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「っ、ふ、ぅ……ッ」
肉厚な舌を挿入され、歯列から顎裏まで舐られる。ぞわぞわと無数の虫が這い上がってくる感覚に耐えきれずに逃げようとするが、大きな掌に後頭部を掴まれ更に喉の奥まで犯されるのだ。
「ん゛ッ、う゛……~~ッ」
「っ、は……小せえ舌、……ッなあ、八葉、俺達こうやってキスすんの何年ぶりだろうな?」
「っ、ん、し、らな゛、やめ、ぉ゛……ッ、ん゛……ッ、ふ、ぅ……ッ」
ぢゅぷ、と更に舌をしゃぶられ、噛まれる。性器に見立ててやつの舌先でねっとり粘膜同士をこすり合わせるように根本から先っぽまでを丹念にしゃぶられれば、それだけで咥内には唾液が滲みだすのだ。
何故、賀茂にキスされてるのか。賀茂の言葉の意味すらもわからない。それでも顎の下を指先で撫でられながら更に喉の奥まで太い舌で犯されれば、あまりの息苦しさと感じたことのない心地よさに何も考えられなくなるのだ。
「っ、ふーっ、ッ、う、ん゛ぅ……ッ」
逃げたいのに、がっちりと固定された頭は動かすことすらできない。お互いの唾液でぐちゃぐちゃに混ざりあった咥内、賀茂に乱暴にかき回されるだけで下腹部が熱くなる。
唇と舌がふやけてしまいそうなほどのキスに耐えきれず、腰を抜かしてしまえば、賀茂の筋肉質な腕に腰を抱き止められた。
「っ、か、もく……ッ」
「あー……ッ、その顔、お前、そんな顔もできんのな」
「安心したわ」とそのまま尻を掴まれて息を飲む。抱き寄せられ、臍の辺りに硬い感触が推し当てられる。硬く膨らんだそれがなんなのか確認する勇気もなかった。
「な、んで……ッ」
「なんでって、そりゃ抑制剤飲んでも関係ねえだろ」
「……っ、は、離し……ッ」
「離さねえよ……そもそも、こんな調子でどこに行くんだ? 俺以外のわけわかんねえやつに襲われて終りだろ」
スラックス越しに尻の肉を揉まれ、摘まれる。それだけで腰が跳ね上がった。
逃げたいのに、逃げられない。わからない。自分の体のはずなのに、体が言うことを聞かないのだ。
食い込む指先に尻の割れ目を撫でられ、ひく、と喉が震えた。嫌なのに、こんなこと望んでないのに、屈辱なのに、自分の意識とは反対に体が反応するのだ。
「かわい……震えてんのか?」
「っ、ぃ、いやだ、賀茂君……っ」
「お前が悪いんだろ、お前がもっと早くΩだって教えてくれてたらこんなことなんてせずに……」
言い掛けて賀茂は口を閉じた。その代わりに、俺の股の間に膝の頭を入れてくる。
強制的に開脚させられ、制服の下、膨らんだ下腹部を眼下に晒された。慌てて閉じようとするが賀茂の足が邪魔で閉じれず、「賀茂君」と声を上げれば賀茂のやつはそれを無視して俺の股間を膝で柔らかく圧迫してくるのだ。
「っ、ひ、う……ッ」
「はは、八葉も勃起すんのな。……なあ、ヒートってどんな感じ? 他のやつはもっとガツガツしてんのに、お前はしおらしいのな」
「そーいうところも余計エロいわ」と、肩口に顔を埋めてくる賀茂に首筋を舐められ、飛び上がりそうになる。
首は駄目だ。このまま項に歯を立てられるのではないかという恐怖のあまり、賀茂の頭掴んで引き剥がそうとするが、うっすらと浮かぶ首筋の血管をしゃぶられれば力が抜けてしまいそうになる。
「っは、ぁ……ッ、い、やだ……っ、やめて、賀茂君……ッ」
「お前って本当強情だよな、見かけによらず」
シャツのボタンを外され、首筋から鎖骨へと唇を押し付けられる。熱い。熱くて、くすぐったい。もっと抵抗しなければと思うのに、それ以上に賀茂に逆らうことを恐れている自分がいた。
乱されたシャツの下、晒された素肌に賀茂の手が這わされる。臍から腹筋へと這い上がってくる賀茂の手は、そのまま胸に触れる。
「なんだ、お前、昔と全然変わんねえな」
「っ、……み、るな……ッ」
「胸突き出してんのは八葉だろ。ほら、ここも頑張って勃起してる」
「ひぃ……ッ!」
シャツの襟口を広げられ、そのまま尖った乳首を乳輪ごと絞られる。それだけで恐ろしいほどの刺激が胸から脳へと走り、情けない悲鳴が漏れた。
賀茂は薄く笑い、更に指先で乳頭を押しつぶす。
「っ、や、め……ッ、賀茂く、ぅ……ッ、い、痛いよ……ッ!」
「痛いだけ?」
「ぅ、あ……ッ!」
もう片方の胸を掴まれ、すり、と側面を擦らる。執拗に先端部分を摘まれ、捏ねられ、びくんと跳ね上がる上半身。逃げたいのに、壁と賀茂に挟まれた体は逃げ場などはない。動こうとすればするほど賀茂の膝に跨ってしまうような形になり、文字通り追い込まれる。
「っ、ぅ、う゛……ッ」
「はは、すげえビクビクしてる。そんなに乳首気持ちいいのか?」
「っ、ぁ゛……ッ、ち、が……ッ、こんな……ッぉ゛……ッ!」
