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第7章 平穏は遥か遠く
254話 幸運(ノロイ)
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「黙って命令を遂行しなさい。余計な事は考えるなと指示を出したでしょう?」
「はい」
堂々とした指示にクシナダは唖然とする。もはや隠す意味も無いと理解したか。いや、あるいは……
「アンタが元凶かッ!!」
「守護者と財団は何をするつもりだッ、答えろ!!」
「フフッ、さあてどうしようかなぁ」
やはり挑発。不測の事態でも崩さない不遜な態度に2人は貯め込んで来た怒りを吐き出すが、この女の前では何の意味も成さず。やはり只者ではない。未知数の実力ではなく、あの異常な性格が、だ。
「操り人形とお人形さんゴッコしたいなら宇宙の果てでやってろっての!!」
「でもそれじゃ寂しいでしょう?観客は多い方が良い。さぁ、続きを始めましょうか」
「お人形さんってのは否定しないのね」
「フフッ、急ごしらえの割には精巧に出来ているでしょう?」
何をどうしようが女は微塵も動じず、挑発を軽くいなした。
「思考含む内面まで完璧に模倣させた上でちょっとだけ情動の枷を外してみたの。より劇的なドラマを演出する為にね。素直に騙されてくれるなぁんて思ってなかったけど、でもやっぱり駄目ね。騙される側の意志が強すぎる……本当に残念よ、伊佐凪竜一」
人形はお前だ、と愚痴るクシナダを他所に女は語り続ける。傲慢不遜。傍若無人。何処までも自己中心的で、己以外の心情など微塵も気に掛けないその様は女の悪辣な内面そのもの。が、しかし最後だけは違った。伊佐凪竜一。妖しく蠢く女の紅が英雄の名をなぞったその瞬間、別の感情が僅かに覗いた。気のせいではなく、確かに。
「標的は俺達だな?」
「えぇ、そうよ。その意志と行動力を止めないと賛同する人がどんどん増えちゃうんですもの。堪ったものでは無いわ」
女の言葉に、口調に、身に纏う雰囲気に艶が混じる。マスクで隠れた目はきっと欲情と煽情に染まっている、そんな気がする。極度のサディストだ、あの女は。
「ソレ、婚姻の儀に関係あるのよね?」
「そうよ」
「えっ?」
「ちょっと、随分はっきりと認めるわね?」
リコリスは言葉だけで2人を翻弄し続ける。2人が驚くのも無理はなく、首謀者の1人と思しき人物が"明日何かを起こすつもりだ"と、言ってのけたのだ。数少ない情報を積み上げ、推論に推論を重ねて得た曖昧な理由を元に動く現状は正しく薄氷を履むが如し。
が、女の言動がこれまでの危うい現状を一気にひっくり返した。言わずもがな、全く無意味な行為だ。このまま目的不明のまま足掻いてもらい、精神を疲弊させた方が明らかに有益なのに。この女、一体何を考えている?暴露の良し悪しが区別出来ない程に頭が悪いとは思えない。なら、この行動に一体何の利があるのだ。
「驚く事は無いでしょう?特にそこのお嬢さんは既に知っているんでしょう?」
女の顔が、不意にクシナダを向いた。相変わらずマスクで隠され感情が読めないが、今度は感情が読める。口調が、恐ろしく冷めたい。伊佐凪竜一に向ける感情とは真逆、底冷えする様な冷酷さがほんの僅かだけ顔を見せた。
「肝心な部分は抜けてるけどね。全く、アンタのお仲間はホントにいいところで邪魔してくれるわ」
「え?一体何の話?」
「姫の力よ。教えてあげましょうか?いいわよ、私と貴方の仲だものね」
