5 / 100
CASE.03『興味対象』
02※【セクハラマッサージ】
しおりを挟む
マッサージをしてあげる。
そう、モルグからの申し出を受けることになったのだけれども。別にそれについては問題ない、寧ろそこまでしてもらえるなんてと感謝の念すら覚えるくらいだ。
けれど、けれどもだ。
「……っ、あの、本当に……このままで……」
「勿論。服は邪魔でしょ? ……ああ、別にそんな恥ずかしがらなくてもいいから。僕、人間の裸体見飽きてるから」
「は、はあ……」
下着一枚になるようにと言われ、言われるがまま服を脱いでベッドの上に俯せへとなる。
自分なりに鍛えていたつもりだが、この会社に来てノクシャスや他のヴィランたちを見てしまったからか自分の体がより貧相に思えて恥ずかしかった。
それに、研究職であるモルグの方が俺よりも線は細く見えるが、腕まくりしたときに覗く腕からしても体つきはしっかりしている。
なんだか惨めな気持ちになるが、こんなコンプレックスを刺激されてる場合ではない。
「失礼しまーす」と間延びしたモルグの声が降りてくる。そして、間もなくしてベッドの上にもう一人分の体重が掛かる。
モルグの気配を背中に感じ、思わず息を飲む。それを察知したのだろう、そっと背中に触れたモルグ。
「それじゃ、力抜いてねえ」
「は……い……ッ」
筋肉痛は足だけなのだから足だけでもいいと伝えたのだが、どうせ明日にくるだろうからついでに全身ほぐしてあげる。そうモルグは言った。
手のひらが肩甲骨の辺りに触れ、その横のツボを親指でなぞるようにぐっと押される。痛みはない、寧ろ力加減も丁度良い。
「……っ、ふ、ぅ……ッ」
目の前のクッションを手で手繰り寄せ、しがみつく。ぐ、と加える力が増すにつれ、全身へと熱が広がる。
そしてそのまま軽く肩を掴まれ、背中をぐっと押されたとき。
「ん、ぅ……ッ!」
思わず口から声が漏れる。
「痛かった?」と耳元でモルグに尋ねられ、俺は首を横に振った。
「い、いえ……っ、声が出てしまっただけで……気持ちいいです……」
「だろうね、君ここ性感帯でしょ?」
「え?」と振り返ろうとしたときだった。先程よりもさらにツボをぐりぐりと指で押された瞬間だった。
「ん゛ぃ……ッ!!」
「あはっ、すごい声出たねえ」
「っ、はー……ッ、ぅ……ッ、も、るぐさ……ッ、待……ぅ゛んん゛ッ!」
「ちゃんと口開けて呼吸して、じゃないと窒息しちゃうよ? 僕が機械の心臓作らなきゃならなくなるから。……ああほら、枕掴むの禁止」
モルグは俺の腕の中のクッションを奪いながらも、もう片方のツボを押す手は止めない。
肩甲骨から背骨周辺を指で圧される。痛みなどはない、けれど、耐え難いほどの気持ちよさに声を抑えることができず、恥ずかしくなる。
「っひ、ぅ゛ッ!」
「君感じやすいね。鎖骨に背中ときたら……ここも弱いのかな?」
そう脇腹を撫でられた瞬間、反射的に腰を捻ってモルグの下から這い出ようとする。が、すぐに上からモルグに抑え込まれ、身動きすら取れない。
やっぱりこの人もヴィランだ、力は俺よりもずっと強い。
「っ、も、るぐさん……ッ」
「あはっ、泣いてる? こそばゆかった? ごめんごめん、かわいいねえ。ほら、大丈夫。怖いことなにもしてないよぉ?」
「揉み解してあげてるだけだから」そう、慰めるように脇腹を撫でられればそれだけで過敏になっていた体がびくんと跳ねる。
自分でも分からない。マッサージしてもらうことは何度かあったが、それでもこんな風に取り乱すほどではなかった。
なにをしたのか、それともただ単にモルグが俺の弱いところを見抜いてるからか。
どちらにせよ。
「っ、は、恥ずかしいので……せ……いかんたい、とか、言わないでください……ッ」
「性感帯の場所知りたくないの? 後々便利になるのに?」
「い、いいです……っ、知りたくないです……ッ」
意識すればするほど、モルグのツボにハマっていくような気がした。そう断れば、「ふーーん、ま、いいや。おーけー、じゃこのまま下半身行くねえ」とモルグは微笑んだ。先程と変わらない笑顔だ。
気を取り直して、俺は姿勢を整える。なんだかまだ心臓が煩い。まだ触れられてもいないのに、これからモルグに下半身を触れられるのだと思うと勝手に意識が下にいってしまうのだ。
今思えば俺、下着しか履いてないんだ。……恥ずかしい。モルグから見た俺はさぞ滑稽だろう。
「じゃ、触るよ。善家君」
「は、はい……お願いします」
もじ、と体勢を再度直し、俺はまな板の上のマグロになる。
最初にモルグの手が触れたのは、太腿の裏側だった。覚悟していたものの、やはり低体温気味のひんやりとした手には毎度反応してしまう。
けれど、今度は先程よりもモルグの手付きは優しかった。
「……っ、ん、……ぅ……」
緊張している太腿の筋を強く押しすぎず、その周囲の筋肉を丹念に揉みほぐしていく。
……気持ちいい。思わず目を瞑り、うつらうつらとしていたときだった。
「善家君って、もしかして鍛えてたりした?」
モルグの声が頭の上から落ちてくる。
「っ、は、い……ずっと、ヒーローに、なりたくて……ッん、ぅ……ッ」
「あはっ、過去形なんだ」
ここはヒーローたちを敵対視するヴィランたちの巣窟。黙っていた方がいいと思っていたが、それでもつい素直に言ってしまったのはモルグの持っている独特の雰囲気がそうさせてるからだろうか。
「す、みません……皆さんヴィランなのに……」
「いーよ、別に。僕はそういうのにはあんま拘らないしね。……ノクシャスやナハトには言わない方が懸命だろうけど」
「……っ、ん、ぅ……そう、ですよね」
「それに、なんだかそんな気はしてたんだ。……だって、君ってあまりにもヴィランって感じはしないんだもん」
「お人好しで、人に寄り添うところとか」なんて、俺を励まそうとしてくれてるのだろうか。それはここにきて、俺が皆に感じたものでもある。
それでも、モルグにそう言ってもらえると嬉しかった。
「それで、ヒーローになるつもりだったところをボスに連れてこられたってわけ?」
「……えと、一応……そうなるんですけど……」
その辺りの記憶が曖昧なのだ。
就活のため、履歴書を抱えてヒーローの所属するプロダクションや事務所、それこそ派遣会社など色々なところを見て回り、そして片っ端から面接を受けようとしていたところまでは覚えてる。
そして早速面接へと向かおうとしていた――そこで記憶は途切れていた。
「面接行く途中……気が付いたら、皆さんがいました」
「あー、なるほど。……それは災難だったね」
「……っ、ん……ッ、……でも、俺、あの日……攫ってもらえて……良かったんじゃないかって思ってるんです」
「それは昼間言ってた出ていかない理由の話?」
「はい……それもそうなんですけど、おれ、ぉ、……俺には……才能がなくて……ッ」
そう、口にしたときだった。両足の脹脛へと触れていたモルグの手がぴたりと止まる。
「…………それは、君がそう思ってるの?」
「は、い……気持ちだけあっても、駄目だって……それに、俺、痛いのも苦手だし……弱いし、周りの人たちや、先生もやめろって……ッ、ん、ぅ、……っ、ぁ、モルグさん……ッ!」