「Ωって妊娠したら母乳出るんだってな。お前も赤ちゃんできたらここから母乳でんのか」
「っ、ぅ゛、や゛……ッ、いやだ、やめろ……ッ」
笑いながら恐ろしいことを言い出す賀茂に背筋が震える。やつの胸板を押し返そうとするが、更にぎゅっと乳首を引っ張られ、「ひう!」と女みたいな声が出てしまう。
それから賀茂は更に程よりも荒い手付きで俺の胸を揉み、乳首を柔らかく扱くのだ。
「っ、ひ、い、やだ」
「なにが嫌だよ。お前はΩになったんだろ? ってことは、ここももうそういうものになってんだよ」
「っ、ぁ゛……ッ、ひ、……ッ」
「でもこんな小さい乳首じゃ赤ちゃんがしゃぶるのもしんどいだろ」
「だからほら、俺が育ててやるよ」耳を舐められ、鼓膜へと直接流し込まれる賀茂の声に背筋が凍り付いた。
「な、に、言って……ッ!」
言いかけた瞬間だった。乳首を柔らかく押し潰され、そのまま乳輪へと埋め込むように穿られ、声にならない悲鳴が漏れる。
胸の奥で賀茂の指先がぐるりと動く。内側を擦られ、指を抜かれたと思えばまたぷっくりと浮かび上がる乳首を今度は軽く摘まれ、そのままシコられる。
「っ、ぃ、やだぁ……っ、やだ、賀茂く……ッ!」
「逃げるなよ、ほら。まだ痛いか?」
「っ、ひ、ィ……ッ!」
頭がどうにかなりそうだった。
乳首ばかりを責められ、ただただ気持ち悪いだけなのに。
遠慮なく誰にも触れられたことのない場所を賀茂に好き勝手荒らされ、頭の奥、脳髄を直接掻き回されるような感覚に陥る。
「……っ、い゛……ッいやだ、これ……っ、いやだ……ッ!」
「じゃ余計慣れないとな」
「っ、く、ひ……ッ!!」
穿られ、引っ張り出され、そんな愛撫を執拗に行われる内に胸の感覚がどんどん鋭くなっていく。
息が吹きかかっただけで上体が跳ね、そんな状態で再び乳首を指先で引っかかれた瞬間腰が震えた。絶頂にも似たその感覚に視界が白く点滅する。びくん、と再度跳ねる体。俺はそれ以上自立することができず、脱力した俺を「おっと」と抱きかかえたまま、賀茂は笑った。
「八葉、乳首弱かったのか? でも気持ちよかっただろ?」
「……っ、は、……ふ……ッ」
「聞こえねえか、これ」
遠くなる賀茂の声。そのまま俺を抱き抱えた賀茂は俺の腰を撫でる。
熱に浮かされた頭の中、ようやく終わったのだろうかとぼんやりと思ったときだった。腰に回された賀茂の手にそのまま下着ごと下を脱がされるのだ。
「っ、待……って……ッ、賀茂君……ッ!」
「ん? ……っ、どうした?」
「な、んで」
「なんでって、そりゃお前が辛そうだから」
違う、と言うよりも先に、閉じきっていた肛門に賀茂の太い指が押し当てられる。そして遠慮なく中へと挿入される指に堪らず声をあげた。
「っ、ぃ゛……ッ、ぁ゛ぐ、……ッ」
「ってのは口実で、俺のが我慢できねえから」
「か、も゛く、ぅ゛……ッ、ひ、ぃ……ッ!」
熱くて、痛くて、それ以上に痒いところに手が届くような感覚に神経がおかしくなるほどだった。
あの賀茂が俺の肛門を性器のように弄ってる。それだけでも気が狂いそうなのに、長くゴツゴツとした指は的確に人のいいところを探り当ててくるのだ。
「っぬ、いて……ッ、ぬ゛、い゛……ッ、ひ、ぐ……ッ」
「流石に狭いな。……俺の入っかな」
「っ、ぅ゛、ひ……ッ!」
サラリと恐ろしいことを口にする賀茂に青褪める暇すらもなかった。
入り口付近の筋肉を解すようにかき回され、腰が跳ね上がる。苦しいのに、腹の内側をかき回す異物感すら快感として拾い上げてしまうこの体質が何よりも憎かった。
「ぅ゛、ふ、ぐ……ッ! ひ、ぅ゛……ッ!!」
「っ、は……泣くなよ八葉。そんなにいいのか?」
「い゛やだ、ッ、ぬ゛い゛て、ッ、おねがい、がも゛く……ひう゛……ッ!」
「……ああ、お前の良いところここか? お前細いから探しやすくて助かるわ。……ほら、ここいっぱい擦ってやるからな。そうすりゃもっと気持ちよくなるだろ?」
「ッ、ぅ゛……――~~ッ!」
太い指に前立腺を探り当てられたと思えば、指の腹で柔らかく、そして執拗に責立てられる。
尿意に似た快感が全身へと広がり、瞼裏がチカチカと点滅する。最早地に足を付くことすらもできなかった。賀茂の逞しい腕にしがみついたまま、ひたすら責立てられる下腹部は執拗な愛撫に耐えられずにガクガクと痙攣した。
人語を発することもできなかった。閉じることもできず、食いしばった奥歯。咥内に溜まった涎がたらたらと溢れ、賀茂はそんな俺の醜態を見ては恍惚と微笑むのだ。
「い゛ひ、ッ、ぐ、ぅ゛うぅ……ッ!」
「っ、気持ちいい? なあ、八葉、俺の指はうまいか?」
「ぎ、もちい゛……ッ、きも、ちい……からぁ゛……ッ! ひぃ……ッ!!」
「……っ、そうか、じゃあもっとよくしてやるからな」
