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お前らとの関係を断ち切る方法を考える。五日目。
この世で一番耐え難いもの
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なんと驚くことに今朝は久し振りに平和だった。
というのも、宋都は夜遅かったお陰で俺が起きたときにも爆睡してたというのが大きいだろう。
燕斗も比較的穏やかだったのでよかった。
……ああ、これでいいんだ。毎日無理に俺の胃を虐める必要なんてないんだ。毎日そのまましおらしくいてくれ、と願いながらも例の如く燕斗と途中まで送ってもらうことになった。
本人は学校までついてきたそうだったが、流石に連日遅刻はまずいんじゃないかとなんとか燕斗を説き伏せることに成功したのだ。
燕斗もこの前みたいなピリついた空気は和らぎ、「美甘がそういうなら……」と名残惜しそうな顔をしていた。別れたあとすぐに燕斗からメッセージが届いてたので俺はスタンプだけ返しておく。じゃないとまた機嫌悪くなると厄介だしな。
という感じでいつもの平穏が帰ってきた気持ちで登校し、教室へと足を踏み込む。ああ、この感じ。俺が教室に入ろうが入らなかろうが空気は変わらない、この存在の希薄感。これでいいんだよ、これで。変に目立つことなく俺は教室の片隅で気の知れた友人といるだけで十分だ。
などと思いながら、俺はサダの姿を見つけ「おはよ、サダ」と声をかける。
が。
「あ……ああ、おはよう」
――なんだ、このあからさまなぎこちなさは。
こちらに目を合わせようともしないサダはどう見たって様子がおかしい。
気のせいかと思いたかった。けれど、不安になって「サダ?」と恐る恐るサダの前に回り込めば、サダは露骨にぎょっとした。
「な、なんだ? ……どうした?」
「いや……お前こそどうしたんだ?」
「え、俺? ……いや別に、普通だけど」
説明しよう、サダはめちゃくちゃ良いやつなので嘘を吐くのが下手なのだ。
なんでそんな嘘吐くんだよ、と突っ込みたかったが、もしこれがネタでもなんでもなかったときのことを考えた途端変な汗がでて来た。指が震えてくる。
まさか、また“あいつら”がなんかしたのか。
「なあ、サダ……俺、なんかしたか?」
「え、美甘……」
「お、怒らせるようなことしたんなら謝る……から、だから……」
避けないでくれよ、と半ば縋りつくような思いで俺はサダの机にしがみついた。今までみたいな他のモブならまだしも、サダに引かれてしまえば流石の俺もショックを受ける。
そんな俺に、サダは「美甘」と何かを言いかけた。そして、
「……お前は悪くないんだ、美甘」
「じゃあ、なんだ……まさか、またあいつらになんかされたのか?」
「……っ、」
そう口にしたとき、サダがこちらを見たのだ。それも一瞬、苦虫を噛み潰したような顔をしたサダはなにかを呟いた。
騒がしい教室内だ。しっかりとは聞き取れなかったが、サダは確かに「それはお前だろ」と言った――ような気がした。
え、と思わず固まれば、そのままサダに手を掴まれた。
「さ、サダ……?」
「……ちょっと、話がしたいんだけど……いいか?」
覚悟を決めたような顔をしたサダに詰め寄られ、俺はノーということなどできなかった。
漠然とした嫌な予感だけがバチバチに頭の中に浮かんでは弾けていく。
それでも真面目な顔をしたサダから逃げることなんてできなかった。
それから、俺はサダに引っ張られるようにして教室を出た。
サダに連れられている間、正直俺は生きた心地がしなかった。何故なら心当たりがありすぎたからだ。
辺りに人気がない通路までやってきて、サダは立ち止まる。道中ずっと無言だったサダは、神妙な顔をしてこちらを見るのだ。
「み……美甘、あのさ……答えたくなかったら、別に無理して言わなくてもいいからな」
「な、なに?」
「昨日、お前が……慈光兄と一緒に帰っただろ?」
初手燕斗の名前が出てきた時点でひくりと喉が鳴る。冷たくなっていく手足。あ、やばい。なんか出だしからして嫌な気しかしない。
「そうだけど」となるべく平静を装いつつ答えれば、そのままサダは言いづらそうに「あのさ」と声を絞り出す。
「あのあと、俺、美甘のことが気になって後追いかけたんだけど――」
あ、と血の気が引いた。その先の言葉を聞くのが怖くて、気付いたら俺はサダの口を手で塞いでいた。