モルグに掴まれた足に次第に痺れるような痛みが増していく。驚いて声を上げれば、モルグは無意識のうちに力加減を誤っていたようだ。
「あっ、ごめん……痛かった?」
「い、いえ……大丈夫です……」
はっとしたモルグはそう、もう一度「ごめんね」と俺の背中にキスをする。あまりにも流れるような仕草で驚く暇もなかった。
「……けど、ヒーローになれない子なんていないよ」
「え?」と声を上げたときだった。モルグの手は脹脛から俺の足に触れた。そのまま足の裏に触れる細い指の感触に、堪らず息が漏れた。
「……ッ、ん……ッ!」
「足の裏も硬くなってるね……柔らかくしてあげるからね」
モルグの指先は細い。だからこそどんなツボにも上手く入るのだろう。軽く膝を折られ、そのままぐりぐりと足の裏のツボを刺激される。
抗い難い持続的な刺激に全身は熱のあまり発汗し、俺はシーツにしがみついた。それでも、その快感を上手く逃すことはできない。
「っは、ぁ……ッん、っ、モルグさ……ッ」
「……気持ちいい?」
「は、い……ッ、ぁ、待って……ッ」
不意に、体を仰向けに返されそうになり血の気が引いた。待ってください、と止めようとするが間に合わない。視界が広がり、そして、最も熱の集まっていた下腹部を照明の下に晒された。
恥ずかしかった。
下着の中、性器の形までも一見して分かるほど浮かび上がり、勃起した己自身が。そして先走りで濡れ、色濃く変色した染み部分を見てこちらを見下ろしていたモルグは微笑むのだ。
「……あれれ、最初性感帯いじりすぎちゃった?」
「っ、ご、めんなさい……俺……ッ」
「大丈夫だいじょーぶ。……気持ちよくなったらみーんな、ここ濡らすから。生理現象だよ、恥ずかしいことじゃないからどうどうとするんだよ。……いい?」
「……っ、は、い……」
こくこくと頷き返す俺に、モルグはうんうんと満足げに頷く。そして。
「じゃ、次はそこに手をついて開脚してみようか」
そう、変わらない笑顔でさらりとそんなことを口にするのだ。
「っ、モルグさ……ッ、待って……」
「ん? どーしたの?」
「こ、の格好……ッ」
そう咄嗟に脚を閉じようとすれば、やんわりと膝の頭を掴まれ再び開かれる。
それどころか、「この格好が?」と不思議そうに小首傾げるモルグに顔が熱くなった。
「は、ずかしい……です……」
「……君は恥ずかしがり屋さんなんだねえ。大丈夫、僕は恥ずかしくないよ」
そういう問題じゃない。それに、モルグが恥ずかしくないのは当たり前じゃないか。
下着越し、くっきりと浮かび上がる性器の膨らみを中心に染みが濃くなっているのが分かり更に恥ずかしくなる。
見ないでください、とモルグを押し返そうとするが、モルグは気にせずそのまま膝の裏側を掴み、脚を折り曲げてくるのだ。
「っ、ぅ、あ……ッ!」
「君、結構股関節硬いね。元々体が柔らかくない方みたいだし、こまめにストレッチしていかないと大変だよ~」
「っ、は、はい……っ」
「ほら、こことか。一人で出来そうにないなら誰かに頼むのもありだよねえ、一人じゃどうやっても限界あるだろうし」
「……っ、ぅ、ん……っ」
「こうやってゆっくり息を吐きながら体重掛けていくとやりやすいよ」
言いながら、手とり足取りレクチャーしてくれるモルグだがその説明は全く頭に入ってこない。
腿を掴まれ、膨らんだそこを見られてるということだけでなにも考えられない。
上半身に向かって膝を押し付けられると圧迫感で息苦しくなるが、それ以上に下着の下で広がる肛門の感覚が気になって集中することができなかった。
性器が溢れないように下着を手で隠しながらも、耐える。
本当にモルグは純粋なマッサージのつもりのようだ。
一人だけ興奮してるようで恥ずかしくなり、身に力が入らない。そんな俺を見て、一息ついたモルグは「ちょっと休憩しようか」と提案してくれた。
もしかしたら俺がただ疲れてるのだと思ったのかもしれない。それでもその申し出はありがたい。
「……っは、ぅ……ッ」
モルグの言葉に甘え、ようやく開放された俺はそのままくたりとベッドへと寝転んだ。
一度ベッドから降り、ドリンクを手に再び戻ってきたモルグは「痛かった?」なんて俺の顔を覗き込んでくる。
「い、いえ……大分……モルグさんのお陰で痛みが和らいで、なんだか体が軽くなりました」
「そう、ならよかった~」
……嘘ではない。確かに恥ずかしいけれど、モルグに触れられた箇所は動かしやすくなっている。それに、ぽかぽかするし……。
ありがとうございました、と頭を下げれば「いいよ、そんなの」とモルグは笑う。
そして何かを思い出したように「そうだ」とこちらを見た。
「そういえば善家君さあ、もっとその疲れを癒やすマッサージあるんだけど試さない?」
「え? 今のよりもですか……?」
「そーそー。……僕が思うに君の恥ずかしがり屋なところとか、その自信のなさが関係してると思うんだよねえ」
――だから、そんな余計なこと考えなくて済むようにしてあげる。
そうモルグは俺に笑いかけてくる。
そんなマッサージがあるのか、とか。色々疑問はあったがモルグの言葉には説得力があった。
確かに、教師たちにも何度もこの性格のことは指摘された。ヒーローになりたいのならもっと堂々としてなさいと。
けれど、やはりなにをやっても上手くいかない。
それがマッサージで少しでもよくなるのなら、とそんな思考が過ぎった。
「お願いします」と頭を下げれば、モルグはニッコリと笑った。
そして。
「じゃ、もっかいそこに横になろうねえ」
……。
…………。
………………。
「あ、あの……本当にこの体勢じゃないと駄目なんですか?」
「ん~。じゃなくてもいいけどぉ、一番僕がやりやすいようにさせてもらおうかなって思って。……恥ずかしい?」
「は、はい……」
「そっかそっか。けど、これに慣れていかないとねえ」
一緒に慣れていこうね、とモルグが笑う気配がした。
二人分の体重に沈むベッドの上。俺はモルグの指示のもと、そのベッドの上に犬のように四つん這いになり、そのまま目の前のクッションにしがみつくように腰を持ち上げる。そして、その背後にはモルグが乗り上げてこちらを見下ろしてる。こちらからはその表情までもは分からない。
それにしても、寝てた方がいいんじゃないか。
そんなことを思いながらも尻をモルグに見せるような体勢に緊張していると、いきなり伸びてきた手に尻を撫でられる。
相変わらず下着一枚のそこに、輪郭線をなぞるように触れられると堪らず反応しそうになる。
「っ、あ、あの……」
「君のお尻、引き締まってて形いいんだしさ、僕はもっと堂々としててもいいと思うんだよねえ」
「あ、ありがとうございます……?」
モルグに他意はないのだ、落ち着け。と自分に言い聞かせていた矢先だった。
そのまま尻を撫でていた手が下着のウエストゴムに触れる。そのまま摘むようにずるりと下着を脱がされ、ぎょっとした。
「っ、え、も、モルグさ……ッ」
「おー、綺麗に閉じてるね。ここになにも挿れたことないの?」
「っへ、あ、あの……ッ?!」
なにを、と突っ込む暇すらもなかった。
下着を脱がされたと思えば、そのまま尻の谷間を左右に割り開かれる。閉じたままの肛門を指の腹でぷにぷにと撫でられ、言葉を失う。
