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CASE.08『デート・オア・デッド』
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もやもやとした感情とやり場のない困惑がその場を支配していた。
もしかして無雲――スライさんが何かしたのか?とも思ったが、だとしても全員を消すなんて目立つような真似をするだろうか。
「紅音く――」
と、声をかけようとした矢先だった。
鉄製の自動扉がいきなり開く――というよりも吹っ飛んだ。そしてそのまま壁にめり込む。
「あ、ああ! もっと大事に扱うのだ、ノクシャス!」
「良平、トリッド! 無事か?!」
聞き覚えのない声と、聞き慣れた声が聞こえてきた。扉があったはずのその場所に現れた大きな影に、俺は「ノクシャスさん」と声をあげる。
ノクシャスさんの小脇には見慣れないピンク髪の少年が抱えられているではないか。
「ノクシャス、どうしてここに……」
「説明は後だ、……扉が開いたってことはお前ら勝ったんだろうな?」
「え、いや……えーっと……」
なんと説明したらいいのやら。
突然のノクシャスの登場により余計こんがらがっているらしい紅音を横目にもごついていると、ノクシャスの腕から落とされた少年はそのまま檻へと近付く。
「あ、き、君、危ないよ!」
「心配は結構。……しかし、うむ。これは……君たちの仕業か?」
「……へ?」
「このケージの中、人の気配が微かに残ってるが……転移の形跡がある。それも、転移先は上手くシャットアウトしておるな。この監獄から脱獄させるとはなかなか高度な真似を」
ぶつぶつと一人呟きながら、ピンク髪の少年は檻に触れて調べ回る。
「グルーサムさん、こりゃどういうことだ?」
「判定は看守側が敗北となっているようだが、そもそもゲームプレイヤー全員が消失しておる。このゲームのルールは一人でも欠ければ看守側が強制敗北になる設定だったはずだ」
「ってことはあれか、無効試合ってやつだな」
「本来ならばな。けど、システム自体に大きな穴が開けられていたようだ」
あのノクシャスさんがさん付けしていることにも驚いたが、会話しながらなにやらデバイスを開いてその場で弄り出す子供にただただ狼狽える。
「あ、あの、ノクシャスさん……この子、いや、この人は……」
「この人はここの館長だ」
「え、か、館長……?! す、すみません、失礼しました……!」
まさかそんなに偉い人とは思わなかった。慌てて頭を下げれば、館長さんは「いい、気にするな」と笑う。見た目や声は子供なのに、笑い方はどこか大人びているのだから不思議だ。
「挨拶が遅れてすまない。私はグルーサムだ。君が良平とトリッドだな。この度はうちの社員が勝手な真似をして迷惑をかけたな」
そうデバイスを一旦閉じた館長さん――グルーサムさんは俺達に向き直る。
一体なんのことを指しているのか分からず戸惑っていると、「シェイムレスのことだ」てグルーサムさんは続ける。
「君たちは大事な客人だ。このゲームに参加させる予定はなかったのだがな」
「……客人?」
ふむ、と顎の下を擦るグルーサムさんの言葉に紅音が反応する。
そのままこちらを見てくる紅音。多分、というか大分これは緊急事態の部類なのだろう。
こんな状況で誤魔化し続けるわけにもいかない。
俺は観念し、今回の遊園地デートにノクシャスさんに協力してもらっていたことを紅音に説明することにした。
もしかして無雲――スライさんが何かしたのか?とも思ったが、だとしても全員を消すなんて目立つような真似をするだろうか。
「紅音く――」
と、声をかけようとした矢先だった。
鉄製の自動扉がいきなり開く――というよりも吹っ飛んだ。そしてそのまま壁にめり込む。
「あ、ああ! もっと大事に扱うのだ、ノクシャス!」
「良平、トリッド! 無事か?!」
聞き覚えのない声と、聞き慣れた声が聞こえてきた。扉があったはずのその場所に現れた大きな影に、俺は「ノクシャスさん」と声をあげる。
ノクシャスさんの小脇には見慣れないピンク髪の少年が抱えられているではないか。
「ノクシャス、どうしてここに……」
「説明は後だ、……扉が開いたってことはお前ら勝ったんだろうな?」
「え、いや……えーっと……」
なんと説明したらいいのやら。
突然のノクシャスの登場により余計こんがらがっているらしい紅音を横目にもごついていると、ノクシャスの腕から落とされた少年はそのまま檻へと近付く。
「あ、き、君、危ないよ!」
「心配は結構。……しかし、うむ。これは……君たちの仕業か?」
「……へ?」
「このケージの中、人の気配が微かに残ってるが……転移の形跡がある。それも、転移先は上手くシャットアウトしておるな。この監獄から脱獄させるとはなかなか高度な真似を」
ぶつぶつと一人呟きながら、ピンク髪の少年は檻に触れて調べ回る。
「グルーサムさん、こりゃどういうことだ?」
「判定は看守側が敗北となっているようだが、そもそもゲームプレイヤー全員が消失しておる。このゲームのルールは一人でも欠ければ看守側が強制敗北になる設定だったはずだ」
「ってことはあれか、無効試合ってやつだな」
「本来ならばな。けど、システム自体に大きな穴が開けられていたようだ」
あのノクシャスさんがさん付けしていることにも驚いたが、会話しながらなにやらデバイスを開いてその場で弄り出す子供にただただ狼狽える。
「あ、あの、ノクシャスさん……この子、いや、この人は……」
「この人はここの館長だ」
「え、か、館長……?! す、すみません、失礼しました……!」
まさかそんなに偉い人とは思わなかった。慌てて頭を下げれば、館長さんは「いい、気にするな」と笑う。見た目や声は子供なのに、笑い方はどこか大人びているのだから不思議だ。
「挨拶が遅れてすまない。私はグルーサムだ。君が良平とトリッドだな。この度はうちの社員が勝手な真似をして迷惑をかけたな」
そうデバイスを一旦閉じた館長さん――グルーサムさんは俺達に向き直る。
一体なんのことを指しているのか分からず戸惑っていると、「シェイムレスのことだ」てグルーサムさんは続ける。
「君たちは大事な客人だ。このゲームに参加させる予定はなかったのだがな」
「……客人?」
ふむ、と顎の下を擦るグルーサムさんの言葉に紅音が反応する。
そのままこちらを見てくる紅音。多分、というか大分これは緊急事態の部類なのだろう。
こんな状況で誤魔化し続けるわけにもいかない。
俺は観念し、今回の遊園地デートにノクシャスさんに協力してもらっていたことを紅音に説明することにした。
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