「っ、んむ……っ」
「ま、って、待って……サダ、お、お前……まさか……」
燕斗に連れられて帰る道の途中、燕斗に路地裏へと連れ込まれたときのことは今でも鮮明に蘇る。
もし、あのときサダが俺を追ってきていた――そんなこと、あってはならない。のに。
「……っ、み、たのか」
俺の問いかけに、サダは小さく頷いた。
瞬間、聞こえていた生徒たちの声も、チャイムの音も、全ての音が遠くなる。
サダの言おうとしていたこと、その態度の理由――全てを理解した瞬間、首から上に熱が集まっていくのが分かった。
頭が真っ白になる、というのはまさにこのことなのかもしれない。
あの時の燕斗とのやり取りが土石流のように頭の中に蘇り、それ以外なにも考えられなかった。
文字通り硬直する俺の手をそっと取ったサダは、「……美甘」とばつが悪そうに名前を呼ぶ。
「俺は別に、偏見とかそういうのはないんだけど……なあ、あれって無理矢理……とかじゃないのか」
「……っ、ぁ……」
「それだけが気になったんだ。……お前と慈光兄が付き合ってるなら別に俺もこの件に対しては忘れるし、もう触れない」
「けど、そうじゃないなら」と言い掛けて、サダは口を閉じる。真っ直ぐなサダの視線がひたすら痛かった。
サダは、いいやつだ。……いいやつだと解ってるし、俺のこと心配してくれてるんだってのもわかった。
けど、俺はこういう時どうすればいいのか教わっていない。
「……っ、ちがう、サダ……ちが」
「美甘、大丈夫だ。ゆっくりでいいから」
「……ぉ、おれ……っ」
ただでさえ頭が回らないのに、舌まで縺れて上手く言葉が出てこない。サダに嫌われないように誤魔化さないといけないのに、なにも考えられなくなってしまう。
そんな俺に、サダの表情が強張った。
「さ、サダ……ぉ、俺のこと……嫌いにならないで……っ」
ぐちゃぐちゃになった頭の中、唯一浮かび上がったその言葉を口にした瞬間、サダに体を抱き締められた。
目の前にはサダの肩があって、普段意識したことなかったサダの体温に全身が包み込まれる。
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
「さ、だ」
「嫌いになるわけないだろ。言ってるだろ、俺は偏見は――」
「っ、う、そだ」
今朝のサダの態度を思い出せば全て合致してしまうのだ。いくら言葉で取り繕ったところで、どう接していいのか分からなくなる感覚は俺にも分かる。
そして、明確に一線引かれたときのあの感覚――今までずっと感じてきたからこそ余計俺にとっては解ってしまった。
ぼろ、と目から涙が溢れる。それを見て、サダは目を見開いた。
「……っ、美甘……」
「俺だって、シたくてシたわけじゃない……っ、あいつが、いつも無理矢理……」
いつも、と口にしたとき、サダの表情が固くなるのを見た。もう駄目だ、あんな場所を見られた時点で弁明の余地なんてなかった。
誤魔化そうとしても、自分の浅ましさが浮き彫りになっていくばかりで。
「……き、嫌いにならないで、サダ」
「なるわけないだろ」
「お、俺のこと、無視しないで……」
「してない、するわけない」
「……っ、前みたいに、仲良くして……」
「――美甘」
サダの胸にしがみついたまま、ただ繰り返すことしかできなかった俺の頬をサダが撫でる。そのひんやりとした指に驚いて、思わず目の前のサダを見上げたとき――視界が暗くなった。
ちゅ、と小さな音を立ててサダの顔が離れる。こちらを覗き込むようなその目に、唇に残った感触に、俺はそこでサダに何をされたのかを理解した。
「――っ、な……」
「前みたいに、は……無理かも」
「なんで、サダ」
「……お前のこと、好きだから」
「……っ、は?」
全ての音が遠くなる。
サダがなんて言ってるのか理解できなかった。聞き間違いではないのか。けど、じゃあなんで、キス。
「慈光兄とは付き合ってないのか」
「っ、ぁ、付き合ってない……」
「……そうか」
「……っ、ま、待って、サダ。なに、なんで……」
「じゃあ、俺と付き合わないか」
俺にはもうサダが何を言ってるのか分からなかった。さっきまでとは別の意味で顔が熱くなり、頭が真っ白になる。
「っサダ、なに言って……」
「お前が無理矢理あいつに付き合わされてるの、正直見てられない。……今回ので確信したんだ。俺、あいつに嫉妬してる」
「しっと……」
「なあ、美甘は……嫌か?」