「っモルグさん、な、にして……っ」
「ん~? だからマッサージ~?」
「っ、マッサージって……」
「じゃ、失礼しますねえ」
そう、人の言葉を無視してモルグは背後で動く。と、同時に閉じていたそこに細い突起状のなにかがはいってくる。何事かと振り返ろうとした次の瞬間、閉じた肛門の奥へとブリュッ!と勢いよく常温の液体が注がれるのだ。
「ふ、ぅ゛……ッ?!」
「ん~君初めてだよねえ、ならちょっと多めでもいいかなあ」
「ッ、も、るぐ、さ……ッ、これ、な、に……ッ」
「潤滑油だよ。今から君のお尻の穴に僕の指を入れるから痛くないようにってねえ」
「ん゛、う゛……っ!」
だから、なんで。という言葉は声にならなかった。
感じたことのない感覚に、引き抜かれたボトルをサイドボードに置いたモルグ。栓を失い、とろりと垂れる潤滑油を指に絡めながらモルグは異物を押し出そうと硬く口を閉じたそこに再び触れる。
先程までとは違い、ぬめりを伴った指先は少し力を加えられるだけで滑るように埋まるのだ。
異物感。それを拒もうと四肢に力が入るが、モルグは構わず無視して指を更に奥へと埋め込むのだ。
「っ、ん、ぅ……っ、ゆ、びが……っ」
「そうだよぉ。今からこれで君にマッサージしてあげる。前立腺マッサージ、知ってる?」
「っ、し、りま、せ……ッ!」
「男でもマッサージされるとわけわかんなくなるところだよ。君はまだ処女らしいから無茶なことはしないから安心して。……ただ君は気持ちよくなるだけだから」
「っは、へ」
なにを言ってるんだ、この人は。
何一つ理解できず、やめてくださいと言う暇もなかった。
痛みはないが腹の中に入ってくる指に内壁を撫で上げられ、違和感が更に強くなる。ひくりと喉が震え、必死に指先から逃れようと腰を動かせば、モルグは「こーら」と俺の腰を掴んで引き戻すのだ。そして先程よりも大胆な動きで腹の中を探られる。腹の中で潤滑油とモルグの指が絡み合い、濡れた音が響き渡った。
「大丈夫、怖いことはしないからねえ」
「っ、も、るぐさ……ぁ……っ」
体内を探るように動き回る指に汗が滲む。恥ずかしさだけではない。くの字に曲がる指に、内壁へと潤滑油を塗り込むように嬲られれば頭の奥がじんじんと熱く痺れていく。
「っふーッ、ぅ、ん゛……ッ!!」
目の前のクッションに顔を埋め、声を堪えようとしたときだった。モルグの指先が体内のとある部分を掠めた瞬間、びくりと腰が震えた。
最初はほんの小さな違和感だった。それでもモルグはそれを逃さなかった。
「……ああ、見つけた。ここかあ」
そう、背後から覆い被さってくるように俺の腰を捕らえていたモルグが笑った――……気がした。
前立腺、とモルグは言っていた。ふわっとした単語しか聞いたことなかったし、自分の体のどこにあるのかも分からない。
けれど、モルグはそれを見つけたのだと言う。
「ぉ゛ッ、ぐ……っ! ん゛ッ、ふ、ぅ゛……ッ!!」
指の腹で摩擦するように柔らかく揉まれる度に腹の中で潤滑油の音は大きくなる。
ぼたぼたと潤滑油か溢れようが滴ろうがモルグは全部無視して一点集中して前立腺を愛撫するのだ。あくまでも優しく、柔らかく、それでもしっかりと逃さないように俺の太腿を掴み、指を抜き差しする。
「どんどん垂れてきた。……感度もいいし、苦労しないだろうね君とのセックスは」
「っん゛……ッ、ぅ゛……ッ、ふ……ッ!!」
「我慢しなくてもいいよ、誰だってここ揉まれたら気持ちよくなるんだ。……ほら、声も我慢しないで?」
体内で響く淫猥な水音とモルグの甘く優しい声が混ざり合い、頭がどうにかなりそうだった。
気持ちいい。気持ちいいあまり自分の意図せず情けない声が漏れてしまい、恥ずかしかった。それでもモルグはそんな俺すらも受け止め、更に責め立ててくるのだ。
二本の指にこりこりと中を解され続け、腰の痙攣は止まらない。甘く勃起した性器からはとめどなく白濁混じりの先走りが垂れ、シーツに水たまりをつくった。
「っはーっ、ぁ゛……ッ! も、るぐ、しゃ」
「んーどうしたの? 怖くないよ?」
「っ、い、やだ、ぬいっ、ひ……ッ、そこ、ぃ、やだ……ッ!」
「嫌だ、じゃなくていいでしょ?」
「ん゛ひ……ッ!!」
ぐちゅぐちゅと音を立て出入りするモルグの指から逃れることはできない。
クッションにしがみつくが、腹の中でぐるぐると溜まり、暴れ狂う熱はまるで発散場を探すように膨れ上がるのだ。それがずっと続いてるようだった。イキそう、という感覚が次第に強くなるにつれ目の前が白く霞んでいく。
腰が揺れる度に揺れる哀れな性器を見て、モルグはくすりと微笑んだ。
「取り敢えず一回溜まってるの出そうか」
「へ、」
「ほら、びゅっびゅっ」とまるで幼い子に言い聞かせるような優しい口調でモルグは俺の性器を柔らかく扱き始める。潤滑油などなくとも既に己の体液でどろどろに濡れていたそこは、モルグに少し触れられただけでも恐ろしく反応してしまうほどだった。
「ああ、ほら、見て見て~善家君。君のおちんちんもうイキそうだね」
「っ、ぅ゛あ゛ッ!! いやだ、見ないで……っ、モルグさ……ッ、ひ、ぅ……ッ!!」
「いいよお、いっぱい出して。どうせここ君の部屋だしねえ」
「ぅ、あ゛……っ!」
……少し擦られただけだった。モルグの指先に挟まれ、何回か上下に擦られそのまま皮を弄ぶように弄られただけだ。それだけであまりにも呆気なく射精してしまう俺を見てモルグは馬鹿にするわけでもなく「偉いねえ」と褒めてくれるのだ。なんだかもう恥ずかしさと情けなさと気持ちよさとでパニックになりそうになる俺に、モルグは微笑んだ。
「よかった。ほらこれでアナルに集中できるよね」
「はあ……つ、はー……っ、……ぁ……ッ?」
一瞬、モルグがなに言ってるのか分からなかった。瞬間。
「んひっ!」
再びアナルを責められ、堪らず悲鳴を上げてしまう。どさくさに紛れ、二本だったのが三本に追加されている。
「っ、はー、ぁ、ッ、も、……ッ、いい、ッ、いいです、ぉれ……っ、きもち、いい……からぁ……っ!!」
「いいんだ? じゃあもっと良くしてあげるねえ」
「はー……ッ、う゛、ふ、ッ、ぐ……っぅ、……ッ!!」
ぐちゅぐちゅと音を立て前立腺を責め立てられる。痙攣する腰を抱き締められ、さらに執拗に愛撫されれば、たった今射精したばかりの性器からびゅっと半濁の液体が溢れる。
それを見てモルグは笑った。
「お~、出るね~。ほら、溜まってるの全部吐き出しちゃおうねえ」
「ぅ゛う゛~~ッ!!」
今度は性器に指一本触られていない。それでも射精感は収まらない。内側から犯され、理性すらも溶かされているようだった。
何度目かの絶頂を迎えたが、精液はでなかった。それでも勃起は収まらず、熱は増すばかり。
自然と開いた股はガクガクと痙攣を起こしたまま力を入れることもできず、みっともなく開いたままモルグの指を飲み込んだ肛門は執拗な愛撫に堪えられずに溢れ出した潤滑油でどろどろにぬ濡れていた。
「も゛……む゛り……ッ」
「無理じゃないよ」
「ぉ゛ごッ!」
「まだいける、ほら、僕が手伝ってあげるからいっぱい出そうね」
ごりゅ、と臍の裏側から押し上げられた瞬間瞼裏が白く点滅する。瞬間。
「~~ッ!!」
