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第二章【祟り蛇と錆びた断頭台】
インスタント吸血
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「それで、リューグ君、ぼ、僕に会いに来たってことは……そ、その、よ、曜君のことでなにか……?」
「てか、お前外の騒ぎのことは知ってるだろ」
「ま、まあね……すごい警報鳴ってたし。……獄吏たちが殺されて、檻は壊れて、脱獄し放題だって言って皆逃げ出したみたいだけど……無謀だよ、だって、檻から出られてもこの地下から出られることできっこないのに、皆自分から死にに行くんだよ。ぼ、僕……信じられないな……」
「ち、地下から出られないって……」
「あ……よ、曜君は知らない……のかな? 随分前だけど、地下と地上を繋ぐ昇降機が壊れたんだってさ……まあ元々僕ら囚人には関係のないことだけど、外部との交通手段がなくなるのは不便だよね……」
ぼそぼそと、それでいて何故か楽しそうに、薄笑いを浮かべる火威。やっぱり、脱出は難しいということなのか。
「そうなのか」と項垂れる俺の横、リューグは火威の肩を掴み、強引に組む。
「なーに言ってんだよ、最悪お前が爆発させればどうにかなるだろ」
「えっ?! な、何を馬鹿なこと言ってるんだよ! ……そ、そもそも僕はここから出るつもりないし、そんなことしたら僕、ぼ、僕……」
「なんだよ、男らしくねえやつだな。こういうときは嘘でも『おう、俺に任せとけ』って言っときゃいいんだよ」
「い、嫌だよ……君の言うこと聞くと毎回ろくな目に遭わないんだから……ってまさか、わざわざここに来たのって……!!」
そこまで言ってなにか気づいたようだ。
青褪める火威に、リューグは「おっ、今日は勘が冴えてんじゃん」と笑う。
そして、俺を指で指した。
「こいつをなんとしてでも地上に返さねえと、色々お偉いさん方がうるせーのよ。おまけに、地下の連中はこいつがどんな立場なのかも知らねえから餌としか見やがらねえ。無事に返さなきゃなんねーんだけど、俺一人じゃちょっと心許なくてな」
よくもこうペラペラと適当なことを言う口だ。
さっきまでは俺一人で十分だみたいなこと言ってたくせに、他人を利用するためにはコロコロと掌を返す。
そして、白い目を向ける俺とは対象的に火威の反応はわりと満更でもなさそうだ。
「で、でも……僕よりもリューグ君のほうが強いし……僕みたいなグズでのろまなでくの棒がいたところで君たちの足引っ張っちゃうし……」
「大丈夫大丈夫、曜よりかはましだろ」
「んな……!!」
突然頬を突かれ、堪らず噛みつきそうになる。こいつ、確かにリューグの身体能力と比べたら俺も雑魚の部類なのだけど、こうして堂々と言われるとムカつく。そして火威もホッとしてんじゃねえ。
「悪かったな、足手まといで」
「そこまで言ってねーだろ。お姫様はお荷物くらいがちょうどいいしな」
「お、おひ……」
「あ、よ、曜君、僕はそんな風に思ってないからね? だ、だってリューグ君と比べたら大抵の連中は雑魚だよ、だからそんなに傷つかないで……! ね?」
「ひ、火威……」
全然フォローされてる気にならないし、寧ろ得意げになってるリューグにむっとしそうになるが、確かにこいつにはなんだかんだ助けてもらってるので何も言えない。
少しは何か役に立てればと思うが、そう考えるとリューグの餌になるのがやはり一番いいのだろう。自分で言ってて悲しくなる。
「ま、んなことはどーでもいいんだよ。火威、どうせここにいたってまともに飯食えてねえだろうしつまんないだろ。おまけにこいつは和光のジジイのお気に入りらしいからな、こいつを助けるって名目なら脱獄しようがお咎めはしだ」
「う、で、でも……」
「お前もそろそろ火遊びしたくて堪んねえだろ、脱獄したら俺がたっぷりいい火薬用意しといてやるよ」
