とんがり山の鬼

つなざきえいじ

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とんがり山の鬼

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あるところに“とんがり山”と言う、とても険しい山が在りました。
この山のふもとには、山を挟んで“青村”と“緑村”が在ります。

青村には大きな湖が在り、漁業が盛んな土地です。
緑村は農村地帯、肥えた大地が毎年豊作をもたらしています。

2つの村は、お互いの村の収穫物を定期的に交換していますが、1つ問題がありました。
隣村へは、とんがり山を越えて行くのですが、この山の頂上にクマより大きな2本角の赤鬼が住んでいるのです。

赤鬼は、道の真ん中に座り込み、

「通して欲しくば、食べ物寄こせ!」

と、収穫物の一部を要求してきます。
村人達は、通行料として、しぶしぶ赤鬼に食べ物を渡していました。


ある日、青村の若者が、緑村へ向っていました。
若者は、緑村の娘との結婚が決まっており、今日は式の打ち合わせです。

とんがり山の頂上に着くと道の真ん中に赤鬼がいました。

「通して欲しくば、食べ物寄こせ!」

若者は、通行料として持ってきた干物を赤鬼に渡すと、緑村へ急ぎます。
赤鬼は、干物をペロリと平らげると、ゴロンと寝転がりました。

(今日は、もう誰も来んな…。)

とんがり山を越えるには、どんなに急いでも半日程かかります。
もう昼過ぎなので、もし今から誰かが登って来ても到着が夜になるのです。
赤鬼が、このまま寝てしまおうと思った時…、

ガラガラガラ…、ドスン!
うわーーぁ…。

もの凄い音と地響き、そして男の叫び声が聴こえてきました。

赤鬼は、音のした方に目を向けます。
すると少し先の道が崩れて若者が岩の下敷きになっている姿が見えました。

(うーん…、道が塞がっちまったな。
これじゃ、村の人間が通れないな…。
んっ!?
じゃあ、食い物が貰えないって事か!!)

赤鬼は、飛び起きると崩れた道まで行きました。
そして、大きな石をポイポイと道の脇によけます。

(よし! これで通れるようになった。)

ひと仕事終えた赤鬼が、山の頂上に戻ろうとすると若者が声をかけてきました。

「赤鬼様、ありがとうございます。
お蔭で助かりました。」

若者は足を怪我していましたが、命に別状はないようです。
赤鬼は、若者を助けるつもりで、助けていないので、お礼を言われて困惑しました。

若者は、立ち上がり赤鬼にペコリと頭を下げると、緑村へと向います。
と、若者が苦痛に顔を歪め、その場に倒れました。

赤鬼は、少し考えると若者を抱え上げ、緑村へ走ります。
若者が、ここで死んでしまうと、青村へ戻る若者から食べ物が貰えないと思ったのです。


ビュービュービュー…。

もの凄いスピード。
赤鬼は、あっと言う間に、緑村に着きました。


突然現れた赤鬼に、緑村は大騒ぎ。
農民達は、カマやクワを振りかざします。

「みんな! 待ってくれ!!
赤鬼様は、崩れた岩の下敷きになった俺を助けてくれたんだ!!」

青村の若者が、赤鬼の腕の中から叫びました。

赤鬼は、若者を下ろすと、とんがり山へ帰ろうと背を向けます。
その時、一人の老人が声をかけてきました。

「お待ち下され、赤鬼様。
その若者は、当家の婿になる者でございます。
助けて頂いて、ありがとうございます。
どうか、お礼をさせて下さい。」

赤鬼は、誘われるまま、老人宅へ行くことにしました。


老人宅では、婿の為にご馳走が用意してありました。
赤鬼を囲んで宴会が始まります。
赤鬼は、大喜びでご馳走を食べました。

たらふく食べて、腹が膨れた赤鬼は、老人に尋ねました。

「この野菜と魚は、山の上でも食った事があるが、こっちの方が美味い!
爺さん、何か違いがあるのか?」

老人は、笑いながら答えます。

「それは、みんなで食べているからでございます。
みんなで笑いながら…、話しながら食事をすると食べ物が美味しくなるのでございます。
また、赤鬼様は道の岩をのけたり、婿を運んだりと大層な仕事をなさいました。
働いた後の食事は、何にも増して美味しい物なのですよ。」

「ふーん…。 そう言うものなのか…。」

山の上で働きもせず、一人で御飯を食べていた赤鬼にとっては、目から鱗の話でした。


山の上で助けた若者が、治療を終えて赤鬼のもとへ遣って来ました。

「赤鬼様、あらためてお礼を申し上げます。
助けて頂いて、ありがとうございました。」

若者は、ペコリと頭を下げます。
赤鬼は、照れて顔が真っ赤になりましたが、もともと赤い顔なので誰にも気付かれませんでした。

「おお、婿殿。 この度は災難だったな。」

老人が声をかけます。

「はい。 どうもご迷惑をおかけしました。
迷惑ついでに、一つお願いがあるのですが…。」

若者は、明日の夕方までに家に帰らないといけないが、この足では帰れない…。
自分の代わりに、誰か使いの者を青村へ遣って欲しいと老人に頼みます。
この話を聞いていた赤鬼が、

「だったらわしが青村へ、お前を運んでやろう。」

と提案してきました。
老人と若者は、驚きで顔を見合わせます。

「なに、今日の馳走の礼じゃ。
明日、帰る時、山へ向ってわしを呼ぶが良い。」

赤鬼は、立ち上がると山へ帰って行きました。


翌日、若者は山へ向って叫びます。

「赤鬼様ーっ! お願いしまーす!!」

しばらくすると、猛烈な勢いで赤鬼が遣って来ました。
赤鬼は、若者を抱きかかえると青村へ走ります。


ビュービュービュー…。

もの凄いスピード。
赤鬼は、あっと言う間に、青村に着きました。


突然現れた赤鬼に、青村は大騒ぎ。
漁師達は、モリを構えます。

「みんな! 待ってくれ!!
赤鬼様は、俺を運んできてくれたんだ!!」

若者の言葉に漁師達は、顔を見合わせます。

「赤鬼様、ありがとうございました。
何も有りませんが、我が家へいらして下さい。」

赤鬼は、誘われるまま、若者宅へ行くことにしました。


若者の両親は、赤鬼の訪問に驚きましたが、事情を聞いて赤鬼を歓迎します。

両親は、精一杯の食事で赤鬼をもてなします。
赤鬼は、その食事を昨日と同じに美味しく感じるのでした。


食事が終わると赤鬼は、

「これからも、何か困ったことがあれば、わしを呼ぶが良い。」

と言って、山へ帰って行きました。
その夜、村人達が集まって何やら相談していました。


翌日、青村の村人が山へ向って叫びます。

「赤鬼様ーっ! お願いしまーす!!」

しばらくすると、猛烈な勢いで赤鬼が遣って来ました。

「何用じゃ。」

赤鬼は、呼ばれた事が嬉しいらしくニコニコ顔です。
村人は、沢山の魚が入ったカゴを指差すと、

「このカゴと私を緑村に運んで下さい。」

と頼みます。
赤鬼は、カゴを背負い、村人を抱きかかえると緑村へ走ります。


昨日に続いて突然現れた赤鬼に、またまた緑村は大騒ぎ。
青村の漁師は、来訪の理由を緑村の農民達に話します。
その間に、持ってきた魚の一部を赤鬼にご馳走しました。
赤鬼は食事が終わると、

「これからも、何か困ったことがあれば、わしを呼ぶが良い。」

と言って、山へ帰って行きました。
漁師の話を聞き終えた農民達は、

「それは良い考えだ!!」

と、その考えに賛成していました。


翌日から赤鬼は大忙しです。
と言うのも漁師の話と言うのが、運び屋として赤鬼を使うと言う事だったからです。

今まで苦労して山を越える途中で、通行料として収穫物の一部を赤鬼に渡していましたが、これからは赤鬼に働いてもらい運送料として渡すようにしてはどうか?との話でした。

この考えに緑村の農民達も賛同しました。
赤鬼は、ニコニコ顔で二つの村を行き来するのでした。


ある日、呼んでもないのに赤鬼が青村へ遣って来ました。
何やら相談事があるようです…。

「わし、村で暮らして良いか…?」

赤鬼は、二つの村を行き来するうち、人々と仲良くなり、一人で山に居るのが嫌になったのです。

村人達は、驚きました。
いくら仲良くなったとはいえ、相手は鬼。
一日中、そばに居ると思うと気の休まるものではありません。
その時、村長が良い言い訳を思いつきます。

「赤鬼様には居てほしいが、そうすると緑村から赤鬼様へ呼びかけが出来なくなります。
緑村が困ってしまいます。
緑村の事を考えると一緒に住みましょうとは言えません…。」

赤鬼の呼び出しは、赤鬼が山の頂上に居るから両方の村からの声が届くのです。
山を越えて声が届く事は有りません。
赤鬼は腕を組んで、しばらく考えていました。

「そうじゃな。 分かった一緒に住むのは諦めよう。」

と、村長の説明に納得しました。


それから数日が過ぎました。
またまた、呼んでもないのに赤鬼が青村へ遣って来ました。

「わし、緑村へトンネル掘ろうと思うんじゃが、掘って良いか?」

あれから赤鬼は、どうすれば一緒に住めるのかをずっと考えていました。
声が届かないのであれば、届くようにすれば良い。
思いついたのが、トンネルです。
トンネルで二つの村を繋げれば、声は届きます。
この赤鬼の申し出に村人達は、大喜びです。


翌日から、トンネル掘りが始まりました。
トンネルは、青村から緑村へ向って掘り進められます。
赤鬼は鉄より硬い自慢の爪で、どんどん穴を掘って行きます。

村人達は、赤鬼の為に食事を用意しました。
赤鬼は、その食事を今まで以上に美味しく感じ、ますますトンネル掘りに精を出すのでした。


二ヶ月後、とうとうトンネルが開通しました。
緑村に村人が集まって、開通記念のお祭りが開かれます。

もちろん主役は、赤鬼。
村人が、代わるがわるに感謝の言葉を赤鬼にかけます。
赤鬼は、今まで生きてきた中で、一番の幸せを感じていました。

(頑張って良かった…。 これで村に住むことが出来る…。)


そのお祭りの裏で、数人の村人が村長宅に集まっていました。

「トンネルが出来たから運び屋はもう必要ない…。
これから赤鬼をどうするんだ?」

「あんな大飯食らい追い出そう。」

「何て事を言うんだ!
赤鬼様は、二つの村を繋げてくれた恩人だぞ!!」

「いや、仕事が無くなった赤鬼に居られたら迷惑なだけだ。」

鬼嫌いの者…、赤鬼に恩を感じている者…、村人達は赤鬼の今後について話し合っていたのです。

「漁師をやらせれば良いじゃないか。」

緑村の農民の問いに、青村の漁師が答えます。

「一度船に乗せたことがあるが、船酔いが酷くてな。
おまけにカナヅチときてる。
漁師は無理だよ。」

「畑仕事をやらせれば良いじゃないか。」

青村の漁師の問いに、緑村の農民が答えます。

「田植えをやらせたが、歩く度に田んぼに足が埋まってしまうんだ。
身動き出来なくなって、引っ張り出すのに、どんだけ苦労したか…。
農作業は無理だよ。」

話し合いは、夜遅くまで…、祭り囃子が鳴り止むまで続きました。


翌朝、村人達が山へ向って叫びます。

「赤鬼様ーっ! お願いしまーす!!」

しばらくすると、猛烈な勢いで赤鬼が遣って来ました。

「何用じゃ。」

赤鬼は、昨日のお祭りが、よっぽど楽しかったのかニコニコ顔で遣って来ました。

「実は、赤鬼様にお願いがあるのですが…。」

村人が申し訳なさそうに話し始めます。
村人の話は、都へ通じるトンネルを掘ってくれないかと言う事でした。

都へは、とんがり山より険しい山道を2日かけて行っています。
途中、クマが出たり、崖崩れに遭ったりと危険な道です。

トンネルが出来れば、村の生産物を安全に都まで運ぶ事が出来ます。
しかし、今度のトンネルは、とんがり山の数倍の長さになります。
どう考えても無茶です。
赤鬼に恩を感じている村人は、

「そんな無茶な仕事はさせられない!」

と反対しましたが、村に赤鬼の家を作り住むことを認めると言われトンネル工事に賛成しました。
また、鬼嫌いの者は、トンネルが出来るのであれば、追い出すのをやめると言ってくれました。

でも、もし赤鬼が断れば…。
昨夜の話し合いで、その答えは出ませんでした…。

そんな村人達の心配をよそに赤鬼は、

「分かった。 わしに任せろ!」

と、ニコニコ顔で即答します。

(みんなが、わしの力を必要としてくれる…。
こんなに嬉しい事はない…。)


トンネル掘りが始まりました。
トンネルは、緑村から真っ直ぐ東へ掘り進められます。
村人達は、トンネルの側に赤鬼の家を建てました。
赤鬼は大喜び!
ますますトンネル掘りに精を出します。

完成までに2年はかかると、村人達は考えていましたが、この調子だともっと早く出来そうです。


掘り始めてから1年が経とうとしたある日、赤鬼の家で、ねぎらいの食事会が開かれました。
と言うのも、赤鬼から、あと10日程で開通するとの報せがあったのです。

「赤鬼さん、あと少しで、ご飯炊けるからもう少し待っとくれ。」

「赤鬼さん! ご飯出来るまで遊ぼうよ!!」

村人達は、1年と言う月日の中で、赤鬼の事を “赤鬼さん”と気さくに呼ぶ関係になっていました。
村の子供達も赤鬼を怖がることなく懐いています。


食事会が始まりました。
赤鬼は、村人との食事を楽しみます。
村の子供が、赤鬼の手を握りある事に気が付きました。

「赤鬼さん、指痛そうだけど…。
大丈夫?」

1年近く掘り続けた赤鬼自慢の爪は削れ、指先が赤く腫れ上がっています。

「なあに、大丈夫!
開通まで、あと少しじゃから頑張るよ!!」

赤鬼は、心配されて嬉しそうです。

「ねえねえ、あと一週間で“トンネル祭り”だよね。
“トンネル祭り”のあとに、また“トンネル祭り”をするの?」

村の子供が、村長に質問しました。
村では、とんがり山にトンネルが開通した日を祝して、毎年お祭りを催すことにしていたのです。

「あっ!? そうか!!
うーん…。
今年は良いが、来年からは考えないといけないな…。」

村長と村人達は、祭りの一本化について議論を始めました。
そんな様子を楽しそうに赤鬼は見ています。

(…そうか、あれからもう1年か…。
また祭りをやってくれるのか…。)

赤鬼の目には涙が浮んでいました…。


その頃、赤鬼の家へ行かなかった者達…、鬼嫌いの者達が、村外れの家に集まっていました。

「トンネルが出来たら赤鬼はもう必要ない!
この先、あいつをどうするつもりだ!!」

「都との交易で村が潤うから、赤鬼にはゆっくりして貰うって言ってたぞ。」

「ふざけるな!
何で俺達が、あんな奴を養わねえといけねえんだ!!」

鬼嫌いの者達は、1年前に追い出すのをやめると約束した事をすっかり忘れています。

「また村が2つに割れちまう。
何とかしないとな…。」

話し合いは、夜遅くまで続きました。
何らかの結論が出たのでしょうか?
翌朝、一人の男が村を後にしました…。


食事会の翌日…。
いつものように食事係のおばさんが、朝食を持って赤鬼宅を訪れます。

「赤鬼さーん! ご飯だよ!!」

返事が有りません。
おばさんがもう一度、声をかけようとすると、トンネルの中から赤鬼が出てきました。

「ゴメンゴメン、ちょっとトンネルの様子を見てたんだ。」

赤鬼が頭を下げます。

「あやまらないでおくれよ。
私達の為に働いてくれてるんだろ。
朝早くからご苦労様です。
さあ、朝御飯を食べましょう。」

朝食後、赤鬼は直ぐにトンネル工事に戻りました。
昼食後も直ぐにトンネル工事に戻りました。
夕食後、赤鬼がまたトンネル工事に戻ろうとしたので、心配した村人が声をかけます。

「もしかして赤鬼さん、トンネル祭りで1日工事が出来なくなる分をカバーしようとしてるじゃないか?」

赤鬼は、図星を指されたかのように黙ってしまいます。
村人達は、

日数は、気にしないで良い。
楽しく働いてくれれば良い。
無理なくケガ無く工事を終えるのが一番良い。

と言ってくれました。
赤鬼は、村人に心配をかけてはいけないと、夕食後の工事は止めましたが、朝食前に工事をしているようでした。
そんな赤鬼を村人は止めることなく…。
毎日、精のつく食事を用意することで、赤鬼をサポートするのでした。


数日が経ちました…。

ガッガッガッ…。
岩を砕きながらトンネル工事は進みます。

ボコッ!
小さな穴から、今まさに昇ろうとしている朝日が差し込んできました。

赤鬼は、最後の力を振り絞ります。

ガラガラガラ…。
とうとうトンネルが開通しました。

遠くに都が見えます。
赤鬼はトンネルを抜けると両手を振り上げ叫びました。

「うおぉぉーーーー!!」
(やった! やったよみんな!!)

赤鬼の顔は達成感で満ちていました。
その時!!

「放てーーっ!!」

ヒュンヒュンヒュン…。
草むらから…、木の影から…、弓を構えた沢山の兵士が現れ、一斉に矢を放ちます。

赤鬼は両手を振り上げたまま…、何が起こったのか理解出来ないまま亡くなりました。
ハリネズミのように無数の矢が赤鬼に刺さっています。
そのうちの一本が、心臓を貫いたのです。


兵士が、赤鬼の死亡の確認をしました。
隊長とおぼしき男が命令します。

「鬼を荷車へ積め!
都へ帰るぞ!!」

その隊長に近付く男が…。

「おおっ! お前の言うとおり鬼が現れた。
都に災いが訪れる前に退治する事が出来た。
礼を言わせて貰おう。」

「いえ、こちらこそ悪い赤鬼を退治して頂き、ありがとうございます。
これで村も救われました。」

男は、鬼嫌いの村人でした。
数日前、都を訪れた男は役人に嘘をつきました。

「私の村で悪事を働いていた赤鬼が、都で悪さをしようと考えています。
この数日の内にトンネルを掘って都に出てきます。
どうか退治してください!」

村人の嘘を信じた役人は、軍隊を派遣して鬼の出現に備えていたのでした。


兵士達は、赤鬼を乗せた荷車を引きながら都へ帰って行きます。
鬼嫌いの村人も村へ帰ります。

(せっかくのトンネルだが、村の奴らに見つかると面倒だ…。
仕方が無い、山道を帰るとするか。)


その頃、おばさんが朝食を持って赤鬼宅を訪れていました。

「赤鬼さーん! ご飯だよ!!」

返事が有りません。

(また、トンネルに行ってるのかねえ…。)

おばさんは、トンネルを覗き込みます。
すると、トンネルの出口に光が見えました。
おばさんは、村中に響くような声で叫びます。

「みんなーっ! トンネルが出来たよー!!」

声を聞いた人々が、続々とトンネルに集まってきます。


「赤鬼さんは?」

「多分、トンネルの向こうだよ。
日の出を見てるんじゃないかな。」

「あっ!? 今日は“トンネル祭り”じゃないか!!
赤鬼さん、祭りに間に合うようにトンネル掘ってくれてたんだ!!」

ここ数日、いつも以上に赤鬼が頑張っていた理由を知り村人は涙します。

「じゃあ、朝早いけど祭りにしよう!
赤鬼さんが、戻ってくるまでに沢山料理作ってさ!!」

村人達は、祭りの準備を始めます。

「僕達、赤鬼さんを迎えに行って来るよ。」

子供達が、長い長いトンネルに入って行きます。
青村からも人が集まり、気の早い祭り囃子が山々にこだまするのでした……。
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