抱き締められたまま尋ねられ、今度こそ俺は頭の中ぐちゃぐちゃになってしまう。
嫌か嫌ではないで尋ねられたら、それは。
「い、嫌じゃ……ない」
「……っ、美甘」
「俺も、サダのこと好き」
嫌われるよりもずっと嬉しい。サダのこと恋愛対象として見たことなんてなかったけど、多分それって友達とか親友とかよりももっと大きな存在ってことだよな。
ドキドキのあまり壊れそうになる心臓を服の上から抑えたまま声を絞り出せば、サダにまたぎゅっと抱き締められた。
嫌じゃない。胸の奥が熱くなって、おかしくなりそうなくらい緊張したし手汗も出たけど、サダに好きって言われただけで全部耐えられる。
「なあ、キスしていいか」
「え゛、や……さっきしなかったか?」
「もう一回」
「……サダがしたいなら」
いいぞ、とサダの顔を見上げたままぎゅっと顔面に力を入れて目を瞑る。
あいつらとキスするときにここまで意識したことも、そういや俺今朝変なもん食ってないよなと思い返すこともなかった。
優しく触れるだけのキスなのに、こんなにドキドキすることってあるんだ。
そんなことを考えながら、俺はサダにしがみついた。
あらすじ。成り行きでサダと付き合うことになってしまった。以上。
とにかくそのときは燕斗のことを知られた衝撃で色々頭から飛んでしまっていたが、よく考えたらなんか大変なことになってる気がする。
なんだか変な感じになってしまった俺は、あれからタイミングを見計らいサダとやや時間ずらして教室へと戻ってきた。
いつもと変わらない光景なのに、俺一人がまるでソワソワしてるようだ。……いや、俺だけではない。もう一人いた。
ちら、とサダの方に目を向ければ、丁度こちらを見ていたらしいサダと目が合う。ぱっと目を逸らすのも変な気がして、そろりと手を振れば、サダは少しだけ恥ずかしそうに笑って手を振り返してくれた。その笑顔に心臓がまたきゅっと苦しくなる。
今まではこんなことなかったのに、なんでだ。……付き合ってるからか?!
悶々としながら俺は手持ち無沙汰を誤魔化すため、次の授業の準備に取り掛かった。
その間もずっと、頭の中ではさっきのサダのキスの感触やらなんやらが頭の中をぐるぐる回る。
その都度頬が火照ってしまうのは、俺にはもうどうにもできなかった。
授業中、なんならずっとそんな感じで上の空のまま時間ばかりが過ぎていく中、ふと俺はあることに気が付いた。
…………燕斗と宋都のこと、どうしよう。
一先ずサダに嫌われなかったことに安堵したのもつかの間、肝心なことがすっぽりと頭から抜けてしまっていたことを思い出す。
いや、でも待て。あと二日だ。どうせ二日経てば実家に帰れるし、あいつらとはまた距離を置くことになるだろう。
――だったら別に、わざわざ言わなくても良くね?
「……よし」
このまま隠し通して、この一週間を乗り切ってみせる。サダのためにも、わざわざあいつらに俺の恋愛事情を教えてやる必要などないのだ。絶対なんかイチャモンつけてくるに違いないし。
俺はそう静かに決意した。遠くからサダが心配そうな顔をしてこちらを見ていたことに、俺はまだ気づかなかった。
そして時間はあっという間に経ち、放課後。教室にて。
すべての授業も終わり、帰る準備をしていたときだ。ぞろぞろと教室から出ていくクラスメイトたちに混ざって、サダが俺の席までやってきた。
「美甘、……一緒に帰らないか」
「お、おー!」
「……ふ、」
「な、なに笑ってんだよ……」
「いや、声裏返ったなって思って」
言いながらはにかむサダの笑顔に心臓がまた苦しくなる。
今までサダのことかっこいいとかかわいいとか、そんなに意識したことなかったのに。
サダの笑顔一つで『あれ、サダってこんな顔で笑ってたっけ?』なんて考えだしたら止まらなくなる。
駄目だ駄目だ、こんな調子じゃ。これじゃ初めての恋人に浮かれる童貞みたいじゃないか。………………いや、そうだけども。
と、そこまで考えたところでネックであるあの双子のことを思い出した。
「あ、でも……」
「……寄り道くらいなら問題ないよな」
「そう、だな……うん! サダと寄り道したい」
「俺も」
「そ、そうか……ふふ」
「何笑ってるんだ?」
「いや、なんかくすぐったくて……変な感じだ」
面白いというよりも、笑って誤魔化さないと気恥ずかしさでどんな反応したらいいのかわからなくなる――そんな感覚に、「分かる気がする」とサダは頷いた。
そして。
「それじゃ、行こうか」
さらりと掴まれる手に驚く暇もなかった。慌てて周りを見たが、いちいち俺たちを気にしてるやつもいなかった俺はこっそりと「うん」とサダの手を握り返した。
あの兄弟のことは一先ず忘れて、サダと過ごす時間を楽しみたかったのだ。
サダと一緒に寄り道して、そのまま途中まで一緒に帰ることになったわけだが、正直道中サダとどんな会話したのかも覚えていない。
理由は単純明快、俺が緊張しすぎていたせいだ。
恋愛のれの字も知らずに今の今まで生きてきた俺にとって初めての恋人だし……それに、相手はつい昨日までは親友だったサダだ。もうどう接していいのかわからなかった。
サダもサダで、俺がそんな調子なものだからどう対応すべきか考えあぐねていたようだ。なんとなくギクシャクしながらも、それでも向けられる視線が今までと違うことが分かってしまって余計俺は破裂寸前だった。
緊張しっぱなしだったが、嫌だったわけではない。サダは俺のペースを待ってくれるし、いいやつだし、優しいし……そんなサダに好かれてる俺ってなんなのだとは思ってしまったが。
「……美甘」
「んぇ?!」
「ここまでだったよな、確か」
――家に近くなりすぎると、あいつらに見つかった時面倒だから。
確か俺はそう言って慈光家と俺の家の中間地点まで一緒に帰るのとにしたのだった。
「そうだったな……そっか、もう着いたのか」
「考え事してたのか?」
「ん……少しだけ」
頷き返せば、少しだけサダの表情が曇る。言葉を間違ってしまったか?と狼狽えていると、「何考えてたんだ?」とサダは聞き返してくるのだ。
「これからのこと……とか」
「……それって、俺とのこと?」
「うん、そう……俺のどこがいいんだろ、とか」
「……そんなこと考えてたのか?」
「そ、そんなこと……!」
「ああ、ごめん。そういう意味じゃなくて……直接俺に聞いてくれればよかったのに、って」
責めてるわけじゃないんだ、と慌てて付足すサダ。
サダに限ってそんなことはないと分かってるが、俺にとってはとてつもなく高いハードルであることには違いない。
「……美甘?」
「ゃ、ま、まだ……聞きたくない」
「え?」
「は、恥ずかしい……ってか、これ以上なんか言われたら、お、おかしくなる……っ」
本来ならば、毎日少しずつ段階を踏んでいって慣れていかなければならないところを、今日の朝だけでも一気に駆け上がってしまった。まさにキャパオーバー、というやつだ。
今まで恥ずかしいプレイはされてきた身ではあるが、そんな俺でも心臓が保たないほどだ。
ほんの少しきょとんと目を丸くしていたサダだったが、「そうか、わかった」と少しだけ嬉しそうに目を細めた。
「サダ……」
「美甘のペースでいいから、……また準備ができたら聞いてくれ」
「…………ずるい」
「……えっ?」
「サダ、なんか……余裕あってずるい。……俺、心臓おかしくなりそうなのに……」
自分の胸に手を当てればトクトクと鼓動が伝わってくるほどだ。その手に、ふと伸びてきたサダの手が重ねられる。さらりとした指の感触が手の甲を這い、指を絡められた。
「余裕あるように見えるか?」
「さ、だ」
「……あるようにしないと、正直キツイよ。お前をまた、あいつらの家に送り届けなきゃいけないの」
きゅ、と手を引かれ、そのままサダの手に握られる。手のひら越しにじんわりとサダの熱が流れ込んできて、お互いの体温が混ざっていくようだった。
真剣な目をしたサダがいて、俺は思わず口籠った。
まだ燕斗たちとの関係は断ち切ったわけではない。そりゃ、サダからしてみれば気が気でないだろう。
「あ、サダ……」
「なあ、本当に俺の家に泊まりに来ないのか? ……俺のことなんて気にしなくてもいい、お前のためだ」
「……だ、駄目だ……サダ」
「美甘……」
「あいつらとはどうせあと二日の辛抱なんだ。……サダが変に目を付けられるような真似はしたくない」
それは嘘ではない、本心だった。
それでも、サダの気持ちも分かる。自分の恋人が、体の関係がある男のところに泊まってるってなったら俺だっておかしくなるだろう。
けれど、正直あいつらに抱かれることは俺にとってはもう染み付いているようなものだ。無理に波立てるよりも我慢した方が余程いいと分かっていた。
だから俺はサダを納得させるため、一旦あいつらのことは俺に任せてくれとは頼み込んだ。
サダは了承してくれた。快諾とは程遠い様子ではあったが、「なにかあったらすぐに頼ってくれよ」というサダの言葉に胸が軽くなる。
それから、そのまま俺はサダを見送ることになった。
――ごめん、サダ。
その後ろ姿を見送りながら、俺も慈光家へと帰ることにした。
というのも、宋都は夜遅かったお陰で俺が起きたときにも爆睡してたというのが大きいだろう。
燕斗も比較的穏やかだったのでよかった。
……ああ、これでいいんだ。毎日無理に俺の胃を虐める必要なんてないんだ。毎日そのまましおらしくいてくれ、と願いながらも例の如く燕斗と途中まで送ってもらうことになった。
本人は学校までついてきたそうだったが、流石に連日遅刻はまずいんじゃないかとなんとか燕斗を説き伏せることに成功したのだ。
燕斗もこの前みたいなピリついた空気は和らぎ、「美甘がそういうなら……」と名残惜しそうな顔をしていた。別れたあとすぐに燕斗からメッセージが届いてたので俺はスタンプだけ返しておく。じゃないとまた機嫌悪くなると厄介だしな。
という感じでいつもの平穏が帰ってきた気持ちで登校し、教室へと足を踏み込む。ああ、この感じ。俺が教室に入ろうが入らなかろうが空気は変わらない、この存在の希薄感。これでいいんだよ、これで。変に目立つことなく俺は教室の片隅で気の知れた友人といるだけで十分だ。
などと思いながら、俺はサダの姿を見つけ「おはよ、サダ」と声をかける。
が。
「あ……ああ、おはよう」
――なんだ、このあからさまなぎこちなさは。
こちらに目を合わせようともしないサダはどう見たって様子がおかしい。
気のせいかと思いたかった。けれど、不安になって「サダ?」と恐る恐るサダの前に回り込めば、サダは露骨にぎょっとした。
「な、なんだ? ……どうした?」
「いや……お前こそどうしたんだ?」
「え、俺? ……いや別に、普通だけど」
説明しよう、サダはめちゃくちゃ良いやつなので嘘を吐くのが下手なのだ。
なんでそんな嘘吐くんだよ、と突っ込みたかったが、もしこれがネタでもなんでもなかったときのことを考えた途端変な汗がでて来た。指が震えてくる。
まさか、また“あいつら”がなんかしたのか。
「なあ、サダ……俺、なんかしたか?」
「え、美甘……」
「お、怒らせるようなことしたんなら謝る……から、だから……」
避けないでくれよ、と半ば縋りつくような思いで俺はサダの机にしがみついた。今までみたいな他のモブならまだしも、サダに引かれてしまえば流石の俺もショックを受ける。
そんな俺に、サダは「美甘」と何かを言いかけた。そして、
「……お前は悪くないんだ、美甘」
「じゃあ、なんだ……まさか、またあいつらになんかされたのか?」
「……っ、」
そう口にしたとき、サダがこちらを見たのだ。それも一瞬、苦虫を噛み潰したような顔をしたサダはなにかを呟いた。
騒がしい教室内だ。しっかりとは聞き取れなかったが、サダは確かに「それはお前だろ」と言った――ような気がした。
え、と思わず固まれば、そのままサダに手を掴まれた。
「さ、サダ……?」
「……ちょっと、話がしたいんだけど……いいか?」
覚悟を決めたような顔をしたサダに詰め寄られ、俺はノーということなどできなかった。
漠然とした嫌な予感だけがバチバチに頭の中に浮かんでは弾けていく。
それでも真面目な顔をしたサダから逃げることなんてできなかった。
それから、俺はサダに引っ張られるようにして教室を出た。
サダに連れられている間、正直俺は生きた心地がしなかった。何故なら心当たりがありすぎたからだ。
辺りに人気がない通路までやってきて、サダは立ち止まる。道中ずっと無言だったサダは、神妙な顔をしてこちらを見るのだ。
「み……美甘、あのさ……答えたくなかったら、別に無理して言わなくてもいいからな」
「な、なに?」
「昨日、お前が……慈光兄と一緒に帰っただろ?」
初手燕斗の名前が出てきた時点でひくりと喉が鳴る。冷たくなっていく手足。あ、やばい。なんか出だしからして嫌な気しかしない。
「そうだけど」となるべく平静を装いつつ答えれば、そのままサダは言いづらそうに「あのさ」と声を絞り出す。
「あのあと、俺、美甘のことが気になって後追いかけたんだけど――」
あ、と血の気が引いた。その先の言葉を聞くのが怖くて、気付いたら俺はサダの口を手で塞いでいた。
「っ、んむ……っ」
「ま、って、待って……サダ、お、お前……まさか……」
燕斗に連れられて帰る道の途中、燕斗に路地裏へと連れ込まれたときのことは今でも鮮明に蘇る。
