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挿れる?挿れるって、なんだ。
「小晴、待てって」
「いきなり勃たねえだろ? だから、それ使って良いっていう俺なりの配慮な」
「違う、そうじゃなくて……っ、《待て》って……っ!」
咄嗟に星名が千葉に呼びかけるが、小晴のコマンドの方が優先されているのだろう。なんの状況も飲み込めてないまま、青い顔の千葉が近付いてくる。
「冷める真似すんなよ、星名。言っただろ? 躾は必要だって」
「だからって、そんな……一凛が怪我したら……」
「だからこう言う時はもう一匹犬用意すんのよ。覚えとけ? 濡れ衣の着せ方」
「……っ、小晴……」
「せっかくだしな、犬は上手く使わねえと」
目の前にやってきた男にベルトを掴まれる。まだ状況を理解できない。したくなくて、二人のやり取りも聞く余裕もない。逃げなければ。逃げて。こいつらから。
「ご、ごめん……愛佐君、お、俺……体が勝手に……」
「……ッ」
――小晴の野郎。
全部こいつのせいだ。無茶苦茶だ。何もかも。Dom以外の人間を見下してる。遊んでいる。
ぶん殴ってやらなければ気が済まないのに、掛けられたコマンドに逆らおうとすればするほど筋肉が壊れていくようだ。
「っ、……は……」
「脱がすのにどんだけもたついてんだよ。ほら、手伝ってやるよ」
「く、……ぅ……っ」
躊躇なくよくも知らない人間の前で下着に手をかけてくる小晴。恥ずかしさよりも歯痒さの方が強い。
ベルトを緩められ、そのまま下着に手をかけようとして、小晴は手を止めた。先程まで星名にキスされて反応していたそこに気づいたようだ。長い指に強く握られ、堪らず睨む。
「なんだ、準備がいいな。なんだかんだお前も星名のこと気に入ってんじゃねえか」
「……っ、ち、がう」
喉の奥から漏れた言葉に、少しだけ小晴は驚いたような顔をした。なんだ、まだ話せたのか、と。
「無理しなくていいぞ、真夜に散々仕込まれてたの知ってんだよ。こっちは。……それなのにまだ意地張ってんの信じらんねえわ、自分の首絞めるだけだってのに」
ずらされた下着の下から現れる性器を隠すこともできない。そのまま膝の上に座らせたまま俺の膝の裏を抱えた小晴は、肛門を晒すような体勢で固定する。
「……っ、み、るな……っ」
「へえ、この間より随分柔らかくなってんじゃねえか。……これなら楽だろ」
「は……っ、く……っ」
二人の視線が突き刺さる。顔を上げたくもない。知らない男の前でケツの穴を穿られ、広げられる。この後小晴に記憶を消されるとしても、あまりにも耐え難い体験だった。
「それじゃ、千葉くーん。《よろしく》」
耳鳴りとともに全ての音が遠くなる。引き抜かれた指の代わりに宛てがわれる瓶の口、そのほんのりと緩くなった無機質な硬いものの感触に青ざめた時だった。
「待てよ、小晴っ!」
「……んだよ、またか。星名。お前の番は後。順番守んねえと嫌われんぞ」
「お、俺が……やる」
「……は?」
小晴は呆れたように鼻で笑う。けれど、星名の目は笑ってない。いつもの馬鹿みたいに真っ直ぐな目で小晴を見た。
「お前さ、意味分かってねえだろ」
「意味とか……分かんねえけど、俺、馬鹿だし……けど、やだ」
「まさか他のやつに触られんのが嫌とか言い出さねえよな」
「……っ、…………言う」
「だから、俺がする。一凛を躾できるようになったら良いんだろ?」なんて、星名は言葉を選ぶように続けた。
どっちにしろ、俺からしたら最悪なことにしか変わりない。けど、小晴は違うらしい。
「あのなぁ、何で俺がコイツ呼んだか分かってねえよな。お前。……お前が手を汚したら面倒だから。だからせっかくスケープゴート用意してやったってのに」
「こ、小晴……?」
「――星名、《お前はそこで見てろ》」
面倒臭そうに髪を掻き上げた小晴の言葉に星名はそのままガクン、と膝をついて座る。
「面倒臭えガキ。お前は俺の言うこと聞いときゃいいんだよ」
「こ、小晴……ま、待ってくれ……体……」
「《動くな》、《黙れ》、《俺に指図するな》」
「――っ、……っ」
「……そう、《良い子》だ。そのままお前はモブでいろ、星名」
聞いてるだけで目眩がする程の強烈なコマンドに当てられそうになる。小晴が苛ついているのはグレアの濃度からわかった。
星名の言葉の何が癪に障ったのか、先程よりも小晴の様子がおかしい。
声を出すこともできず喉を抑えて呻く星名を一瞥し、「ようやく静かになったな」と小晴は笑った。