自分の体を支えることもできなかった。シーツの上、開いた尿道口からは精液ではなく、黄色く水っぽい液体がちょろちょろと溢れ出した。
「おっと、やりすぎたかな」というモルグの声が落ちてくる。肛門から指を引き抜かれた瞬間、支えを失った体はそのままぺしゃりとベッドの上へと落ちた。腹部に広がる熱。力も入れることもできず、ガクガクと痙攣の収まらない下腹部。
暫く俺はベッドの上から動くことができなかった。
……。
…………。
なんだか、全身がぽかぽかする。
いつの間にかに俺は眠りに落ちてしまっていたようだ。微睡む意識の中、目を覚ませばそこには……。
「やあ善家君、おはよう。よく眠ってたね」
「ひっ!!」
「ひっ、て。ふふ、驚きすぎじゃない? 傷つくなあ……」
なんて、ベッドに腰を掛けて勝手にコーヒーを飲んでいたモルグは俺の腰を撫でてくる。
別になんともない、撫でられただけにも関わらずじんわりと熱を持つ下半身にぎょっとし、俺は慌ててモルグから逃げるように体の上に掛けられていたシーツで下腹部を隠した。
「あっ、すみません……お、俺……いつの間にかに寝て……」
「いーよいーよ、別に。僕もやりすぎちゃったからねえ。あ、シーツも全部クリーニングさせておいたよぉ」
「シーツ……?」
「ん? 覚えてないのぉ?」
「…………」
沈黙。そして、次々と掘り起こされる記憶に全身から血の気が引いていく。
夢、だと思っていた。なんかすんごい気持ちいい夢。だけど、もしこれが現実ってことなら……俺は……俺は……。
「すっ、すみませんでした……っ! お、俺……っ
!」
「わあ、びっくりした。……なにが?」
「も、モルグさんの前で……あんな……っ」
「あ、もしかしてぇ~……お漏らししたこと言ってる?」
「……っ、ぁ……あぁ……」
全身の熱が顔面に集まっていくのが分かった。
穴があったら入りたい、とはまさにこのことだろう。ふかふかの新品のシーツを被り、モルグの視線から逃げようとすれば、呆気なくモルグにシーツごと奪われた。そして、モルグは「どうしたの~?」と不思議そうにこちらを覗き込んでくる。
「ぉ、おれ……あんな……」
「気持ちよくなかったぁ?」
「き……っ、気持ちよかったです……」
死ぬほど、と思わず口からでそうになる。
そんな俺を見て、モルグはにこ~っと微笑むのだ。そして「じゃあ別によくない?」と笑った。
「へ……」
「うーんでもやっぱ一度や二度じゃ君のその難儀な性格は変わらないってことかあ……。君が言うには先天的なものらしいからねえ。けど、徐々に慣らしていけばきっと君も変わることができるよ」
「あ、あの……モルグさん……?」
「ってなわけで、もう一回僕と慣らしておこうか?」
なんて、人良さそうな笑顔を浮かべ、俺の手を握り締めてくるモルグに血の気が引いた。
「も、もう一回……?」
「マッサージは少し君に刺激強かったみたいだから、まずはこうした接触から……」
え、え、と絡められる指に狼狽えていた矢先だった。いきなり部屋の扉が開く。そして。
「…………………………」
現れたのはナハトだった。
ベッドの上、半ばモルグに押し倒されそうになっていた俺を見たナハトは一瞬物凄い顔をし、そして即座にモルグの首根っこを掴む。
「……ねえ、何してんの? 変態」
「あ、ナハトお帰り~ボスとの用事は終わったのお?」
「終わったからこうしてここに戻ってきたんでしょ。……何してんの?」
「ん~? 善家君と仲良くしようと思って」
「…………」
狼狽えもせずあっけらかんと答えるモルグにナハトは深い溜息を吐き、そして俺から引き剥がす。
「……こいつの面倒は俺が見る。あんたはさっさと大好きな人体改造に戻ってなよ」
「珍しいねえ、ナハトがそんな風に積極的に人の面倒見たがるなんて興味深いよ」
「え、そうなんです……ふぁっ!」
「……いちいちそいつの言うこと真に受けなくていいから」
……ナハトに頬を摘まれてしまった。「ふぁい」と頷けば、ナハトはふんと鼻を鳴らす。そんなナハトにやれやれと肩を竦めたモルグはそのまま部屋を出ていこうとする。
「ふふ、すっかり仲良しさんだねえ。……じゃあ善家君、またねえ。僕はいつでも待ってるよ」
そうひらひらと手を振り、モルグはそのまま部屋を出ていった。その最後の言葉に先程までのやり取りを思い出し顔が熱くなる。
「……なにあれ、どういう意味?」
「さ、さあ……」
「……なにか俺に隠してる?」
「か、隠してない……っ、隠してないですから……っ!」
「……ベッド、シーツ変えた?」
「……っ!!」
「………………」
す、鋭い。なんでこんなに鋭いんだ。
じ……と、白い目を向けてくるナハトだったが俺が口をぱくぱくさせてるとやがて深くため息を吐く。
そのままベッドに横になるナハト。
「……あ、あの……ナハトさ……」
「善家のくせに生意気。……寝るからあっち行って」
「え、あの、そこ俺のベッド……」
「お前はそっちのソファーで寝たらいいじゃん」
そう、拗ねたように俺からシーツをひったくったナハトはその中に丸くなる。
どうやら俺に秘密にされたことが気に入らなかったようだ。……どうすればいいのかわからず、取り敢えず俺は言われるがままベッドを降りる。
やはり、モルグにされたことはナハトには言えないけど。けれどもだ。……せっかくナハトと仲良くなれた、かもしれないと思ってた矢先にまた避けられるのは寂しい。俺はお詫びの代わりのナハトの好きなお菓子をそっと枕元に置き、ソファーへと戻った。
それから数十分後、バリバリ!!となにかが潰れるような音ともに「善家……っ! こんなところに食べ物を置くな!」とナハトに怒られるハメになったのは言わずもがなだった。
そう、モルグからの申し出を受けることになったのだけれども。別にそれについては問題ない、寧ろそこまでしてもらえるなんてと感謝の念すら覚えるくらいだ。
けれど、けれどもだ。
「……っ、あの、本当に……このままで……」
「勿論。服は邪魔でしょ? ……ああ、別にそんな恥ずかしがらなくてもいいから。僕、人間の裸体見飽きてるから」
「は、はあ……」
下着一枚になるようにと言われ、言われるがまま服を脱いでベッドの上に俯せへとなる。
自分なりに鍛えていたつもりだが、この会社に来てノクシャスや他のヴィランたちを見てしまったからか自分の体がより貧相に思えて恥ずかしかった。
それに、研究職であるモルグの方が俺よりも線は細く見えるが、腕まくりしたときに覗く腕からしても体つきはしっかりしている。
なんだか惨めな気持ちになるが、こんなコンプレックスを刺激されてる場合ではない。
「失礼しまーす」と間延びしたモルグの声が降りてくる。そして、間もなくしてベッドの上にもう一人分の体重が掛かる。
モルグの気配を背中に感じ、思わず息を飲む。それを察知したのだろう、そっと背中に触れたモルグ。
「それじゃ、力抜いてねえ」
「は……い……ッ」
筋肉痛は足だけなのだから足だけでもいいと伝えたのだが、どうせ明日にくるだろうからついでに全身ほぐしてあげる。そうモルグは言った。
手のひらが肩甲骨の辺りに触れ、その横のツボを親指でなぞるようにぐっと押される。痛みはない、寧ろ力加減も丁度良い。
「……っ、ふ、ぅ……ッ」