唖然。伊佐凪竜一も、クシナダもまさか立て続けに驚かされるとは思わず。
「ちょっとアンタ、さっきから何なのよ!?」
逐一情緒を乱し、否応なく意識させられる状況にクシナダが堪らず咆える。先程からの女の言動には一切の利が無い。黙っておけば良いように躍らせる事さえ可能なのに、だがリコリスはあっけらかんと暴露すると宣言した。
明日の儀に関する重大な何か。明日起こるであろう何かの糸口となる情報を前にすれば、伊佐凪竜一もクシナダも動揺が隠し切れず、噴出する。決して口を滑らせた訳では無く、明確な意志で2人に真相の一端を教えようとしているのだから無理もない。しかも、彼等が追い求めた理由だから尚の事。
「別に。ただ……そう、約束しましたものね。私と貴方の大切な約束。勿論、彼の強い意志に敬意を表する意味もありますよ」
女は妖艶な笑みと共に理由を語る。マスクの下に引かれた赤い紅が妖しく、男を蠱惑する。
「本心、言いなさいよ?」
「知ったところで何も出来ないからよ。さて、アナタは興味あるでしょう?姫の力、幸運の星。いえ……呪いの星と言った方が正しいでしょうね」
「呪い?」
「そう、デウス家に受け継がれる幸運の星と言う呪い。その家系は代々一人の女を生み、星を継がせる。言い換えるならば幸運の星という力を入れておく為の器、デウス家とはそう言う存在なのよ。そして幸運の星の加護の元で連合は繁栄を謳歌した。まるで人柱ね。だけど、星が常に連合に良い結果を与え続けたその結果がどうなったか分かるかしら?」
「皆が頼るようになったのか?」
「フフッ。今度は正解よ、オメデトウ。そう、誰もが星を頼るようになった。神の奇跡を当然と受け止めるようになった。それが当たり前だと、奇跡は自分達の為に存在すると考える様になった。堕落の始まりよ」
堕落。その言葉は私の心に鋭く突き刺さった。あぁ、思い当たる節ならば幾らでもある。旗艦もそうだったのだから。
「堕落?」
「お嬢さんは心当たりあるでしょう?困った事が有れば幸運の星に祈る、連合における極ありふれた光景も呪いの現れなのよ。幸運は有って当然、受けて当たり前。流石に個々人の不幸までは制御出来ませんけど、でも大きな不幸は起きないから相対的な幸運の加護は得られているの。でも、たった1人だけ不幸な人がいますよね?ソレが誰か、貴方ならわかるでしょう伊佐凪竜一?」
蠱惑的な瞳と赤い口紅の女は伊佐凪竜一に熱っぽく見つめる。マスクで隠れているが、それでもはっきりと分かる。映像越しに伝わるのは、まるで獲物を見つめる爬虫類の様な感覚、あるいは死の予感。そんな嫌な気配に充てられた彼は問いかけに答えられず、口ごもる。
「フフッ、今度はだんまりですか?貴方は知っている筈。誰もが勝手に期待を寄せ、期待した結果が出せなければ勝手に落胆し、ソレが何時しか失望を通り過ぎ、怒りへと変化する様を。ココに来るまでに見てきた、経験した悪意をフォルトゥナ=デウス・マキナと言う女は生まれながらに背負っているのよ」
恍惚、あるいは陶酔。己に酔う女は、楽しそうに、嬉しそうに、まるで見せつける様に、私を見ろとばかりに大げさな身振り手振りを加えながら語りを続ける。まるで演劇だ。下品だが、人目を惹くのは確かで、だから目が離せない。快感に酔いしれる女の口調と演技は尚も続き……
「彼女が次代を生むまで……いいえ、星を次に伝えても悪意は尚も彼女を苛み続ける。死ぬまで、そして死んだ後も。デウス家は、守るべき無数の民が作り出す悪意の渦に延々と囚われ、抜け出せない!!」