「んじゃ、《ヤれ》」
「小晴、待てって」
「いきなり勃たねえだろ? だから、それ使って良いっていう俺なりの配慮な」
「違う、そうじゃなくて……っ、《待て》って……っ!」
咄嗟に星名が千葉に呼びかけるが、小晴のコマンドの方が優先されているのだろう。なんの状況も飲み込めてないまま、青い顔の千葉が近付いてくる。
「冷める真似すんなよ、星名。言っただろ? 躾は必要だって」
「だからって、そんな……一凛が怪我したら……」
「だからこう言う時はもう一匹犬用意すんのよ。覚えとけ? 濡れ衣の着せ方」
「……っ、小晴……」
「せっかくだしな、犬は上手く使わねえと」
目の前にやってきた男にベルトを掴まれる。まだ状況を理解できない。したくなくて、二人のやり取りも聞く余裕もない。逃げなければ。逃げて。こいつらから。
「ご、ごめん……愛佐君、お、俺……体が勝手に……」
「……ッ」
――小晴の野郎。
全部こいつのせいだ。無茶苦茶だ。何もかも。Dom以外の人間を見下してる。遊んでいる。
ぶん殴ってやらなければ気が済まないのに、掛けられたコマンドに逆らおうとすればするほど筋肉が壊れていくようだ。
「っ、……は……」
「脱がすのにどんだけもたついてんだよ。ほら、手伝ってやるよ」
「く、……ぅ……っ」
躊躇なくよくも知らない人間の前で下着に手をかけてくる小晴。恥ずかしさよりも歯痒さの方が強い。
ベルトを緩められ、そのまま下着に手をかけようとして、小晴は手を止めた。先程まで星名にキスされて反応していたそこに気づいたようだ。長い指に強く握られ、堪らず睨む。
「なんだ、準備がいいな。なんだかんだお前も星名のこと気に入ってんじゃねえか」
「……っ、ち、がう」
喉の奥から漏れた言葉に、少しだけ小晴は驚いたような顔をした。なんだ、まだ話せたのか、と。
「無理しなくていいぞ、真夜に散々仕込まれてたの知ってんだよ。こっちは。……それなのにまだ意地張ってんの信じらんねえわ、自分の首絞めるだけだってのに」
ずらされた下着の下から現れる性器を隠すこともできない。そのまま膝の上に座らせたまま俺の膝の裏を抱えた小晴は、肛門を晒すような体勢で固定する。
「……っ、み、るな……っ」
「へえ、この間より随分柔らかくなってんじゃねえか。……これなら楽だろ」
「は……っ、く……っ」
二人の視線が突き刺さる。顔を上げたくもない。知らない男の前でケツの穴を穿られ、広げられる。この後小晴に記憶を消されるとしても、あまりにも耐え難い体験だった。
「それじゃ、千葉くーん。《よろしく》」
耳鳴りとともに全ての音が遠くなる。引き抜かれた指の代わりに宛てがわれる瓶の口、そのほんのりと緩くなった無機質な硬いものの感触に青ざめた時だった。
「待てよ、小晴っ!」
「……んだよ、またか。星名。お前の番は後。順番守んねえと嫌われんぞ」
「お、俺が……やる」
「……は?」
小晴は呆れたように鼻で笑う。けれど、星名の目は笑ってない。いつもの馬鹿みたいに真っ直ぐな目で小晴を見た。
「お前さ、意味分かってねえだろ」
「意味とか……分かんねえけど、俺、馬鹿だし……けど、やだ」
「まさか他のやつに触られんのが嫌とか言い出さねえよな」
「……っ、…………言う」
「だから、俺がする。一凛を躾できるようになったら良いんだろ?」なんて、星名は言葉を選ぶように続けた。
どっちにしろ、俺からしたら最悪なことにしか変わりない。けど、小晴は違うらしい。
「あのなぁ、何で俺がコイツ呼んだか分かってねえよな。お前。……お前が手を汚したら面倒だから。だからせっかくスケープゴート用意してやったってのに」
「こ、小晴……?」
「――星名、《お前はそこで見てろ》」
面倒臭そうに髪を掻き上げた小晴の言葉に星名はそのままガクン、と膝をついて座る。
「面倒臭えガキ。お前は俺の言うこと聞いときゃいいんだよ」
「こ、小晴……ま、待ってくれ……体……」
「《動くな》、《黙れ》、《俺に指図するな》」
「――っ、……っ」
「……そう、《良い子》だ。そのままお前はモブでいろ、星名」
聞いてるだけで目眩がする程の強烈なコマンドに当てられそうになる。小晴が苛ついているのはグレアの濃度からわかった。
星名の言葉の何が癪に障ったのか、先程よりも小晴の様子がおかしい。
声を出すこともできず喉を抑えて呻く星名を一瞥し、「ようやく静かになったな」と小晴は笑った。
「んじゃ、《ヤれ》」
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