目の前のクッションを手で手繰り寄せ、しがみつく。ぐ、と加える力が増すにつれ、全身へと熱が広がる。
そしてそのまま軽く肩を掴まれ、背中をぐっと押されたとき。
「ん、ぅ……ッ!」
思わず口から声が漏れる。
「痛かった?」と耳元でモルグに尋ねられ、俺は首を横に振った。
「い、いえ……っ、声が出てしまっただけで……気持ちいいです……」
「だろうね、君ここ性感帯でしょ?」
「え?」と振り返ろうとしたときだった。先程よりもさらにツボをぐりぐりと指で押された瞬間だった。
「ん゛ぃ……ッ!!」
「あはっ、すごい声出たねえ」
「っ、はー……ッ、ぅ……ッ、も、るぐさ……ッ、待……ぅ゛んん゛ッ!」
「ちゃんと口開けて呼吸して、じゃないと窒息しちゃうよ? 僕が機械の心臓作らなきゃならなくなるから。……ああほら、枕掴むの禁止」
モルグは俺の腕の中のクッションを奪いながらも、もう片方のツボを押す手は止めない。
肩甲骨から背骨周辺を指で圧される。痛みなどはない、けれど、耐え難いほどの気持ちよさに声を抑えることができず、恥ずかしくなる。
「っひ、ぅ゛ッ!」
「君感じやすいね。鎖骨に背中ときたら……ここも弱いのかな?」
そう脇腹を撫でられた瞬間、反射的に腰を捻ってモルグの下から這い出ようとする。が、すぐに上からモルグに抑え込まれ、身動きすら取れない。
やっぱりこの人もヴィランだ、力は俺よりもずっと強い。
「っ、も、るぐさん……ッ」
「あはっ、泣いてる? こそばゆかった? ごめんごめん、かわいいねえ。ほら、大丈夫。怖いことなにもしてないよぉ?」
「揉み解してあげてるだけだから」そう、慰めるように脇腹を撫でられればそれだけで過敏になっていた体がびくんと跳ねる。
自分でも分からない。マッサージしてもらうことは何度かあったが、それでもこんな風に取り乱すほどではなかった。
なにをしたのか、それともただ単にモルグが俺の弱いところを見抜いてるからか。
どちらにせよ。
「っ、は、恥ずかしいので……せ……いかんたい、とか、言わないでください……ッ」
「性感帯の場所知りたくないの? 後々便利になるのに?」
「い、いいです……っ、知りたくないです……ッ」
意識すればするほど、モルグのツボにハマっていくような気がした。そう断れば、「ふーーん、ま、いいや。おーけー、じゃこのまま下半身行くねえ」とモルグは微笑んだ。先程と変わらない笑顔だ。
気を取り直して、俺は姿勢を整える。なんだかまだ心臓が煩い。まだ触れられてもいないのに、これからモルグに下半身を触れられるのだと思うと勝手に意識が下にいってしまうのだ。
今思えば俺、下着しか履いてないんだ。……恥ずかしい。モルグから見た俺はさぞ滑稽だろう。
「じゃ、触るよ。善家君」
「は、はい……お願いします」
もじ、と体勢を再度直し、俺はまな板の上のマグロになる。
最初にモルグの手が触れたのは、太腿の裏側だった。覚悟していたものの、やはり低体温気味のひんやりとした手には毎度反応してしまう。
けれど、今度は先程よりもモルグの手付きは優しかった。
「……っ、ん、……ぅ……」
緊張している太腿の筋を強く押しすぎず、その周囲の筋肉を丹念に揉みほぐしていく。
……気持ちいい。思わず目を瞑り、うつらうつらとしていたときだった。
「善家君って、もしかして鍛えてたりした?」
モルグの声が頭の上から落ちてくる。
「っ、は、い……ずっと、ヒーローに、なりたくて……ッん、ぅ……ッ」
「あはっ、過去形なんだ」
ここはヒーローたちを敵対視するヴィランたちの巣窟。黙っていた方がいいと思っていたが、それでもつい素直に言ってしまったのはモルグの持っている独特の雰囲気がそうさせてるからだろうか。
「す、みません……皆さんヴィランなのに……」
「いーよ、別に。僕はそういうのにはあんま拘らないしね。……ノクシャスやナハトには言わない方が懸命だろうけど」
「……っ、ん、ぅ……そう、ですよね」
「それに、なんだかそんな気はしてたんだ。……だって、君ってあまりにもヴィランって感じはしないんだもん」
「お人好しで、人に寄り添うところとか」なんて、俺を励まそうとしてくれてるのだろうか。それはここにきて、俺が皆に感じたものでもある。
それでも、モルグにそう言ってもらえると嬉しかった。
「それで、ヒーローになるつもりだったところをボスに連れてこられたってわけ?」
「……えと、一応……そうなるんですけど……」
その辺りの記憶が曖昧なのだ。
就活のため、履歴書を抱えてヒーローの所属するプロダクションや事務所、それこそ派遣会社など色々なところを見て回り、そして片っ端から面接を受けようとしていたところまでは覚えてる。
そして早速面接へと向かおうとしていた――そこで記憶は途切れていた。
「面接行く途中……気が付いたら、皆さんがいました」
「あー、なるほど。……それは災難だったね」
「……っ、ん……ッ、……でも、俺、あの日……攫ってもらえて……良かったんじゃないかって思ってるんです」
「それは昼間言ってた出ていかない理由の話?」
「はい……それもそうなんですけど、おれ、ぉ、……俺には……才能がなくて……ッ」
そう、口にしたときだった。両足の脹脛へと触れていたモルグの手がぴたりと止まる。
「…………それは、君がそう思ってるの?」
「は、い……気持ちだけあっても、駄目だって……それに、俺、痛いのも苦手だし……弱いし、周りの人たちや、先生もやめろって……ッ、ん、ぅ、……っ、ぁ、モルグさん……ッ!」
モルグに掴まれた足に次第に痺れるような痛みが増していく。驚いて声を上げれば、モルグは無意識のうちに力加減を誤っていたようだ。
「あっ、ごめん……痛かった?」
「い、いえ……大丈夫です……」
はっとしたモルグはそう、もう一度「ごめんね」と俺の背中にキスをする。あまりにも流れるような仕草で驚く暇もなかった。
「……けど、ヒーローになれない子なんていないよ」
「え?」と声を上げたときだった。モルグの手は脹脛から俺の足に触れた。そのまま足の裏に触れる細い指の感触に、堪らず息が漏れた。
「……ッ、ん……ッ!」
「足の裏も硬くなってるね……柔らかくしてあげるからね」
モルグの指先は細い。だからこそどんなツボにも上手く入るのだろう。軽く膝を折られ、そのままぐりぐりと足の裏のツボを刺激される。
抗い難い持続的な刺激に全身は熱のあまり発汗し、俺はシーツにしがみついた。それでも、その快感を上手く逃すことはできない。
「っは、ぁ……ッん、っ、モルグさ……ッ」
「……気持ちいい?」
「は、い……ッ、ぁ、待って……ッ」
不意に、体を仰向けに返されそうになり血の気が引いた。待ってください、と止めようとするが間に合わない。視界が広がり、そして、最も熱の集まっていた下腹部を照明の下に晒された。
恥ずかしかった。
下着の中、性器の形までも一見して分かるほど浮かび上がり、勃起した己自身が。そして先走りで濡れ、色濃く変色した染み部分を見てこちらを見下ろしていたモルグは微笑むのだ。
「……あれれ、最初性感帯いじりすぎちゃった?」
「っ、ご、めんなさい……俺……ッ」
