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後日談
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1ヵ月が過ぎました…。
今日は、王子とエラの結婚式。
城下の人々も自由に城へ出入りして、2人を祝福します。
「お妃様。
本日は御結婚の儀、おめでとうございます。」
エレオノーラが、他人行儀に挨拶します。
「あなたが、お互い呼び捨てでって決めましたよね。
お妃様なんて呼び方は許しませんよ!
良いですね、エラ。」
エラは、笑顔で頬を膨らませます。
「ふふふっ…。」
2人は、楽しそうに笑います。
…
結婚式までの間、エラはエレオノーラの家で、お妃としての礼儀作法を学ぶことになりました。
2人は1番の友達になりました。
一緒のお風呂が苦手だったエラも、今はエレオノーラやその妹達と一緒にお風呂で歌を歌ったり、洗いっこしたりと大好きになりました。
エレオノーラの妹達は、“優しいエラ姉ちゃん”と“怖いエラ姉ちゃん”で、2人を呼び分けしていましたので、エレオノーラは「なんでよー!」と怒り心頭の日々でしたが、笑いの絶えない楽しい毎日でした。
…
今日、誰でも自由に城へ出入りできることを提案したのは、エレオノーラです。
エラがお妃としてやっていくには、この先、エラの家族が障害になるのでは?と、父親である大臣と相談していました。
しかし、虐待していたとはいえ、家族に違いありません。
話し合った結果、エラに対して愛情ある行動が見られた場合、王家の親族として迎え入れる事としました。
【最低10年間、何が有ろうと家へ帰る事は許されない。】
自由な城への出入りは、この条件でメイドとして働くことになった、エラに会うことができる、数少ない機会です。
家族であれば、エラの身を心配して、城へ来るはずだと考えました。
…
エラの家族が城へやって来ました。
「お母様。
シンデレラは、お城の仕事をちゃんとやっているのかしら?」
「いえ、お姉さま。
いくらあの子が健康だと言っても数倍過酷な仕事でしょ。
きっと力尽きて倒れている頃よ。」
「これ、お前達。
シンデレラには、毎年金貨50枚稼いで貰うのだから、そんな事を言ってはいけませんよ。」
継母と2人の姉…。
3人は、結婚のお祝いをするで無く、エラの心配をするで無く、疲れ果てているであろうエラの様子を見に来たのでした。
「あの~、すいません。
こちらで、エラと言う名の娘が働いているはずなのですが、取り次いで頂けませんか?」
城内に入り、メイドを見つけた3人は、エラの呼び出しを頼みます。
…
しばらくして、エラが遣って来ました…。
エレオノーラが…。
「はい。
私がエラですけど、どのような御用件でしょうか?」
3人は、思っていたエラと違うエラの登場に驚きました。
「申し訳ございません!
私どもが呼び出したのは、愛称がエラのシンデレラと申す者で、あなた様ではございません。」
継母は、慌てて訂正します。
「シンデレラさんですか…。
あぁ、ちょうど良いところに。
メイド長!
シンデレラと言う者が、この城で働いていますか?」
エレオノーラは、通りがかったメイド長に尋ねます。
「…シンデレラ…。
私は、ここで働く全ての人の名を憶えていますが、その様な名前の者は、この城におりません。」
「シンデレラは、いない…。」
エレオノーラは、3人を不審な目でにらみます。
「あっ! 申し訳ございません!
シンデレラと言うのは、家中での呼び名です。
こちらでも、そう名乗るよう、きつく言い付けて置いたのですが…。
本当の名は…。」
「…」
「何だっけ?」
「エラだから“ガブリエラ”?」
「いいえ、違うわ。
もっと生意気な名前よ!」
「じゃあ“エレオノーラ”とか…。」
3人は、シンデレラの本当の名前を思い出すことが出来ませんでした。
「衛兵!
この怪しい3人を投獄しなさい!!」
エレオノーラの命令で、衛兵が3人を取り押さえます。
「お待ちください!
シンデレラと言う者は、居るはずです!
どうか、お調べ下さい!!」
「栗色の髪の娘です!
年の頃は、あなた様と同じぐらいです!!」
「メイドとして働いています!
普通のメイドより、数倍過酷な仕事をしている筈です!!」
3人は、抗議の声を上げながら、牢獄へと連れて行かれました。
「うふふっ…。」
エレオノーラは、思わず笑ってしまいます。
(栗色の髪で、メイドの仕事をしているシンデレラなんて、もう何処にもいないのに…。)
そこへ、大臣が遣って来ました。
「やはり、駄目だったか…。」
「はい。
まさか、娘の名前すら思い出せないとは…。
もう縁を切ったほうが、良いと思います。」
「ならば、どうする?」
「しばらく牢で暮らしてもらって、国外追放すれば良いと考えますが…。」
「ふむ…。
では、その様に手配しよう。
それで、お妃様にお知らせしなくても良いのか?」
「私が、折を見て話しておきます。
姉2人が隣国へ嫁ぐ事になって、母親も一緒について行ったと嘘をつくことになりますが…。」
エレオノーラは、辛そうな顔を見せます。
「すまんな、お前に嫌な役回りをさせてしまって…。」
「気にしないで下さい。
だって、私は怖いエラ姉ちゃんだから…。」
そう言って、エレオノーラは、優しい微笑を浮かべるのでした……。
今日は、王子とエラの結婚式。
城下の人々も自由に城へ出入りして、2人を祝福します。
「お妃様。
本日は御結婚の儀、おめでとうございます。」
エレオノーラが、他人行儀に挨拶します。
「あなたが、お互い呼び捨てでって決めましたよね。
お妃様なんて呼び方は許しませんよ!
良いですね、エラ。」
エラは、笑顔で頬を膨らませます。
「ふふふっ…。」
2人は、楽しそうに笑います。
…
結婚式までの間、エラはエレオノーラの家で、お妃としての礼儀作法を学ぶことになりました。
2人は1番の友達になりました。
一緒のお風呂が苦手だったエラも、今はエレオノーラやその妹達と一緒にお風呂で歌を歌ったり、洗いっこしたりと大好きになりました。
エレオノーラの妹達は、“優しいエラ姉ちゃん”と“怖いエラ姉ちゃん”で、2人を呼び分けしていましたので、エレオノーラは「なんでよー!」と怒り心頭の日々でしたが、笑いの絶えない楽しい毎日でした。
…
今日、誰でも自由に城へ出入りできることを提案したのは、エレオノーラです。
エラがお妃としてやっていくには、この先、エラの家族が障害になるのでは?と、父親である大臣と相談していました。
しかし、虐待していたとはいえ、家族に違いありません。
話し合った結果、エラに対して愛情ある行動が見られた場合、王家の親族として迎え入れる事としました。
【最低10年間、何が有ろうと家へ帰る事は許されない。】
自由な城への出入りは、この条件でメイドとして働くことになった、エラに会うことができる、数少ない機会です。
家族であれば、エラの身を心配して、城へ来るはずだと考えました。
…
エラの家族が城へやって来ました。
「お母様。
シンデレラは、お城の仕事をちゃんとやっているのかしら?」
「いえ、お姉さま。
いくらあの子が健康だと言っても数倍過酷な仕事でしょ。
きっと力尽きて倒れている頃よ。」
「これ、お前達。
シンデレラには、毎年金貨50枚稼いで貰うのだから、そんな事を言ってはいけませんよ。」
継母と2人の姉…。
3人は、結婚のお祝いをするで無く、エラの心配をするで無く、疲れ果てているであろうエラの様子を見に来たのでした。
「あの~、すいません。
こちらで、エラと言う名の娘が働いているはずなのですが、取り次いで頂けませんか?」
城内に入り、メイドを見つけた3人は、エラの呼び出しを頼みます。
…
しばらくして、エラが遣って来ました…。
エレオノーラが…。
「はい。
私がエラですけど、どのような御用件でしょうか?」
3人は、思っていたエラと違うエラの登場に驚きました。
「申し訳ございません!
私どもが呼び出したのは、愛称がエラのシンデレラと申す者で、あなた様ではございません。」
継母は、慌てて訂正します。
「シンデレラさんですか…。
あぁ、ちょうど良いところに。
メイド長!
シンデレラと言う者が、この城で働いていますか?」
エレオノーラは、通りがかったメイド長に尋ねます。
「…シンデレラ…。
私は、ここで働く全ての人の名を憶えていますが、その様な名前の者は、この城におりません。」
「シンデレラは、いない…。」
エレオノーラは、3人を不審な目でにらみます。
「あっ! 申し訳ございません!
シンデレラと言うのは、家中での呼び名です。
こちらでも、そう名乗るよう、きつく言い付けて置いたのですが…。
本当の名は…。」
「…」
「何だっけ?」
「エラだから“ガブリエラ”?」
「いいえ、違うわ。
もっと生意気な名前よ!」
「じゃあ“エレオノーラ”とか…。」
3人は、シンデレラの本当の名前を思い出すことが出来ませんでした。
「衛兵!
この怪しい3人を投獄しなさい!!」
エレオノーラの命令で、衛兵が3人を取り押さえます。
「お待ちください!
シンデレラと言う者は、居るはずです!
どうか、お調べ下さい!!」
「栗色の髪の娘です!
年の頃は、あなた様と同じぐらいです!!」
「メイドとして働いています!
普通のメイドより、数倍過酷な仕事をしている筈です!!」
3人は、抗議の声を上げながら、牢獄へと連れて行かれました。
「うふふっ…。」
エレオノーラは、思わず笑ってしまいます。
(栗色の髪で、メイドの仕事をしているシンデレラなんて、もう何処にもいないのに…。)
そこへ、大臣が遣って来ました。
「やはり、駄目だったか…。」
「はい。
まさか、娘の名前すら思い出せないとは…。
もう縁を切ったほうが、良いと思います。」
「ならば、どうする?」
「しばらく牢で暮らしてもらって、国外追放すれば良いと考えますが…。」
「ふむ…。
では、その様に手配しよう。
それで、お妃様にお知らせしなくても良いのか?」
「私が、折を見て話しておきます。
姉2人が隣国へ嫁ぐ事になって、母親も一緒について行ったと嘘をつくことになりますが…。」
エレオノーラは、辛そうな顔を見せます。
「すまんな、お前に嫌な役回りをさせてしまって…。」
「気にしないで下さい。
だって、私は怖いエラ姉ちゃんだから…。」
そう言って、エレオノーラは、優しい微笑を浮かべるのでした……。
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