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正直そりゃあもうムカついた。冷静で落ち着いていて、普段虫をも殺さなさそうと言われている俺でもムカついた。ぶん殴ってやりたかった。
けれど、そこをぐっと堪えて六秒数える。こいつの挑発に乗ったところでいつもの流れなのだ。落ち着け。落ち着くんだ俺。
「……」
「おい、図星で何も言えねえってか?」
「……呆れてるんだよ。お前、全然変わらないな。ガキか?」
「……ああ?」
「ガキだって言ってるんだよ、聞こえなかったか? 俺がどこの誰と付き合おうが人の勝手だろうが。少なくとも、お前にはもう関係――」
ないことだ、と言いかけた矢先だった。
胸倉を掴まれる。嫌な予感がし、咄嗟にやつの手首を掴んで引き剥がそうとしたほんの数秒のことだった。大聖と視線がぶつかった。
――デジャヴ。
つい先日見た光景と重なったことを俺もやつも気付いてしまった。その瞬間、予感は現実となった。
「は、な――」
離せ馬鹿力、と振り払おうとした矢先、鼻先に迫ってきたやつの顔面に咄嗟に後退る。が、間に合わなかった。ぬるりとした舌先が唇を這い、背筋が凍った。
「っ、ざけ、テメェ、また――んむ゛ッ」
ぢゅう、と唇ごと吸われ、強引に唇をこじ開けようとしてくる舌に俺は大聖を付き飛ばそうとするものの、この馬鹿力がそれを許してくれない。
「……っ、ふ、ぅ゛……ッ」
手首を掴まれたまま重ねられる唇に、とうとう我慢できずに俺はなけなしの力を振り絞り、大聖の胸を大きく突き飛ばそうとした。
拍子に唇が離れ、ホッと安堵するのもつかの間。そのまま伸びてきた舌にべろ、と頬を舐められ、全身が泡立つ。
「この……っ」
そう振り返ろうとしたときだ。そのまま耳元、押し付けられる唇。
「関係あるに決まってんだよ」
「は……っ」
「――俺がムカつく」
耳元で低く吐き捨てられるその言葉に、背筋がぶるりと震える。
少しでも視線を動かせば、そこにはじっとこちらを見詰める大聖の顔があった。その目が据わってるのを見て、余計ぞっと悪寒が走る。
「おかしいんじゃねえの、お前、溜まってんならセフレでもなんでも呼び出しゃいいだろ……っ、欲求不満すぎていかれてんのか?」
「お前のせいだ、明日真」
「んな、っ、に……」
「当てつけみてーな真似ばっかしやがって……わざと煽ってんだろ、俺を」
んなわけねえだろ、自惚れんな馬鹿。
そう続けるよりも先に、再び胸を押されて壁に体を押し付けられる。「離せ」と必死にその腕の下から抜け出そうと藻掻くも、覆いかぶさってくるやつの腕に閉じ込められる方が早かった。
必死に顔を逸らそうとするも、強引に顔面を覗き込まれたと思えば再びキスをされる。
「ふ、ぅ゛……っ!」
こいつにキスされんのも、最早何度目かも分からなくなってきた。一度のキスでブチ切れてたことが可愛いほど、こいつは更に上塗りするように執拗に舌で舐り、吸い付き、薄い粘膜越しに体温を楽しむように何度も人の体を押さえつけてキスをしてきやがった。
「っふ、ぅ、……っふー……っ、んん゛……ッ!」
やつをぶん殴ってやりたいのに手首を掴まれたせいでそれができない。それどころか、押し付けられる下半身に嫌な感触を覚え、意識があっちこっちへと飛び散りそうになる。
――なんで、こいつ勃起してんだ。
「……っは……っ、ぁ……ぉ、お、おまえ……ん、なに、考えて……っんん……っ!」
「ここまでしてもわかんねえのかよ」
「わ、わかるわけ、ん……っ、ゃ、やめろ、押し付けんな……っ! 当たってんだよ!」
「当ててんだよ」
「は――」
俺が擦り付けられる性器に気を取られている間に、胸を掴んでいた手にシャツの襟のボタンを乱暴に外される。インナー越し、胸筋の膨らみを確かめるように指を沈めてくる大聖。
「あんな女男にお前を満足させれるわけねえだろ。また俺が叩き込んでやるよ、一からお前に」
感謝しろよ。なんて、言いたげな顔をして開き直ってくる大聖にただ俺は凍りついた。
けれど、そこをぐっと堪えて六秒数える。こいつの挑発に乗ったところでいつもの流れなのだ。落ち着け。落ち着くんだ俺。
「……」
「おい、図星で何も言えねえってか?」
「……呆れてるんだよ。お前、全然変わらないな。ガキか?」
「……ああ?」
「ガキだって言ってるんだよ、聞こえなかったか? 俺がどこの誰と付き合おうが人の勝手だろうが。少なくとも、お前にはもう関係――」
ないことだ、と言いかけた矢先だった。
胸倉を掴まれる。嫌な予感がし、咄嗟にやつの手首を掴んで引き剥がそうとしたほんの数秒のことだった。大聖と視線がぶつかった。
――デジャヴ。
つい先日見た光景と重なったことを俺もやつも気付いてしまった。その瞬間、予感は現実となった。
「は、な――」
離せ馬鹿力、と振り払おうとした矢先、鼻先に迫ってきたやつの顔面に咄嗟に後退る。が、間に合わなかった。ぬるりとした舌先が唇を這い、背筋が凍った。
「っ、ざけ、テメェ、また――んむ゛ッ」
ぢゅう、と唇ごと吸われ、強引に唇をこじ開けようとしてくる舌に俺は大聖を付き飛ばそうとするものの、この馬鹿力がそれを許してくれない。
「……っ、ふ、ぅ゛……ッ」
手首を掴まれたまま重ねられる唇に、とうとう我慢できずに俺はなけなしの力を振り絞り、大聖の胸を大きく突き飛ばそうとした。
拍子に唇が離れ、ホッと安堵するのもつかの間。そのまま伸びてきた舌にべろ、と頬を舐められ、全身が泡立つ。
「この……っ」
そう振り返ろうとしたときだ。そのまま耳元、押し付けられる唇。
「関係あるに決まってんだよ」
「は……っ」
「――俺がムカつく」
耳元で低く吐き捨てられるその言葉に、背筋がぶるりと震える。
少しでも視線を動かせば、そこにはじっとこちらを見詰める大聖の顔があった。その目が据わってるのを見て、余計ぞっと悪寒が走る。
「おかしいんじゃねえの、お前、溜まってんならセフレでもなんでも呼び出しゃいいだろ……っ、欲求不満すぎていかれてんのか?」
「お前のせいだ、明日真」
「んな、っ、に……」
「当てつけみてーな真似ばっかしやがって……わざと煽ってんだろ、俺を」
んなわけねえだろ、自惚れんな馬鹿。
そう続けるよりも先に、再び胸を押されて壁に体を押し付けられる。「離せ」と必死にその腕の下から抜け出そうと藻掻くも、覆いかぶさってくるやつの腕に閉じ込められる方が早かった。
必死に顔を逸らそうとするも、強引に顔面を覗き込まれたと思えば再びキスをされる。
「ふ、ぅ゛……っ!」
こいつにキスされんのも、最早何度目かも分からなくなってきた。一度のキスでブチ切れてたことが可愛いほど、こいつは更に上塗りするように執拗に舌で舐り、吸い付き、薄い粘膜越しに体温を楽しむように何度も人の体を押さえつけてキスをしてきやがった。
「っふ、ぅ、……っふー……っ、んん゛……ッ!」
やつをぶん殴ってやりたいのに手首を掴まれたせいでそれができない。それどころか、押し付けられる下半身に嫌な感触を覚え、意識があっちこっちへと飛び散りそうになる。
――なんで、こいつ勃起してんだ。
「……っは……っ、ぁ……ぉ、お、おまえ……ん、なに、考えて……っんん……っ!」
「ここまでしてもわかんねえのかよ」
「わ、わかるわけ、ん……っ、ゃ、やめろ、押し付けんな……っ! 当たってんだよ!」
「当ててんだよ」
「は――」
俺が擦り付けられる性器に気を取られている間に、胸を掴んでいた手にシャツの襟のボタンを乱暴に外される。インナー越し、胸筋の膨らみを確かめるように指を沈めてくる大聖。
「あんな女男にお前を満足させれるわけねえだろ。また俺が叩き込んでやるよ、一からお前に」
感謝しろよ。なんて、言いたげな顔をして開き直ってくる大聖にただ俺は凍りついた。
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