「大丈夫だいじょーぶ。……気持ちよくなったらみーんな、ここ濡らすから。生理現象だよ、恥ずかしいことじゃないからどうどうとするんだよ。……いい?」
「……っ、は、い……」
こくこくと頷き返す俺に、モルグはうんうんと満足げに頷く。そして。
「じゃ、次はそこに手をついて開脚してみようか」
そう、変わらない笑顔でさらりとそんなことを口にするのだ。
「っ、モルグさ……ッ、待って……」
「ん? どーしたの?」
「こ、の格好……ッ」
そう咄嗟に脚を閉じようとすれば、やんわりと膝の頭を掴まれ再び開かれる。
それどころか、「この格好が?」と不思議そうに小首傾げるモルグに顔が熱くなった。
「は、ずかしい……です……」
「……君は恥ずかしがり屋さんなんだねえ。大丈夫、僕は恥ずかしくないよ」
そういう問題じゃない。それに、モルグが恥ずかしくないのは当たり前じゃないか。
下着越し、くっきりと浮かび上がる性器の膨らみを中心に染みが濃くなっているのが分かり更に恥ずかしくなる。
見ないでください、とモルグを押し返そうとするが、モルグは気にせずそのまま膝の裏側を掴み、脚を折り曲げてくるのだ。
「っ、ぅ、あ……ッ!」
「君、結構股関節硬いね。元々体が柔らかくない方みたいだし、こまめにストレッチしていかないと大変だよ~」
「っ、は、はい……っ」
「ほら、こことか。一人で出来そうにないなら誰かに頼むのもありだよねえ、一人じゃどうやっても限界あるだろうし」
「……っ、ぅ、ん……っ」
「こうやってゆっくり息を吐きながら体重掛けていくとやりやすいよ」
言いながら、手とり足取りレクチャーしてくれるモルグだがその説明は全く頭に入ってこない。
腿を掴まれ、膨らんだそこを見られてるということだけでなにも考えられない。
上半身に向かって膝を押し付けられると圧迫感で息苦しくなるが、それ以上に下着の下で広がる肛門の感覚が気になって集中することができなかった。
性器が溢れないように下着を手で隠しながらも、耐える。
本当にモルグは純粋なマッサージのつもりのようだ。
一人だけ興奮してるようで恥ずかしくなり、身に力が入らない。そんな俺を見て、一息ついたモルグは「ちょっと休憩しようか」と提案してくれた。
もしかしたら俺がただ疲れてるのだと思ったのかもしれない。それでもその申し出はありがたい。
「……っは、ぅ……ッ」
モルグの言葉に甘え、ようやく開放された俺はそのままくたりとベッドへと寝転んだ。
一度ベッドから降り、ドリンクを手に再び戻ってきたモルグは「痛かった?」なんて俺の顔を覗き込んでくる。
「い、いえ……大分……モルグさんのお陰で痛みが和らいで、なんだか体が軽くなりました」
「そう、ならよかった~」
……嘘ではない。確かに恥ずかしいけれど、モルグに触れられた箇所は動かしやすくなっている。それに、ぽかぽかするし……。
ありがとうございました、と頭を下げれば「いいよ、そんなの」とモルグは笑う。
そして何かを思い出したように「そうだ」とこちらを見た。
「そういえば善家君さあ、もっとその疲れを癒やすマッサージあるんだけど試さない?」
「え? 今のよりもですか……?」
「そーそー。……僕が思うに君の恥ずかしがり屋なところとか、その自信のなさが関係してると思うんだよねえ」
――だから、そんな余計なこと考えなくて済むようにしてあげる。
そうモルグは俺に笑いかけてくる。
そんなマッサージがあるのか、とか。色々疑問はあったがモルグの言葉には説得力があった。
確かに、教師たちにも何度もこの性格のことは指摘された。ヒーローになりたいのならもっと堂々としてなさいと。
けれど、やはりなにをやっても上手くいかない。
それがマッサージで少しでもよくなるのなら、とそんな思考が過ぎった。
「お願いします」と頭を下げれば、モルグはニッコリと笑った。
そして。
「じゃ、もっかいそこに横になろうねえ」
……。
…………。
………………。
「あ、あの……本当にこの体勢じゃないと駄目なんですか?」
「ん~。じゃなくてもいいけどぉ、一番僕がやりやすいようにさせてもらおうかなって思って。……恥ずかしい?」
「は、はい……」
「そっかそっか。けど、これに慣れていかないとねえ」
一緒に慣れていこうね、とモルグが笑う気配がした。
二人分の体重に沈むベッドの上。俺はモルグの指示のもと、そのベッドの上に犬のように四つん這いになり、そのまま目の前のクッションにしがみつくように腰を持ち上げる。そして、その背後にはモルグが乗り上げてこちらを見下ろしてる。こちらからはその表情までもは分からない。
それにしても、寝てた方がいいんじゃないか。
そんなことを思いながらも尻をモルグに見せるような体勢に緊張していると、いきなり伸びてきた手に尻を撫でられる。
相変わらず下着一枚のそこに、輪郭線をなぞるように触れられると堪らず反応しそうになる。
「っ、あ、あの……」
「君のお尻、引き締まってて形いいんだしさ、僕はもっと堂々としててもいいと思うんだよねえ」
「あ、ありがとうございます……?」
モルグに他意はないのだ、落ち着け。と自分に言い聞かせていた矢先だった。
そのまま尻を撫でていた手が下着のウエストゴムに触れる。そのまま摘むようにずるりと下着を脱がされ、ぎょっとした。
「っ、え、も、モルグさ……ッ」
「おー、綺麗に閉じてるね。ここになにも挿れたことないの?」
「っへ、あ、あの……ッ?!」
なにを、と突っ込む暇すらもなかった。
下着を脱がされたと思えば、そのまま尻の谷間を左右に割り開かれる。閉じたままの肛門を指の腹でぷにぷにと撫でられ、言葉を失う。
「っモルグさん、な、にして……っ」
「ん~? だからマッサージ~?」
「っ、マッサージって……」
「じゃ、失礼しますねえ」
そう、人の言葉を無視してモルグは背後で動く。と、同時に閉じていたそこに細い突起状のなにかがはいってくる。何事かと振り返ろうとした次の瞬間、閉じた肛門の奥へとブリュッ!と勢いよく常温の液体が注がれるのだ。
「ふ、ぅ゛……ッ?!」
「ん~君初めてだよねえ、ならちょっと多めでもいいかなあ」
「ッ、も、るぐ、さ……ッ、これ、な、に……ッ」
「潤滑油だよ。今から君のお尻の穴に僕の指を入れるから痛くないようにってねえ」
「ん゛、う゛……っ!」
だから、なんで。という言葉は声にならなかった。
感じたことのない感覚に、引き抜かれたボトルをサイドボードに置いたモルグ。栓を失い、とろりと垂れる潤滑油を指に絡めながらモルグは異物を押し出そうと硬く口を閉じたそこに再び触れる。
先程までとは違い、ぬめりを伴った指先は少し力を加えられるだけで滑るように埋まるのだ。
異物感。それを拒もうと四肢に力が入るが、モルグは構わず無視して指を更に奥へと埋め込むのだ。
「っ、ん、ぅ……っ、ゆ、びが……っ」
「そうだよぉ。今からこれで君にマッサージしてあげる。前立腺マッサージ、知ってる?」
「っ、し、りま、せ……ッ!」
「男でもマッサージされるとわけわかんなくなるところだよ。君はまだ処女らしいから無茶なことはしないから安心して。……ただ君は気持ちよくなるだけだから」
「っは、へ」
なにを言ってるんだ、この人は。
何一つ理解できず、やめてくださいと言う暇もなかった。