悪い顔したリューグに囁かれる火威。「ええと、でも、その」と吃る火威だがその目はリューグの甘い誘惑に釣られ、ぐるぐる回りだす。
ごくりとその喉仏が上下したとき。
「す、少し……だけなら……」
「なんだって? 聞こえねえな」
「き、君と……曜君が脱獄する手伝いだけなら、するよ……僕……」
……どうやらリューグの甘言に負けたらしい。
火威はぽそぽそと口にした。罪悪感があるのだろう、今にも消え入りそうな声だが、リューグは上機嫌に「当たり前だ」と火威の肩を叩いた。
そして、俺に向き直る。
「んじゃ、善は急げってやつだな。あの鳥のオッサン、連れ戻しに行くか」
「と、鳥のオッサン……?」
「まあお前は黙って付いてこりゃいいんだよ。ほら、曜、行くぞ」
「え、ええ?! 説明なしなの?!」
……とまあ、強引でおまけにマイペースなリューグが先頭に立ち、俺達は来た道を引き返して再び獄吏ルートに潜り込むことになった。……の、だが。
道中、無人の通路を歩いていると違和感を覚えた。
先程まで明るかったはずの通路は何故だかどんどん薄暗くなっている。影が濃くなる通路の中、なんだか胸騒ぎをして来た道を振り返ったときだ。
照明代わりの蝋燭の火が飛んだ。
え、と目を疑ったと同時に、まるで蛍かなにかのように小さな火の玉は火威の周囲を漂い、そして、吸い込まれるようにして消える。唖然としてると、火威と目が合う。反らすこともできず、俺は、思い切って尋ねることにした。
「っ、火威……今、火が……」
「え、あ、あぁ……えーと、これはその……なんていうか……君で言うところの、食事だよ。ごっ、ごめんね、驚かせてしまったよね……き、気持ち悪い……?」
「そういうわけじゃなくて……びっくりして」
「全然気持ち悪いとか思ってないから」と慌てて付け足せば、やはりどこか落ち着かない様子の火威は目をキョロキョロさせて、それから恥ずかしそうな顔して 「う、ご、ごめん」とまた謝った。怯えの色が濃くなる。……うう、火威と話すのは難しい。
「火威は火ィ食わねーとテンション上がんねーからな、チャージ満タンになったこいつは面白えからよく見とけよ」
そんな火威なんて気にしないリューグは、俺の横まできてそう囁きかけてくる。火威には聞こえないほどの声量。
……面白いこと?引っかかったが、リューグの言うことだ。やっぱりろくなことではなさそうだと思った。
けど、火を食べるってすげえな。
火威は俺の目を気にしてか、食べるのをやめたがそれでも俺からしてみれば未知の存在には変わりない。
こういうの、失礼なんだろうけど……少なくとも俺はかっこいい、と思ったのだけど、あまり突っ込んで火威を怖がらせるのも嫌だったので敢えて触れないことにする。
照明代わりの炎が消え、通ってきた通路には薄暗い闇が広がる。火威が食べてるせいだとわかってても、不気味なほど静まり返ったそこは余計薄気味悪い。
ひたひたと歩く足の裏から地面の冷たさが伝わってくるようだ。
リューグから上着を借りたお陰でなんとか制服を再生させることはできたものの、濡れ、長時間裸で放置された挙げ句血を抜かれた体は思いの外弱っていた。
黒羽から貰った万能薬があれば、こういうときに飲めたというのに。
後悔したところで今俺の荷物諸々は獄長のもとにある事実には変わらない。
「イナミ?」
足を捻ってしまい、思わず転倒しそうになったとしだった。振り返ったリューグ。その後ろを歩いていた火威に「危ない!」と体を抱き止められる。
「だ、大丈夫かいっ?!」
「……流石に血ィ抜きすぎたかな?」
「そ、そんなことをしたのか……? こんな小さな子に……って、ひ、酷い熱だよリューグ君……!」
そう頬に触れる厚い掌は焼けるように熱い。けれど、酷く寒気のする体にはちょうどいいと思えるくらいだ。青褪めた火威に呼ばれ、横から覗き込んでくるリューグ。
目が合って、やつは「ふーん」と面倒臭そうに目を細める。
「ったく、人間ってのは脆いな」
「……別に、これくらいどうってことないから……」
「イナミ、口を開けろ」
「え」と、俺と火威が同時に声を漏らしたときだった。
リューグは軽く袖を捲くる、そして人差し指。人のそれよりも明らかに生白い肌、その薄い皮膚に唇を寄せ、そしてリューグは自らの指に牙を立てる。
音もなく裂かれた指先からは真っ赤な筋が流れ落ちた。
何を、と言う暇もない。
片方の手に顎を掴まれ、口を開かされる。そこに、リューグは血で濡れた指を押し付けてる。
「っ、ん、ぉ、や、へ……ほ……っ」
「いいから飲めよ、俺の血は万能薬だしな 。……まあ、後遺症はちょっとあるかもしれないけど」
「ん゛ぇ?!」
つい舐めてしまったが、後になってとんでもないことを言い出すリューグに青褪める俺。
けれど、「大丈夫大丈夫」とリューグは気にせず、自らその指から流れる血液ごと舌に塗りたくるのだ。
錆びた、鉄の匂い。吐き気がするほど濃厚なその匂い、味に目眩を覚える。
「っ、ぅ……あ……ッ」
「おい、せっかく俺がやってんだからちゃんと飲めよ。……もったいねーだろ」
「りゅ、リューグ君……人間には吸血の習慣はないんだからそんな無茶なこと言うのはよくないよっていうか……そうだよ、曜君人間だよ?! 吸血なんてさせたら……っ!」
「あー、大丈夫。俺の血は、兄貴たちに比べれば大分効力弱いから」
「……っ、あ……」
冷ややかに口元に笑みを浮かべるリューグに、火威は何か思い当たったのだろうか。何かを言いかけ、そして、口を噤んだ。
えずく俺の舌に執拗に指を擦りつけるリューグ。お陰で血の味から逃れることはできない。こいつは俺がちゃんと飲むまでやめるつもりはないらしい。非常に癪だが、このまま好き放題扱われるのも嫌だった。
不可抗力である、渋々リューグの指を咥え直し、俺は口の中に含んだその指に軽く舌先を押し当てる。
「っ、ふ……ぅ……ッ」
当たり前だけど、美味しいものではない。血の味なんて、小さい頃に転んで鼻血出したときに口に入ったときくらい以来か?それでもこんなにがっつり『飲んだ』わけではない。
「っ、も、ひひは……?」
「……まだだ、俺が良いって言うまで飲んで」
「っ、ん……んぅ……ッ」
グチャグチャに粘膜に指を擦られ、「舌絡めて」と吐息混じりに後頭部を掻き回される。
なんか、目付きが怪しい。悪いことを思いついたときの顔をしてるリューグだが、こう言い出したやつはしつこい。渋々言う通りに舌を絡め、滲み出る血を残さず舐め取る。舌を動かすたびに意図せず音が出るのが嫌だった。それをニヤニヤ笑いながらこの吸血鬼野郎は見てるのだ。
「っりゅ、リューグ君……? あの、ひ、非常に言いづらいんだけどさ……もしかして君完全に私欲入ってない? ねえ? 入ってるよね……?!」
「入ってな……る」
「……るってなに?! はいってるじゃん! だ、駄目だよ、遊ぶのはここから抜け出してからでもいいよね?! そ、それに……よ、曜君も苦しそうだし……ねっ? ほら、早く行こう!」
そう、真っ赤になったり真っ青になったりしながら火威は視界の隅でじたばたしている。
リューグはというとかなり不服そうだが、幸か不幸か遠くで足音を聞いて、渋々俺の口から指を引き抜いた。そして、べろんと自分の濡れた指先に舌を這わせるのを見て、俺はぎょっとする。
「どーよ、調子は」
「……へ? 調子……?」
「そろそろ腕、動かせるんじゃね?」
言われて、そっと負傷した腕を動かしてみる。確かに、先程までの痛みはないが、腫れ、真っ赤になったそこは見た目明らかにやや危なげな感じのままではある。
「因みに俺の血はただの痛み止めだから。どっかの妖怪爺どもみたいな万能薬と勘違いしないように気を付けろよ」
「い、痛み止めなのかよ……」
「なーんだよそのガッカリした顔はよお、どーせ熱もこの腕から来てんだろ? いいじゃねえの? 俺が血ぃ飲ませてやるなんてすげーレアなんだからな? そこん所理解しろ、チビ助」
「ち……ッ」
チビ助ではない、と言いたいところだがリューグから見たら俺は小童も同然には違いない。見た目年齢そう変わりないだけについムカついてしまうが、そう考えるとなんだかもう余計パニックになりそうだったので考えるのをやめた。
けれど、確かに痛みはない。さっきまでアドレナリンドバドバ出てて然程苦痛には感じなかったが、それでもこの痛み止めの効果が切れたときのことを考えるとなかなか恐ろしい。
「それじゃ、行くか。……さっきの足音からして、足が早いやつじゃなさそうだし放置で問題なさそうだし」
「……う、うん……そうだね」
というわけで再びリューグの案内の元黒羽さんの元へ向かうことになったのだが……。
気が付けば辺りから照明らしい照明はなく、火威が出してくれた火の玉が辛うじて灯りの代わりになっていた。
言わずもがな、この辺りの火を全部火威が食ったせいである。本人も気にしてるらしいく、申し訳程度に火の玉を出してくれたわけなのだが、生まれて初めて火の玉を見た俺は自分の顔の近くをふよふよと漂うそれを見た瞬間飛び上がりそうになった。
焼けると思ったのだが、その火の玉は意志を持ったみたいに動き、自分に敵意はないとでもいうかのように俺の側で跳ねてみせるのだ。
「ひ、火威……これ……生きてるの?」
「あ、あぁ……それね、それ、僕の友達……へへ、使い魔なんだけど……大丈夫だよ、それには攻撃性はなくて人懐っこいから……それに熱度も低いしね……あと、なかなかまろやかで口に入れた瞬間蕩けるんだ」
「そ、そうか……」
……後半の情報は本当にいるのだろうか。
心なしか火の玉が震えてるような気がして、思わず同情せずにはいられない。
小動物のようなものと思えば、なかなかちまっとしてて可愛いものだ。……ただの火の玉ではあるが。
「それにしても、大分真っ暗だな……気温も低くなっている。……寒いな」
「熱いの次は寒いか、ワガママな坊っちゃんだな。……俺が抱き締めて暖めてやろうか?」
「っ、な、いらないから!」
「そうだな、暖めるのならこいつのが美味いしなあ……うまく行けばこんがり行くな」
「ぼ、僕が……よ、曜君にそんなことするわけないじゃないか……!」
「……くくっ、すげー必死」
こ、こいつは……。
移動に飽きたからと言って人をからかうにしても質が悪すぎる。もうこいつは相手にしないでおこう。そう思ったとき、不意に背中を軽く撫でられる。びっくりして顔を上げれば、ぼんやりと照らされた火威がそこにいた。
「ぁ、えと……寒いんだよね、リューグ君の言ってたのは流石にだけど……」
そう、モゴモゴと火威が口ごもった時、やつの袖口から蛇のような形をした火が現れ、ぎょっとする。
その火の蛇はじゃれつくように火威の首元にマフラーかなにかのように絡みついたかと思えばそのままやつの頭の上まで昇っていく。
「っ、わ……あ、熱く……ないのか?」
「ぇと、その……こいつは……人間でも軽く触れても火傷にならない程度の弱い火だから……側に置くだけでも少しは暖かくなると思うよ」
「よかったら、使ってくれないか」と、火威は本当に蛇でも掴むようにしてそれの頭らしき部分を掴んだ。
未知の生物に狼狽えるが、確かに、近くにいるだけでも低体温化していた体の奥がぽわ…っと暖かくなってくるのがわかった。
「いいのか? ……ありがとう、火威」
そう、受け取ろうとその蛇に手を伸ばした瞬間、火威が「あ」と言うのと俺が「ギャッ」と悲鳴を上げるのはほぼ同時だった。
一部始終を見ていたリューグは傑作そうに腹を抱えて笑う。
「っふ、くく……ハハハ!! ……はーっ、クソ、腹いてぇ……イナミ本ッ当、バカだなー。少し触れても大丈夫だとは言ったが、そりゃそんながっつり握ったら熱いに決まってんだろ……くく……ッ!」
「っちょ、ちょっと、リューグ君?! 笑ってる場合じゃ……あぁっ、曜君ごめんね、泣かないで、びっくりしたよね? 大丈夫大丈夫、ほんと怖くないから! ほら、痛くないよ、痛くないよーっ!」
……獄長に手袋を取り上げられてることをすっかり忘れていた。
俺は暫く火に近付くことはできなかったが、火威から貰った火の蛇は俺が見えないところからついてきてもらって温めてもらうことになった……。
「てか、お前外の騒ぎのことは知ってるだろ」
「ま、まあね……すごい警報鳴ってたし。……獄吏たちが殺されて、檻は壊れて、脱獄し放題だって言って皆逃げ出したみたいだけど……無謀だよ、だって、檻から出られてもこの地下から出られることできっこないのに、皆自分から死にに行くんだよ。ぼ、僕……信じられないな……」
「ち、地下から出られないって……」
「あ……よ、曜君は知らない……のかな? 随分前だけど、地下と地上を繋ぐ昇降機が壊れたんだってさ……まあ元々僕ら囚人には関係のないことだけど、外部との交通手段がなくなるのは不便だよね……」
ぼそぼそと、それでいて何故か楽しそうに、薄笑いを浮かべる火威。やっぱり、脱出は難しいということなのか。
「そうなのか」と項垂れる俺の横、リューグは火威の肩を掴み、強引に組む。
「なーに言ってんだよ、最悪お前が爆発させればどうにかなるだろ」
「えっ?! な、何を馬鹿なこと言ってるんだよ! ……そ、そもそも僕はここから出るつもりないし、そんなことしたら僕、ぼ、僕……」
「なんだよ、男らしくねえやつだな。こういうときは嘘でも『おう、俺に任せとけ』って言っときゃいいんだよ」
「い、嫌だよ……君の言うこと聞くと毎回ろくな目に遭わないんだから……ってまさか、わざわざここに来たのって……!!」
そこまで言ってなにか気づいたようだ。
青褪める火威に、リューグは「おっ、今日は勘が冴えてんじゃん」と笑う。
そして、俺を指で指した。
「こいつをなんとしてでも地上に返さねえと、色々お偉いさん方がうるせーのよ。おまけに、地下の連中はこいつがどんな立場なのかも知らねえから餌としか見やがらねえ。無事に返さなきゃなんねーんだけど、俺一人じゃちょっと心許なくてな」
よくもこうペラペラと適当なことを言う口だ。
さっきまでは俺一人で十分だみたいなこと言ってたくせに、他人を利用するためにはコロコロと掌を返す。
そして、白い目を向ける俺とは対象的に火威の反応はわりと満更でもなさそうだ。
「で、でも……僕よりもリューグ君のほうが強いし……僕みたいなグズでのろまなでくの棒がいたところで君たちの足引っ張っちゃうし……」
「大丈夫大丈夫、曜よりかはましだろ」
「んな……!!」
突然頬を突かれ、堪らず噛みつきそうになる。こいつ、確かにリューグの身体能力と比べたら俺も雑魚の部類なのだけど、こうして堂々と言われるとムカつく。そして火威もホッとしてんじゃねえ。
「悪かったな、足手まといで」
「そこまで言ってねーだろ。お姫様はお荷物くらいがちょうどいいしな」
「お、おひ……」
「あ、よ、曜君、僕はそんな風に思ってないからね? だ、だってリューグ君と比べたら大抵の連中は雑魚だよ、だからそんなに傷つかないで……! ね?」
「ひ、火威……」
全然フォローされてる気にならないし、寧ろ得意げになってるリューグにむっとしそうになるが、確かにこいつにはなんだかんだ助けてもらってるので何も言えない。
少しは何か役に立てればと思うが、そう考えるとリューグの餌になるのがやはり一番いいのだろう。自分で言ってて悲しくなる。
「ま、んなことはどーでもいいんだよ。火威、どうせここにいたってまともに飯食えてねえだろうしつまんないだろ。おまけにこいつは和光のジジイのお気に入りらしいからな、こいつを助けるって名目なら脱獄しようがお咎めはしだ」
「う、で、でも……」
「お前もそろそろ火遊びしたくて堪んねえだろ、脱獄したら俺がたっぷりいい火薬用意しといてやるよ」
悪い顔したリューグに囁かれる火威。「ええと、でも、その」と吃る火威だがその目はリューグの甘い誘惑に釣られ、ぐるぐる回りだす。
ごくりとその喉仏が上下したとき。
「す、少し……だけなら……」
「なんだって? 聞こえねえな」
「き、君と……曜君が脱獄する手伝いだけなら、するよ……僕……」
……どうやらリューグの甘言に負けたらしい。
火威はぽそぽそと口にした。罪悪感があるのだろう、今にも消え入りそうな声だが、リューグは上機嫌に「当たり前だ」と火威の肩を叩いた。
そして、俺に向き直る。
「んじゃ、善は急げってやつだな。あの鳥のオッサン、連れ戻しに行くか」
「と、鳥のオッサン……?」
「まあお前は黙って付いてこりゃいいんだよ。ほら、曜、行くぞ」
「え、ええ?! 説明なしなの?!」
……とまあ、強引でおまけにマイペースなリューグが先頭に立ち、俺達は来た道を引き返して再び獄吏ルートに潜り込むことになった。……の、だが。
道中、無人の通路を歩いていると違和感を覚えた。
先程まで明るかったはずの通路は何故だかどんどん薄暗くなっている。影が濃くなる通路の中、なんだか胸騒ぎをして来た道を振り返ったときだ。
照明代わりの蝋燭の火が飛んだ。
え、と目を疑ったと同時に、まるで蛍かなにかのように小さな火の玉は火威の周囲を漂い、そして、吸い込まれるようにして消える。唖然としてると、火威と目が合う。反らすこともできず、俺は、思い切って尋ねることにした。
「っ、火威……今、火が……」
「え、あ、あぁ……えーと、これはその……なんていうか……君で言うところの、食事だよ。ごっ、ごめんね、驚かせてしまったよね……き、気持ち悪い……?」
「そういうわけじゃなくて……びっくりして」
「全然気持ち悪いとか思ってないから」と慌てて付け足せば、やはりどこか落ち着かない様子の火威は目をキョロキョロさせて、それから恥ずかしそうな顔して 「う、ご、ごめん」とまた謝った。怯えの色が濃くなる。……うう、火威と話すのは難しい。
「火威は火ィ食わねーとテンション上がんねーからな、チャージ満タンになったこいつは面白えからよく見とけよ」
そんな火威なんて気にしないリューグは、俺の横まできてそう囁きかけてくる。火威には聞こえないほどの声量。
……面白いこと?引っかかったが、リューグの言うことだ。やっぱりろくなことではなさそうだと思った。
けど、火を食べるってすげえな。
火威は俺の目を気にしてか、食べるのをやめたがそれでも俺からしてみれば未知の存在には変わりない。
こういうの、失礼なんだろうけど……少なくとも俺はかっこいい、と思ったのだけど、あまり突っ込んで火威を怖がらせるのも嫌だったので敢えて触れないことにする。
照明代わりの炎が消え、通ってきた通路には薄暗い闇が広がる。火威が食べてるせいだとわかってても、不気味なほど静まり返ったそこは余計薄気味悪い。
ひたひたと歩く足の裏から地面の冷たさが伝わってくるようだ。
リューグから上着を借りたお陰でなんとか制服を再生させることはできたものの、濡れ、長時間裸で放置された挙げ句血を抜かれた体は思いの外弱っていた。
黒羽から貰った万能薬があれば、こういうときに飲めたというのに。
後悔したところで今俺の荷物諸々は獄長のもとにある事実には変わらない。
「イナミ?」
足を捻ってしまい、思わず転倒しそうになったとしだった。振り返ったリューグ。その後ろを歩いていた火威に「危ない!」と体を抱き止められる。
「だ、大丈夫かいっ?!」
「……流石に血ィ抜きすぎたかな?」
「そ、そんなことをしたのか……? こんな小さな子に……って、ひ、酷い熱だよリューグ君……!」
そう頬に触れる厚い掌は焼けるように熱い。けれど、酷く寒気のする体にはちょうどいいと思えるくらいだ。青褪めた火威に呼ばれ、横から覗き込んでくるリューグ。
目が合って、やつは「ふーん」と面倒臭そうに目を細める。
「ったく、人間ってのは脆いな」
「……別に、これくらいどうってことないから……」
「イナミ、口を開けろ」
「え」と、俺と火威が同時に声を漏らしたときだった。
リューグは軽く袖を捲くる、そして人差し指。人のそれよりも明らかに生白い肌、その薄い皮膚に唇を寄せ、そしてリューグは自らの指に牙を立てる。
音もなく裂かれた指先からは真っ赤な筋が流れ落ちた。
何を、と言う暇もない。
片方の手に顎を掴まれ、口を開かされる。そこに、リューグは血で濡れた指を押し付けてる。
「っ、ん、ぉ、や、へ……ほ……っ」
「いいから飲めよ、俺の血は万能薬だしな 。……まあ、後遺症はちょっとあるかもしれないけど」
「ん゛ぇ?!」
つい舐めてしまったが、後になってとんでもないことを言い出すリューグに青褪める俺。
けれど、「大丈夫大丈夫」とリューグは気にせず、自らその指から流れる血液ごと舌に塗りたくるのだ。
錆びた、鉄の匂い。吐き気がするほど濃厚なその匂い、味に目眩を覚える。
「っ、ぅ……あ……ッ」
「おい、せっかく俺がやってんだからちゃんと飲めよ。……もったいねーだろ」
「りゅ、リューグ君……人間には吸血の習慣はないんだからそんな無茶なこと言うのはよくないよっていうか……そうだよ、曜君人間だよ?! 吸血なんてさせたら……っ!」
「あー、大丈夫。俺の血は、兄貴たちに比べれば大分効力弱いから」
「……っ、あ……」
冷ややかに口元に笑みを浮かべるリューグに、火威は何か思い当たったのだろうか。何かを言いかけ、そして、口を噤んだ。
えずく俺の舌に執拗に指を擦りつけるリューグ。お陰で血の味から逃れることはできない。こいつは俺がちゃんと飲むまでやめるつもりはないらしい。非常に癪だが、このまま好き放題扱われるのも嫌だった。
不可抗力である、渋々リューグの指を咥え直し、俺は口の中に含んだその指に軽く舌先を押し当てる。
「っ、ふ……ぅ……ッ」
当たり前だけど、美味しいものではない。血の味なんて、小さい頃に転んで鼻血出したときに口に入ったときくらい以来か?それでもこんなにがっつり『飲んだ』わけではない。
「っ、も、ひひは……?」
「……まだだ、俺が良いって言うまで飲んで」
「っ、ん……んぅ……ッ」
グチャグチャに粘膜に指を擦られ、「舌絡めて」と吐息混じりに後頭部を掻き回される。
なんか、目付きが怪しい。悪いことを思いついたときの顔をしてるリューグだが、こう言い出したやつはしつこい。渋々言う通りに舌を絡め、滲み出る血を残さず舐め取る。舌を動かすたびに意図せず音が出るのが嫌だった。それをニヤニヤ笑いながらこの吸血鬼野郎は見てるのだ。
「っりゅ、リューグ君……? あの、ひ、非常に言いづらいんだけどさ……もしかして君完全に私欲入ってない? ねえ? 入ってるよね……?!」
「入ってな……る」
「……るってなに?! はいってるじゃん! だ、駄目だよ、遊ぶのはここから抜け出してからでもいいよね?! そ、それに……よ、曜君も苦しそうだし……ねっ? ほら、早く行こう!」
そう、真っ赤になったり真っ青になったりしながら火威は視界の隅でじたばたしている。
リューグはというとかなり不服そうだが、幸か不幸か遠くで足音を聞いて、渋々俺の口から指を引き抜いた。そして、べろんと自分の濡れた指先に舌を這わせるのを見て、俺はぎょっとする。
「どーよ、調子は」
「……へ? 調子……?」
「そろそろ腕、動かせるんじゃね?」
言われて、そっと負傷した腕を動かしてみる。確かに、先程までの痛みはないが、腫れ、真っ赤になったそこは見た目明らかにやや危なげな感じのままではある。
「因みに俺の血はただの痛み止めだから。どっかの妖怪爺どもみたいな万能薬と勘違いしないように気を付けろよ」
「い、痛み止めなのかよ……」
「なーんだよそのガッカリした顔はよお、どーせ熱もこの腕から来てんだろ? いいじゃねえの? 俺が血ぃ飲ませてやるなんてすげーレアなんだからな? そこん所理解しろ、チビ助」
「ち……ッ」
チビ助ではない、と言いたいところだがリューグから見たら俺は小童も同然には違いない。見た目年齢そう変わりないだけについムカついてしまうが、そう考えるとなんだかもう余計パニックになりそうだったので考えるのをやめた。
けれど、確かに痛みはない。さっきまでアドレナリンドバドバ出てて然程苦痛には感じなかったが、それでもこの痛み止めの効果が切れたときのことを考えるとなかなか恐ろしい。
「それじゃ、行くか。……さっきの足音からして、足が早いやつじゃなさそうだし放置で問題なさそうだし」
「……う、うん……そうだね」
というわけで再びリューグの案内の元黒羽さんの元へ向かうことになったのだが……。
気が付けば辺りから照明らしい照明はなく、火威が出してくれた火の玉が辛うじて灯りの代わりになっていた。
言わずもがな、この辺りの火を全部火威が食ったせいである。本人も気にしてるらしいく、申し訳程度に火の玉を出してくれたわけなのだが、生まれて初めて火の玉を見た俺は自分の顔の近くをふよふよと漂うそれを見た瞬間飛び上がりそうになった。
焼けると思ったのだが、その火の玉は意志を持ったみたいに動き、自分に敵意はないとでもいうかのように俺の側で跳ねてみせるのだ。
「ひ、火威……これ……生きてるの?」
「あ、あぁ……それね、それ、僕の友達……へへ、使い魔なんだけど……大丈夫だよ、それには攻撃性はなくて人懐っこいから……それに熱度も低いしね……あと、なかなかまろやかで口に入れた瞬間蕩けるんだ」
「そ、そうか……」
……後半の情報は本当にいるのだろうか。
心なしか火の玉が震えてるような気がして、思わず同情せずにはいられない。
小動物のようなものと思えば、なかなかちまっとしてて可愛いものだ。……ただの火の玉ではあるが。
「それにしても、大分真っ暗だな……気温も低くなっている。……寒いな」
「熱いの次は寒いか、ワガママな坊っちゃんだな。……俺が抱き締めて暖めてやろうか?」
「っ、な、いらないから!」
「そうだな、暖めるのならこいつのが美味いしなあ……うまく行けばこんがり行くな」
「ぼ、僕が……よ、曜君にそんなことするわけないじゃないか……!」
「……くくっ、すげー必死」
こ、こいつは……。
移動に飽きたからと言って人をからかうにしても質が悪すぎる。もうこいつは相手にしないでおこう。そう思ったとき、不意に背中を軽く撫でられる。びっくりして顔を上げれば、ぼんやりと照らされた火威がそこにいた。
「ぁ、えと……寒いんだよね、リューグ君の言ってたのは流石にだけど……」
そう、モゴモゴと火威が口ごもった時、やつの袖口から蛇のような形をした火が現れ、ぎょっとする。
その火の蛇はじゃれつくように火威の首元にマフラーかなにかのように絡みついたかと思えばそのままやつの頭の上まで昇っていく。
「っ、わ……あ、熱く……ないのか?」
「ぇと、その……こいつは……人間でも軽く触れても火傷にならない程度の弱い火だから……側に置くだけでも少しは暖かくなると思うよ」
「よかったら、使ってくれないか」と、火威は本当に蛇でも掴むようにしてそれの頭らしき部分を掴んだ。
未知の生物に狼狽えるが、確かに、近くにいるだけでも低体温化していた体の奥がぽわ…っと暖かくなってくるのがわかった。
「いいのか? ……ありがとう、火威」
そう、受け取ろうとその蛇に手を伸ばした瞬間、火威が「あ」と言うのと俺が「ギャッ」と悲鳴を上げるのはほぼ同時だった。
一部始終を見ていたリューグは傑作そうに腹を抱えて笑う。
「っふ、くく……ハハハ!! ……はーっ、クソ、腹いてぇ……イナミ本ッ当、バカだなー。少し触れても大丈夫だとは言ったが、そりゃそんながっつり握ったら熱いに決まってんだろ……くく……ッ!」
「っちょ、ちょっと、リューグ君?! 笑ってる場合じゃ……あぁっ、曜君ごめんね、泣かないで、びっくりしたよね? 大丈夫大丈夫、ほんと怖くないから! ほら、痛くないよ、痛くないよーっ!」
……獄長に手袋を取り上げられてることをすっかり忘れていた。
俺は暫く火に近付くことはできなかったが、火威から貰った火の蛇は俺が見えないところからついてきてもらって温めてもらうことになった……。
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