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CASE.07『同業者にご注意』
16※【無理矢理/フェラ強要】
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サディークが出ていったあと、暫く俺は転がされていた。腕が拘束されているだけなので、頑張って立ち上がろうとすれば立ち上がれないこともない。
必死にジタバタと動きながらも起き上がろうとしたときだ。再び扉の向こうから足音が聞こえてきた。
誰か来た。
そう身構えたときだ、乱暴に開かれる扉にぎょっとする。
――現れたのは金髪の派手な男、デッドエンドだった。
「ひっ」と思わず声が漏れたとき、「ああ?」とデッドエンドはこちらを見下ろす。そして、口元に凶悪な笑みを浮かべた。
「なーんだ、そんなところにいたのかよ。探したじゃねえか」
先程暴れて隔離されていたデッドエンドとは打って変わってやけにフレンドリーなデッドエンドに戸惑う。
……なんだか嫌な予感がする。
「で、デッドエンドさん……っ」
「そんなにビクビクすんなよ。お前が妙な真似しなかったら別に爆発させるような真似しねえよ」
これ、と目の前までやってきたデッドエンドにシャツの襟首を引っ張られる。
そうだ、色々あって忘れかけていたが、俺の身に着けているスーツが爆弾に変化しているのだ。この男の意思で爆発すると思うと、いくら安生からのチートアイテムがあろうと無闇に刺激しない方がいいのは間違いないだろう。
「良平だったか? ……アンタ、随分と幹部の連中に気に入られてるらしいな」
とにかく下手に触れないでおこう、と唇をきゅっと結んだ矢先だった。
デッドエンドの言葉に内心ぎくりとした。
「安生にナハト……ノクシャスの兄貴まで。なあ、おかしくね? なんでお前みてえのが贔屓されてんだよ」
嫉妬、というよりも、なんだろうかこれは。少なくともデッドエンドに向けられる感情が決していいものではないことは分かった。
なにも答えられず押し黙れば、「だんまりか?」とデッドエンドにネクタイを掴まれ、強引に顔を正面向かされる。
「――どうやってあの人たちに取り入った?」
「……っ、そんなこと、聞いて……どうするんですか?」
「どうもしねえよ。……ただ、興味あるだけだ。こんなぽやぽやしてアホヅラの一般人囲うほどあそこは落ちぶれたのかと思ってな」
俺のことを馬鹿にされるのはまだいい。けれど、俺のせいで周りの人たちまで馬鹿にされることに対してむかむかとした感情が込み上げてくる。
――これが怒りなのだろうか。初めてだ、他人に対してこんな風にムカついたのは。
「……っ、落ちぶれてなんていません。皆さんすごい方ですし、確かに俺はアホヅラの一般人かも知れませんけど……っ!」
「ああ? なんだよ、急に元気になりやがって」
「デッドエンドさんだって元々ノクシャスさんの部下だったんですよね、だったらどうしてそんな言い方――」
するんですか、と言いかけたとき。伸びてきた手に口を塞がれた。
「んむ……っ!」
「うるせえな、テメェに関係ねえだろ」
「んむ、むうう……っ!」
「つかテメェ、立場分かってんのか? 誰に対して口答えしてんだよ……っ!」
しまった、と思ったが俺にだって譲れないものがある。爆発するのならしたらいい。そうすれば拘束も外れるんじゃないのか。
そう半ばヤケクソになりかけたときだった、苛ついたように舌打ちしたデッドエンドはそのまま人を足払いするのだ。
「う、わ……っ!」
バランスが崩れ、転倒する。転んだ拍子に爆発するのではないかとヒヤヒヤしたが、どうやら外部の衝撃は起爆には関与しないようだ。
慌てて体勢を取り直そうとしたときだった。目の前に立ったデッドエンドの足がそのまま俺の下半身を踏み付けるのだ。
「っ、あ、や……っ、なにして……っ!」
「まともにも受け身も取れねえし、とろいし、立場も弁えねえ。……そんなんで可愛がってもらえるなんておかしいよな、なあ? そう思わねえ?」
「っ、ん、あ、足……っ、退けて下さい……ッ」
「はっ、感度だけはいいんだな……」
踏み潰されるのではないかという恐怖。そして、ただでさえ触手のせいで火照っていたそこを刺激されて条件反射で反応してしまう自分が恥ずかしくなる。
「ん、う……っ」
厚底スニーカーの底の凹凸加減が絶妙に気持ちいい、など口が裂けても言えない。
反応しないようにぐっと唇を噛みしめるが、そのまま膨らんだそこを柔らかく圧迫されるだけで頭の奥がじんわりと熱くなっていく。次第に呼吸は浅くなった。
「っ、ん、ぅ……っ、で、デッドエンドさん……っ、どうして、こんなこと……っ」
「……」
「……? デッドエンドさ――っ、て、なんで勃起してるんですかっ?!」
先程まであれほど饒舌だったのに、急に黙り出したデッドエンドが気になって顔を上げたときだった。丁度視界に入ったそこに思わず声を上げてしまう。
「う……うるせえ! 黙れ! テメェが……テメェが変な声出すからだろうが!」
「え、ええ……っ?! だってデッドエンドさんが……ぁ……っ!」
「『ぁ……っ!』じゃねえんだよ、テメェ……っ! クソ、ふざけんじゃねえなんで俺が……っ! お前みてえな……っ」
「っ、ん、ぁ……っ、待ってくださ、ふ、踏まないで……っ、んんぅ……っ!」
苛ついたデッドエンドにあまりにも雑に電気アンマされた瞬間、下着の中でぬるぬると性器が反応していくのがわかって恥ずかしくなる。
というか何故俺がキレられるのだ。とにかく止めなければまずいと思うのに、腕を後ろ手に拘束された現状、そのままデッドエンドの足を受け入れることしかできなかった。