更に腰を持ち上げられ、賀茂の指が更に追加される。増す圧迫感に腰が逃げそうになるが、賀茂は構わずみちみちと中を広げ、指の根本まで挿入してくるのだ。
「ぉ゛……ッ、ふ、ぅ゛……ッ!」
複数の指が不揃いな動きで中を掻き回してくるのだ。休む暇もなく与え続けられる内部の快感に耐えきれず、嗚咽にも似た喘ぎ声を堪えることはできなかった。
責立てられる。シャツの下、限界まで勃起した性器が腰の痙攣に合わせてふるふると揺れた。睾丸が引っ張られ、頭の中が段々白ばんでいく。俺の限界が近いのだと賀茂も気付いたのだろう、その愛撫は更に間隔が短くなり、あっという間に俺は射精した。
半濁の液体が反り返った性器からぴゅっぴゅっと溢れ出す。それを一瞥した賀茂はそれでも責める手を止めるわけではなく、更に追い打ちをかけてくるのだ。
「ま゛、ぅ゛、やめ゛、ッ、も゛、むり、出ない……ッ! でな、あ゛ッ、でない、出ないからぁ……ッ!」
「いいや嘘だな。まだ溜まってんだろ、ほら、イケよ。俺が息抜きさせてやる。遠慮しなくていいんだぞ」
「いやだ、いやだいやだ、賀茂くッ、ぬ゛い゛……ッ! 出る、いやだ、も゛っ、くるし、ぅ゛、出ちゃ、ぁ゛……ッ! 出る……ッ!!」
自分が何を言ってるのかすらもわからなかった。射精したばかりの体に絶え間ない責め苦は拷問に等しい。更に塗り重ねられる快感に呆気なく体は達する。勢いよく精液は尿道から溢れ出した。
それをもろに被った賀茂は目を見開き、そして、そのまま脱力する俺を見下ろしたままごくりと固唾を飲んだのだ。
「ははっ、お前……まじか」
「っ、は、……ぁ……」
ぐぷ、とようやく賀茂の指が引き抜かれる。息も絶え絶えだった。無理矢理広げられ、執拗にかき回された肛門は開いたまま、そこに推し当てられる指とは違うものの感触に目を見開いた。
後頭部と背中を壁に押し当てるように腰を持ち上げれ、その下腹部。開脚するように開かれた股の間に推し当てられるグロテスクなそれを見た瞬間心臓が跳ね上がった。
「っ、ぅ、や……ッ」
「嫌じゃないだろ。お前だってこれが欲しいって腰がこすりつけてくる」
「ち、がう、俺、おれ……ッ」
柔らかくなった肛門に、ぷに、と推し当てられるのは肉色のエラ張った亀頭だ。指なんか比ではないその太さと長さに、これを全て根本まで挿入されたときのことを考えてはぶるりと背筋が震えた。
「……ッ、ならやめるか?」
そんな俺を見下ろしたまま、賀茂は自分の性器を掴んだまま俺の性器に重ねるようにぺちんと落とす。質量と重さ、そして熱。臍の当たりまで優に超すその男性器に無意識に喉の奥へと唾の塊が落ちていく。
怖い、こんなもの入るわけがない。壊れてしまう。そう思う反面、バキバキに筋に覆われたその性器に腹の奥まで力づくで挿入されたときの衝撃と快感を想像しては目の前が眩んだ。はっはっと性器を前に犬のように呼吸が浅くなる俺を見て、賀茂は「なあ八葉」と耳元で俺の名前を呼ぶ。
「俺、普通よりも結構でけーらしくてさ。……ここ、普通なら結腸の入り口があんだけど、俺のチンポならここの壁突破して、もっと奥まで気持ちよくさせれんだってさ」
「っ、ぁ……ああ……」
「ここの壁、チンポでハメるとすげー気持ちいいってさ。……なあ、お前だって気持ちよくなりたいだろ?」
臍の数センチ下をとんとんと叩かれ、その振動だけでも感じてしまいそうになる。甘い賀茂の声に心臓の音が更に大きくなるのだ。
なあ八葉、とそのまますりすりと下腹を撫でられれば、なにも挿入されていないはずの内壁がきゅう、と締め付けられる。
自分がなにされてるのか、なんでこんなことになってるのかすらもうわからなかった。
ただ、賀茂の性器から目を逸らすことができなかった。口の中に唾液が滲む。
もう、なんでもいいんじゃないか。こいつにΩだってバレたんなら、もうどうだって。
そんな思考が過ぎった時、俺の心でも読んだかのように賀茂は俺から性器を離した。
ほんの一瞬でも腰を動かして追いかけそうになる俺に、賀茂は笑うのだ。
「その代わり、約束しろよ」
「や、くそく……?」
「ああそうだ。……お前の運命の相手は俺だって。俺だけのΩになるって」
「この口で」と唇を撫でられる。賀茂の言葉の意味なんて分からない。
熱で溶かされた思考回路では正常に物事を判断することができなかった。
あるのはただ、眼前の性欲だけだった。
「ッ、ぉ゛……ッ、お゛、ご……ッ!!」
腹を突き破られるのではないか。そう思えるほどの衝撃に頭の中で火花が飛び散り、自分がどこにいるのか、何を見ているのかすらもわからなかった。
賀茂に持ち上げられ、宙ぶらりんの体に突き立てられる男性器の衝撃に暫く俺は動くことができず、ただのオナホのようにひたすら賀茂に抱き締められたまま犯される。
どれほどの時間が経ったのかも分からない。人気のない深夜の公衆便所は精液の匂いにまみれ、品のない水音と肌がぶつかる音が響き渡っていた。
「っ、八葉、お前まじ最高だわ……っ、なあ、キスしようぜ、キス……っ」
「っ、は、ぅ゛、んむ……ッ、ぅ、う゛……ッ」
裂けそうなほどの痛みも快感に塗り潰され、濃厚な賀茂の匂いで包まれた全身は心身満たされ多幸感に犯される。恋人かなにかのように指を絡め、唇を貪られ、深く挿入されたまま暫くキスをされる。
「……っ、なあ、八葉、俺のこと好き?」
「っ、わ、かんな……ッ、ぁ゛……ッ」
「好きって言えよ、なあ、ほら。言わねえと奥までハメてやんねえぞ」
「っう、や、しゅ……ッ、しゅき、す、き、好き……ッ、大好き……ッ!」
「俺もだ、八葉、やっと俺のこと好きだって言ってくれたな八葉……ッ! たくさん奥にキスしてやるからな、ほら」
「ひぃ゛ぎッ! ぉ゛、ぎだッ! ぉ゛ぐ、う゛ぅ……ッ!」
腰を掴まれ、そのまま下から突き上げられる。落とされるのではないかという恐怖心などとっくになくなった。賀茂は俺から腕を離さないとわかっていたから。ピストンに耐えきれずにぴんと伸びた爪先はそのまま震え、俺はただ与えられ続ける賀茂の愛を受け止めることで精一杯だった。
あんなに苦手だったのに、「好きだ」とキスをされて舌ごと吸われればもうわけがわからなかった。気持ちよかったらなんでもいい、こうして賀茂に犯されてる間だけはヒートの苦しさもストレスもなにもかもから解放され、ただ満ち足りていくのだ。
「ナカ、たくさん出してやるからな。俺の赤ちゃん産んでくれよ。お前のことぜってー幸せにしてやるから」
「っ、ぁ゛、はひ……っ」
「……っ、八葉……ッ」
「あ、あ゛、ぐ、ひ……ッ!!」
どぷ、ぐぷ、と腹の奥、音を立てて注ぎ込まれる大量の熱を注がれる。性器は萎えるどころか硬いまま、精液で満たされたそこを再び性器でかき回され、内壁全体に精液を塗り込むようにすぐにピストンは再開される。
栓をされたまま今度は体位を変え、片足が地面につけられる代わりに片腿を掴み上げられたまま突き上げられた。
休む暇もなかった。賀茂は本気で俺を孕ませる気なのだとわかった。
それでも、それでもいい。どうでもいい。Ωになった今、俺の幸せなど『これくらい』しかないのだから。
「っ、もっと、賀茂君……ッ、俺を……めちゃくちゃにして……ッ」
そう叫びすぎてひび割れた喉で俺は賀茂の頭に手を回す。瞬間、賀茂に噛み付くようにキスをされ、先程以上のピストンで奥を突きあげられれ今度こそ人語を発することもできない肉塊となってしまうのだ。
何も考えられなくなるくらい、もう二度と頑張れなくなるくらい打ちのめされたかった。
◆ ◆ ◆
「よ、八葉」
予備校を終え、扉を潜ればそこには見慣れた男がいた。
凡そ予備校生たちとは掛け離れた派手な装いのその男は、俺の顔を見るなりこちらへと駆け寄ってくる。
――賀茂だ。
「……賀茂君、また待っててくれたんだ」
「そりゃそうだろ。こんな夜道に一人で帰らせるわけないだろ」
そう賀茂は俺の腰に手を回してくる。
「……っ、賀茂君……」
「その首輪、似合ってる。やっぱり八葉は肌が白いから黒が映えんな」
「……ん……ッ」
腰を抱き寄せられ、耳元で囁かれる。それだけで昼間校内で散々賀茂に犯されたときの感覚が蘇ってくるのだ。
「なあ、これから俺んちくるだろ? オバサンには俺から連絡しとくし、それに……そろそろだろ? ヒート」
「……うん、一応予定日は明日になってるはずだけど」
「なら丁度良いな。明日から連休だし、ずっと一緒にいような」
人目を憚ることなどしない。
あんなに鬱陶しかった男が、今では大きな犬のように見えるのだ。――発情期の盛り付いた犬だ。
だったら、宛ら俺は――。
「うん、……俺も賀茂君と一緒がいい」
軽く唇を重ね合わせ、俺達は笑い合う。
両親は俺がΩになったと聞くと落胆した。それと同時に、『道理で』と口を合わせたのだ。
――道理で、不出来なのだと。
俺は今度はショックを受けることはなかった。寧ろ清々した。もう必死に自分を削ってまでしがみつかなくてもいいのだと、これからは自分のことだけを考えていいのだと。
それでも、勉強以外の趣味はなかったので予備校には通い続けてる。行きたい大学に受かることは諦めきれなかったからだ。
けれどそれ以外、勉強を詰め込む代わりに俺は賀茂と過ごすことが多くなった。賀茂の好意を素直に受け止めきれるようになってからは、人から必要とされることで自分を保つことができたからだ。
依存対象が両親から賀茂に変わっただけでないか。そんな風に考えたこともあったが、もうどうだっていい。だって、賀茂は俺のことを邪険にしないし好きだって言ってくれるしたくさん愛を注いでくれるから。
……これでよかったのだ。
END
肉厚な舌を挿入され、歯列から顎裏まで舐られる。ぞわぞわと無数の虫が這い上がってくる感覚に耐えきれずに逃げようとするが、大きな掌に後頭部を掴まれ更に喉の奥まで犯されるのだ。
「ん゛ッ、う゛……~~ッ」
「っ、は……小せえ舌、……ッなあ、八葉、俺達こうやってキスすんの何年ぶりだろうな?」
「っ、ん、し、らな゛、やめ、ぉ゛……ッ、ん゛……ッ、ふ、ぅ……ッ」
ぢゅぷ、と更に舌をしゃぶられ、噛まれる。性器に見立ててやつの舌先でねっとり粘膜同士をこすり合わせるように根本から先っぽまでを丹念にしゃぶられれば、それだけで咥内には唾液が滲みだすのだ。
何故、賀茂にキスされてるのか。賀茂の言葉の意味すらもわからない。それでも顎の下を指先で撫でられながら更に喉の奥まで太い舌で犯されれば、あまりの息苦しさと感じたことのない心地よさに何も考えられなくなるのだ。
「っ、ふーっ、ッ、う、ん゛ぅ……ッ」
逃げたいのに、がっちりと固定された頭は動かすことすらできない。お互いの唾液でぐちゃぐちゃに混ざりあった咥内、賀茂に乱暴にかき回されるだけで下腹部が熱くなる。
唇と舌がふやけてしまいそうなほどのキスに耐えきれず、腰を抜かしてしまえば、賀茂の筋肉質な腕に腰を抱き止められた。
「っ、か、もく……ッ」
「あー……ッ、その顔、お前、そんな顔もできんのな」
「安心したわ」とそのまま尻を掴まれて息を飲む。抱き寄せられ、臍の辺りに硬い感触が推し当てられる。硬く膨らんだそれがなんなのか確認する勇気もなかった。
「な、んで……ッ」
「なんでって、そりゃ抑制剤飲んでも関係ねえだろ」
「……っ、は、離し……ッ」
「離さねえよ……そもそも、こんな調子でどこに行くんだ? 俺以外のわけわかんねえやつに襲われて終りだろ」
スラックス越しに尻の肉を揉まれ、摘まれる。それだけで腰が跳ね上がった。
逃げたいのに、逃げられない。わからない。自分の体のはずなのに、体が言うことを聞かないのだ。
食い込む指先に尻の割れ目を撫でられ、ひく、と喉が震えた。嫌なのに、こんなこと望んでないのに、屈辱なのに、自分の意識とは反対に体が反応するのだ。
「かわい……震えてんのか?」
「っ、ぃ、いやだ、賀茂君……っ」
「お前が悪いんだろ、お前がもっと早くΩだって教えてくれてたらこんなことなんてせずに……」
言い掛けて賀茂は口を閉じた。その代わりに、俺の股の間に膝の頭を入れてくる。
強制的に開脚させられ、制服の下、膨らんだ下腹部を眼下に晒された。慌てて閉じようとするが賀茂の足が邪魔で閉じれず、「賀茂君」と声を上げれば賀茂のやつはそれを無視して俺の股間を膝で柔らかく圧迫してくるのだ。
「っ、ひ、う……ッ」
「はは、八葉も勃起すんのな。……なあ、ヒートってどんな感じ? 他のやつはもっとガツガツしてんのに、お前はしおらしいのな」
「そーいうところも余計エロいわ」と、肩口に顔を埋めてくる賀茂に首筋を舐められ、飛び上がりそうになる。
首は駄目だ。このまま項に歯を立てられるのではないかという恐怖のあまり、賀茂の頭掴んで引き剥がそうとするが、うっすらと浮かぶ首筋の血管をしゃぶられれば力が抜けてしまいそうになる。
「っは、ぁ……ッ、い、やだ……っ、やめて、賀茂君……ッ」
「お前って本当強情だよな、見かけによらず」
シャツのボタンを外され、首筋から鎖骨へと唇を押し付けられる。熱い。熱くて、くすぐったい。もっと抵抗しなければと思うのに、それ以上に賀茂に逆らうことを恐れている自分がいた。
乱されたシャツの下、晒された素肌に賀茂の手が這わされる。臍から腹筋へと這い上がってくる賀茂の手は、そのまま胸に触れる。
「なんだ、お前、昔と全然変わんねえな」
「っ、……み、るな……ッ」
「胸突き出してんのは八葉だろ。ほら、ここも頑張って勃起してる」
「ひぃ……ッ!」
シャツの襟口を広げられ、そのまま尖った乳首を乳輪ごと絞られる。それだけで恐ろしいほどの刺激が胸から脳へと走り、情けない悲鳴が漏れた。
賀茂は薄く笑い、更に指先で乳頭を押しつぶす。
「っ、や、め……ッ、賀茂く、ぅ……ッ、い、痛いよ……ッ!」
「痛いだけ?」
「ぅ、あ……ッ!」
もう片方の胸を掴まれ、すり、と側面を擦らる。執拗に先端部分を摘まれ、捏ねられ、びくんと跳ね上がる上半身。逃げたいのに、壁と賀茂に挟まれた体は逃げ場などはない。動こうとすればするほど賀茂の膝に跨ってしまうような形になり、文字通り追い込まれる。
「っ、ぅ、う゛……ッ」
「はは、すげえビクビクしてる。そんなに乳首気持ちいいのか?」
「っ、ぁ゛……ッ、ち、が……ッ、こんな……ッぉ゛……ッ!」
「Ωって妊娠したら母乳出るんだってな。お前も赤ちゃんできたらここから母乳でんのか」
「っ、ぅ゛、や゛……ッ、いやだ、やめろ……ッ」
笑いながら恐ろしいことを言い出す賀茂に背筋が震える。やつの胸板を押し返そうとするが、更にぎゅっと乳首を引っ張られ、「ひう!」と女みたいな声が出てしまう。
それから賀茂は更に程よりも荒い手付きで俺の胸を揉み、乳首を柔らかく扱くのだ。
「っ、ひ、い、やだ」
「なにが嫌だよ。お前はΩになったんだろ? ってことは、ここももうそういうものになってんだよ」
「っ、ぁ゛……ッ、ひ、……ッ」
「でもこんな小さい乳首じゃ赤ちゃんがしゃぶるのもしんどいだろ」
「だからほら、俺が育ててやるよ」耳を舐められ、鼓膜へと直接流し込まれる賀茂の声に背筋が凍り付いた。
「な、に、言って……ッ!」
言いかけた瞬間だった。乳首を柔らかく押し潰され、そのまま乳輪へと埋め込むように穿られ、声にならない悲鳴が漏れる。
胸の奥で賀茂の指先がぐるりと動く。内側を擦られ、指を抜かれたと思えばまたぷっくりと浮かび上がる乳首を今度は軽く摘まれ、そのままシコられる。
「っ、ぃ、やだぁ……っ、やだ、賀茂く……ッ!」
「逃げるなよ、ほら。まだ痛いか?」
「っ、ひ、ィ……ッ!」
頭がどうにかなりそうだった。
乳首ばかりを責められ、ただただ気持ち悪いだけなのに。
遠慮なく誰にも触れられたことのない場所を賀茂に好き勝手荒らされ、頭の奥、脳髄を直接掻き回されるような感覚に陥る。
「……っ、い゛……ッいやだ、これ……っ、いやだ……ッ!」
「じゃ余計慣れないとな」
「っ、く、ひ……ッ!!」
穿られ、引っ張り出され、そんな愛撫を執拗に行われる内に胸の感覚がどんどん鋭くなっていく。
息が吹きかかっただけで上体が跳ね、そんな状態で再び乳首を指先で引っかかれた瞬間腰が震えた。絶頂にも似たその感覚に視界が白く点滅する。びくん、と再度跳ねる体。俺はそれ以上自立することができず、脱力した俺を「おっと」と抱きかかえたまま、賀茂は笑った。
「八葉、乳首弱かったのか? でも気持ちよかっただろ?」
「……っ、は、……ふ……ッ」
「聞こえねえか、これ」
遠くなる賀茂の声。そのまま俺を抱き抱えた賀茂は俺の腰を撫でる。
熱に浮かされた頭の中、ようやく終わったのだろうかとぼんやりと思ったときだった。腰に回された賀茂の手にそのまま下着ごと下を脱がされるのだ。
「っ、待……って……ッ、賀茂君……ッ!」
「ん? ……っ、どうした?」
「な、んで」
「なんでって、そりゃお前が辛そうだから」
違う、と言うよりも先に、閉じきっていた肛門に賀茂の太い指が押し当てられる。そして遠慮なく中へと挿入される指に堪らず声をあげた。
「っ、ぃ゛……ッ、ぁ゛ぐ、……ッ」
「ってのは口実で、俺のが我慢できねえから」
「か、も゛く、ぅ゛……ッ、ひ、ぃ……ッ!」
熱くて、痛くて、それ以上に痒いところに手が届くような感覚に神経がおかしくなるほどだった。
あの賀茂が俺の肛門を性器のように弄ってる。それだけでも気が狂いそうなのに、長くゴツゴツとした指は的確に人のいいところを探り当ててくるのだ。
「っぬ、いて……ッ、ぬ゛、い゛……ッ、ひ、ぐ……ッ」
「流石に狭いな。……俺の入っかな」
「っ、ぅ゛、ひ……ッ!」
サラリと恐ろしいことを口にする賀茂に青褪める暇すらもなかった。
入り口付近の筋肉を解すようにかき回され、腰が跳ね上がる。苦しいのに、腹の内側をかき回す異物感すら快感として拾い上げてしまうこの体質が何よりも憎かった。
「ぅ゛、ふ、ぐ……ッ! ひ、ぅ゛……ッ!!」
「っ、は……泣くなよ八葉。そんなにいいのか?」
「い゛やだ、ッ、ぬ゛い゛て、ッ、おねがい、がも゛く……ひう゛……ッ!」
「……ああ、お前の良いところここか? お前細いから探しやすくて助かるわ。……ほら、ここいっぱい擦ってやるからな。そうすりゃもっと気持ちよくなるだろ?」
「ッ、ぅ゛……――~~ッ!」
太い指に前立腺を探り当てられたと思えば、指の腹で柔らかく、そして執拗に責立てられる。
尿意に似た快感が全身へと広がり、瞼裏がチカチカと点滅する。最早地に足を付くことすらもできなかった。賀茂の逞しい腕にしがみついたまま、ひたすら責立てられる下腹部は執拗な愛撫に耐えられずにガクガクと痙攣した。
人語を発することもできなかった。閉じることもできず、食いしばった奥歯。咥内に溜まった涎がたらたらと溢れ、賀茂はそんな俺の醜態を見ては恍惚と微笑むのだ。
「い゛ひ、ッ、ぐ、ぅ゛うぅ……ッ!」
「っ、気持ちいい? なあ、八葉、俺の指はうまいか?」
「ぎ、もちい゛……ッ、きも、ちい……からぁ゛……ッ! ひぃ……ッ!!」
「……っ、そうか、じゃあもっとよくしてやるからな」
更に腰を持ち上げられ、賀茂の指が更に追加される。増す圧迫感に腰が逃げそうになるが、賀茂は構わずみちみちと中を広げ、指の根本まで挿入してくるのだ。
「ぉ゛……ッ、ふ、ぅ゛……ッ!」
複数の指が不揃いな動きで中を掻き回してくるのだ。休む暇もなく与え続けられる内部の快感に耐えきれず、嗚咽にも似た喘ぎ声を堪えることはできなかった。
責立てられる。シャツの下、限界まで勃起した性器が腰の痙攣に合わせてふるふると揺れた。睾丸が引っ張られ、頭の中が段々白ばんでいく。俺の限界が近いのだと賀茂も気付いたのだろう、その愛撫は更に間隔が短くなり、あっという間に俺は射精した。
半濁の液体が反り返った性器からぴゅっぴゅっと溢れ出す。それを一瞥した賀茂はそれでも責める手を止めるわけではなく、更に追い打ちをかけてくるのだ。
「ま゛、ぅ゛、やめ゛、ッ、も゛、むり、出ない……ッ! でな、あ゛ッ、でない、出ないからぁ……ッ!」
「いいや嘘だな。まだ溜まってんだろ、ほら、イケよ。俺が息抜きさせてやる。遠慮しなくていいんだぞ」
「いやだ、いやだいやだ、賀茂くッ、ぬ゛い゛……ッ! 出る、いやだ、も゛っ、くるし、ぅ゛、出ちゃ、ぁ゛……ッ! 出る……ッ!!」
自分が何を言ってるのかすらもわからなかった。射精したばかりの体に絶え間ない責め苦は拷問に等しい。更に塗り重ねられる快感に呆気なく体は達する。勢いよく精液は尿道から溢れ出した。
それをもろに被った賀茂は目を見開き、そして、そのまま脱力する俺を見下ろしたままごくりと固唾を飲んだのだ。
「ははっ、お前……まじか」
「っ、は、……ぁ……」
ぐぷ、とようやく賀茂の指が引き抜かれる。息も絶え絶えだった。無理矢理広げられ、執拗にかき回された肛門は開いたまま、そこに推し当てられる指とは違うものの感触に目を見開いた。
後頭部と背中を壁に押し当てるように腰を持ち上げれ、その下腹部。開脚するように開かれた股の間に推し当てられるグロテスクなそれを見た瞬間心臓が跳ね上がった。
「っ、ぅ、や……ッ」
「嫌じゃないだろ。お前だってこれが欲しいって腰がこすりつけてくる」
「ち、がう、俺、おれ……ッ」
柔らかくなった肛門に、ぷに、と推し当てられるのは肉色のエラ張った亀頭だ。指なんか比ではないその太さと長さに、これを全て根本まで挿入されたときのことを考えてはぶるりと背筋が震えた。
「……ッ、ならやめるか?」
そんな俺を見下ろしたまま、賀茂は自分の性器を掴んだまま俺の性器に重ねるようにぺちんと落とす。質量と重さ、そして熱。臍の当たりまで優に超すその男性器に無意識に喉の奥へと唾の塊が落ちていく。
怖い、こんなもの入るわけがない。壊れてしまう。そう思う反面、バキバキに筋に覆われたその性器に腹の奥まで力づくで挿入されたときの衝撃と快感を想像しては目の前が眩んだ。はっはっと性器を前に犬のように呼吸が浅くなる俺を見て、賀茂は「なあ八葉」と耳元で俺の名前を呼ぶ。
「俺、普通よりも結構でけーらしくてさ。……ここ、普通なら結腸の入り口があんだけど、俺のチンポならここの壁突破して、もっと奥まで気持ちよくさせれんだってさ」
「っ、ぁ……ああ……」
「ここの壁、チンポでハメるとすげー気持ちいいってさ。……なあ、お前だって気持ちよくなりたいだろ?」
臍の数センチ下をとんとんと叩かれ、その振動だけでも感じてしまいそうになる。甘い賀茂の声に心臓の音が更に大きくなるのだ。
なあ八葉、とそのまますりすりと下腹を撫でられれば、なにも挿入されていないはずの内壁がきゅう、と締め付けられる。
自分がなにされてるのか、なんでこんなことになってるのかすらもうわからなかった。
ただ、賀茂の性器から目を逸らすことができなかった。口の中に唾液が滲む。
もう、なんでもいいんじゃないか。こいつにΩだってバレたんなら、もうどうだって。
そんな思考が過ぎった時、俺の心でも読んだかのように賀茂は俺から性器を離した。
ほんの一瞬でも腰を動かして追いかけそうになる俺に、賀茂は笑うのだ。
「その代わり、約束しろよ」
「や、くそく……?」
「ああそうだ。……お前の運命の相手は俺だって。俺だけのΩになるって」
「この口で」と唇を撫でられる。賀茂の言葉の意味なんて分からない。
熱で溶かされた思考回路では正常に物事を判断することができなかった。
あるのはただ、眼前の性欲だけだった。
「ッ、ぉ゛……ッ、お゛、ご……ッ!!」
腹を突き破られるのではないか。そう思えるほどの衝撃に頭の中で火花が飛び散り、自分がどこにいるのか、何を見ているのかすらもわからなかった。
賀茂に持ち上げられ、宙ぶらりんの体に突き立てられる男性器の衝撃に暫く俺は動くことができず、ただのオナホのようにひたすら賀茂に抱き締められたまま犯される。
どれほどの時間が経ったのかも分からない。人気のない深夜の公衆便所は精液の匂いにまみれ、品のない水音と肌がぶつかる音が響き渡っていた。