まるで快楽の絶頂と錯覚する様な口調で語りを締めると、余韻に浸る様に口を閉ざした。幕間の様な静寂が聖堂を包む。
「それが、呪いなの?」
「だが、今回の件と何の関係がある?」
「ヒントはココまで、後は自力で考えなさいな。だけど1つだけ確定している事がある。全ては、婚姻の儀が執り行われる明日決まると言う事よ」
「必ず止める!!」
僅かに横たわった静寂を打ち破る叫びが聖堂を震わせた。伊佐凪竜一の覚悟は揺るがず、寧ろ余計に固まった。明日、何かが起こる。姫が狙われている。神に縋る多くの人間は少女に寄りかかることばかり考え、己が身も少女も顧みない。つまり、姫は孤立無援。ならば、せめて自分だけは少女を守らねばならない。且つて守られた様に。恐らく、ソレが彼が動く理由。
「えぇ、アナタならばそう言うと思いましたわ。でもソレは無理よ?」
「答えを勝手に決めるなッ!!」
「そーゆーこと。ツー訳でブッ飛ばす!!」
何故、こんな話をしたのか分からない。少なくとも正々堂々とした性格ではない事は過去の搦め手から十分に理解できる。何か意味がある。しかしその意味を考える必要はない。
伊佐凪竜一は力強く一歩を踏み込むと躊躇いなくルミナに向け突撃した。同時。クシナダもガブリエル目掛け突っ込む。無理と言われた程度で彼が引き下がる彼ではない。寧ろ明確な目的と、自らがこれまで辿った道筋から辿り着いた結論が正しいと知ったその目には強い決意が宿る。
一方、相対する偽ルミナもまた退かない。彼が振り下ろした刀を間一髪で回避すると、勢いのままに一回転しながら蹴りを繰り出した。その流れる様な動作と揺れ動く長い銀色の髪が作る軌跡は本人と同じ美しさに溢れ、また振り抜かれた脚が伊佐凪竜一を捉えた瞬間に発生した大きな音と衝撃もまた本人さながらの威力を想起させる。
が、しかし今度は先程までとは全く違う結果に終わった。伊佐凪竜一は彼女の渾身の一撃を受けても微動だにしなかった。
「はい」
堂々とした指示にクシナダは唖然とする。もはや隠す意味も無いと理解したか。いや、あるいは……
「アンタが元凶かッ!!」
「守護者と財団は何をするつもりだッ、答えろ!!」
「フフッ、さあてどうしようかなぁ」
やはり挑発。不測の事態でも崩さない不遜な態度に2人は貯め込んで来た怒りを吐き出すが、この女の前では何の意味も成さず。やはり只者ではない。未知数の実力ではなく、あの異常な性格が、だ。
「操り人形とお人形さんゴッコしたいなら宇宙の果てでやってろっての!!」
「でもそれじゃ寂しいでしょう?観客は多い方が良い。さぁ、続きを始めましょうか」
「お人形さんってのは否定しないのね」
「フフッ、急ごしらえの割には精巧に出来ているでしょう?」
何をどうしようが女は微塵も動じず、挑発を軽くいなした。
「思考含む内面まで完璧に模倣させた上でちょっとだけ情動の枷を外してみたの。より劇的なドラマを演出する為にね。素直に騙されてくれるなぁんて思ってなかったけど、でもやっぱり駄目ね。騙される側の意志が強すぎる……本当に残念よ、伊佐凪竜一」
人形はお前だ、と愚痴るクシナダを他所に女は語り続ける。傲慢不遜。傍若無人。何処までも自己中心的で、己以外の心情など微塵も気に掛けないその様は女の悪辣な内面そのもの。が、しかし最後だけは違った。伊佐凪竜一。妖しく蠢く女の紅が英雄の名をなぞったその瞬間、別の感情が僅かに覗いた。気のせいではなく、確かに。
「標的は俺達だな?」
「えぇ、そうよ。その意志と行動力を止めないと賛同する人がどんどん増えちゃうんですもの。堪ったものでは無いわ」
女の言葉に、口調に、身に纏う雰囲気に艶が混じる。マスクで隠れた目はきっと欲情と煽情に染まっている、そんな気がする。極度のサディストだ、あの女は。
「ソレ、婚姻の儀に関係あるのよね?」
「そうよ」
「えっ?」
「ちょっと、随分はっきりと認めるわね?」
リコリスは言葉だけで2人を翻弄し続ける。2人が驚くのも無理はなく、首謀者の1人と思しき人物が"明日何かを起こすつもりだ"と、言ってのけたのだ。数少ない情報を積み上げ、推論に推論を重ねて得た曖昧な理由を元に動く現状は正しく薄氷を履むが如し。
が、女の言動がこれまでの危うい現状を一気にひっくり返した。言わずもがな、全く無意味な行為だ。このまま目的不明のまま足掻いてもらい、精神を疲弊させた方が明らかに有益なのに。この女、一体何を考えている?暴露の良し悪しが区別出来ない程に頭が悪いとは思えない。なら、この行動に一体何の利があるのだ。
「驚く事は無いでしょう?特にそこのお嬢さんは既に知っているんでしょう?」
女の顔が、不意にクシナダを向いた。相変わらずマスクで隠され感情が読めないが、今度は感情が読める。口調が、恐ろしく冷めたい。伊佐凪竜一に向ける感情とは真逆、底冷えする様な冷酷さがほんの僅かだけ顔を見せた。
「肝心な部分は抜けてるけどね。全く、アンタのお仲間はホントにいいところで邪魔してくれるわ」
「え?一体何の話?」
「姫の力よ。教えてあげましょうか?いいわよ、私と貴方の仲だものね」
唖然。伊佐凪竜一も、クシナダもまさか立て続けに驚かされるとは思わず。
「ちょっとアンタ、さっきから何なのよ!?」
逐一情緒を乱し、否応なく意識させられる状況にクシナダが堪らず咆える。先程からの女の言動には一切の利が無い。黙っておけば良いように躍らせる事さえ可能なのに、だがリコリスはあっけらかんと暴露すると宣言した。
明日の儀に関する重大な何か。明日起こるであろう何かの糸口となる情報を前にすれば、伊佐凪竜一もクシナダも動揺が隠し切れず、噴出する。決して口を滑らせた訳では無く、明確な意志で2人に真相の一端を教えようとしているのだから無理もない。しかも、彼等が追い求めた理由だから尚の事。
「別に。ただ……そう、約束しましたものね。私と貴方の大切な約束。勿論、彼の強い意志に敬意を表する意味もありますよ」
女は妖艶な笑みと共に理由を語る。マスクの下に引かれた赤い紅が妖しく、男を蠱惑する。
「本心、言いなさいよ?」
「知ったところで何も出来ないからよ。さて、アナタは興味あるでしょう?姫の力、幸運の星。いえ……呪いの星と言った方が正しいでしょうね」
「呪い?」
「そう、デウス家に受け継がれる幸運の星と言う呪い。その家系は代々一人の女を生み、星を継がせる。言い換えるならば幸運の星という力を入れておく為の器、デウス家とはそう言う存在なのよ。そして幸運の星の加護の元で連合は繁栄を謳歌した。まるで人柱ね。だけど、星が常に連合に良い結果を与え続けたその結果がどうなったか分かるかしら?」
「皆が頼るようになったのか?」
「フフッ。今度は正解よ、オメデトウ。そう、誰もが星を頼るようになった。神の奇跡を当然と受け止めるようになった。それが当たり前だと、奇跡は自分達の為に存在すると考える様になった。堕落の始まりよ」
堕落。その言葉は私の心に鋭く突き刺さった。あぁ、思い当たる節ならば幾らでもある。旗艦もそうだったのだから。
「堕落?」