「ぁ……っ、は、……っ、や、やめて……も、……っ、ん、ぅう……――ッ!」
やばい、と思った矢先のことだ。
ほんの少しデッドエンドが靴裏に力を挿れて圧迫した瞬間、靴裏にあった性器が跳ね、下着の中で精液が溢れた。
「は、ぅ……っ」
びく、と腰が震え、全身から力が抜け落ちていく。俺がイッたことに気付いたのだろう、デッドエンドは「ハッ」と馬鹿にするように鼻で笑った。
「な、なんだよ……お前ドMか? こんなことされて喜ぶなんてな」
「っ、デッドエンドさん……どうして……っ」
「ああ? 言っただろ、テメェ見てると腹立つんだよ」
「で……でも、デッドエンドさんだって勃起してるじゃないですか……」
「うるせえ! 生理現象だって言ってんだろ!」
「い、言ってないと思います……」
しかし刺激されたわけでもないのに反応するなんて、余程なのか。
それにデッドエンドの態度からしてピリついていることには違いないだろうし……。
いつの日かのモルグとのやり取りを思い出す。が、思い出さなくてもいいことまで思い出してしまい思考を止めた。
そして、
「デッドエンドさん、もしかして……溜まってるんですか?」
そう、単刀直入にデッドエンドに尋ねた瞬間、デッドエンドがぴしりと固まったのを俺は見た。
そして、じわじわと耳まで赤くなっていくのを見て俺はハッとした。
「あの、昔聞いたことがあります……男性の場合は適度に抜かないと逆によくないと……もしかしたらデッドエンドさん――」
欲求不満というやつでは、と言いかけた次の瞬間にはデッドエンドの手が顔面に伸びてきた。
「むごっ」と塞がれる口元。鼻までは塞がれなかったお陰で呼吸はできるが、これは。
「テメェ、こっちが黙ってりゃ言いたい放題言いやがって……っ!」
「むご、むごご……っ!」
「うるせえっ! どいつもこいつも羽虫の野郎の言うことばっか聞きやがって、リーダーは俺だっつってんだろ!」
「もご……っ?!」
どうしてここで羽虫の名前が出てくるのだ、と思った矢先だった。口から手が離れたと思えば、その指先はそのまま乱暴にネクタイを掴み、そのまま引き寄せてくるのだ。
「い、う……っ! で、デッドエンドさん、落ち着いてください……っ」
「元はと言えばテメェのせいだろ、なあ? そうだよな、人質」
「俺は人質じゃなくて――んむっ」
良平という名前があります、と言いかけた矢先。空いた手で頭を抑えつけられ、そのまま開きかけた唇に下腹部を押し付けられるのだ。
「む、ぅ……っ」
「――っ、しゃぶれよ」
「んむ……っ?!」
「ここで木っ端微塵、吹き飛ばされたくなかったら……俺の言うこと聞け」
良いな、とヴィランらしい顔でヴィランのようなことを言い出すデッドエンドに、俺はああそういえばこの人はヴィランなのだと気付いた。
◆ ◆ ◆
初めて写真で見たとき、デッドエンドのことは確かに怖かったが、何故だろうか。それよりもなんとなく親近感のようなものを覚えてしまったのは。
「……っ、は、……っ」
言われるがまま、俺は目の前、取り出されたデッドエンドの性器に唇を寄せる。
まさか素直に言うことを聞くとは思っていなかったようだ。こちらを見下ろしていたデッドエンドは一瞬ぎょっとしていたが、それもすぐ亀頭に唇を押し付ければ歪む。
「ぉ……っお前……」
「っ、ん、ぅ……っ」
脅されているのだから仕方ない、と頭の中で言い訳じみた言葉を並べながら俺はそのまま頭と顎、唇と舌を使って目の前で大きくなったそこを愛撫した。
……ほんの少しだけ、俺自身他人の性器を前にしたときに抵抗を感じなくなっていることに気付き、ショックを受けた。
「……っ、こ、ぉ……れふか……?」
「っ、や、そ……っ、こで喋んじゃねえ……っ!」
「ほ、めんなひゃ……んむ゛……っ!」
「わざとだろ、お前……っ!」
手が封じられている現状、口以外ではどうしようもない。取り敢えず亀頭に舌を絡めてそのまま舌の上を滑らせるように咥内へと性器を咥え込んでいく。
その都度ビクビクと舌の上で性器は跳ね、デッドエンドは声を漏らすのだ。
あまりこういうことは言わない方がいいのだろうが、そんなデッドエンドを見て俺は分かってしまった――この男、多分こういった行為に慣れていないのだということを。
なぜこんなことになってしまっているのだろうか。
なんて、この地下世界にきてからどれほど思ったことだろうか。
少しずつ、自分がどんどんこのヴィランたちの世界に毒されていっている気がしてならない。
ぬぷ、ぐちゅ、と咥内に響く粘着質のある音。舌の上を滑り、喉を犯すデッドエンドの性器に舌を絡め、裏筋からカリの凹凸の溝までたっぷりと濡らした唾液で愛撫する。
いつの日かモルグに喉の締め方を教えてもらったこともあったが、未だ俺には早いようだ。噎せてしまいそうになるので今回はせめてもので舌と唇を使ってデッドエンドに奉仕する。
「っ、は、ぁ……ッ、クソ……ッ」
張り詰めた性器からドクドクと鼓動が伝わってくる。もうそろそろ絶頂が近いのかもしれない。
上目でデッドエンドの様子を確認しながら、ちろりと亀頭に舌を這わせる。そのまま飴玉を舐めるように亀頭を舌で転がせば、びくんと大きくデッドエンドの腰が震えるのだ。
「ぁっ、や、めろ、それ……っ!」
「……っ、ん、ぅ゛……っ」
「っ、く、う……っ!」
逃げようとするデッドエンドの腰にさらに顔を寄せる。ぢゅぶ、と溢れそうになる先走りと唾液が混ざった体液を飲み込むついでに甘く亀頭を吸い上げた瞬間、舌の上で性器が大きく跳ね上がった。
そして次の瞬間、「んんうッ!」という苦しそうな声とともに口の中でデッドエンドのものが弾ける。