「っ、八葉、お前まじ最高だわ……っ、なあ、キスしようぜ、キス……っ」
「っ、は、ぅ゛、んむ……ッ、ぅ、う゛……ッ」
裂けそうなほどの痛みも快感に塗り潰され、濃厚な賀茂の匂いで包まれた全身は心身満たされ多幸感に犯される。恋人かなにかのように指を絡め、唇を貪られ、深く挿入されたまま暫くキスをされる。
「……っ、なあ、八葉、俺のこと好き?」
「っ、わ、かんな……ッ、ぁ゛……ッ」
「好きって言えよ、なあ、ほら。言わねえと奥までハメてやんねえぞ」
「っう、や、しゅ……ッ、しゅき、す、き、好き……ッ、大好き……ッ!」
「俺もだ、八葉、やっと俺のこと好きだって言ってくれたな八葉……ッ! たくさん奥にキスしてやるからな、ほら」
「ひぃ゛ぎッ! ぉ゛、ぎだッ! ぉ゛ぐ、う゛ぅ……ッ!」
腰を掴まれ、そのまま下から突き上げられる。落とされるのではないかという恐怖心などとっくになくなった。賀茂は俺から腕を離さないとわかっていたから。ピストンに耐えきれずにぴんと伸びた爪先はそのまま震え、俺はただ与えられ続ける賀茂の愛を受け止めることで精一杯だった。
あんなに苦手だったのに、「好きだ」とキスをされて舌ごと吸われればもうわけがわからなかった。気持ちよかったらなんでもいい、こうして賀茂に犯されてる間だけはヒートの苦しさもストレスもなにもかもから解放され、ただ満ち足りていくのだ。
「ナカ、たくさん出してやるからな。俺の赤ちゃん産んでくれよ。お前のことぜってー幸せにしてやるから」
「っ、ぁ゛、はひ……っ」
「……っ、八葉……ッ」
「あ、あ゛、ぐ、ひ……ッ!!」
どぷ、ぐぷ、と腹の奥、音を立てて注ぎ込まれる大量の熱を注がれる。性器は萎えるどころか硬いまま、精液で満たされたそこを再び性器でかき回され、内壁全体に精液を塗り込むようにすぐにピストンは再開される。
栓をされたまま今度は体位を変え、片足が地面につけられる代わりに片腿を掴み上げられたまま突き上げられた。
休む暇もなかった。賀茂は本気で俺を孕ませる気なのだとわかった。
それでも、それでもいい。どうでもいい。Ωになった今、俺の幸せなど『これくらい』しかないのだから。
「っ、もっと、賀茂君……ッ、俺を……めちゃくちゃにして……ッ」
そう叫びすぎてひび割れた喉で俺は賀茂の頭に手を回す。瞬間、賀茂に噛み付くようにキスをされ、先程以上のピストンで奥を突きあげられれ今度こそ人語を発することもできない肉塊となってしまうのだ。
何も考えられなくなるくらい、もう二度と頑張れなくなるくらい打ちのめされたかった。
◆ ◆ ◆
「よ、八葉」
予備校を終え、扉を潜ればそこには見慣れた男がいた。
凡そ予備校生たちとは掛け離れた派手な装いのその男は、俺の顔を見るなりこちらへと駆け寄ってくる。
――賀茂だ。
「……賀茂君、また待っててくれたんだ」
「そりゃそうだろ。こんな夜道に一人で帰らせるわけないだろ」
そう賀茂は俺の腰に手を回してくる。
「……っ、賀茂君……」
「その首輪、似合ってる。やっぱり八葉は肌が白いから黒が映えんな」
「……ん……ッ」
腰を抱き寄せられ、耳元で囁かれる。それだけで昼間校内で散々賀茂に犯されたときの感覚が蘇ってくるのだ。
「なあ、これから俺んちくるだろ? オバサンには俺から連絡しとくし、それに……そろそろだろ? ヒート」
「……うん、一応予定日は明日になってるはずだけど」
「なら丁度良いな。明日から連休だし、ずっと一緒にいような」
人目を憚ることなどしない。
あんなに鬱陶しかった男が、今では大きな犬のように見えるのだ。――発情期の盛り付いた犬だ。
だったら、宛ら俺は――。
「うん、……俺も賀茂君と一緒がいい」
軽く唇を重ね合わせ、俺達は笑い合う。
両親は俺がΩになったと聞くと落胆した。それと同時に、『道理で』と口を合わせたのだ。
――道理で、不出来なのだと。
俺は今度はショックを受けることはなかった。寧ろ清々した。もう必死に自分を削ってまでしがみつかなくてもいいのだと、これからは自分のことだけを考えていいのだと。
それでも、勉強以外の趣味はなかったので予備校には通い続けてる。行きたい大学に受かることは諦めきれなかったからだ。
けれどそれ以外、勉強を詰め込む代わりに俺は賀茂と過ごすことが多くなった。賀茂の好意を素直に受け止めきれるようになってからは、人から必要とされることで自分を保つことができたからだ。
依存対象が両親から賀茂に変わっただけでないか。そんな風に考えたこともあったが、もうどうだっていい。だって、賀茂は俺のことを邪険にしないし好きだって言ってくれるしたくさん愛を注いでくれるから。
……これでよかったのだ。
END
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