痛みはないが腹の中に入ってくる指に内壁を撫で上げられ、違和感が更に強くなる。ひくりと喉が震え、必死に指先から逃れようと腰を動かせば、モルグは「こーら」と俺の腰を掴んで引き戻すのだ。そして先程よりも大胆な動きで腹の中を探られる。腹の中で潤滑油とモルグの指が絡み合い、濡れた音が響き渡った。
「大丈夫、怖いことはしないからねえ」
「っ、も、るぐさ……ぁ……っ」
体内を探るように動き回る指に汗が滲む。恥ずかしさだけではない。くの字に曲がる指に、内壁へと潤滑油を塗り込むように嬲られれば頭の奥がじんじんと熱く痺れていく。
「っふーッ、ぅ、ん゛……ッ!!」
目の前のクッションに顔を埋め、声を堪えようとしたときだった。モルグの指先が体内のとある部分を掠めた瞬間、びくりと腰が震えた。
最初はほんの小さな違和感だった。それでもモルグはそれを逃さなかった。
「……ああ、見つけた。ここかあ」
そう、背後から覆い被さってくるように俺の腰を捕らえていたモルグが笑った――……気がした。
前立腺、とモルグは言っていた。ふわっとした単語しか聞いたことなかったし、自分の体のどこにあるのかも分からない。
けれど、モルグはそれを見つけたのだと言う。
「ぉ゛ッ、ぐ……っ! ん゛ッ、ふ、ぅ゛……ッ!!」
指の腹で摩擦するように柔らかく揉まれる度に腹の中で潤滑油の音は大きくなる。
ぼたぼたと潤滑油か溢れようが滴ろうがモルグは全部無視して一点集中して前立腺を愛撫するのだ。あくまでも優しく、柔らかく、それでもしっかりと逃さないように俺の太腿を掴み、指を抜き差しする。
「どんどん垂れてきた。……感度もいいし、苦労しないだろうね君とのセックスは」
「っん゛……ッ、ぅ゛……ッ、ふ……ッ!!」
「我慢しなくてもいいよ、誰だってここ揉まれたら気持ちよくなるんだ。……ほら、声も我慢しないで?」
体内で響く淫猥な水音とモルグの甘く優しい声が混ざり合い、頭がどうにかなりそうだった。
気持ちいい。気持ちいいあまり自分の意図せず情けない声が漏れてしまい、恥ずかしかった。それでもモルグはそんな俺すらも受け止め、更に責め立ててくるのだ。
二本の指にこりこりと中を解され続け、腰の痙攣は止まらない。甘く勃起した性器からはとめどなく白濁混じりの先走りが垂れ、シーツに水たまりをつくった。
「っはーっ、ぁ゛……ッ! も、るぐ、しゃ」
「んーどうしたの? 怖くないよ?」
「っ、い、やだ、ぬいっ、ひ……ッ、そこ、ぃ、やだ……ッ!」
「嫌だ、じゃなくていいでしょ?」
「ん゛ひ……ッ!!」
ぐちゅぐちゅと音を立て出入りするモルグの指から逃れることはできない。
クッションにしがみつくが、腹の中でぐるぐると溜まり、暴れ狂う熱はまるで発散場を探すように膨れ上がるのだ。それがずっと続いてるようだった。イキそう、という感覚が次第に強くなるにつれ目の前が白く霞んでいく。
腰が揺れる度に揺れる哀れな性器を見て、モルグはくすりと微笑んだ。
「取り敢えず一回溜まってるの出そうか」
「へ、」
「ほら、びゅっびゅっ」とまるで幼い子に言い聞かせるような優しい口調でモルグは俺の性器を柔らかく扱き始める。潤滑油などなくとも既に己の体液でどろどろに濡れていたそこは、モルグに少し触れられただけでも恐ろしく反応してしまうほどだった。
「ああ、ほら、見て見て~善家君。君のおちんちんもうイキそうだね」
「っ、ぅ゛あ゛ッ!! いやだ、見ないで……っ、モルグさ……ッ、ひ、ぅ……ッ!!」
「いいよお、いっぱい出して。どうせここ君の部屋だしねえ」
「ぅ、あ゛……っ!」
……少し擦られただけだった。モルグの指先に挟まれ、何回か上下に擦られそのまま皮を弄ぶように弄られただけだ。それだけであまりにも呆気なく射精してしまう俺を見てモルグは馬鹿にするわけでもなく「偉いねえ」と褒めてくれるのだ。なんだかもう恥ずかしさと情けなさと気持ちよさとでパニックになりそうになる俺に、モルグは微笑んだ。
「よかった。ほらこれでアナルに集中できるよね」
「はあ……つ、はー……っ、……ぁ……ッ?」
一瞬、モルグがなに言ってるのか分からなかった。瞬間。
「んひっ!」
再びアナルを責められ、堪らず悲鳴を上げてしまう。どさくさに紛れ、二本だったのが三本に追加されている。
「っ、はー、ぁ、ッ、も、……ッ、いい、ッ、いいです、ぉれ……っ、きもち、いい……からぁ……っ!!」
「いいんだ? じゃあもっと良くしてあげるねえ」
「はー……ッ、う゛、ふ、ッ、ぐ……っぅ、……ッ!!」
ぐちゅぐちゅと音を立て前立腺を責め立てられる。痙攣する腰を抱き締められ、さらに執拗に愛撫されれば、たった今射精したばかりの性器からびゅっと半濁の液体が溢れる。
それを見てモルグは笑った。
「お~、出るね~。ほら、溜まってるの全部吐き出しちゃおうねえ」
「ぅ゛う゛~~ッ!!」
今度は性器に指一本触られていない。それでも射精感は収まらない。内側から犯され、理性すらも溶かされているようだった。
何度目かの絶頂を迎えたが、精液はでなかった。それでも勃起は収まらず、熱は増すばかり。
自然と開いた股はガクガクと痙攣を起こしたまま力を入れることもできず、みっともなく開いたままモルグの指を飲み込んだ肛門は執拗な愛撫に堪えられずに溢れ出した潤滑油でどろどろにぬ濡れていた。
「も゛……む゛り……ッ」
「無理じゃないよ」
「ぉ゛ごッ!」
「まだいける、ほら、僕が手伝ってあげるからいっぱい出そうね」
ごりゅ、と臍の裏側から押し上げられた瞬間瞼裏が白く点滅する。瞬間。
「~~ッ!!」
自分の体を支えることもできなかった。シーツの上、開いた尿道口からは精液ではなく、黄色く水っぽい液体がちょろちょろと溢れ出した。
「おっと、やりすぎたかな」というモルグの声が落ちてくる。肛門から指を引き抜かれた瞬間、支えを失った体はそのままぺしゃりとベッドの上へと落ちた。腹部に広がる熱。力も入れることもできず、ガクガクと痙攣の収まらない下腹部。
暫く俺はベッドの上から動くことができなかった。
……。
…………。
なんだか、全身がぽかぽかする。
いつの間にかに俺は眠りに落ちてしまっていたようだ。微睡む意識の中、目を覚ませばそこには……。
「やあ善家君、おはよう。よく眠ってたね」
「ひっ!!」
「ひっ、て。ふふ、驚きすぎじゃない? 傷つくなあ……」
なんて、ベッドに腰を掛けて勝手にコーヒーを飲んでいたモルグは俺の腰を撫でてくる。
別になんともない、撫でられただけにも関わらずじんわりと熱を持つ下半身にぎょっとし、俺は慌ててモルグから逃げるように体の上に掛けられていたシーツで下腹部を隠した。
「あっ、すみません……お、俺……いつの間にかに寝て……」
「いーよいーよ、別に。僕もやりすぎちゃったからねえ。あ、シーツも全部クリーニングさせておいたよぉ」
「シーツ……?」
「ん? 覚えてないのぉ?」
「…………」
沈黙。そして、次々と掘り起こされる記憶に全身から血の気が引いていく。
夢、だと思っていた。なんかすんごい気持ちいい夢。だけど、もしこれが現実ってことなら……俺は……俺は……。
「すっ、すみませんでした……っ! お、俺……っ
!」
「わあ、びっくりした。……なにが?」