逆流しそうになる精液をなんとか喉の奥へと流し込んだ俺は、そのままずるりとデッドエンドの性器から唇を離す。
そして、
「んむ……ッ」
「な、なんで、おいお前今飲んで……っ」
あれ、飲めとは命令されてなかったのだったか。
熱と性臭でぼんやりとした頭の中、真っ赤になったり真っ青になったりしているデッドエンドを上目に眺めながら俺は再び濡れた亀頭に舌を這わせる。
射精直後で過敏になってるそこに舌をべろりと這わせただけでデッドエンドは声を漏らした。
「な、ぁ……ッ! ひ、う゛……ッ!」
亀頭から竿の部分、皮の隙間まで残った精液を丁寧に舐め取り、そして最後にぢゅる、と尿道口に残った精液の塊を吸い上げた瞬間、再び唇に固くなったそれが当たるのだ。
「待ッ、ぁ゛……っ! ぅ、く……ッ! まっ、で……ッ! 待てッ、馬鹿……ッ!」
本気で嫌がっているわけではないのだと性器の反応からして分かる分、助かる。
それと、多分亀頭への刺激にも慣れてないらしい。窄めた舌先で窪みをこちょこちょと穿れば、デッドエンドの腰が痙攣するのだ。
お掃除フェラだけのつもりだったのだけれど、と再び勃起したそこから唇を離せば、とろりと透明な糸が伸びる。それを舌で舐めとった。
「あの……これで、良かったですか?」
「こ、のやろ……ッ」
――何故言われた通りちゃんと射精まで促したのに、怒るのだ。
「デッドエンドさ――んん……っ!」
気付けばデッドエンドに床の上に押し倒されていた。拘束されたままの体ではろくに受け身など取ることはできなかった。
しまった、と思うよりも先に、覆い被さってくるデッドエンドに足を開かれそうになり、血の気が引いた。
「ぁっ、は、はなしが、ちが……っ」
「何者なんだよ、テメェ……っ」
「何者って、俺はただの平社員で……ッ、ぇ、う……ッ!」
言い終わるよりも先に、乱暴にスーツの下を引き抜かれるのだ。破られなかっただけましか、などと言ってる場合ではない。
「っ、デッドエンドさ……っ、ぁ……っ!」
待ってください、と目の前、開かされた股の間に立つ男を見上げようとしたときだった。
捲られた下着の下。口を開いた肛門に性器を押し付けられ、ぎょっとする。
既に再び限界まで固く反り返ったその性器に肛門を擦り上げられ、「ぁう」と情けない声が漏れた。
「ぁっ、そこ……っ」
「……っ、嘘吐け、テメェみてえな平社員がいるかよ!」
「そ、それは偏見です……っ! ぁ、んん……っ!」
よくない流れだ。そう思うのに、先程触手のせいで中途半端にかき乱されていた体は火照り、にゅるにゅると先走りを擦り付けるように押し付けられる亀頭の感触に自然と下半身が開いてしまうのだ。
そしてデッドエンドが動いた瞬間、押し付けられていた亀頭がぐぷりと体内に沈んでくる。その圧迫感に脳の奥がびりって痺れたように熱くなるのだ。
「っ、は、待ってくださ、もっと、ゆっくり……ッ」
「うるせえっ! っ、つうかなんだよこのケツ、どんだけ遊んでんだっ?!」
「ぁ、うぅ……っ! い、言わないでください……っ!」
「くそっ」と舌打ちをしたデッドエンドはそのまま俺の腰を持ち上げ、一番入りやすい角度を探るのだ。そして、
「っ、ぁ、デッドエンドさ……――」
そのままデッドエンドが腰を埋めようとした矢先だった。再び部屋の扉が開いた。
よりによってこのタイミングで誰かくるなんて思ってもいなかっただけに血の気が引いた。
そして、そこにいたのは――。
「良平……っ、て、おいデッド! お前何やって……っ!」
今まさにデッドエンドに襲われそうになっていた俺を見て、ぎょっとしたサディークに俺も流石に現実へと引き戻された。
「デッドエンドさ、っ、待っ、さ、サディークさんが……ぁ……っ!」
流石にこの展開はまずい、と慌ててデッドエンドを止めようとした瞬間だった。
ず、と一気に頭を埋め込んでくる性器に息が止まりそうになる。
「ッ、は、ぁ……ッ! う、んんう……っ!」
「っ、は、クソ……っ、うるせえな……っ、サディーク! 見ての通りこっちは取り込み中なんだよ、用なら後に……ぃ゛ッ! ばっ、締めんな、う゛っ、く……ッ、じっとしろっ!」
じっとしてるのに、と言い返す暇もなく、息を吐いたデッドエンドはそのまま俺の腰を掴み、更に奥まで腰を打ち付け来るのだ。
その度に内壁の粘膜が摩擦され、腹の奥がじんじんと熱くなる。汗が吹き出し、奥を突き上げられる度に声が溢れそうになるのだ。
「っ、さ、サディークさん……っ! た、たすけ……っ、ぁ、く、ひ……っ!」
「っ、よ、良平……」
「騙されんなよ、サディーク……っ! こいつはクソビッチだ、お前は騙されてんだ、ぁ゛……っ! やめろ、動くな! 腰動かすなっつってんだろ!」
「ち、が、俺、……っ、んん……っ!」
黙れ、と言わんばかりに乱暴に腿を掴まれ、そのまま開いた股の奥まで腰を打ち付けられた。
瞬間、脳の奥が白く弾ける。熱い。内側からどろどろに溶かされるようだ。
――こんなところ、サディークさんに見られたくないのに。
皮膚がぶつかる音と呼吸音が部屋の中に響き、腰を打ち付けられる度に体が跳ねる。サディークさん、と縋るように視線を向けたとき。伸びてきたデッドエンドに顎を掴まれるのだ。
そして、強引にデッドエンドの方を向かされる。
「っ、ぅ、や……っ」
「……っ、は、丁度良い……サディーク。なあこいつおかしいと思わないか? 何かまだ隠してんぜ、絶対」
「……それは」
「お前も混ざれよ、サディーク」
一瞬、デッドエンドの言葉の意味を理解するのに時間がかかってしまう。
それはサディークも同じだったようだ。
「……っ、デッド」
「は……こいつにフェラでもさせたらどうだ? 慣れてんぞ、こいつ」