もし、あのときサダが俺を追ってきていた――そんなこと、あってはならない。のに。
「……っ、み、たのか」
俺の問いかけに、サダは小さく頷いた。
瞬間、聞こえていた生徒たちの声も、チャイムの音も、全ての音が遠くなる。
サダの言おうとしていたこと、その態度の理由――全てを理解した瞬間、首から上に熱が集まっていくのが分かった。
頭が真っ白になる、というのはまさにこのことなのかもしれない。
あの時の燕斗とのやり取りが土石流のように頭の中に蘇り、それ以外なにも考えられなかった。
文字通り硬直する俺の手をそっと取ったサダは、「……美甘」とばつが悪そうに名前を呼ぶ。
「俺は別に、偏見とかそういうのはないんだけど……なあ、あれって無理矢理……とかじゃないのか」
「……っ、ぁ……」
「それだけが気になったんだ。……お前と慈光兄が付き合ってるなら別に俺もこの件に対しては忘れるし、もう触れない」
「けど、そうじゃないなら」と言い掛けて、サダは口を閉じる。真っ直ぐなサダの視線がひたすら痛かった。
サダは、いいやつだ。……いいやつだと解ってるし、俺のこと心配してくれてるんだってのもわかった。
けど、俺はこういう時どうすればいいのか教わっていない。
「……っ、ちがう、サダ……ちが」
「美甘、大丈夫だ。ゆっくりでいいから」
「……ぉ、おれ……っ」
ただでさえ頭が回らないのに、舌まで縺れて上手く言葉が出てこない。サダに嫌われないように誤魔化さないといけないのに、なにも考えられなくなってしまう。
そんな俺に、サダの表情が強張った。
「さ、サダ……ぉ、俺のこと……嫌いにならないで……っ」
ぐちゃぐちゃになった頭の中、唯一浮かび上がったその言葉を口にした瞬間、サダに体を抱き締められた。
目の前にはサダの肩があって、普段意識したことなかったサダの体温に全身が包み込まれる。
一瞬、何が起きたのかわからなかった。
「さ、だ」
「嫌いになるわけないだろ。言ってるだろ、俺は偏見は――」
「っ、う、そだ」
今朝のサダの態度を思い出せば全て合致してしまうのだ。いくら言葉で取り繕ったところで、どう接していいのか分からなくなる感覚は俺にも分かる。
そして、明確に一線引かれたときのあの感覚――今までずっと感じてきたからこそ余計俺にとっては解ってしまった。
ぼろ、と目から涙が溢れる。それを見て、サダは目を見開いた。
「……っ、美甘……」
「俺だって、シたくてシたわけじゃない……っ、あいつが、いつも無理矢理……」
いつも、と口にしたとき、サダの表情が固くなるのを見た。もう駄目だ、あんな場所を見られた時点で弁明の余地なんてなかった。
誤魔化そうとしても、自分の浅ましさが浮き彫りになっていくばかりで。
「……き、嫌いにならないで、サダ」
「なるわけないだろ」
「お、俺のこと、無視しないで……」
「してない、するわけない」
「……っ、前みたいに、仲良くして……」
「――美甘」
サダの胸にしがみついたまま、ただ繰り返すことしかできなかった俺の頬をサダが撫でる。そのひんやりとした指に驚いて、思わず目の前のサダを見上げたとき――視界が暗くなった。
ちゅ、と小さな音を立ててサダの顔が離れる。こちらを覗き込むようなその目に、唇に残った感触に、俺はそこでサダに何をされたのかを理解した。
「――っ、な……」
「前みたいに、は……無理かも」
「なんで、サダ」
「……お前のこと、好きだから」
「……っ、は?」
全ての音が遠くなる。
サダがなんて言ってるのか理解できなかった。聞き間違いではないのか。けど、じゃあなんで、キス。
「慈光兄とは付き合ってないのか」
「っ、ぁ、付き合ってない……」
「……そうか」
「……っ、ま、待って、サダ。なに、なんで……」
「じゃあ、俺と付き合わないか」
俺にはもうサダが何を言ってるのか分からなかった。さっきまでとは別の意味で顔が熱くなり、頭が真っ白になる。
「っサダ、なに言って……」
「お前が無理矢理あいつに付き合わされてるの、正直見てられない。……今回ので確信したんだ。俺、あいつに嫉妬してる」
「しっと……」
「なあ、美甘は……嫌か?」
抱き締められたまま尋ねられ、今度こそ俺は頭の中ぐちゃぐちゃになってしまう。
嫌か嫌ではないで尋ねられたら、それは。
「い、嫌じゃ……ない」
「……っ、美甘」
「俺も、サダのこと好き」
嫌われるよりもずっと嬉しい。サダのこと恋愛対象として見たことなんてなかったけど、多分それって友達とか親友とかよりももっと大きな存在ってことだよな。
