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わたくしの夫
しおりを挟むはぁ……
陛下とわたくしのため息が揃って聞こえた。陛下をみると残念な子を見る目でアレンが出ていった扉を見つめていた。
「……陛下。」
そう、優しく声をかける王妃に陛下は視線を合わせた。
「まずは…お疲れ様でした。今日は気苦労が多かったでしょう?無事にすんで、ひとまずわたくしもほっとしておりますわ。」
「………そうだな。」
気まずそうにそう返す陛下にわたくしは苦笑してしまう。
「あの子たちがやってしまった事に、国王としてその沙汰が正しいことかわたくしにはわかりません。
……ですが、わたくしの決断は間違っておりました。王妃としてもですが、母親としても、誤った決断だったと思っておりますわ。
………陛下。あなが無慈悲に沙汰を下したようにはわたくしには見えませんでした。とても苦悩されているように見えましたもの。沙汰を取り消されたあの時も。気丈に振る舞ってらしたけど、安堵されているのがまるわかりでしたわ。
……陛下がちゃんとあの子達の父親なのだと思い直されましたわ。」
申し訳なさそうにそう言うわたくしに陛下は眉を潜め、その意図を汲み取ろうと考えを巡らせているようだった。
「わたくしには記憶がございませんでしょう?ですから、陛下がわたくしの夫だという実感も今まで湧きませんでしたし、わたくしを愛していないから、あの子達にもあまり目をかけてこられなかった…のだとばかり。
でも、ちゃんと親として愛情を持っていらっしゃると知って嬉しく思いましたわ。」
ふふっと嬉しそうにそう話すわたくしに陛下は口を開け、そうまさに、ぽかーんとした表情で呆けたあと握られた拳がふるふると震えていた。
「ソフィ……わたしは…。いや、記憶がないのだから仕方ないか。」
陛下は何かを小さく口にしたが、すぐに落胆したように言葉を止めてしまった。
「王妃よ、あの子達が愚行を行ったのは、私たちの責任だ。」
「はい、陛下。」
「きちんと沙汰は下す。今度は親として…な。
あの子達がきちんと人として誇れる人間になれるように……どうすればよいか、一緒に考えてはくれないか。」
しっかりとわたくしを見つめる陛下の目はもうわたくしが見つめ返してもそらされる事はなかった。
「…………。はい、勿論ですわ。」
そんな少しの事にも、わたくしは嬉しかった。
あの子達の父親としてではなく、少しだけ……陛下を夫だと思えた瞬間だった。
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