べ、と唇を揉むようにして咥内へと入ってきた指先にそのまま舌を捉えられる。その舌の中央を指で抑えつけられるよう、そのまま口を開かされ、顔が熱くなった。
つい先程まで咥えていたデッドエンドの味と熱が蘇り、ひくりと喉仏が上下する。
――待て、つまりそれは。
「……っ」
デッドエンドの意図してることが分かり、血の気が引いた。
サディークを俺に触れさせて暴くつもりだ。
それだけはまずい。慌てて「サディークさん」と止めようとするが、口の中にねじ込まれた指がそれを阻害して上手く言葉を発せない。
「サディーク」
その声にびくりと肩を震わせたサディークは青くなったり赤くなったり顔色を変えながら、小さく息を吐いた。
「……分かったよ」
デッドエンドに逆らえないのか、それとも別の意図があるのか――俺にはサディークの言葉が読めなかった。けれど、状況がどんどん悪化しているということだけはよくわかった。
「ま、ぁ……っ! まっ、ってくださ、……ッ、ひ、う゛……ッ!」
この最悪の状況から脱却すべく、慌てて目の前のデッドエンドから逃れようとするが拘束されたこの身体でヴィラン二人相手に敵うわけがなかった。
思いっきり腰を打ち付けられた瞬間、脳髄まで貫くような刺激に思考回路は強制的に断たれる。
「っ……は、なに、慌て出してんだ? やっぱ都合の悪いことでもあんのかよ」
なあ、と腰を思いっきり打ち付けられれば、「う、あ」と断続的な悲鳴が喉奥から溢れる。
そのまま下半身を揺さぶるように腰を打ち付けられ、思考回路は乱された。
「っ、あ、ゃ、ちが……っんん、ぅ……っ!」
「デッド、あまり乱暴なことはするなって言っただろ……っ!」
「は……なにムキになってんだよ、やっぱお前こいつのこと気に入ってんのか?」
心配そうな顔をするサディークに対し、これみよがしに結合部を見せつけるよう人の腿を掴み、開脚させるサディーク。ピストンの都度震える性器が滑稽で、恥ずかしくて、「見ないでください」と言いたいのにその声すら突き上げられる度に途切れてしまう。
「っ、は、ぁ……っ、さ、でぃ……くさ……ッ!」
考え直してください、と懇願するようにサディークを見上げ首を振ったときだ。「良平」と顔を赤くしたサディークが呟く。
その目はどこか同情的でもあった。
サディークもこの展開は本位ではないのだとわかった。けれど。
「っ、ひ、う゛……ッ!!」
瞬間、伸びてきたデッドエンドの手に性器を握られ、息が止まりそうになった。
「ぁ、は……っ、ぁあ……」
「なに見つめ合ってんだ? ……っ、くそ、集中しろ……っ!」
「っん、む……っ!」
そして苛ついたように覆いかぶさってきたデッドエンドに、サディークの目の前で唇を塞がれる。
ほんの数秒のことだったが、俺にとっては長い時間のようにも思えた。
案外デッドエンドの唇が柔らかいことに気付くのもつかの間、噛み付かれるように歯が唇に当たり、痛みで目が覚める。
「……っふ、ぅ……む……っ」
ぢゅぷ、と唾液で濡れたデッドエンドの舌が唇に触れた。そのまま乱暴に咥内を探られそうになり、咄嗟に顔を逸らせば更に奥を突かれる。濡れた音を立て、摩擦される粘膜に堪らず全身が震えた。
「ぅ、ふ、う……っ! う、……っ、んん……っ!」
「は、んだよ……っ、おい、サディークの前だからって今更照れてんのか?」
「っ、ぁ、や……ッんん……ッ!」
違います、と否定しようにもすぐに再度デッドエンドに唇を塞がれる。そのまま性急な動きで腰を叩きつけられる。そのピストンの間隔は次第に短くなっていき、そして、体内のデッドエンドのものが大きく跳ねたと思った瞬間。
「く、ぅ……ッ!」
「ひ、んんぅ……ッ!」
どくん、とデッドエンドの鼓動が響いたとき、腹の中に吐き出される熱にぶるりと全身が大きく震えた。
どくどくと腹の中を満たしていく精液の熱。はあ、と荒く呼吸を繰り返したデッドエンドにやっと気が済んだのだろうかと恐る恐る顔を上げたときだった。腹の中、根元まで収まっていたそれがすぐに芯を持ち始めていることに気付き、ぶるりと背筋が痺れる。
「あ、で……デッドエンドさ……」
「……ッ、うるせえ、お前のせいだ……ッ!」
「え、ええ……?!」
そんな無茶苦茶な、と驚く暇もなかった。再び下半身を掴まれれば、上手く受け身を取ることが出来ずそのまま背中に硬い床が当たる。そんな体勢のまま再び奥まで性器をねじ込まれれば、体内に出されたデッドエンドの精液が掻き混ぜられ、ぐちゃぐちゃとなんとも恥ずかしい音を立てて抜き差しされるのだ。
「ん、ぅ、あ……ッ! 待っ、ぁ、んんッ」
「ッ、おい、なに突っ立ってんだよ、お前も混ざれって……ッ!」
それは俺にではなく、部屋の奥。扉の前から動けずにいたサディークへ向けられたものだと分かった。今度はもうサディークはなにも言わなかった。
この粘着質な水音がサディークの耳にまで届いているかと思えばただただ生きた心地がしなかった。
サディークの反応を確認する勇気が出なくて、こちらへと歩み寄ってくるサディークから必死に顔を逸らそうとするが、それは無駄な抵抗となって終わる。
仰向けに転がされた視界の端、サディークのブーツの爪先が入り込んだ。そして、俺に視線を合わせるように座り込んだサディークと目が合った。
伸びた前髪の下、困惑と戸惑い、それとは別のいつの日か見たことがある感情の色を滲ませたサディークは「良平」と俺の名前を呼んだ。
「さ、でぃ……く、さん……」
「――ごめん、良平」
それは、俺にだけ聞こえる声だった。
普段青白いサディークの顔は熱でほんのりと上気しているようだ。コートの下、腰の巻きついたベルトを緩めるサディーク。そして、既に膨らんで窮屈そうになっていたそこからパンパンに勃起した性器を取り出したサディーク。
鼻先、視界を覆う性器の影に目を見開いたまま固まる俺に、サディークは小さく呟いた。
「……そういうことだからさ……俺のも、よろしく」
必死にジタバタと動きながらも起き上がろうとしたときだ。再び扉の向こうから足音が聞こえてきた。
誰か来た。
そう身構えたときだ、乱暴に開かれる扉にぎょっとする。
――現れたのは金髪の派手な男、デッドエンドだった。
「ひっ」と思わず声が漏れたとき、「ああ?」とデッドエンドはこちらを見下ろす。そして、口元に凶悪な笑みを浮かべた。
「なーんだ、そんなところにいたのかよ。探したじゃねえか」
先程暴れて隔離されていたデッドエンドとは打って変わってやけにフレンドリーなデッドエンドに戸惑う。
……なんだか嫌な予感がする。
「で、デッドエンドさん……っ」
「そんなにビクビクすんなよ。お前が妙な真似しなかったら別に爆発させるような真似しねえよ」
これ、と目の前までやってきたデッドエンドにシャツの襟首を引っ張られる。
そうだ、色々あって忘れかけていたが、俺の身に着けているスーツが爆弾に変化しているのだ。この男の意思で爆発すると思うと、いくら安生からのチートアイテムがあろうと無闇に刺激しない方がいいのは間違いないだろう。
「良平だったか? ……アンタ、随分と幹部の連中に気に入られてるらしいな」
とにかく下手に触れないでおこう、と唇をきゅっと結んだ矢先だった。
デッドエンドの言葉に内心ぎくりとした。
「安生にナハト……ノクシャスの兄貴まで。なあ、おかしくね? なんでお前みてえのが贔屓されてんだよ」
嫉妬、というよりも、なんだろうかこれは。少なくともデッドエンドに向けられる感情が決していいものではないことは分かった。
なにも答えられず押し黙れば、「だんまりか?」とデッドエンドにネクタイを掴まれ、強引に顔を正面向かされる。
「――どうやってあの人たちに取り入った?」
「……っ、そんなこと、聞いて……どうするんですか?」
「どうもしねえよ。……ただ、興味あるだけだ。こんなぽやぽやしてアホヅラの一般人囲うほどあそこは落ちぶれたのかと思ってな」
俺のことを馬鹿にされるのはまだいい。けれど、俺のせいで周りの人たちまで馬鹿にされることに対してむかむかとした感情が込み上げてくる。
――これが怒りなのだろうか。初めてだ、他人に対してこんな風にムカついたのは。
「……っ、落ちぶれてなんていません。皆さんすごい方ですし、確かに俺はアホヅラの一般人かも知れませんけど……っ!」
「ああ? なんだよ、急に元気になりやがって」
「デッドエンドさんだって元々ノクシャスさんの部下だったんですよね、だったらどうしてそんな言い方――」
するんですか、と言いかけたとき。伸びてきた手に口を塞がれた。
「んむ……っ!」
「うるせえな、テメェに関係ねえだろ」
「んむ、むうう……っ!」
「つかテメェ、立場分かってんのか? 誰に対して口答えしてんだよ……っ!」
しまった、と思ったが俺にだって譲れないものがある。爆発するのならしたらいい。そうすれば拘束も外れるんじゃないのか。
そう半ばヤケクソになりかけたときだった、苛ついたように舌打ちしたデッドエンドはそのまま人を足払いするのだ。
「う、わ……っ!」
バランスが崩れ、転倒する。転んだ拍子に爆発するのではないかとヒヤヒヤしたが、どうやら外部の衝撃は起爆には関与しないようだ。
慌てて体勢を取り直そうとしたときだった。目の前に立ったデッドエンドの足がそのまま俺の下半身を踏み付けるのだ。
「っ、あ、や……っ、なにして……っ!」
「まともにも受け身も取れねえし、とろいし、立場も弁えねえ。……そんなんで可愛がってもらえるなんておかしいよな、なあ? そう思わねえ?」
「っ、ん、あ、足……っ、退けて下さい……ッ」
「はっ、感度だけはいいんだな……」
踏み潰されるのではないかという恐怖。そして、ただでさえ触手のせいで火照っていたそこを刺激されて条件反射で反応してしまう自分が恥ずかしくなる。
「ん、う……っ」
厚底スニーカーの底の凹凸加減が絶妙に気持ちいい、など口が裂けても言えない。
反応しないようにぐっと唇を噛みしめるが、そのまま膨らんだそこを柔らかく圧迫されるだけで頭の奥がじんわりと熱くなっていく。次第に呼吸は浅くなった。
「っ、ん、ぅ……っ、で、デッドエンドさん……っ、どうして、こんなこと……っ」
「……」
「……? デッドエンドさ――っ、て、なんで勃起してるんですかっ?!」
先程まであれほど饒舌だったのに、急に黙り出したデッドエンドが気になって顔を上げたときだった。丁度視界に入ったそこに思わず声を上げてしまう。
「う……うるせえ! 黙れ! テメェが……テメェが変な声出すからだろうが!」
「え、ええ……っ?! だってデッドエンドさんが……ぁ……っ!」
「『ぁ……っ!』じゃねえんだよ、テメェ……っ! クソ、ふざけんじゃねえなんで俺が……っ! お前みてえな……っ」
「っ、ん、ぁ……っ、待ってくださ、ふ、踏まないで……っ、んんぅ……っ!」
苛ついたデッドエンドにあまりにも雑に電気アンマされた瞬間、下着の中でぬるぬると性器が反応していくのがわかって恥ずかしくなる。
というか何故俺がキレられるのだ。とにかく止めなければまずいと思うのに、腕を後ろ手に拘束された現状、そのままデッドエンドの足を受け入れることしかできなかった。
「ぁ……っ、は、……っ、や、やめて……も、……っ、ん、ぅう……――ッ!」
やばい、と思った矢先のことだ。
ほんの少しデッドエンドが靴裏に力を挿れて圧迫した瞬間、靴裏にあった性器が跳ね、下着の中で精液が溢れた。
「は、ぅ……っ」
びく、と腰が震え、全身から力が抜け落ちていく。俺がイッたことに気付いたのだろう、デッドエンドは「ハッ」と馬鹿にするように鼻で笑った。
「な、なんだよ……お前ドMか? こんなことされて喜ぶなんてな」
「っ、デッドエンドさん……どうして……っ」
「ああ? 言っただろ、テメェ見てると腹立つんだよ」
「で……でも、デッドエンドさんだって勃起してるじゃないですか……」
「うるせえ! 生理現象だって言ってんだろ!」
「い、言ってないと思います……」
しかし刺激されたわけでもないのに反応するなんて、余程なのか。
それにデッドエンドの態度からしてピリついていることには違いないだろうし……。
いつの日かのモルグとのやり取りを思い出す。が、思い出さなくてもいいことまで思い出してしまい思考を止めた。
そして、
「デッドエンドさん、もしかして……溜まってるんですか?」
そう、単刀直入にデッドエンドに尋ねた瞬間、デッドエンドがぴしりと固まったのを俺は見た。
そして、じわじわと耳まで赤くなっていくのを見て俺はハッとした。
「あの、昔聞いたことがあります……男性の場合は適度に抜かないと逆によくないと……もしかしたらデッドエンドさん――」
欲求不満というやつでは、と言いかけた次の瞬間にはデッドエンドの手が顔面に伸びてきた。
「むごっ」と塞がれる口元。鼻までは塞がれなかったお陰で呼吸はできるが、これは。
「テメェ、こっちが黙ってりゃ言いたい放題言いやがって……っ!」
「むご、むごご……っ!」
「うるせえっ! どいつもこいつも羽虫の野郎の言うことばっか聞きやがって、リーダーは俺だっつってんだろ!」
「もご……っ?!」
どうしてここで羽虫の名前が出てくるのだ、と思った矢先だった。口から手が離れたと思えば、その指先はそのまま乱暴にネクタイを掴み、そのまま引き寄せてくるのだ。
「い、う……っ! で、デッドエンドさん、落ち着いてください……っ」
「元はと言えばテメェのせいだろ、なあ? そうだよな、人質」
「俺は人質じゃなくて――んむっ」
良平という名前があります、と言いかけた矢先。空いた手で頭を抑えつけられ、そのまま開きかけた唇に下腹部を押し付けられるのだ。
「む、ぅ……っ」
「――っ、しゃぶれよ」
「んむ……っ?!」
「ここで木っ端微塵、吹き飛ばされたくなかったら……俺の言うこと聞け」
良いな、とヴィランらしい顔でヴィランのようなことを言い出すデッドエンドに、俺はああそういえばこの人はヴィランなのだと気付いた。
◆ ◆ ◆
初めて写真で見たとき、デッドエンドのことは確かに怖かったが、何故だろうか。それよりもなんとなく親近感のようなものを覚えてしまったのは。
「……っ、は、……っ」
言われるがまま、俺は目の前、取り出されたデッドエンドの性器に唇を寄せる。
まさか素直に言うことを聞くとは思っていなかったようだ。こちらを見下ろしていたデッドエンドは一瞬ぎょっとしていたが、それもすぐ亀頭に唇を押し付ければ歪む。
「ぉ……っお前……」
「っ、ん、ぅ……っ」
脅されているのだから仕方ない、と頭の中で言い訳じみた言葉を並べながら俺はそのまま頭と顎、唇と舌を使って目の前で大きくなったそこを愛撫した。
……ほんの少しだけ、俺自身他人の性器を前にしたときに抵抗を感じなくなっていることに気付き、ショックを受けた。
「……っ、こ、ぉ……れふか……?」
「っ、や、そ……っ、こで喋んじゃねえ……っ!」
「ほ、めんなひゃ……んむ゛……っ!」
「わざとだろ、お前……っ!」
手が封じられている現状、口以外ではどうしようもない。取り敢えず亀頭に舌を絡めてそのまま舌の上を滑らせるように咥内へと性器を咥え込んでいく。
その都度ビクビクと舌の上で性器は跳ね、デッドエンドは声を漏らすのだ。
あまりこういうことは言わない方がいいのだろうが、そんなデッドエンドを見て俺は分かってしまった――この男、多分こういった行為に慣れていないのだということを。
なぜこんなことになってしまっているのだろうか。
なんて、この地下世界にきてからどれほど思ったことだろうか。
少しずつ、自分がどんどんこのヴィランたちの世界に毒されていっている気がしてならない。
ぬぷ、ぐちゅ、と咥内に響く粘着質のある音。舌の上を滑り、喉を犯すデッドエンドの性器に舌を絡め、裏筋からカリの凹凸の溝までたっぷりと濡らした唾液で愛撫する。
いつの日かモルグに喉の締め方を教えてもらったこともあったが、未だ俺には早いようだ。噎せてしまいそうになるので今回はせめてもので舌と唇を使ってデッドエンドに奉仕する。
「っ、は、ぁ……ッ、クソ……ッ」
張り詰めた性器からドクドクと鼓動が伝わってくる。もうそろそろ絶頂が近いのかもしれない。
上目でデッドエンドの様子を確認しながら、ちろりと亀頭に舌を這わせる。そのまま飴玉を舐めるように亀頭を舌で転がせば、びくんと大きくデッドエンドの腰が震えるのだ。
「ぁっ、や、めろ、それ……っ!」
「……っ、ん、ぅ゛……っ」
「っ、く、う……っ!」
逃げようとするデッドエンドの腰にさらに顔を寄せる。ぢゅぶ、と溢れそうになる先走りと唾液が混ざった体液を飲み込むついでに甘く亀頭を吸い上げた瞬間、舌の上で性器が大きく跳ね上がった。
そして次の瞬間、「んんうッ!」という苦しそうな声とともに口の中でデッドエンドのものが弾ける。
逆流しそうになる精液をなんとか喉の奥へと流し込んだ俺は、そのままずるりとデッドエンドの性器から唇を離す。
そして、
「んむ……ッ」
「な、なんで、おいお前今飲んで……っ」
あれ、飲めとは命令されてなかったのだったか。
熱と性臭でぼんやりとした頭の中、真っ赤になったり真っ青になったりしているデッドエンドを上目に眺めながら俺は再び濡れた亀頭に舌を這わせる。
射精直後で過敏になってるそこに舌をべろりと這わせただけでデッドエンドは声を漏らした。
「な、ぁ……ッ! ひ、う゛……ッ!」
亀頭から竿の部分、皮の隙間まで残った精液を丁寧に舐め取り、そして最後にぢゅる、と尿道口に残った精液の塊を吸い上げた瞬間、再び唇に固くなったそれが当たるのだ。
「待ッ、ぁ゛……っ! ぅ、く……ッ! まっ、で……ッ! 待てッ、馬鹿……ッ!」
本気で嫌がっているわけではないのだと性器の反応からして分かる分、助かる。
それと、多分亀頭への刺激にも慣れてないらしい。窄めた舌先で窪みをこちょこちょと穿れば、デッドエンドの腰が痙攣するのだ。
お掃除フェラだけのつもりだったのだけれど、と再び勃起したそこから唇を離せば、とろりと透明な糸が伸びる。それを舌で舐めとった。
「あの……これで、良かったですか?」
「こ、のやろ……ッ」
――何故言われた通りちゃんと射精まで促したのに、怒るのだ。
「デッドエンドさ――んん……っ!」
気付けばデッドエンドに床の上に押し倒されていた。拘束されたままの体ではろくに受け身など取ることはできなかった。
しまった、と思うよりも先に、覆い被さってくるデッドエンドに足を開かれそうになり、血の気が引いた。
「ぁっ、は、はなしが、ちが……っ」
「何者なんだよ、テメェ……っ」
「何者って、俺はただの平社員で……ッ、ぇ、う……ッ!」
言い終わるよりも先に、乱暴にスーツの下を引き抜かれるのだ。破られなかっただけましか、などと言ってる場合ではない。
「っ、デッドエンドさ……っ、ぁ……っ!」
待ってください、と目の前、開かされた股の間に立つ男を見上げようとしたときだった。
捲られた下着の下。口を開いた肛門に性器を押し付けられ、ぎょっとする。
既に再び限界まで固く反り返ったその性器に肛門を擦り上げられ、「ぁう」と情けない声が漏れた。
「ぁっ、そこ……っ」
「……っ、嘘吐け、テメェみてえな平社員がいるかよ!」
「そ、それは偏見です……っ! ぁ、んん……っ!」
よくない流れだ。そう思うのに、先程触手のせいで中途半端にかき乱されていた体は火照り、にゅるにゅると先走りを擦り付けるように押し付けられる亀頭の感触に自然と下半身が開いてしまうのだ。
そしてデッドエンドが動いた瞬間、押し付けられていた亀頭がぐぷりと体内に沈んでくる。その圧迫感に脳の奥がびりって痺れたように熱くなるのだ。
「っ、は、待ってくださ、もっと、ゆっくり……ッ」
「うるせえっ! っ、つうかなんだよこのケツ、どんだけ遊んでんだっ?!」
「ぁ、うぅ……っ! い、言わないでください……っ!」
「くそっ」と舌打ちをしたデッドエンドはそのまま俺の腰を持ち上げ、一番入りやすい角度を探るのだ。そして、
「っ、ぁ、デッドエンドさ……――」
そのままデッドエンドが腰を埋めようとした矢先だった。再び部屋の扉が開いた。
よりによってこのタイミングで誰かくるなんて思ってもいなかっただけに血の気が引いた。
そして、そこにいたのは――。
「良平……っ、て、おいデッド! お前何やって……っ!」
今まさにデッドエンドに襲われそうになっていた俺を見て、ぎょっとしたサディークに俺も流石に現実へと引き戻された。
「デッドエンドさ、っ、待っ、さ、サディークさんが……ぁ……っ!」
流石にこの展開はまずい、と慌ててデッドエンドを止めようとした瞬間だった。
ず、と一気に頭を埋め込んでくる性器に息が止まりそうになる。
「ッ、は、ぁ……ッ! う、んんう……っ!」
「っ、は、クソ……っ、うるせえな……っ、サディーク! 見ての通りこっちは取り込み中なんだよ、用なら後に……ぃ゛ッ! ばっ、締めんな、う゛っ、く……ッ、じっとしろっ!」
じっとしてるのに、と言い返す暇もなく、息を吐いたデッドエンドはそのまま俺の腰を掴み、更に奥まで腰を打ち付け来るのだ。
その度に内壁の粘膜が摩擦され、腹の奥がじんじんと熱くなる。汗が吹き出し、奥を突き上げられる度に声が溢れそうになるのだ。
「っ、さ、サディークさん……っ! た、たすけ……っ、ぁ、く、ひ……っ!」
「っ、よ、良平……」
「騙されんなよ、サディーク……っ! こいつはクソビッチだ、お前は騙されてんだ、ぁ゛……っ! やめろ、動くな! 腰動かすなっつってんだろ!」
「ち、が、俺、……っ、んん……っ!」
黙れ、と言わんばかりに乱暴に腿を掴まれ、そのまま開いた股の奥まで腰を打ち付けられた。
瞬間、脳の奥が白く弾ける。熱い。内側からどろどろに溶かされるようだ。
――こんなところ、サディークさんに見られたくないのに。
皮膚がぶつかる音と呼吸音が部屋の中に響き、腰を打ち付けられる度に体が跳ねる。サディークさん、と縋るように視線を向けたとき。伸びてきたデッドエンドに顎を掴まれるのだ。
そして、強引にデッドエンドの方を向かされる。
「っ、ぅ、や……っ」
「……っ、は、丁度良い……サディーク。なあこいつおかしいと思わないか? 何かまだ隠してんぜ、絶対」
「……それは」
「お前も混ざれよ、サディーク」
一瞬、デッドエンドの言葉の意味を理解するのに時間がかかってしまう。
それはサディークも同じだったようだ。
「……っ、デッド」
「は……こいつにフェラでもさせたらどうだ? 慣れてんぞ、こいつ」
べ、と唇を揉むようにして咥内へと入ってきた指先にそのまま舌を捉えられる。その舌の中央を指で抑えつけられるよう、そのまま口を開かされ、顔が熱くなった。
つい先程まで咥えていたデッドエンドの味と熱が蘇り、ひくりと喉仏が上下する。
――待て、つまりそれは。
「……っ」
デッドエンドの意図してることが分かり、血の気が引いた。
サディークを俺に触れさせて暴くつもりだ。
それだけはまずい。慌てて「サディークさん」と止めようとするが、口の中にねじ込まれた指がそれを阻害して上手く言葉を発せない。
「サディーク」
その声にびくりと肩を震わせたサディークは青くなったり赤くなったり顔色を変えながら、小さく息を吐いた。
「……分かったよ」
デッドエンドに逆らえないのか、それとも別の意図があるのか――俺にはサディークの言葉が読めなかった。けれど、状況がどんどん悪化しているということだけはよくわかった。
「ま、ぁ……っ! まっ、ってくださ、……ッ、ひ、う゛……ッ!」
この最悪の状況から脱却すべく、慌てて目の前のデッドエンドから逃れようとするが拘束されたこの身体でヴィラン二人相手に敵うわけがなかった。
思いっきり腰を打ち付けられた瞬間、脳髄まで貫くような刺激に思考回路は強制的に断たれる。
「っ……は、なに、慌て出してんだ? やっぱ都合の悪いことでもあんのかよ」
なあ、と腰を思いっきり打ち付けられれば、「う、あ」と断続的な悲鳴が喉奥から溢れる。
そのまま下半身を揺さぶるように腰を打ち付けられ、思考回路は乱された。
「っ、あ、ゃ、ちが……っんん、ぅ……っ!」
「デッド、あまり乱暴なことはするなって言っただろ……っ!」
「は……なにムキになってんだよ、やっぱお前こいつのこと気に入ってんのか?」
心配そうな顔をするサディークに対し、これみよがしに結合部を見せつけるよう人の腿を掴み、開脚させるサディーク。ピストンの都度震える性器が滑稽で、恥ずかしくて、「見ないでください」と言いたいのにその声すら突き上げられる度に途切れてしまう。
「っ、は、ぁ……っ、さ、でぃ……くさ……ッ!」
考え直してください、と懇願するようにサディークを見上げ首を振ったときだ。「良平」と顔を赤くしたサディークが呟く。
その目はどこか同情的でもあった。
サディークもこの展開は本位ではないのだとわかった。けれど。
「っ、ひ、う゛……ッ!!」
瞬間、伸びてきたデッドエンドの手に性器を握られ、息が止まりそうになった。
「ぁ、は……っ、ぁあ……」
「なに見つめ合ってんだ? ……っ、くそ、集中しろ……っ!」
「っん、む……っ!」
そして苛ついたように覆いかぶさってきたデッドエンドに、サディークの目の前で唇を塞がれる。
ほんの数秒のことだったが、俺にとっては長い時間のようにも思えた。
案外デッドエンドの唇が柔らかいことに気付くのもつかの間、噛み付かれるように歯が唇に当たり、痛みで目が覚める。
「……っふ、ぅ……む……っ」
ぢゅぷ、と唾液で濡れたデッドエンドの舌が唇に触れた。そのまま乱暴に咥内を探られそうになり、咄嗟に顔を逸らせば更に奥を突かれる。濡れた音を立て、摩擦される粘膜に堪らず全身が震えた。
「ぅ、ふ、う……っ! う、……っ、んん……っ!」
「は、んだよ……っ、おい、サディークの前だからって今更照れてんのか?」
「っ、ぁ、や……ッんん……ッ!」
違います、と否定しようにもすぐに再度デッドエンドに唇を塞がれる。そのまま性急な動きで腰を叩きつけられる。そのピストンの間隔は次第に短くなっていき、そして、体内のデッドエンドのものが大きく跳ねたと思った瞬間。
「く、ぅ……ッ!」
「ひ、んんぅ……ッ!」
どくん、とデッドエンドの鼓動が響いたとき、腹の中に吐き出される熱にぶるりと全身が大きく震えた。
どくどくと腹の中を満たしていく精液の熱。はあ、と荒く呼吸を繰り返したデッドエンドにやっと気が済んだのだろうかと恐る恐る顔を上げたときだった。腹の中、根元まで収まっていたそれがすぐに芯を持ち始めていることに気付き、ぶるりと背筋が痺れる。
「あ、で……デッドエンドさ……」
「……ッ、うるせえ、お前のせいだ……ッ!」
「え、ええ……?!」
そんな無茶苦茶な、と驚く暇もなかった。再び下半身を掴まれれば、上手く受け身を取ることが出来ずそのまま背中に硬い床が当たる。そんな体勢のまま再び奥まで性器をねじ込まれれば、体内に出されたデッドエンドの精液が掻き混ぜられ、ぐちゃぐちゃとなんとも恥ずかしい音を立てて抜き差しされるのだ。
「ん、ぅ、あ……ッ! 待っ、ぁ、んんッ」
「ッ、おい、なに突っ立ってんだよ、お前も混ざれって……ッ!」
それは俺にではなく、部屋の奥。扉の前から動けずにいたサディークへ向けられたものだと分かった。今度はもうサディークはなにも言わなかった。
この粘着質な水音がサディークの耳にまで届いているかと思えばただただ生きた心地がしなかった。
サディークの反応を確認する勇気が出なくて、こちらへと歩み寄ってくるサディークから必死に顔を逸らそうとするが、それは無駄な抵抗となって終わる。
仰向けに転がされた視界の端、サディークのブーツの爪先が入り込んだ。そして、俺に視線を合わせるように座り込んだサディークと目が合った。
伸びた前髪の下、困惑と戸惑い、それとは別のいつの日か見たことがある感情の色を滲ませたサディークは「良平」と俺の名前を呼んだ。
「さ、でぃ……く、さん……」
「――ごめん、良平」
それは、俺にだけ聞こえる声だった。
普段青白いサディークの顔は熱でほんのりと上気しているようだ。コートの下、腰の巻きついたベルトを緩めるサディーク。そして、既に膨らんで窮屈そうになっていたそこからパンパンに勃起した性器を取り出したサディーク。
鼻先、視界を覆う性器の影に目を見開いたまま固まる俺に、サディークは小さく呟いた。
「……そういうことだからさ……俺のも、よろしく」
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