ドキドキのあまり壊れそうになる心臓を服の上から抑えたまま声を絞り出せば、サダにまたぎゅっと抱き締められた。
嫌じゃない。胸の奥が熱くなって、おかしくなりそうなくらい緊張したし手汗も出たけど、サダに好きって言われただけで全部耐えられる。
「なあ、キスしていいか」
「え゛、や……さっきしなかったか?」
「もう一回」
「……サダがしたいなら」
いいぞ、とサダの顔を見上げたままぎゅっと顔面に力を入れて目を瞑る。
あいつらとキスするときにここまで意識したことも、そういや俺今朝変なもん食ってないよなと思い返すこともなかった。
優しく触れるだけのキスなのに、こんなにドキドキすることってあるんだ。
そんなことを考えながら、俺はサダにしがみついた。
あらすじ。成り行きでサダと付き合うことになってしまった。以上。
とにかくそのときは燕斗のことを知られた衝撃で色々頭から飛んでしまっていたが、よく考えたらなんか大変なことになってる気がする。
なんだか変な感じになってしまった俺は、あれからタイミングを見計らいサダとやや時間ずらして教室へと戻ってきた。
いつもと変わらない光景なのに、俺一人がまるでソワソワしてるようだ。……いや、俺だけではない。もう一人いた。
ちら、とサダの方に目を向ければ、丁度こちらを見ていたらしいサダと目が合う。ぱっと目を逸らすのも変な気がして、そろりと手を振れば、サダは少しだけ恥ずかしそうに笑って手を振り返してくれた。その笑顔に心臓がまたきゅっと苦しくなる。
今まではこんなことなかったのに、なんでだ。……付き合ってるからか?!
悶々としながら俺は手持ち無沙汰を誤魔化すため、次の授業の準備に取り掛かった。
その間もずっと、頭の中ではさっきのサダのキスの感触やらなんやらが頭の中をぐるぐる回る。
その都度頬が火照ってしまうのは、俺にはもうどうにもできなかった。
授業中、なんならずっとそんな感じで上の空のまま時間ばかりが過ぎていく中、ふと俺はあることに気が付いた。
…………燕斗と宋都のこと、どうしよう。
一先ずサダに嫌われなかったことに安堵したのもつかの間、肝心なことがすっぽりと頭から抜けてしまっていたことを思い出す。
いや、でも待て。あと二日だ。どうせ二日経てば実家に帰れるし、あいつらとはまた距離を置くことになるだろう。
――だったら別に、わざわざ言わなくても良くね?
「……よし」
このまま隠し通して、この一週間を乗り切ってみせる。サダのためにも、わざわざあいつらに俺の恋愛事情を教えてやる必要などないのだ。絶対なんかイチャモンつけてくるに違いないし。
俺はそう静かに決意した。遠くからサダが心配そうな顔をしてこちらを見ていたことに、俺はまだ気づかなかった。
そして時間はあっという間に経ち、放課後。教室にて。
すべての授業も終わり、帰る準備をしていたときだ。ぞろぞろと教室から出ていくクラスメイトたちに混ざって、サダが俺の席までやってきた。
「美甘、……一緒に帰らないか」
「お、おー!」
「……ふ、」
「な、なに笑ってんだよ……」
「いや、声裏返ったなって思って」
言いながらはにかむサダの笑顔に心臓がまた苦しくなる。
今までサダのことかっこいいとかかわいいとか、そんなに意識したことなかったのに。
サダの笑顔一つで『あれ、サダってこんな顔で笑ってたっけ?』なんて考えだしたら止まらなくなる。
駄目だ駄目だ、こんな調子じゃ。これじゃ初めての恋人に浮かれる童貞みたいじゃないか。………………いや、そうだけども。
と、そこまで考えたところでネックであるあの双子のことを思い出した。
「あ、でも……」
「……寄り道くらいなら問題ないよな」
「そう、だな……うん! サダと寄り道したい」
「俺も」
「そ、そうか……ふふ」
「何笑ってるんだ?」
「いや、なんかくすぐったくて……変な感じだ」
面白いというよりも、笑って誤魔化さないと気恥ずかしさでどんな反応したらいいのかわからなくなる――そんな感覚に、「分かる気がする」とサダは頷いた。
そして。
「それじゃ、行こうか」
さらりと掴まれる手に驚く暇もなかった。慌てて周りを見たが、いちいち俺たちを気にしてるやつもいなかった俺はこっそりと「うん」とサダの手を握り返した。
あの兄弟のことは一先ず忘れて、サダと過ごす時間を楽しみたかったのだ。
サダと一緒に寄り道して、そのまま途中まで一緒に帰ることになったわけだが、正直道中サダとどんな会話したのかも覚えていない。
理由は単純明快、俺が緊張しすぎていたせいだ。
恋愛のれの字も知らずに今の今まで生きてきた俺にとって初めての恋人だし……それに、相手はつい昨日までは親友だったサダだ。もうどう接していいのかわからなかった。
サダもサダで、俺がそんな調子なものだからどう対応すべきか考えあぐねていたようだ。なんとなくギクシャクしながらも、それでも向けられる視線が今までと違うことが分かってしまって余計俺は破裂寸前だった。
緊張しっぱなしだったが、嫌だったわけではない。サダは俺のペースを待ってくれるし、いいやつだし、優しいし……そんなサダに好かれてる俺ってなんなのだとは思ってしまったが。
「……美甘」
「んぇ?!」
「ここまでだったよな、確か」
――家に近くなりすぎると、あいつらに見つかった時面倒だから。
確か俺はそう言って慈光家と俺の家の中間地点まで一緒に帰るのとにしたのだった。
「そうだったな……そっか、もう着いたのか」
「考え事してたのか?」
「ん……少しだけ」
頷き返せば、少しだけサダの表情が曇る。言葉を間違ってしまったか?と狼狽えていると、「何考えてたんだ?」とサダは聞き返してくるのだ。
「これからのこと……とか」
「……それって、俺とのこと?」
「うん、そう……俺のどこがいいんだろ、とか」
「……そんなこと考えてたのか?」
「そ、そんなこと……!」
「ああ、ごめん。そういう意味じゃなくて……直接俺に聞いてくれればよかったのに、って」
責めてるわけじゃないんだ、と慌てて付足すサダ。
サダに限ってそんなことはないと分かってるが、俺にとってはとてつもなく高いハードルであることには違いない。
「……美甘?」
「ゃ、ま、まだ……聞きたくない」
「え?」
「は、恥ずかしい……ってか、これ以上なんか言われたら、お、おかしくなる……っ」
本来ならば、毎日少しずつ段階を踏んでいって慣れていかなければならないところを、今日の朝だけでも一気に駆け上がってしまった。まさにキャパオーバー、というやつだ。
今まで恥ずかしいプレイはされてきた身ではあるが、そんな俺でも心臓が保たないほどだ。
ほんの少しきょとんと目を丸くしていたサダだったが、「そうか、わかった」と少しだけ嬉しそうに目を細めた。
「サダ……」
「美甘のペースでいいから、……また準備ができたら聞いてくれ」
「…………ずるい」
「……えっ?」
「サダ、なんか……余裕あってずるい。……俺、心臓おかしくなりそうなのに……」
自分の胸に手を当てればトクトクと鼓動が伝わってくるほどだ。その手に、ふと伸びてきたサダの手が重ねられる。さらりとした指の感触が手の甲を這い、指を絡められた。
「余裕あるように見えるか?」
「さ、だ」
「……あるようにしないと、正直キツイよ。お前をまた、あいつらの家に送り届けなきゃいけないの」
きゅ、と手を引かれ、そのままサダの手に握られる。手のひら越しにじんわりとサダの熱が流れ込んできて、お互いの体温が混ざっていくようだった。
真剣な目をしたサダがいて、俺は思わず口籠った。
まだ燕斗たちとの関係は断ち切ったわけではない。そりゃ、サダからしてみれば気が気でないだろう。
「あ、サダ……」
「なあ、本当に俺の家に泊まりに来ないのか? ……俺のことなんて気にしなくてもいい、お前のためだ」
「……だ、駄目だ……サダ」
「美甘……」
「あいつらとはどうせあと二日の辛抱なんだ。……サダが変に目を付けられるような真似はしたくない」
それは嘘ではない、本心だった。
それでも、サダの気持ちも分かる。自分の恋人が、体の関係がある男のところに泊まってるってなったら俺だっておかしくなるだろう。
けれど、正直あいつらに抱かれることは俺にとってはもう染み付いているようなものだ。無理に波立てるよりも我慢した方が余程いいと分かっていた。
だから俺はサダを納得させるため、一旦あいつらのことは俺に任せてくれとは頼み込んだ。
サダは了承してくれた。快諾とは程遠い様子ではあったが、「なにかあったらすぐに頼ってくれよ」というサダの言葉に胸が軽くなる。
それから、そのまま俺はサダを見送ることになった。
――ごめん、サダ。
その後ろ姿を見送りながら、俺も慈光家へと帰ることにした。
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