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鬼さんこちら、手の鳴る方へ。
危険人物B *???side
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【side:???】
バタバタとした一日が終わり、夜になれば疲れ果てた生徒たちは早く床に着いた。
明日からまた普段と変わらない日常が始まる。
明日の授業に備え、殆どの生徒たちが夢の中へ旅立った深夜の学生寮一室――上階、生徒会会長・玉城由良の部屋。
広さだけはあるどこか殺風景な部屋の中。部屋の主である玉城由良は、ベッドの上で寛ぐ少年に目を向ける。
一糸纏わぬ姿で部屋に置いてる雑誌を捲るその少年はこちらの視線なんて気にも止めず、同様、玉城も少年の裸に一々反応もしない。第一、自分が脱がせたのだからわざわざ狼狽えるのもおかしな話だ。
「お前、佐倉純と仲が良いらしいな」
静まり返った寝室の沈黙を破ったのは玉城だった。その言葉に、ベッドの上で仰向けになって足をばたつかせていた少年はピタリと動きを止める。そして、こちらを振り返るなり猫のように笑った。
「別に、一時協力体制取っただけだってば。なに?妬いてくれてるの?」
「んなわけねーだろ。お前がなにを企んでるか疑ってんだよ」
「あははっ!会長って結構心配症なんだね!」
高校男児にしては高い声。どこか中性的な雰囲気のその少年の声も、玉城には耳慣れたものだった。
玉城が笑い返さないのを見て、少年は浮かべていた笑みを引っ込め、口元にだけ笑みを作る。
「心配しないでよ、僕は会長を裏切らないから」
「これほど信用できない言葉も初めてだ」
「まあ、君が僕のことをどう思おうがどちらでもいいよ。せっかく君をその地位に就かせてあげたんだから、その分働いてもらわないと」
相変わらず、言葉だけは達者なやつだった。
睨む玉城に怯むこともなく、逆に痛いところを突いてくる少年に玉城は顔を歪めた。
「わかってる」
やはり、こいつと組んだのは間違えだったのかもしれない。
掴み所がなく、食えない男。下手な爆薬よりも厄介だったが、それ以上に仲間にすれば強力な味方になるということも事実で。敵に回したくなくて、自由に泳がせたくなくて自ら奴のリードを掴んだが、今ではその判断が正しいのかすら不明だ。
そんな玉城の心情を知ってか知らずか、少年は大きめの猫目を細くし、妖しく笑う。
「ふふ、楽しみだなぁ。早くしてよ。僕はあまり気が長い方じゃなくてね、あんな腑抜けになった真言を見るのは正直辛い」
奴の口から出てきた、仲違いした旧友の名前に玉城は何も言わなかった。……言えなかった。何を言ったところで、少年には届かないだろうから、言わなかった。
温度のない玉城の目から視線を逸らし、少年は雑誌を閉じる。そして、ゆっくりと口の中で歌うように呟く。
ああ、可哀想な真言。罪の意識から自ら牙を封じるなんて。
可哀想な真言、でも大丈夫――僕が君を助けてあげるから。
少年、花崗春日は想い人の姿を瞼裏に描き、頬を緩める。
バタバタとした一日が終わり、夜になれば疲れ果てた生徒たちは早く床に着いた。
明日からまた普段と変わらない日常が始まる。
明日の授業に備え、殆どの生徒たちが夢の中へ旅立った深夜の学生寮一室――上階、生徒会会長・玉城由良の部屋。
広さだけはあるどこか殺風景な部屋の中。部屋の主である玉城由良は、ベッドの上で寛ぐ少年に目を向ける。
一糸纏わぬ姿で部屋に置いてる雑誌を捲るその少年はこちらの視線なんて気にも止めず、同様、玉城も少年の裸に一々反応もしない。第一、自分が脱がせたのだからわざわざ狼狽えるのもおかしな話だ。
「お前、佐倉純と仲が良いらしいな」
静まり返った寝室の沈黙を破ったのは玉城だった。その言葉に、ベッドの上で仰向けになって足をばたつかせていた少年はピタリと動きを止める。そして、こちらを振り返るなり猫のように笑った。
「別に、一時協力体制取っただけだってば。なに?妬いてくれてるの?」
「んなわけねーだろ。お前がなにを企んでるか疑ってんだよ」
「あははっ!会長って結構心配症なんだね!」
高校男児にしては高い声。どこか中性的な雰囲気のその少年の声も、玉城には耳慣れたものだった。
玉城が笑い返さないのを見て、少年は浮かべていた笑みを引っ込め、口元にだけ笑みを作る。
「心配しないでよ、僕は会長を裏切らないから」
「これほど信用できない言葉も初めてだ」
「まあ、君が僕のことをどう思おうがどちらでもいいよ。せっかく君をその地位に就かせてあげたんだから、その分働いてもらわないと」
相変わらず、言葉だけは達者なやつだった。
睨む玉城に怯むこともなく、逆に痛いところを突いてくる少年に玉城は顔を歪めた。
「わかってる」
やはり、こいつと組んだのは間違えだったのかもしれない。
掴み所がなく、食えない男。下手な爆薬よりも厄介だったが、それ以上に仲間にすれば強力な味方になるということも事実で。敵に回したくなくて、自由に泳がせたくなくて自ら奴のリードを掴んだが、今ではその判断が正しいのかすら不明だ。
そんな玉城の心情を知ってか知らずか、少年は大きめの猫目を細くし、妖しく笑う。
「ふふ、楽しみだなぁ。早くしてよ。僕はあまり気が長い方じゃなくてね、あんな腑抜けになった真言を見るのは正直辛い」
奴の口から出てきた、仲違いした旧友の名前に玉城は何も言わなかった。……言えなかった。何を言ったところで、少年には届かないだろうから、言わなかった。
温度のない玉城の目から視線を逸らし、少年は雑誌を閉じる。そして、ゆっくりと口の中で歌うように呟く。
ああ、可哀想な真言。罪の意識から自ら牙を封じるなんて。
可哀想な真言、でも大丈夫――僕が君を助けてあげるから。
少年、花崗春日は想い人の姿を瞼裏に描き、頬を緩める。
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