「お嬢さんは心当たりあるでしょう?困った事が有れば幸運の星に祈る、連合における極ありふれた光景も呪いの現れなのよ。幸運は有って当然、受けて当たり前。流石に個々人の不幸までは制御出来ませんけど、でも大きな不幸は起きないから相対的な幸運の加護は得られているの。でも、たった1人だけ不幸な人がいますよね?ソレが誰か、貴方ならわかるでしょう伊佐凪竜一?」
蠱惑的な瞳と赤い口紅の女は伊佐凪竜一に熱っぽく見つめる。マスクで隠れているが、それでもはっきりと分かる。映像越しに伝わるのは、まるで獲物を見つめる爬虫類の様な感覚、あるいは死の予感。そんな嫌な気配に充てられた彼は問いかけに答えられず、口ごもる。
「フフッ、今度はだんまりですか?貴方は知っている筈。誰もが勝手に期待を寄せ、期待した結果が出せなければ勝手に落胆し、ソレが何時しか失望を通り過ぎ、怒りへと変化する様を。ココに来るまでに見てきた、経験した悪意をフォルトゥナ=デウス・マキナと言う女は生まれながらに背負っているのよ」
恍惚、あるいは陶酔。己に酔う女は、楽しそうに、嬉しそうに、まるで見せつける様に、私を見ろとばかりに大げさな身振り手振りを加えながら語りを続ける。まるで演劇だ。下品だが、人目を惹くのは確かで、だから目が離せない。快感に酔いしれる女の口調と演技は尚も続き……
「彼女が次代を生むまで……いいえ、星を次に伝えても悪意は尚も彼女を苛み続ける。死ぬまで、そして死んだ後も。デウス家は、守るべき無数の民が作り出す悪意の渦に延々と囚われ、抜け出せない!!」
まるで快楽の絶頂と錯覚する様な口調で語りを締めると、余韻に浸る様に口を閉ざした。幕間の様な静寂が聖堂を包む。
「それが、呪いなの?」
「だが、今回の件と何の関係がある?」
「ヒントはココまで、後は自力で考えなさいな。だけど1つだけ確定している事がある。全ては、婚姻の儀が執り行われる明日決まると言う事よ」
「必ず止める!!」
僅かに横たわった静寂を打ち破る叫びが聖堂を震わせた。伊佐凪竜一の覚悟は揺るがず、寧ろ余計に固まった。明日、何かが起こる。姫が狙われている。神に縋る多くの人間は少女に寄りかかることばかり考え、己が身も少女も顧みない。つまり、姫は孤立無援。ならば、せめて自分だけは少女を守らねばならない。且つて守られた様に。恐らく、ソレが彼が動く理由。
「えぇ、アナタならばそう言うと思いましたわ。でもソレは無理よ?」
「答えを勝手に決めるなッ!!」
「そーゆーこと。ツー訳でブッ飛ばす!!」
何故、こんな話をしたのか分からない。少なくとも正々堂々とした性格ではない事は過去の搦め手から十分に理解できる。何か意味がある。しかしその意味を考える必要はない。
伊佐凪竜一は力強く一歩を踏み込むと躊躇いなくルミナに向け突撃した。同時。クシナダもガブリエル目掛け突っ込む。無理と言われた程度で彼が引き下がる彼ではない。寧ろ明確な目的と、自らがこれまで辿った道筋から辿り着いた結論が正しいと知ったその目には強い決意が宿る。
一方、相対する偽ルミナもまた退かない。彼が振り下ろした刀を間一髪で回避すると、勢いのままに一回転しながら蹴りを繰り出した。その流れる様な動作と揺れ動く長い銀色の髪が作る軌跡は本人と同じ美しさに溢れ、また振り抜かれた脚が伊佐凪竜一を捉えた瞬間に発生した大きな音と衝撃もまた本人さながらの威力を想起させる。
が、しかし今度は先程までとは全く違う結果に終わった。伊佐凪竜一は彼女の渾身の一撃を受けても微動だにしなかった。
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