「わかりましたよ~」
そう言うとエジタスは壁にある武器を取らずに自身のポケットに手を入れ、あるものを取り出す。
「貴様……ふざけているのか……」
それはナイフだった。しかも、ただのナイフではない。エジタス御用達の食事用のナイフだ。
「ふざけてなんかいませんよ~私は常に真剣です」
「……そうか……後悔するなよ!」
消えた。いや、実際に消えた訳ではない。シーラは床を強く蹴り、一瞬で間合いを詰める。そして持っていた槍を突き出す。しかし、そこにエジタスの姿はなかった。
「(いない!?…………上か!)」
上を見上げるとそこにエジタスはいた。エジタスは咄嗟の判断でジャンプしていた。もし、左右に避けていたのならば凪ぎ払いで殺られていたであろう。もし、後ろへ避けていればそのまま突き殺されていたであろう。
「(へぇー、判断能力はあるようだな。だけど、上に避けるのは悪手だ!)」
すぐさま槍を突き上げる。上空にいるため逃げ場がない。
「これで終いだ!」
今度こそ当たるそう思っていたが突き刺さる前にエジタスの姿が消える。
「(な!?消えただと!いったい何処に……)」
辺りを見回すがいない。すると……
「お~いシーラさ~ん。こっちですよ~」
数十メートル離れた場所に立って手を振っていた。あの状況から一瞬であそこまで行ったことに疑問を抱くシーラ。
「……少しはやるようだな。それならこちらも少しばかり力を使わせてもらう!」
再び床を蹴り、間合いを詰める。しかし先程と違い、槍が紫色の光に包まれていた。
「スキル“ヒュドラ”」
シーラが唱えたそれは“スキル”と呼ばれるこの世界特有の、就いた職業のレベルに応じて取得できる技のことである。またレベルを上げていくごとにより強いスキルを取得できる。
余談ではあるがシーラの職業は“ドラゴンスレイヤー”という龍を滅ぼすための職業である。種族が龍の者に対して二倍のダメージを与えられる。
自身が龍であるがためその攻撃は常に倍加され他の職業よりずば抜けて強力だ。しかしその反面、同じドラゴンスレイヤーの攻撃を受ければダメージはさらにその倍、四倍になる。そのためシーラの職業は自身をも傷つける諸刃の剣なのだ。
その中でシーラが唱えた“ヒュドラ”は九回もの突きを連続で放つことができる。さらにその攻撃には猛毒が付与され、少しでも傷つこうものなら即座にあの世行きだろう。
そんな九連撃の攻撃がエジタスを襲う。
「(今度こそ終わりにしてやる!)」
シーラのスキルが当たる直前、またもエジタスの姿が消える。
「な、なんだと……また消えた……」
「お~いシーラさ~ん。こっちこっち~」
声のする方を向くと同じように数十メートル離れた場所にエジタスは立っていた。
「……そうかい、わかったよ。今日は特別大サービスだ。私の本気を少しだけ拝ませてやるよ」
そう言うとシーラは背中のそれように開けた隙間から翼を広げ、空高く飛び上がった。そして手のひらを掲げる。すると無数の槍がシーラの足下に出現し天井を覆い尽くした。
「これなら何処に避けようと無傷では済まない。今度こそ本当に終いだ!」
「…………」
無言でじっと見つめるエジタス。何も反応を示さないのにイラついたのか舌打ちをするシーラ。
「死んじまいな! スキル“スコールスピア”」
掲げていた手を振り下ろした。天井を覆い尽くしていた無数の槍が一斉に降り注ぐ。しかし三度、当たる直前でエジタスの姿が消える。
「(消えた!だが、スコールスピアを避けるのは不可能だ)」
「シーラさ~ん。ここですよ、ここ」
「!」
真後ろにいた。肩に手を置いて落ちないように覆い被さっていた。手に持っていたナイフが首元に添えられていた。
「いくら食事用のナイフだろうとこうして密着させてれば十分凶器になりますよ」
「…………そうかようやく分かった。こんな上空にピンポイントでさらに無傷で来る方法……貴様、空間魔法を使っているな」
「ピンポンピンポン大正解~!!私、他の魔法は全く使えないのですが、唯一空間魔法だけが使えるんですよ~」
魔法。それはスキルと同じようにこの世界特有のものである。ただし、スキルとは違い魔法には適正が存在する。それは生まれながらにして与えられる恩恵であり、努力ではどうすることもできない。子供の頃から使える者もいれば大人になっても使えない者もいる。また魔法には多くの種類があり、どれに適正があるかは運次第なのである。
「しかし納得いかない点がある。空間魔法は本来、大きすぎたり重すぎる荷物等を運ぶための魔法の筈だ。生き物を運ぶだなんて聞いたことがない」
魔法は大きく分けて二つ。攻撃系の魔法と非攻撃系の魔法だ。空間魔法は非攻撃系の魔法に分類される。
「それは簡単ですよ。空間魔法を使用する前に転送する自分を道具だと思えばよいのです」
「自分を道具だと!?確かに理屈ではそうだがいくら頭で考えたとしても心はそう簡単には変えることはできない……貴様いったい何者なんだ?」
「最初に申し上げたはずですよ」
「?」
「私は“道楽の道化師”エジタスと申しま~す」
シーラは深い溜め息をついた。
「まったく大した男だ貴様は。だが……」
シーラの尻尾がエジタスの体を弾く。
「へ?」
振り落とされたエジタスの足を掴み、宙吊りの状態にする。
「まだまだだな。最後まで油断してはいけないぞ」
「うわぁぁぁ!?」
「自分が優位に立てたからといって注意力を散漫にしないことだな」
「わ、分かりましたから、降ろしてください」
「いーや、駄目だ。貴様は私に少しとはいえ本気を出させた、しばらくはこのままだ」
「そんな~……あ~頭に血が昇る」
「ぷっ、ははははははは」
シーラの笑い声が鍛練場内に響き渡る。こうしてシーラとエジタスの模擬戦はシーラの勝利で幕を閉じた。
「ほほ~これはまた素晴らしいお部屋ですね~あとでサタニアさんとクロウトさんにお礼を言わなければ」
ある程度見て回ると豪華なダブルベッドへとダイブした。
「うわぁ~お、ベッドですよベッド。ここ最近野宿ばかりだったので嬉しいですね~しかもフカフカで最高です………………ん?」
しばらくベッドで横になっていたが、何処からか何か聞こえてきた。正体を探すべく音の発生源に近づく。
「………う……ま」
先程より音が聞こえてくる。さらに近づく……。
「ま……う………さ……ま……」
さっきよりハッキリと聞こえ始めた。さらに近づく……。
「まおうさま…………」
どうやら女性の声のようだ。この声には聞き覚えがある。玉座の間で会ったシーラという白い鱗の龍だ。そのシーラの独り言が聞こえてくる。
「魔王様、魔王様~ああ早く会いたい。でも、さっきあんな形で出ていっちゃったからな~」
聞いてはいけないものを聞いてしまったエジタスだが、気になって壁に聞き耳を立てる。
「というか、元はと言えばあのエジタスってやつのせいじゃないか!」
「(私の話に移り変わりましたね……)」
「だいたいアイツが魔王城まで来なければよかったんだ!そりゃあ……まぁ、魔王様を助けてくれたことには感謝してるけどさ………………!」
突然声が聞こえなくなり、ドタドタという音が響いてきた。
バン!
「何奴!!」
「おわぁ!?」
勢いよく扉が開き、鎧に身を包んだシーラが乗り込んできた。あまりの大きな音に驚きの声をあげるエジタス。
「なんだ貴様だったのか。一瞬気配がしたから敵かと思ったぞ、こんなところで何をしている?」
「あ、いや~この度四天王に就任しまして、どうやらここが私のお部屋のようなのです」
「そういうことか……って!私の隣ではないか!クロウトめ、後で文句言ってやる。ところで貴様、何か聞こえたか?」
「いえ、何にも?」
「……そうか。まあ、どっちでもいい。私はまだ貴様を認めた訳じゃないからな」
「そんな~どうしたら認めてくださるんですか~」
その言葉を待ってましたと言わんばかりに目を見開く。
「私についてこい」
「?」
シーラとエジタスは部屋を出て、歩き始める。
***
「あの~何処まで行くんですか?」
「こっちだ」
しばらく歩いたが目的地も知らされてないため疲労が溜まる。
「ここだ」
それは大きな扉だった。門よりは少し小さいがそれでも城内にあるどの扉よりも大きかった。
その扉を開けるとそこはだだっ広い部屋だった。いや、部屋というよりホールに近い。家具などは一切置かれておらず、あるのは多種多様の武器の数々が壁に飾られていた。
「おお~ここは……」
「ここは魔王軍の特別鍛練場だ。普通の鍛練場とは違い魔王様と四天王だけが使うのを許されている」
「は~、とても頑丈そうですね」
「当然だ。魔王様、四天王全員が暴れても傷一つ付かない様に設計されている」
「すごいですね~……それでここでいったい何をするんですか?」
その言葉にニヤリと不適な笑みを浮かべるシーラ。
「貴様が本当に魔王様の側近、四天王に相応しいかどうか確かめてやる」
そう言うとエジタスに背を向けて歩きだす。
「?、相応しいかどうかならクロウトさんにしていただきましたよ」
「ああ……アイツのは心。私が確かめるのは……」
持っていたであろう槍を片手で回し、柄の部分を床に落とし、カァン!っと鳴らす。
「力だ!!」
発せられた一声は鍛練場全体に響き渡った。
「力……ですか?」
「ああ、四天王ってのは言わば魔王様の手足だ。その手足が弱かったら魔王様に示しがつかない。だから私と模擬戦をして実力を確かめてやる」
「そんな~私、戦うのはあまり得意ではありませんよ~」
「つべこべ言わず、さっさと武器を選べ」
「わかりましたよ~」
そう言うとエジタスは壁にある武器を取らずに自身のポケットに手を入れ、あるものを取り出す。
「貴様……ふざけているのか……」
それはナイフだった。しかも、ただのナイフではない。エジタス御用達の食事用のナイフだ。
「ふざけてなんかいませんよ~私は常に真剣です」
「……そうか……後悔するなよ!」
消えた。いや、実際に消えた訳ではない。シーラは床を強く蹴り、一瞬で間合いを詰める。そして持っていた槍を突き出す。しかし、そこにエジタスの姿はなかった。
「(いない!?…………上か!)」
上を見上げるとそこにエジタスはいた。エジタスは咄嗟の判断でジャンプしていた。もし、左右に避けていたのならば凪ぎ払いで殺られていたであろう。もし、後ろへ避けていればそのまま突き殺されていたであろう。
「(へぇー、判断能力はあるようだな。だけど、上に避けるのは悪手だ!)」
すぐさま槍を突き上げる。上空にいるため逃げ場がない。
「これで終いだ!」
今度こそ当たるそう思っていたが突き刺さる前にエジタスの姿が消える。
「(な!?消えただと!いったい何処に……)」
辺りを見回すがいない。すると……
「お~いシーラさ~ん。こっちですよ~」
数十メートル離れた場所に立って手を振っていた。あの状況から一瞬であそこまで行ったことに疑問を抱くシーラ。
「……少しはやるようだな。それならこちらも少しばかり力を使わせてもらう!」
再び床を蹴り、間合いを詰める。しかし先程と違い、槍が紫色の光に包まれていた。
「スキル“ヒュドラ”」
シーラが唱えたそれは“スキル”と呼ばれるこの世界特有の、就いた職業のレベルに応じて取得できる技のことである。またレベルを上げていくごとにより強いスキルを取得できる。
余談ではあるがシーラの職業は“ドラゴンスレイヤー”という龍を滅ぼすための職業である。種族が龍の者に対して二倍のダメージを与えられる。
自身が龍であるがためその攻撃は常に倍加され他の職業よりずば抜けて強力だ。しかしその反面、同じドラゴンスレイヤーの攻撃を受ければダメージはさらにその倍、四倍になる。そのためシーラの職業は自身をも傷つける諸刃の剣なのだ。
その中でシーラが唱えた“ヒュドラ”は九回もの突きを連続で放つことができる。さらにその攻撃には猛毒が付与され、少しでも傷つこうものなら即座にあの世行きだろう。
そんな九連撃の攻撃がエジタスを襲う。
「(今度こそ終わりにしてやる!)」
シーラのスキルが当たる直前、またもエジタスの姿が消える。
「な、なんだと……また消えた……」
「お~いシーラさ~ん。こっちこっち~」
声のする方を向くと同じように数十メートル離れた場所にエジタスは立っていた。
「……そうかい、わかったよ。今日は特別大サービスだ。私の本気を少しだけ拝ませてやるよ」
そう言うとシーラは背中のそれように開けた隙間から翼を広げ、空高く飛び上がった。そして手のひらを掲げる。すると無数の槍がシーラの足下に出現し天井を覆い尽くした。
「これなら何処に避けようと無傷では済まない。今度こそ本当に終いだ!」
「…………」
無言でじっと見つめるエジタス。何も反応を示さないのにイラついたのか舌打ちをするシーラ。
「死んじまいな! スキル“スコールスピア”」
掲げていた手を振り下ろした。天井を覆い尽くしていた無数の槍が一斉に降り注ぐ。しかし三度、当たる直前でエジタスの姿が消える。
「(消えた!だが、スコールスピアを避けるのは不可能だ)」
「シーラさ~ん。ここですよ、ここ」
「!」
真後ろにいた。肩に手を置いて落ちないように覆い被さっていた。手に持っていたナイフが首元に添えられていた。
「いくら食事用のナイフだろうとこうして密着させてれば十分凶器になりますよ」
「…………そうかようやく分かった。こんな上空にピンポイントでさらに無傷で来る方法……貴様、空間魔法を使っているな」
「ピンポンピンポン大正解~!!私、他の魔法は全く使えないのですが、唯一空間魔法だけが使えるんですよ~」
魔法。それはスキルと同じようにこの世界特有のものである。ただし、スキルとは違い魔法には適正が存在する。それは生まれながらにして与えられる恩恵であり、努力ではどうすることもできない。子供の頃から使える者もいれば大人になっても使えない者もいる。また魔法には多くの種類があり、どれに適正があるかは運次第なのである。
「しかし納得いかない点がある。空間魔法は本来、大きすぎたり重すぎる荷物等を運ぶための魔法の筈だ。生き物を運ぶだなんて聞いたことがない」
魔法は大きく分けて二つ。攻撃系の魔法と非攻撃系の魔法だ。空間魔法は非攻撃系の魔法に分類される。
「それは簡単ですよ。空間魔法を使用する前に転送する自分を道具だと思えばよいのです」
「自分を道具だと!?確かに理屈ではそうだがいくら頭で考えたとしても心はそう簡単には変えることはできない……貴様いったい何者なんだ?」
「最初に申し上げたはずですよ」
「?」
「私は“道楽の道化師”エジタスと申しま~す」
シーラは深い溜め息をついた。
「まったく大した男だ貴様は。だが……」
シーラの尻尾がエジタスの体を弾く。
「へ?」
振り落とされたエジタスの足を掴み、宙吊りの状態にする。
「まだまだだな。最後まで油断してはいけないぞ」
「うわぁぁぁ!?」
「自分が優位に立てたからといって注意力を散漫にしないことだな」
「わ、分かりましたから、降ろしてください」
「いーや、駄目だ。貴様は私に少しとはいえ本気を出させた、しばらくはこのままだ」
「そんな~……あ~頭に血が昇る」
「ぷっ、ははははははは」
シーラの笑い声が鍛練場内に響き渡る。こうしてシーラとエジタスの模擬戦はシーラの勝利で幕を閉じた。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
狼の子 ~教えてもらった常識はかなり古い!?~
一片
ファンタジー
バイト帰りに何かに引っ張られた俺は、次の瞬間突然山の中に放り出された。
しかも体をピクリとも動かせない様な瀕死の状態でだ。
流石に諦めかけていたのだけど、そんな俺を白い狼が救ってくれた。
その狼は天狼という神獣で、今俺がいるのは今までいた世界とは異なる世界だという。
右も左も分からないどころか、右も左も向けなかった俺は天狼さんに魔法で癒され、ついでに色々な知識を教えてもらう。
この世界の事、生き延び方、戦う術、そして魔法。
数年後、俺は天狼さんの庇護下から離れ新しい世界へと飛び出した。
元の世界に戻ることは無理かもしれない……でも両親に連絡くらいはしておきたい。
根拠は特にないけど、魔法がある世界なんだし……連絡くらいは出来るよね?
そんな些細な目標と、天狼さん以外の神獣様へとお使いを頼まれた俺はこの世界を東奔西走することになる。
色々な仲間に出会い、ダンジョンや遺跡を探索したり、何故か謎の組織の陰謀を防いだり……。
……これは、現代では失われた強大な魔法を使い、小さな目標とお使いの為に大陸をまたにかける小市民の冒険譚!
召喚アラサー女~ 自由に生きています!
マツユキ
ファンタジー
異世界に召喚された海藤美奈子32才。召喚されたものの、牢屋行きとなってしまう。
牢から出た美奈子は、冒険者となる。助け、助けられながら信頼できる仲間を得て行く美奈子。地球で大好きだった事もしつつ、異世界でも自由に生きる美奈子
信頼できる仲間と共に、異世界で奮闘する。
初めは一人だった美奈子のの周りには、いつの間にか仲間が集まって行き、家が村に、村が街にとどんどんと大きくなっていくのだった
***
異世界でも元の世界で出来ていた事をやっています。苦手、または気に入らないと言うかたは読まれない方が良いかと思います
かなりの無茶振りと、作者の妄想で出来たあり得ない魔法や設定が出てきます。こちらも抵抗のある方は読まれない方が良いかと思います
うっかり『野良犬』を手懐けてしまった底辺男の逆転人生
野良 乃人
ファンタジー
辺境の田舎街に住むエリオは落ちこぼれの底辺冒険者。
普段から無能だの底辺だのと馬鹿にされ、薬草拾いと揶揄されている。
そんなエリオだが、ふとした事がきっかけで『野良犬』を手懐けてしまう。
そこから始まる底辺落ちこぼれエリオの成り上がりストーリー。
そしてこの世界に存在する宝玉がエリオに力を与えてくれる。
うっかり野良犬を手懐けた底辺男。冒険者という枠を超え乱世での逆転人生が始まります。
いずれは王となるのも夢ではないかも!?
◇世界観的に命の価値は軽いです◇
カクヨムでも同タイトルで掲載しています。
〈完結〉妹に婚約者を獲られた私は実家に居ても何なので、帝都でドレスを作ります。
江戸川ばた散歩
ファンタジー
「私」テンダー・ウッドマンズ伯爵令嬢は両親から婚約者を妹に渡せ、と言われる。
了承した彼女は帝都でドレスメーカーの独立工房をやっている叔母のもとに行くことにする。
テンダーがあっさりと了承し、家を離れるのには理由があった。
それは三つ下の妹が生まれて以来の両親の扱いの差だった。
やがてテンダーは叔母のもとで服飾を学び、ついには?
100話まではヒロインのテンダー視点、幕間と101話以降は俯瞰視点となります。
200話で完結しました。
今回はあとがきは無しです。
【完結】実家に捨てられた私は侯爵邸に拾われ、使用人としてのんびりとスローライフを満喫しています〜なお、実家はどんどん崩壊しているようです〜
よどら文鳥
恋愛
フィアラの父は、再婚してから新たな妻と子供だけの生活を望んでいたため、フィアラは邪魔者だった。
フィアラは毎日毎日、家事だけではなく父の仕事までも強制的にやらされる毎日である。
だがフィアラが十四歳になったとある日、長く奴隷生活を続けていたデジョレーン子爵邸から抹消される運命になる。
侯爵がフィアラを除名したうえで専属使用人として雇いたいという申し出があったからだ。
金銭面で余裕のないデジョレーン子爵にとってはこのうえない案件であったため、フィアラはゴミのように捨てられた。
父の発言では『侯爵一家は非常に悪名高く、さらに過酷な日々になるだろう』と宣言していたため、フィアラは不安なまま侯爵邸へ向かう。
だが侯爵邸で待っていたのは過酷な毎日ではなくむしろ……。
いっぽう、フィアラのいなくなった子爵邸では大金が入ってきて全員が大喜び。
さっそくこの大金を手にして新たな使用人を雇う。
お金にも困らずのびのびとした生活ができるかと思っていたのだが、現実は……。
【完結】では、なぜ貴方も生きているのですか?
月白ヤトヒコ
恋愛
父から呼び出された。
ああ、いや。父、と呼ぶと憎しみの籠る眼差しで、「彼女の命を奪ったお前に父などと呼ばれる謂われは無い。穢らわしい」と言われるので、わたしは彼のことを『侯爵様』と呼ぶべき相手か。
「……貴様の婚約が決まった。彼女の命を奪ったお前が幸せになることなど絶対に赦されることではないが、家の為だ。憎いお前が幸せになることは赦せんが、結婚して後継ぎを作れ」
単刀直入な言葉と共に、釣り書きが放り投げられた。
「婚約はお断り致します。というか、婚約はできません。わたしは、母の命を奪って生を受けた罪深い存在ですので。教会へ入り、祈りを捧げようと思います。わたしはこの家を継ぐつもりはありませんので、養子を迎え、その子へこの家を継がせてください」
「貴様、自分がなにを言っているのか判っているのかっ!? このわたしが、罪深い貴様にこの家を継がせてやると言っているんだぞっ!? 有難く思えっ!!」
「いえ、わたしは自分の罪深さを自覚しておりますので。このようなわたしが、家を継ぐなど赦されないことです。常々侯爵様が仰っているではありませんか。『生かしておいているだけで有難いと思え。この罪人め』と。なので、罪人であるわたしは自分の罪を償い、母の冥福を祈る為、教会に参ります」
という感じの重めでダークな話。
設定はふわっと。
人によっては胸くそ。
異世界転生はもう飽きた。100回転生した結果、レベル10兆になった俺が神を殺す話
もち
ファンタジー
なんと、なんと、世にも珍しい事に、トラックにはねられて死んでしまった男子高校生『閃(セン)』。気付いたら、びっくり仰天、驚くべき事に、異世界なるものへと転生していて、
だから、冒険者になって、ゴブリンを倒して、オーガを倒して、ドラゴンを倒して、なんやかんやでレベル300くらいの時、寿命を迎えて死んだ。
で、目を覚ましたら、記憶と能力を継いだまま、魔物に転生していた。サクっと魔王になって世界を統治して、なんやかんやしていたら、レベル700くらいの時、寿命を迎えて死んだ。
で、目を覚ましたら……というのを100回くりかえした主人公の話。
「もういい! 異世界転生、もう飽きた! 何なんだよ、この、死んでも死んでも転生し続ける、精神的にも肉体的にもハンパなくキツい拷問! えっぐい地獄なんですけど!」
これは、なんやかんやでレベル(存在値)が十兆を超えて、神よりも遥かに強くなった摩訶不思議アドベンチャーな主人公が、
「もういい! もう終わりたい! 終わってくれ! 俺、すでにカンストしてんだよ! 俺、本気出したら、最強神より強いんだぞ! これ以上、やる事ねぇんだよ! もう、マジで、飽きてんの! だから、終わってくれ!」
などと喚きながら、その百回目に転生した、
『それまでの99回とは、ちょいと様子が違う異世界』で、
『神様として、日本人を召喚してチートを与えて』みたり、
『さらに輪をかけて強くなって』しまったり――などと、色々、楽しそうな事をはじめる物語です。
『世界が進化(アップデート)しました』
「え? できる事が増えるの? まさかの上限解放? ちょっと、それなら話が違うんですけど」
――みたいな事もあるお話です。
しょうせつかになろうで、毎日2話のペースで投稿をしています。
2019年1月時点で、120日以上、毎日2話投稿していますw
投稿ペースだけなら、自信があります!
ちなみに、全1000話以上をめざしています!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる