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20 私の想いは曲げない。
しおりを挟む初めてみるきれいなアレンの笑顔に百合香の胸は切なさを覚えた。
先程閉じ込めたはずの想いすらも、溢れてきそうで、百合香は手を握りしめ、じっと耐えていた。
「……女神様は恨んでいましたか、この地を、わたしたちを。」
悲しそうに微笑みながら、アレンは問いかけてきた。
『いいえ……。恨んでなどいませんでしたよ。
けれど、私が女神に聞いた話とそのおとぎ話は違いました。
愛する王の死後、女神様は一度天へと戻っています。それから、女神様は愛する子供たちの行く末を……天から見守っていたそうです。
そして、愚王の時代があった。その時にまた助けようと降りた場所が教会だったそうです。しかし、それは愚王と教会の罠だった。その時に女神様は囚われたと聞いています。』
「そうでしたか…………。言い伝えられてきた長い時の流れの中で、きっと話が変わってしまっていたのですね。
ですが、王族と教会により女神様を捕らえていた事実は変わらない。
本当に愚かなことだ。女神様のお蔭でこの地はあるというのに。
そして、おとぎ話なんかにしてそれを忘れている我々王族も、何も出来なかった自分も……本当に……愚かだ。」
悔いるように話すアレンに百合香は何も声をかけることが出来なかった。百合香も200年の間女神様を助けに来れなかった。そんな自分を責めていたから。
『女神様が天に帰るとき、女神様は私にいいました。
この地の人々を救ってあげてほしいと。
私が救ってあげたいけど、そんな力がもう残されていないからと。
私は……どうしてそこまでって思いました。女神様にそんな仕打ちをした国なんて見捨てればいいのにって。…………すみません。アレン様の国なのに。』
「…………いいえ。そう思われるのも当然です。」
『ボロボロになって、力を奪われて……それでも、女神様は笑っていました。それでも、民たちが愛しいと。救いたいと。
だから、私は女神様の願いを叶えてあげたい。より多くの民を救いたいのです。そのためには、病の元となるものから取り除き、死に近い人々から助けなくてはならないと思うのです。そうしなければ、間に合わなくなります。大勢の民が死ぬのです。』
どうか、アレンには私のこの気持ちを知ってほしい。共感してほしい。そう懇願するように少しずつ声に力がこもっていた。
アレンは終始、真剣な表情で耳を傾けてくれた。
アレンもレオや国王のように考えていたら……
私の想いを否定されたらと……
それでも、
『わたしは、貴族や王族など、権力に捕らわれたりはしません。
わたしは、私の力を一番必要とする人々のために、ここにいるのですから。』
私の意思は曲げない。そう想いを乗せて、アレンの瞳をじっとみつめた。
何秒そうしていただろうか。
アレンは本当に嬉しそうに微笑んだ。
「わたしもそう思います。聖女さまが同じ考えでよかった。
ならば、すぐに城を出ましょう。朝になれば追っ手が来る。
城の裏に少数ですが私が集めた騎士団を待機させています。急ぎましょう。」
城を巡回する兵士たちに気づかれないように、隠れながら、私たちは裏門へとたどり着き、逃げるように城を後にした。
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