ヒーロー志望でしたが、手違いで三食宿付きヴィラン派遣会社に永久就職（？）することになりました。

CASE.08『デート・オア・デッド』

３２※

「ぁ、ま、待って……ぅ、んん……っ！」

　ガチガチに拘束された状態で逃げることなんてできなかった。
　シェイムレスの長い指が肛門の中へと入ってくる。収縮する肉壁にローションを塗り込むように内側から撫でられ、腰が震えた。

「ぁ、は、しぇ、シェイムレスさん……っ、ぬ、抜いて……っ！」
「随分と柔いな。……あいつと寝てるくらいだからな、大分と慣れているようだが」
「な、慣れてないです……っ！　ぅ、あ……っ」
「それにしても……ふ、くく……っ」

　どんどん奥までずっぷりと挿入される長い指にぬちぬちと中を掻き回される。その指が弱いところ――前立腺に触れた瞬間、喉の奥から声が溢れそうになる。

「っ、しぇ、いむれす……さ……っんん……」
「感度もいいようだな。……あいつにしてはいい趣味だ。認めたくはないが、ペットと恋人はよく鳴くに限る」
「な、何を言って……っぁ、あ……っ」

　関節が擦れる度に腰が揺れる。繊細な動きで前立腺をコリコリと揉まれるだけで勝手に性器は勃起し、先っぽからとろりとカウパーが滲んでは根本から下半身を濡らしていった。そんな俺の下半身を見下ろしたまま、シェイムレスは笑うのだ。

「分かりやすくて助かるよ」
「――っ！」

　足を閉じることも許されない、恥ずかしい体勢のまま固められた状態でひたすらシェイムレスに中を弄られる。

　は、早く、逃げないといけないのに……。こんなこと駄目なのに――シェイムレスさんの中性的な顔立ちといい、冷たいニヒルな雰囲気がどことなくナハトさんに似てるのだ。
　そのせいか、罪悪感と同時に心臓が勝手に反応してしまう。ナハトさんが成長したらシェイムレスさんみたいな男の人になるのかもしれない、なんて場違いなことを考えていた矢先、更に激しくなる愛撫に「ぁうっ」と喉奥から声が漏れた。

「集中出来ていないみたいだな……良平」
「……っ、しぇ、いむれすさん……っ」
「そんなに私の顔が好きか？」

　ば、バレてる……！
　真っ赤になっていた顔を覗き込まれ、息を飲んだ。そして慌てて俯こうとしたところを顎を掴まれてしまう。
　そして真正面から見つめ合うような形になり、俺はとっさに目を瞑る。

「す、すきじゃありません……っ！　こ、こんな……こんなときにノクシャスさんに嫌がらせする方なんて……っ！　き、嫌いです……！」

　惑わされてはいけない。
　そう自分に喝を入れるように声を上げた瞬間、ぴしりと音を立てて空気が凍りついたような気がした。
　も、もしかして言いすぎてしまっただろうか。

「しぇ、シェイムレスさん……？」

　そう恐る恐る目を開いたとき、中に入ってきた指が更に増える。そして、そのままシェイムレスは俺の腿を掴んだ。

「ぁ、う……っ、ぃ、く、るし、シェイムレスさ……っ」
「どいつもこいつもノクシャスノクシャスノクシャス……っ、あのスマートじゃない脳筋男のどこが良いっていうんだ……！！　所長もっ、貴陸さんも、いつだって尻拭いをさせられていたのは俺だというのに……っッ！！」
「しぇ、シェイムレスさん……？！」

　人が変わったように声を上げるシェイムレスにただ固まるしかなかった。
　しまった、言ってはいけないことを言ったらしい。
　慌てて落ち着かせようとした矢先、シェイムレスさんの長い指がぐっぽりと根本まで突き刺さる。
　そのまま中を執拗に掻き回され、引っかかれる。その刺激は下半身へ響き、溜まっていく。
　自分のものでは届かない場所もぐちゃぐちゃに掻き回され、腹の中に溜まったローションで体内はすっかり解されていった。

「ぅ、んん、は……っ、ぁ、だ、だめ……っぅ、シェイムレスさ……っ、こんなこと……っ！　お、落ち着いて……っ」
「人気者のあいつのお気に入り、なんて言うからどんなやつかと思えば……っ、ふ、くく、あいつじゃなくても反応はするらしいな。俺の指を咥えて離さないようだが、これはなんだ？」
「せ、生理現象ですぅ……っ！！　ぁっ、う、ひ……っ！」

　椅子の上、ずるずると落ちかけていた体を抱き込まれる。更に激しく前立腺ごと摩擦される度に熱は膨らんでいき、そしてとうとう爆ぜた。
　ぴんと丸まった爪先。耐え切れず痙攣する下半身はびくんと跳ね上がり、そして頭の中が白く塗りつぶされる。

「ぁ、あ……っ、くぅう……っ！」
「……なんだ、もうイッたのか？　俺の指はそんなに良かったか？」
「……っ、ぁ……う……っ」

　弄られ、熱くなった内壁を広げられる。その刺激だけでも余韻で震えていると、小さく笑ったシェイムレスは指を引き抜いた。
　終わったのだろうか、と思った次の瞬間、どこからともなくシェイムレスは何やら棒状のものを取り出した。
　なんだろうか、と視線を持ち上げ、俺はシェイムレスが手にしたそれを見てぎょっとする。
　毒々しいスケルトンピンク、子供の腕ほどはあるのではないかという太さと長さのそれはどこからどうみても男性器を模していた。
　それだけならまだいい。その男性器には亀頭部分までびっしりと大小大きさの異なるイボが生えている。それは最早グロテスクですらあった。
　それがなんなのか、俺は本能的に理解してしまう。そして息を飲んだ。

「ま、待って、シェイムレスさん……っ！」
「指だけでは物足りない、という顔をしているように見えたのでな。……拷問部屋で使われるのが痛めつけるためだけのものだと思ったか？」
「ぁ、あ……っ」
「人間としての尊厳を崩すために痛みよりももっと効率的な方法がある。――分かるか？　良平」

　極太バイブで人の顎の下を撫でる。その皮膚の上を滑るイボの感触に汗が滲む。喉が乾き、無意識に俺はそれを目で追ってしまっていた。

「それは快楽だ。……男は特に分かりやすい生き物でな、射精する都度人間の形を保てなくなる」
「ぅ、あ……」
「あいつの恋人だかなんだか知らんが、俺が思い出させてやる。人間の本懐を……動物としての本能を」

　なあ、良平。
　そう笑うシェイムレスから目を逸らすことはできなかった。