「も、モルグさんの前で……あんな……っ」
「あ、もしかしてぇ~……お漏らししたこと言ってる?」
「……っ、ぁ……あぁ……」
全身の熱が顔面に集まっていくのが分かった。
穴があったら入りたい、とはまさにこのことだろう。ふかふかの新品のシーツを被り、モルグの視線から逃げようとすれば、呆気なくモルグにシーツごと奪われた。そして、モルグは「どうしたの~?」と不思議そうにこちらを覗き込んでくる。
「ぉ、おれ……あんな……」
「気持ちよくなかったぁ?」
「き……っ、気持ちよかったです……」
死ぬほど、と思わず口からでそうになる。
そんな俺を見て、モルグはにこ~っと微笑むのだ。そして「じゃあ別によくない?」と笑った。
「へ……」
「うーんでもやっぱ一度や二度じゃ君のその難儀な性格は変わらないってことかあ……。君が言うには先天的なものらしいからねえ。けど、徐々に慣らしていけばきっと君も変わることができるよ」
「あ、あの……モルグさん……?」
「ってなわけで、もう一回僕と慣らしておこうか?」
なんて、人良さそうな笑顔を浮かべ、俺の手を握り締めてくるモルグに血の気が引いた。
「も、もう一回……?」
「マッサージは少し君に刺激強かったみたいだから、まずはこうした接触から……」
え、え、と絡められる指に狼狽えていた矢先だった。いきなり部屋の扉が開く。そして。
「…………………………」
現れたのはナハトだった。
ベッドの上、半ばモルグに押し倒されそうになっていた俺を見たナハトは一瞬物凄い顔をし、そして即座にモルグの首根っこを掴む。
「……ねえ、何してんの? 変態」
「あ、ナハトお帰り~ボスとの用事は終わったのお?」
「終わったからこうしてここに戻ってきたんでしょ。……何してんの?」
「ん~? 善家君と仲良くしようと思って」
「…………」
狼狽えもせずあっけらかんと答えるモルグにナハトは深い溜息を吐き、そして俺から引き剥がす。
「……こいつの面倒は俺が見る。あんたはさっさと大好きな人体改造に戻ってなよ」
「珍しいねえ、ナハトがそんな風に積極的に人の面倒見たがるなんて興味深いよ」
「え、そうなんです……ふぁっ!」
「……いちいちそいつの言うこと真に受けなくていいから」
……ナハトに頬を摘まれてしまった。「ふぁい」と頷けば、ナハトはふんと鼻を鳴らす。そんなナハトにやれやれと肩を竦めたモルグはそのまま部屋を出ていこうとする。
「ふふ、すっかり仲良しさんだねえ。……じゃあ善家君、またねえ。僕はいつでも待ってるよ」
そうひらひらと手を振り、モルグはそのまま部屋を出ていった。その最後の言葉に先程までのやり取りを思い出し顔が熱くなる。
「……なにあれ、どういう意味?」
「さ、さあ……」
「……なにか俺に隠してる?」
「か、隠してない……っ、隠してないですから……っ!」
「……ベッド、シーツ変えた?」
「……っ!!」
「………………」
す、鋭い。なんでこんなに鋭いんだ。
じ……と、白い目を向けてくるナハトだったが俺が口をぱくぱくさせてるとやがて深くため息を吐く。
そのままベッドに横になるナハト。
「……あ、あの……ナハトさ……」
「善家のくせに生意気。……寝るからあっち行って」
「え、あの、そこ俺のベッド……」
「お前はそっちのソファーで寝たらいいじゃん」
そう、拗ねたように俺からシーツをひったくったナハトはその中に丸くなる。
どうやら俺に秘密にされたことが気に入らなかったようだ。……どうすればいいのかわからず、取り敢えず俺は言われるがままベッドを降りる。
やはり、モルグにされたことはナハトには言えないけど。けれどもだ。……せっかくナハトと仲良くなれた、かもしれないと思ってた矢先にまた避けられるのは寂しい。俺はお詫びの代わりのナハトの好きなお菓子をそっと枕元に置き、ソファーへと戻った。
それから数十分後、バリバリ!!となにかが潰れるような音ともに「善家……っ! こんなところに食べ物を置くな!」とナハトに怒られるハメになったのは言わずもがなだった。
85
お気に入りに追加
921
あなたにおすすめの小説
塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
俺以外美形なバンドメンバー、なぜか全員俺のことが好き
toki
BL
美形揃いのバンドメンバーの中で唯一平凡な主人公・神崎。しかし突然メンバー全員から告白されてしまった!
※美形×平凡、総受けものです。激重美形バンドマン3人に平凡くんが愛されまくるお話。
pixiv/ムーンライトノベルズでも同タイトルで投稿しています。
もしよろしければ感想などいただけましたら大変励みになります✿
感想(匿名)➡ https://odaibako.net/u/toki_doki_
Twitter➡ https://twitter.com/toki_doki109
素敵な表紙お借りしました!
https://www.pixiv.net/artworks/100148872
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
身体検査
RIKUTO
BL
次世代優生保護法。この世界の日本は、最適な遺伝子を残し、日本民族の優秀さを維持するとの目的で、
選ばれた青少年たちの体を徹底的に検査する。厳正な検査だというが、異常なほどに性器と排泄器の検査をするのである。それに選ばれたとある少年の全記録。
変態高校生♂〜俺、親友やめます!〜
ゆきみまんじゅう
BL
学校中の男子たちから、俺、狙われちゃいます!?
※この小説は『変態村♂〜俺、やられます!〜』の続編です。
いろいろあって、何とか村から脱出できた翔馬。
しかしまだ問題が残っていた。
その問題を解決しようとした結果、学校中の男子たちに身体を狙われてしまう事に。
果たして翔馬は、無事、平穏を取り戻せるのか?
また、恋の行方は如何に。
全寮制男子校でモテモテ。親衛隊がいる俺の話
みき
BL
全寮制男子校でモテモテな男の子の話。 BL 総受け 高校生 親衛隊 王道 学園 ヤンデレ 溺愛 完全自己満小説です。
数年前に書いた作品で、めちゃくちゃ中途半端なところ(第4話)で終わります。実験的公開作品
怒られるのが怖くて体調不良を言えない大人
こじらせた処女
BL
幼少期、風邪を引いて学校を休むと母親に怒られていた経験から、体調不良を誰かに伝えることが苦手になってしまった佐倉憂(さくらうい)。
しんどいことを訴えると仕事に行けないとヒステリックを起こされ怒られていたため、次第に我慢して学校に行くようになった。
「風邪をひくことは悪いこと」
社会人になって1人暮らしを始めてもその認識は治らないまま。多少の熱や頭痛があっても怒られることを危惧して出勤している。
とある日、いつものように会社に行って業務をこなしていた時。午前では無視できていただるけが無視できないものになっていた。
それでも、自己管理がなっていない、日頃ちゃんと体調管理が出来てない、そう怒られるのが怖くて、言えずにいると…?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる