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噛ませ犬
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此花との通話を終えた俺は取り敢えず外に出る用意を済ませることにした。
上着を羽織り、異様に軽い鞄を手に取る。そんで、忘れないように此花のポーチは上着のポケットに突っ込んでおいた。
そしてそのまま俺は部屋を後にした。
しかし、意外とバレないものだ。
バレたらバレたらで面倒なのだが、ここまで上手くいくなんて。もしかして罠か?とも思ったが、それはそれで悪くはない。多少の暇潰しになる上に、此花の弱味を握れるかもしれないのだ。
鼻唄混じりに廊下に出、そのまま軽い足取りで玄関まで歩いていく。
玄関口で履き慣れたスニーカーに履き替えた俺は、そのまま玄関の扉を開いた。寒い。日中もなかなか暴力的ではあるが、やはり日没後は比にならない。
手に持っていたバッグを肩に引っさげ、そのまま俺は玄関を後にした。
そしてそのままの足取りで学校へと向かうことになった。
――高校前。
既に暗くなった空の下、部活終わりの生徒たちが校門から出てくるのを横目に俺は此花の姿を探した。が、見当たらない。
まさか。あんなでかい男を見落とすことはないはずだ。まさか人を呼び出しておいてどっかに行ってんのか?
震えながら外で待ってろよ、と毒づきつつ校門を潜ったときだった。
「おーい、木江ー!」
ふと遠くから聞こえてきた声に顔を上げる。
その馬鹿でかい声のする方へと目を向ければ、昇降口側に立つジャージ姿の相馬がこちらに向かって大きく手を振っているではないか。周りの視線が痛い。
「でけー声で名前呼ぶなっての!」と大声で対抗しつつ、俺は相馬のいる昇降口へと向かうことにした。
どうやら相馬も部活終わりのようだ。せめてその上にもう一枚上着を羽織った方がいいのではないかと思いながらも、全然寒さを気にした様子のない相馬に「あれ?此花は?」と尋ねれば、「あー」と相馬は思い出すように視線を泳がせる。
「あー此花先輩ならさっきどっか行ってたぜ」
「どっかって」
「まだ学校にいるんじゃね?」
「そこはちゃんと聞いとけよ」
「まーまー、そんなカリカリすんなって。そんなに遅くはなんねえだろうし、なんなら俺と一緒に待っとくか?」
「やだよ。お前汗臭いもん」
「なんだなんだ? 随分とはっきり言うじゃねえか、傷つくなぁ」
言葉とは裏腹に全く傷付いてるように見えないのは相馬だからだろうか。わざとらしく肩を落とす相馬にやれやれと俺はその背中に手を回した。
愛斗とはまた違う、他の同級生たちよりも広く、筋肉で覆われたがっしりとした背中だ。それにのしかかれば、「おい、木江」と相馬がこちらを振り返ろうとした。
「冗談に決まってんだろ。俺、男くせーの好きだし」
「は、お前が言うと下ネタにしか聞こえねーな」
「なんだよ、人がせっかくフォローしてやってんのに。かわいくねーやつ」
「そりゃ悪かったな。お礼にハグでもしとこうか?」
「わ……っ! やめろアホ相馬、髪ぐちゃぐちゃになんだろ!」
そんなこんなで相馬とじゃれ合い暇潰すこと暫く。相変わらず此花は一向に現れる気配はない。
「ったく、なんだぁ? 俺、別に相馬とイチャイチャしにきたわけじゃねーんだけどな」
「まあまあ、もうすぐ戻ってくんじゃね」
「お前さっきもそれ言ってたけど、根拠はあんのかよ」
「んー、わかんね」
「わかんねって」
「でも電話かかってきてただけっぽかったし、多分そんな時間はかかんねえだろ」
って、電話かよ。
つーかそれを早く言え、という文句を込めて無言で相馬の脇腹を小突く。「いてっ、なんだよ木江」と呻く相馬の腕から抜け出した。
「で、此花どっち行ったんだよ」
「ああ、先輩なら確かあっちに行ったと思うけど」
そう、脇腹を押さえながら相馬が指差した方角は校舎裏だった。
校舎裏はそんなに人通りはない。人に聞かれたくない会話をするにはまさにうってつけな場所であることには違いないだろう。
「わかった。んじゃちょっと行ってくるわ」
「おー、気をつけてな」
気をつけるって、なににだよ。
疑問に思ったが相馬のことだ、どうせ深い意味はないのだろう。
ぶんぶんと手を振り見送る相馬に手を振り返しつつ、昇降口を出た俺は此花が立ち去ったという校舎裏へと移動することにした。
上着を羽織り、異様に軽い鞄を手に取る。そんで、忘れないように此花のポーチは上着のポケットに突っ込んでおいた。
そしてそのまま俺は部屋を後にした。
しかし、意外とバレないものだ。
バレたらバレたらで面倒なのだが、ここまで上手くいくなんて。もしかして罠か?とも思ったが、それはそれで悪くはない。多少の暇潰しになる上に、此花の弱味を握れるかもしれないのだ。
鼻唄混じりに廊下に出、そのまま軽い足取りで玄関まで歩いていく。
玄関口で履き慣れたスニーカーに履き替えた俺は、そのまま玄関の扉を開いた。寒い。日中もなかなか暴力的ではあるが、やはり日没後は比にならない。
手に持っていたバッグを肩に引っさげ、そのまま俺は玄関を後にした。
そしてそのままの足取りで学校へと向かうことになった。
――高校前。
既に暗くなった空の下、部活終わりの生徒たちが校門から出てくるのを横目に俺は此花の姿を探した。が、見当たらない。
まさか。あんなでかい男を見落とすことはないはずだ。まさか人を呼び出しておいてどっかに行ってんのか?
震えながら外で待ってろよ、と毒づきつつ校門を潜ったときだった。
「おーい、木江ー!」
ふと遠くから聞こえてきた声に顔を上げる。
その馬鹿でかい声のする方へと目を向ければ、昇降口側に立つジャージ姿の相馬がこちらに向かって大きく手を振っているではないか。周りの視線が痛い。
「でけー声で名前呼ぶなっての!」と大声で対抗しつつ、俺は相馬のいる昇降口へと向かうことにした。
どうやら相馬も部活終わりのようだ。せめてその上にもう一枚上着を羽織った方がいいのではないかと思いながらも、全然寒さを気にした様子のない相馬に「あれ?此花は?」と尋ねれば、「あー」と相馬は思い出すように視線を泳がせる。
「あー此花先輩ならさっきどっか行ってたぜ」
「どっかって」
「まだ学校にいるんじゃね?」
「そこはちゃんと聞いとけよ」
「まーまー、そんなカリカリすんなって。そんなに遅くはなんねえだろうし、なんなら俺と一緒に待っとくか?」
「やだよ。お前汗臭いもん」
「なんだなんだ? 随分とはっきり言うじゃねえか、傷つくなぁ」
言葉とは裏腹に全く傷付いてるように見えないのは相馬だからだろうか。わざとらしく肩を落とす相馬にやれやれと俺はその背中に手を回した。
愛斗とはまた違う、他の同級生たちよりも広く、筋肉で覆われたがっしりとした背中だ。それにのしかかれば、「おい、木江」と相馬がこちらを振り返ろうとした。
「冗談に決まってんだろ。俺、男くせーの好きだし」
「は、お前が言うと下ネタにしか聞こえねーな」
「なんだよ、人がせっかくフォローしてやってんのに。かわいくねーやつ」
「そりゃ悪かったな。お礼にハグでもしとこうか?」
「わ……っ! やめろアホ相馬、髪ぐちゃぐちゃになんだろ!」
そんなこんなで相馬とじゃれ合い暇潰すこと暫く。相変わらず此花は一向に現れる気配はない。
「ったく、なんだぁ? 俺、別に相馬とイチャイチャしにきたわけじゃねーんだけどな」
「まあまあ、もうすぐ戻ってくんじゃね」
「お前さっきもそれ言ってたけど、根拠はあんのかよ」
「んー、わかんね」
「わかんねって」
「でも電話かかってきてただけっぽかったし、多分そんな時間はかかんねえだろ」
って、電話かよ。
つーかそれを早く言え、という文句を込めて無言で相馬の脇腹を小突く。「いてっ、なんだよ木江」と呻く相馬の腕から抜け出した。
「で、此花どっち行ったんだよ」
「ああ、先輩なら確かあっちに行ったと思うけど」
そう、脇腹を押さえながら相馬が指差した方角は校舎裏だった。
校舎裏はそんなに人通りはない。人に聞かれたくない会話をするにはまさにうってつけな場所であることには違いないだろう。
「わかった。んじゃちょっと行ってくるわ」
「おー、気をつけてな」
気をつけるって、なににだよ。
疑問に思ったが相馬のことだ、どうせ深い意味はないのだろう。
ぶんぶんと手を振り見送る相馬に手を振り返しつつ、昇降口を出た俺は此花が立ち去ったという校舎裏へと移動することにした。
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