16 / 20
16 晩餐会
しおりを挟む聖女さま…!本当に聖女さまが…!!!
レオにエスコートされながら百合香が大広間へと辿り着くと、貴族たちが立ち上がり歓喜の声をあげた。
百合香はその熱気に戸惑いながらもなんとか笑顔を保ち続けた。国王が手で制するとようやく貴族たちは声を抑えたものの、目に焼き付けようと百合香を凝視し続けていた。
レオに促され百合香が席に着くとレオも隣の席へと着いた。全員が揃ったのを確認して国王が話し始めた。
国王「今宵も集まってくれて礼をいう。みなももう知っているだろうが…お告げの通り、この度聖女さまが降りてきてくださった。きっとこの先の未来は明るいものとなるだろう。
そして、わたしたちの義務を果たすときだ。みな苦しいだろうがこれからも支え合い、この国を支えてほしい。さらなる国の発展とこれからの明るい未来を祝して……女神さまのご加護を!」
貴族たち「「「女神さまのご加護を!」」」
みな一様にグラスを掲げ、少しだけ入った食前酒を飲み干した。
隣をみるとレオも同じように飲み干している。
視線に気づいたレオは百合香に上体を寄せると小声で説明をしてくれた。
レオ「女神さまのご加護をというのは、祝いの席などで必ず皆で口にするお決まりの言葉のようなものです。この国が女神さまによって創られたこと、そしてご加護を頂いていることへの感謝を込めて、その言葉と食前酒を飲み干すことが行われています。貴族たちは男性はお酒を飲み、女性は祈りを捧げるのです。今後の祝いの席でも、ただ心で祈りながら見守るだけで大丈夫ですよ。説明していなくて、申し訳ありません。」
日本で言う、乾杯や頂きますと同じことなのだろう……。女性は何もしないとのことでマナー違反ではないことに安堵し、申し訳なさそうに謝るレオに大丈夫ですよと微笑み返した。
前もって注意されていたのだろう。貴族たちは百合香に話したそうに視線を向けながらも声をかけるものはいなかった。そのまま和やかに食事会は進んだ。
公爵A「国王。それで女神さまはどのような順番で癒して回られるのですかな?三大公爵家である我が領地にぜひはやくおいで頂きたい。」
巨体を揺らしながら公爵Aが立ち上がり、声をあげた。
それを皮切りに、同じ公爵であろうもう一人の男も立ち上がり、声をあげた。
「いいえ!わたしの領地に!」
「ぜひ我が領地に!」
何人もの貴族たちが立ち上がり、声をあげる。
和やかな晩餐は言い争う声へと変わった。
国王「いい加減にしないか!!!
順番はもう決まっている。追ってその文を届ける。それまで待っておれ。
今宵はもう終いにしよう。みな頭を冷やすのだ。」
国王はそういうと王妃を伴い大広間をあとにした。第一皇子のアレンもそれに続き席を立つとレオへと視線を向けた。レオは頷き、百合香を優しくたたせると扉へとエスコートしてくれた。貴族たちがまだ話し合っているが、レオは振り向かずそのまま百合香を連れ大広間をあとにした。
0
お気に入りに追加
54
あなたにおすすめの小説
婚約破棄されたら魔法が解けました
かな
恋愛
「クロエ・ベネット。お前との婚約は破棄する。」
それは学園の卒業パーティーでの出来事だった。……やっぱり、ダメだったんだ。周りがザワザワと騒ぎ出す中、ただ1人『クロエ・ベネット』だけは冷静に事実を受け止めていた。乙女ゲームの世界に転生してから10年。国外追放を回避する為に、そして后妃となる為に努力し続けて来たその時間が無駄になった瞬間だった。そんな彼女に追い打ちをかけるかのように、王太子であるエドワード・ホワイトは聖女を新たな婚約者とすることを発表した。その後はトントン拍子にことが運び、冤罪をかけられ、ゲームのシナリオ通り国外追放になった。そして、魔物に襲われて死ぬ。……そんな運命を辿るはずだった。
「こんなことなら、転生なんてしたくなかった。元の世界に戻りたい……」
あろうことか、最後の願いとしてそう思った瞬間に、全身が光り出したのだ。そして気がつくと、なんと前世の姿に戻っていた!しかもそれを第二王子であるアルベルトに見られていて……。
「……まさかこんなことになるなんてね。……それでどうする?あの2人復讐でもしちゃう?今の君なら、それができるよ。」
死を覚悟した絶望から転生特典を得た主人公の大逆転溺愛ラブストーリー!
※最初の5話は毎日18時に投稿、それ以降は毎週土曜日の18時に投稿する予定です
最愛の側妃だけを愛する旦那様、あなたの愛は要りません
abang
恋愛
私の旦那様は七人の側妃を持つ、巷でも噂の好色王。
後宮はいつでも女の戦いが絶えない。
安心して眠ることもできない後宮に、他の妃の所にばかり通う皇帝である夫。
「どうして、この人を愛していたのかしら?」
ずっと静観していた皇后の心は冷めてしまいう。
それなのに皇帝は急に皇后に興味を向けて……!?
「あの人に興味はありません。勝手になさい!」
懐妊を告げずに家を出ます。最愛のあなた、どうかお幸せに。
梅雨の人
恋愛
最愛の夫、ブラッド。
あなたと共に、人生が終わるその時まで互いに慈しみ、愛情に溢れる時を過ごしていけると信じていた。
その時までは。
どうか、幸せになってね。
愛しい人。
さようなら。
余命宣告を受けたので私を顧みない家族と婚約者に執着するのをやめることにしました
結城芙由奈
恋愛
【余命半年―未練を残さず生きようと決めた。】
私には血の繋がらない父と母に妹、そして婚約者がいる。しかしあの人達は私の存在を無視し、空気の様に扱う。唯一の希望であるはずの婚約者も愛らしい妹と恋愛関係にあった。皆に気に入られる為に努力し続けたが、誰も私を気に掛けてはくれない。そんな時、突然下された余命宣告。全てを諦めた私は穏やかな死を迎える為に、家族と婚約者に執着するのをやめる事にした―。
2021年9月26日:小説部門、HOTランキング部門1位になりました。ありがとうございます
*「カクヨム」「小説家になろう」にも投稿しています
※2023年8月 書籍化
もう彼女でいいじゃないですか
キムラましゅろう
恋愛
ある日わたしは婚約者に婚約解消を申し出た。
常にわたし以外の女を腕に絡ませている事に耐えられなくなったからだ。
幼い頃からわたしを溺愛する婚約者は婚約解消を絶対に認めないが、わたしの心は限界だった。
だからわたしは行動する。
わたしから婚約者を自由にするために。
わたしが自由を手にするために。
残酷な表現はありませんが、
性的なワードが幾つが出てきます。
苦手な方は回れ右をお願いします。
小説家になろうさんの方では
ifストーリーを投稿しております。
愛を知ってしまった君は
梅雨の人
恋愛
愛妻家で有名な夫ノアが、夫婦の寝室で妻の親友カミラと交わっているのを目の当たりにした妻ルビー。
実家に戻ったルビーはノアに離縁を迫る。
離縁をどうにか回避したいノアは、ある誓約書にサインすることに。
妻を誰よりも愛している夫ノアと愛を教えてほしいという妻ルビー。
二人の行きつく先はーーーー。
「お前を妻だと思ったことはない」と言ってくる旦那様と離婚した私は、幼馴染の侯爵から溺愛されています。
木山楽斗
恋愛
第二王女のエリームは、かつて王家と敵対していたオルバディオン公爵家に嫁がされた。
因縁を解消するための結婚であったが、現当主であるジグールは彼女のことを冷遇した。長きに渡る因縁は、簡単に解消できるものではなかったのである。
そんな暮らしは、エリームにとって息苦しいものだった。それを重く見た彼女の兄アルベルドと幼馴染カルディアスは、二人の結婚を解消させることを決意する。
彼らの働きかけによって、エリームは苦しい生活から解放されるのだった。
晴れて自由の身になったエリームに、一人の男性が婚約を申し込んできた。
それは、彼女の幼馴染であるカルディアスである。彼は以前からエリームに好意を寄せていたようなのだ。
幼い頃から彼の人となりを知っているエリームは、喜んでその婚約を受け入れた。二人は、晴れて夫婦となったのである。
二度目の結婚を果たしたエリームは、以前とは異なる生活を送っていた。
カルディアスは以前の夫とは違い、彼女のことを愛して尊重してくれたのである。
こうして、エリームは幸せな生活を送るのだった。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる