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第一章【烏と踊る午前零時】
初めての授業
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通路自体は一本道になっており、迷子になるということはなかったが、壁一面に書かれた見たことのない文字。その量は次第に増えていく。なんだか、陰気臭いというか……ジメジメしているというか……。
人の気配がどんどん遠くなっているような気がする。無人の通路に、俺と黒羽二人分の足音だけが響いた。
「な、なあ……シャルの言ってたのってこっちだったよな……?」
「……ああ、間違いないと思うが」
「でも、青い扉なんてどこにも……」
だだっ広い通路に声が反響する。ないではないか、と続けようとしたときだ。胸のエンブレムが光る。そして、それに反応するかのように辺りには濃霧が立ち込めた。無味無臭。どこから現れたか分からないそれに驚いたとき、黒羽に「伊波様!」と腕を引かれた。
そのときだ、先程まで俺が立っていたそこには壁が現れる。
そしてその中央部、薄汚れた壁の中央、真っ青な蝶番の扉がそこには在った。
「……っんな……ッ!」
「なるほど、エンブレムを所持していない者には入れぬ棟か……。現れないのなら入る術がないな」
ふむふむと感心する黒羽。言いたいことは分かるが、これ下手したら現れた壁に巻き込まれる可能性があるのでは?そう思うと素直に感心できない。
「と、とにかく……ここが文学部棟の扉……だよな」
「伊波様、自分が先に行こう」
「あ……うん、よろしく……」
こういうとき率先して前を行く黒羽の存在は心強いが、心配になるのもある。そんな俺の機微を知ってか知らずか、躊躇いもなく扉のノブを掴んだ黒羽はそのままゆっくりと扉を押し開いた。
瞬間、扉の隙間からは生温い風が吹き込む。前髪が揺れる。そして、鼻腔を擽るのは埃と黴と、本の匂い。
扉の向こうには、先程来た通路とはまた違う世界が広がっていた。天井を見上げれば、天井全体に地図のような図形が浮かんでいる。あらゆる星を象った模型がオーナメントのようにぶら下がっていた。
そして、壁一面を埋め尽くす本棚と、隙間無く詰め込まれたたくさんの蔵書。その中には見慣れた文字の本もあった。
「っ、す……ごい……」
まるで別世界だ、なんて言葉しか出てこない。十メートルはある天井、そこまでの壁を全て本が埋め尽くしてるのだ。色鮮やかな背表紙すら壁紙の一部のように見えた。無秩序に並べられた背表紙だからこそそう思えるのか。
「そんなにそれが珍しいのですか?」
静まり返っていたホールに、一つの足音が近付いてくる。
落ちてくるその柔らかな声に振り返り、ぎょっとする。
黒。真っ黒なローブを頭からすっぽり被ったその影は、口元しか見えない。それでも男性だとわかったのは長身と、低く、けれど落ち着いた声音からだ。
「伊波曜君と、黒羽君ですね。話は聞いています。僕は文学部講師で……一応、主任になります。グレアと申します」
「初日にこの棟を選んでいただけるなんて、光栄です」とグレアは唯一見える部位である口元に笑みを浮かべる。肌同様、真っ白な、寧ろ紫にすら見える唇からは生気を感じさせない。怪しげな見た目に反して、シャルとはまた違う、優しげな男だった。
「よろしくお願いします」と頭を下げれば、グレアは心なしか嬉しそうに笑みを深める。
「あの、主任ってことは……先生……?」
「ええ、一応教鞭をとる立場ですね。……とはいえ、この学園の先生方の中では下っ端も下っ端ですが」
浮かぶのは苦笑い。下っ端というのは年齢的なものもあるのだろうか。声が若く聞こえるだけに、なんとなく気になった。
「伊波君と黒羽君は、一限目はなにを受講する予定かとかは決めてるんですか?」
「あ……いえ、何も……」
「そうですか。でしたら一応、一限目で受けることができるのは天文学と歴史学ですね。どちらが興味がありますか?」
「え、えーと……黒羽は?」
「伊波様の選ぶ方を選ぶ」
ま、丸投げだ……。とはいえ、天文学と歴史学……。どちらも気になるが、それよりも。俺は、頭上に浮かんでるあの月のことを思い出す。
「……天文学ですかね」
前々から星に興味があった、というわけではない。けれど、この世界の、魔界の星には興味があった。俺達の住む世界から見える宇宙とはまた別の宇宙が広がる、この世界には。
「そうですか。うれしいですね、実は、天文学の授業は僕が受け持ってるんですよ。本日の授業は第Ⅳ教室で行われます。この棟は少々入り組んでいて迷うでしょう。ご案内しますね」
そう言い、嬉しそうに愉しそうにグレアは先を歩く。ふわふわと漂う幽霊のような男だと思ったが、足はちゃんと付いているようだ。先を歩くグレア。その後ろをついていく。
「授業とはいっても、全てを完璧にこなせというわけではありません。他の生徒ならともかく、伊波君は所謂特別待遇生徒。赤点を取って手酷い仕置を受けるわけでもありません。が、僕の授業ではあくまで一人の生徒として扱わせていただきます。わからないことがあれば言ってくださいね」
「は、はい……」
「そんなに緊張しなくてもいいですよ。初日から馴染むのも大変でしょうし、今日は一日学園の空気を感じ、慣れていただきたいと思ってます。大体の授業の流れから、文学部棟の教室配置。大変だと思いますが、僕も一緒に協力しますので頑張っていきましょうね」
「……はい!」
ぐっとグーを作って見せるグレア。教師というよりも保育園の先生の方が合いそうな朗らかな人だが、だからこそ安心した。……相変わらず顔は見えないが。
「黒羽さん、良かったね、いい人そうな先生だ」
「……伊波様、油断は大敵ですよ」
「わ、わかってるけど……」
どんどん歩いて行くグレアを一瞥する。黒羽は相変わらず警戒心丸出しだけれど、会話の邪魔に入らないということはそれなりに安全圏の人なのだろう。
棟の中はどこまでも本で埋め尽くされている。時折本の雪崩に巻き込まれて居る魔物もいたが、その度にグレアは助けてあげていた。優しい人だ。
この短期間で強烈な人たちに在ってきたお陰か、余計グレアの優しさに癒される自分がいた。
どれほど歩いたのだろうか。何段もの螺旋階段を登り、やってきたその通路はがらっと雰囲気が変わっていた。
落書きのような星が描かれた壁紙。高窓からは、不気味なあの月が綺麗に見えた。大分建物の上階へとやってきたようだ。金平糖のような星も、近い。
「ここが、第Ⅳ教室となってます。空に近い場所なので、すぐ傍に月も星もあるんです。天文学は基本この教室ですね。教室に入ったら空いてる席に座ってください」
「あの、自己紹介とか、挨拶とかしなくていいんですか?」
「しなくて大丈夫ですよ。教室の中のメンツは授業の度に変わります。その度に初めましての挨拶なんて僕たちはしませんからね。まあ、でも、皆興味津々だと思うので話しかけられたら相手にするくらいでいいと思います」
「……分かりました」
気は楽だが、緊張しないと言えば嘘になる。
「では、僕は道具を取ってくるので先に教室に入っててくださいね」そうグレアはゆらゆらと隣の扉へと入っていく。とは、言われても。
「……緊張する」
「何かあれば自分が守る。……心配しなくても大丈夫だ」
「そ、そういう意味じゃないんだけど……ありがとう、黒羽さん」
というわけで、扉を開く。
薄暗い教室の中。天井は一面ガラス張りになっていた。夜空が広がる教室の中、既に集まっていた生徒たちは入ってきた俺達に誰一人反応しない。それぞれ本を呼んでいたり熱心にノートに何かを書き殴っていたりと、自分の世界に入っているようだった。これもこれで驚いたが、何よりも驚いたのは教室の広さ、その席の多さに対しての出席率の悪さだ。
ざっと見て両手で数えることが出来る程の人数しかいない。あんなに有象無象の生徒が学生寮にはいたというのに。
教室にいる生徒たちを一瞥しながら、俺は、教室の隅を通って一番後ろの席へと座る。
繋がった机とベンチ状の椅子に腰を掛ければ、隣で本を読んでいた青年はこちらをギロリと睨みつける。どうやら俺が座った振動に反応したようだ。「あ、ごめん」と口にすれば、青年は何か言いたそうにしていたが、後ろにいた黒羽を見て慌てて口を閉じる。顔を逸らす。別の席へと移っていく。……露骨だ。
「伊波様に挨拶もなしとはいい度胸だな」
「ちょっ、ちょっと……黒羽さん、さっきグレア先生言ってたじゃん、挨拶しなくてもいいって」
「けれど、あのような態度は…」
確かに、今まで過剰なまでに敬られるか、絡まれるか、遠くからにやにやと物色されるかだっただけにこのように嫌悪感を丸出しにされるのは初めてだった。
けれども、和光が作った校則を考えると無理もないか。下手に俺に危害加えた扱いされれば地下牢で拷問される。そんなの、俺なら一生関わらないだろう。
避けられるのは寂しいが、自分が歓迎されてばかりの人間ではないのは仕方ないことだ。
俺は、念のため朝用意していた鞄から、学園側から支給されたノートと万年筆を取り出した。
隣に腰を掛ける黒羽が、本当に勉強するつもりなのだろうかという顔で見ていた。この世界で暮らすのだから、知っていて損はないだろう。俺は、こうなったらとことん学ぶつもりでいた。ヤケクソとも言う。
程なくして、地を這うような鐘の音が響く。床までもが揺れているようだった。
教壇側の扉が開き、グレアが入ってきた。
すると、俺が入ってきたときとは打って変わって水を打ったように静まり返り、皆が皆己の手を止めるのだ。
「おはようございます、それでは、本日の授業を始めましょうか。本日のテーマは『月になった男と星の関連性について』です」
そして、静まり返ったそこで発表されるテーマはまるで、お伽噺の絵本を読まされているかのようなメルヘンな授業だった。
授業というよりもそれは一冊の絵本を読み聞かされているような気分だった。グレアの柔らかい声もあるせいだろう。
眠らないようにするのが精一杯だったが、皆眠くないのだろうか。熱心にガリガリとノートに書きなぐっている。というか絶対にそんなにノートに書くようなこともないだろう。辺りに散らかされるノートの残骸。黒羽はというとただじっと静かにその授業を聞いていた。
俺だけなのだろうか、眠たいのは。
あれだけ気合入れていたのに授業内容が頭にまるで入ってこない。けれど、眠るわけにはいかない。グレアの授業だ。初日から居眠りなど、と手の甲の皮を抓り、痛みを堪える。
「なので、空に浮かぶ星というのは早い話、彼の排泄物なんですね。とはいっても糞尿とはまた別になるわけです。彼は食物を摂取していないのですから。夢を食べ、悪い夢は雨雲へと昇華し、良い夢は星へと作り変え、吐き出す。僕たちが見てるのは皆の夢なんですね」
……俺が知ってる天文学とは大分違うようだ。
ふわふわとしたグレアの話を必死にペンで追う皆。
到底信じられない話だが、にやにや笑うあの月の顔を思い出すとあながち間違いにも思えない。けれど、夢はある話だけど、だとしたら俺の見た夢も星になったのだろうか。それとも、雨雲へとなってしまったのか。どちらにせよ、天気を見る限り晴れているようだけれども。
時間というのはあっという間だった。遠くから聴こえてきた鐘の音。懐中時計を確認すれば、既に一時間を回っていた。「それでは、本日の授業はここまでです」とグレアは思い出したように話を終える。
日直という存在はこの教室にはいない。代わりに、グレアの一言を革切りに皆が一斉に動き始めた。それから、グレアも教室を後にする……前に、俺の方へとやってくる。
「どうでしたか、初めての授業は。……途中からだったので、難しかったんじゃないですか?」
「そうですね、初めて聞く話ばかりで……興味深かったです」
「そうですか。そう言っていただけ安心しました。次の授業は魔界の天気についてなので、興味があればまた来てくださいね」
「はい」
「ああ、それと……これを渡しておきますね」
そう、グレアはローブの中から二枚の革の手帳を取り出した。
「これは文学部の授業日程が記載された手帳です。他の学部の日程も書かれてるのでどうぞ使ってください。……こっちは黒羽君に」
「……頂こう」
手帳は制服に合わせた黒を基調にしたもので、表紙部分には校章らしき紋章が彫られていた。
中をパラパラと捲ると、所謂生徒手帳のようだ。
校内の見取り地図や、校則も書かれてる。……俺のような方向音痴にはありがたい代物だ。
「ありがとうございます」
「本当は先に渡しておくべきでしたが、遅くなってしまってすみません。それでは、僕は準備があるのでこれで」
失礼します、と、グレアは言い残し、やはりふわふわとした足取りで教室を後にした。
生徒手帳を眺める。文学部の2限目の授業は、天文学と、地学、そして文学があるようだ。
どれも気になるが……。
うーん、どうしようか。なかなか決められず、黒羽に助言を貰おうかと「黒羽さん」と立ち上がったときだった。
ざあざあと、鉛が叩き付けような激しい音が窓の外から響く。
朝も聞いたことがある。まさか、と思い顔を上げれば、ガラス張りの屋根には無数の黒い霧が渦巻いていた。
いや、違う、蝙蝠の群れだ。霧だと思っていたものはよくみると一匹一匹が大きな羽を動かしていて、雨のような音は跳ね同士がぶつかってるそれで。茶髪の紳士、アヴィドの顔が過る。
何やら窓の外で慌ただしく回ってるが、どうしたのだろうか。窓を開けてあげようかとも思ったが、黒羽に「移動するぞ」と呼ばれる。
「あの、黒羽さん……なんか外に蝙蝠が……」
「あまり不用心に窓を開けるのはよくない。……もし伊波様の命を狙ううつけ者だったらどうするつもりだ」
「うーん……そっか……」
確かに前回のこともある。俺は会釈だけして、一度第Ⅳ教室から出ようとした。
そのときだった。俺が開けるよりも先に目の前の扉が開いた。
一言で表すなら、紫。紫色の派手な頭に、黒のメッシュ、金色の瞳。どこぞのバンドマンのような派手なその男は、目の前に立ち塞がってる俺を見るなり、「お」と声を漏らす。
「……見つけた」
そう、男が笑ったと思った次の瞬間だった。骨張った手が伸びてきて、頬に触れる。「え?」と思った次の瞬間、べろりと唇を舐められた。それと、間髪入れずに短刀を引き抜いた黒羽が男を切り裂いたのは同時だった。
目の前の男は霧散し、一匹の紫色の蝙蝠が黒羽をからかうように飛び、そして俺の背後に紫髪の男が現れた。
「あっぶねーな。ちょっとした挨拶じゃん、怪我したどうすんの」
「……殺す」
「おー怖い怖い。妖怪の爺どもは短気で困るなぁ」
「けど、流石人間。汗も上手いな」釣り上がった口の端からは尖った牙が覗く。悪びれた様子もなく微笑みかけてくる目の前の男に、今になって自分がされたことに気付く。
キス、と呼ぶにはあまりにも色気がない。寧ろ、味見と言った方が適切か。ごしごしと唇を裾で擦れば、「いい反応」と男は笑う。二発目、黒羽の放った手裏剣を、男はひょいと避けた。タンタンタンと壁に深く突き刺さった手裏剣を一枚引き抜き、男は玩具かなにかのようにそれを指先で弄ぶ。
「まあまあ、別に俺あんたらと戦争したいわけじゃないんだから仲良くしようよ」
「なっ!」と、男は手裏剣を黒羽に投げ返す。危ない、と思う暇もなかった。なんなく短剣の刃でそれを防いだ黒羽に、男は口笛を吹いた。
「やるねえ、ま、親善大使様のお付きならこれくらい当然か」
「口を慎め、無礼者が」
「あ、あの……黒羽さん、落ち着いて……」
ざわつく教室の中。確かに驚いたが、目の前の男からは殺意は感じられない。もしかしたら本当に種族からしてみれば挨拶なのかもしれない。とにかく、黒羽を止める。このままでは教室が壊れてしまう。
「あの……俺に何か用?」
「うん、用。俺、あんたに会いに来たんだ」
「俺に……?」
「親善大使様に頼みがあってさ」
頼み。あまりにも軽い調子で続ける男に、ペースに飲まれそうになったとき、手を握り締められた。
「俺を助けてほしいんだ」
紫髪の得体の知れない男はそう、悩みとは無縁そうな涼し気な顔で笑う。
人の気配がどんどん遠くなっているような気がする。無人の通路に、俺と黒羽二人分の足音だけが響いた。
「な、なあ……シャルの言ってたのってこっちだったよな……?」
「……ああ、間違いないと思うが」
「でも、青い扉なんてどこにも……」
だだっ広い通路に声が反響する。ないではないか、と続けようとしたときだ。胸のエンブレムが光る。そして、それに反応するかのように辺りには濃霧が立ち込めた。無味無臭。どこから現れたか分からないそれに驚いたとき、黒羽に「伊波様!」と腕を引かれた。
そのときだ、先程まで俺が立っていたそこには壁が現れる。
そしてその中央部、薄汚れた壁の中央、真っ青な蝶番の扉がそこには在った。
「……っんな……ッ!」
「なるほど、エンブレムを所持していない者には入れぬ棟か……。現れないのなら入る術がないな」
ふむふむと感心する黒羽。言いたいことは分かるが、これ下手したら現れた壁に巻き込まれる可能性があるのでは?そう思うと素直に感心できない。
「と、とにかく……ここが文学部棟の扉……だよな」
「伊波様、自分が先に行こう」
「あ……うん、よろしく……」
こういうとき率先して前を行く黒羽の存在は心強いが、心配になるのもある。そんな俺の機微を知ってか知らずか、躊躇いもなく扉のノブを掴んだ黒羽はそのままゆっくりと扉を押し開いた。
瞬間、扉の隙間からは生温い風が吹き込む。前髪が揺れる。そして、鼻腔を擽るのは埃と黴と、本の匂い。
扉の向こうには、先程来た通路とはまた違う世界が広がっていた。天井を見上げれば、天井全体に地図のような図形が浮かんでいる。あらゆる星を象った模型がオーナメントのようにぶら下がっていた。
そして、壁一面を埋め尽くす本棚と、隙間無く詰め込まれたたくさんの蔵書。その中には見慣れた文字の本もあった。
「っ、す……ごい……」
まるで別世界だ、なんて言葉しか出てこない。十メートルはある天井、そこまでの壁を全て本が埋め尽くしてるのだ。色鮮やかな背表紙すら壁紙の一部のように見えた。無秩序に並べられた背表紙だからこそそう思えるのか。
「そんなにそれが珍しいのですか?」
静まり返っていたホールに、一つの足音が近付いてくる。
落ちてくるその柔らかな声に振り返り、ぎょっとする。
黒。真っ黒なローブを頭からすっぽり被ったその影は、口元しか見えない。それでも男性だとわかったのは長身と、低く、けれど落ち着いた声音からだ。
「伊波曜君と、黒羽君ですね。話は聞いています。僕は文学部講師で……一応、主任になります。グレアと申します」
「初日にこの棟を選んでいただけるなんて、光栄です」とグレアは唯一見える部位である口元に笑みを浮かべる。肌同様、真っ白な、寧ろ紫にすら見える唇からは生気を感じさせない。怪しげな見た目に反して、シャルとはまた違う、優しげな男だった。
「よろしくお願いします」と頭を下げれば、グレアは心なしか嬉しそうに笑みを深める。
「あの、主任ってことは……先生……?」
「ええ、一応教鞭をとる立場ですね。……とはいえ、この学園の先生方の中では下っ端も下っ端ですが」
浮かぶのは苦笑い。下っ端というのは年齢的なものもあるのだろうか。声が若く聞こえるだけに、なんとなく気になった。
「伊波君と黒羽君は、一限目はなにを受講する予定かとかは決めてるんですか?」
「あ……いえ、何も……」
「そうですか。でしたら一応、一限目で受けることができるのは天文学と歴史学ですね。どちらが興味がありますか?」
「え、えーと……黒羽は?」
「伊波様の選ぶ方を選ぶ」
ま、丸投げだ……。とはいえ、天文学と歴史学……。どちらも気になるが、それよりも。俺は、頭上に浮かんでるあの月のことを思い出す。
「……天文学ですかね」
前々から星に興味があった、というわけではない。けれど、この世界の、魔界の星には興味があった。俺達の住む世界から見える宇宙とはまた別の宇宙が広がる、この世界には。
「そうですか。うれしいですね、実は、天文学の授業は僕が受け持ってるんですよ。本日の授業は第Ⅳ教室で行われます。この棟は少々入り組んでいて迷うでしょう。ご案内しますね」
そう言い、嬉しそうに愉しそうにグレアは先を歩く。ふわふわと漂う幽霊のような男だと思ったが、足はちゃんと付いているようだ。先を歩くグレア。その後ろをついていく。
「授業とはいっても、全てを完璧にこなせというわけではありません。他の生徒ならともかく、伊波君は所謂特別待遇生徒。赤点を取って手酷い仕置を受けるわけでもありません。が、僕の授業ではあくまで一人の生徒として扱わせていただきます。わからないことがあれば言ってくださいね」
「は、はい……」
「そんなに緊張しなくてもいいですよ。初日から馴染むのも大変でしょうし、今日は一日学園の空気を感じ、慣れていただきたいと思ってます。大体の授業の流れから、文学部棟の教室配置。大変だと思いますが、僕も一緒に協力しますので頑張っていきましょうね」
「……はい!」
ぐっとグーを作って見せるグレア。教師というよりも保育園の先生の方が合いそうな朗らかな人だが、だからこそ安心した。……相変わらず顔は見えないが。
「黒羽さん、良かったね、いい人そうな先生だ」
「……伊波様、油断は大敵ですよ」
「わ、わかってるけど……」
どんどん歩いて行くグレアを一瞥する。黒羽は相変わらず警戒心丸出しだけれど、会話の邪魔に入らないということはそれなりに安全圏の人なのだろう。
棟の中はどこまでも本で埋め尽くされている。時折本の雪崩に巻き込まれて居る魔物もいたが、その度にグレアは助けてあげていた。優しい人だ。
この短期間で強烈な人たちに在ってきたお陰か、余計グレアの優しさに癒される自分がいた。
どれほど歩いたのだろうか。何段もの螺旋階段を登り、やってきたその通路はがらっと雰囲気が変わっていた。
落書きのような星が描かれた壁紙。高窓からは、不気味なあの月が綺麗に見えた。大分建物の上階へとやってきたようだ。金平糖のような星も、近い。
「ここが、第Ⅳ教室となってます。空に近い場所なので、すぐ傍に月も星もあるんです。天文学は基本この教室ですね。教室に入ったら空いてる席に座ってください」
「あの、自己紹介とか、挨拶とかしなくていいんですか?」
「しなくて大丈夫ですよ。教室の中のメンツは授業の度に変わります。その度に初めましての挨拶なんて僕たちはしませんからね。まあ、でも、皆興味津々だと思うので話しかけられたら相手にするくらいでいいと思います」
「……分かりました」
気は楽だが、緊張しないと言えば嘘になる。
「では、僕は道具を取ってくるので先に教室に入っててくださいね」そうグレアはゆらゆらと隣の扉へと入っていく。とは、言われても。
「……緊張する」
「何かあれば自分が守る。……心配しなくても大丈夫だ」
「そ、そういう意味じゃないんだけど……ありがとう、黒羽さん」
というわけで、扉を開く。
薄暗い教室の中。天井は一面ガラス張りになっていた。夜空が広がる教室の中、既に集まっていた生徒たちは入ってきた俺達に誰一人反応しない。それぞれ本を呼んでいたり熱心にノートに何かを書き殴っていたりと、自分の世界に入っているようだった。これもこれで驚いたが、何よりも驚いたのは教室の広さ、その席の多さに対しての出席率の悪さだ。
ざっと見て両手で数えることが出来る程の人数しかいない。あんなに有象無象の生徒が学生寮にはいたというのに。
教室にいる生徒たちを一瞥しながら、俺は、教室の隅を通って一番後ろの席へと座る。
繋がった机とベンチ状の椅子に腰を掛ければ、隣で本を読んでいた青年はこちらをギロリと睨みつける。どうやら俺が座った振動に反応したようだ。「あ、ごめん」と口にすれば、青年は何か言いたそうにしていたが、後ろにいた黒羽を見て慌てて口を閉じる。顔を逸らす。別の席へと移っていく。……露骨だ。
「伊波様に挨拶もなしとはいい度胸だな」
「ちょっ、ちょっと……黒羽さん、さっきグレア先生言ってたじゃん、挨拶しなくてもいいって」
「けれど、あのような態度は…」
確かに、今まで過剰なまでに敬られるか、絡まれるか、遠くからにやにやと物色されるかだっただけにこのように嫌悪感を丸出しにされるのは初めてだった。
けれども、和光が作った校則を考えると無理もないか。下手に俺に危害加えた扱いされれば地下牢で拷問される。そんなの、俺なら一生関わらないだろう。
避けられるのは寂しいが、自分が歓迎されてばかりの人間ではないのは仕方ないことだ。
俺は、念のため朝用意していた鞄から、学園側から支給されたノートと万年筆を取り出した。
隣に腰を掛ける黒羽が、本当に勉強するつもりなのだろうかという顔で見ていた。この世界で暮らすのだから、知っていて損はないだろう。俺は、こうなったらとことん学ぶつもりでいた。ヤケクソとも言う。
程なくして、地を這うような鐘の音が響く。床までもが揺れているようだった。
教壇側の扉が開き、グレアが入ってきた。
すると、俺が入ってきたときとは打って変わって水を打ったように静まり返り、皆が皆己の手を止めるのだ。
「おはようございます、それでは、本日の授業を始めましょうか。本日のテーマは『月になった男と星の関連性について』です」
そして、静まり返ったそこで発表されるテーマはまるで、お伽噺の絵本を読まされているかのようなメルヘンな授業だった。
授業というよりもそれは一冊の絵本を読み聞かされているような気分だった。グレアの柔らかい声もあるせいだろう。
眠らないようにするのが精一杯だったが、皆眠くないのだろうか。熱心にガリガリとノートに書きなぐっている。というか絶対にそんなにノートに書くようなこともないだろう。辺りに散らかされるノートの残骸。黒羽はというとただじっと静かにその授業を聞いていた。
俺だけなのだろうか、眠たいのは。
あれだけ気合入れていたのに授業内容が頭にまるで入ってこない。けれど、眠るわけにはいかない。グレアの授業だ。初日から居眠りなど、と手の甲の皮を抓り、痛みを堪える。
「なので、空に浮かぶ星というのは早い話、彼の排泄物なんですね。とはいっても糞尿とはまた別になるわけです。彼は食物を摂取していないのですから。夢を食べ、悪い夢は雨雲へと昇華し、良い夢は星へと作り変え、吐き出す。僕たちが見てるのは皆の夢なんですね」
……俺が知ってる天文学とは大分違うようだ。
ふわふわとしたグレアの話を必死にペンで追う皆。
到底信じられない話だが、にやにや笑うあの月の顔を思い出すとあながち間違いにも思えない。けれど、夢はある話だけど、だとしたら俺の見た夢も星になったのだろうか。それとも、雨雲へとなってしまったのか。どちらにせよ、天気を見る限り晴れているようだけれども。
時間というのはあっという間だった。遠くから聴こえてきた鐘の音。懐中時計を確認すれば、既に一時間を回っていた。「それでは、本日の授業はここまでです」とグレアは思い出したように話を終える。
日直という存在はこの教室にはいない。代わりに、グレアの一言を革切りに皆が一斉に動き始めた。それから、グレアも教室を後にする……前に、俺の方へとやってくる。
「どうでしたか、初めての授業は。……途中からだったので、難しかったんじゃないですか?」
「そうですね、初めて聞く話ばかりで……興味深かったです」
「そうですか。そう言っていただけ安心しました。次の授業は魔界の天気についてなので、興味があればまた来てくださいね」
「はい」
「ああ、それと……これを渡しておきますね」
そう、グレアはローブの中から二枚の革の手帳を取り出した。
「これは文学部の授業日程が記載された手帳です。他の学部の日程も書かれてるのでどうぞ使ってください。……こっちは黒羽君に」
「……頂こう」
手帳は制服に合わせた黒を基調にしたもので、表紙部分には校章らしき紋章が彫られていた。
中をパラパラと捲ると、所謂生徒手帳のようだ。
校内の見取り地図や、校則も書かれてる。……俺のような方向音痴にはありがたい代物だ。
「ありがとうございます」
「本当は先に渡しておくべきでしたが、遅くなってしまってすみません。それでは、僕は準備があるのでこれで」
失礼します、と、グレアは言い残し、やはりふわふわとした足取りで教室を後にした。
生徒手帳を眺める。文学部の2限目の授業は、天文学と、地学、そして文学があるようだ。
どれも気になるが……。
うーん、どうしようか。なかなか決められず、黒羽に助言を貰おうかと「黒羽さん」と立ち上がったときだった。
ざあざあと、鉛が叩き付けような激しい音が窓の外から響く。
朝も聞いたことがある。まさか、と思い顔を上げれば、ガラス張りの屋根には無数の黒い霧が渦巻いていた。
いや、違う、蝙蝠の群れだ。霧だと思っていたものはよくみると一匹一匹が大きな羽を動かしていて、雨のような音は跳ね同士がぶつかってるそれで。茶髪の紳士、アヴィドの顔が過る。
何やら窓の外で慌ただしく回ってるが、どうしたのだろうか。窓を開けてあげようかとも思ったが、黒羽に「移動するぞ」と呼ばれる。
「あの、黒羽さん……なんか外に蝙蝠が……」
「あまり不用心に窓を開けるのはよくない。……もし伊波様の命を狙ううつけ者だったらどうするつもりだ」
「うーん……そっか……」
確かに前回のこともある。俺は会釈だけして、一度第Ⅳ教室から出ようとした。
そのときだった。俺が開けるよりも先に目の前の扉が開いた。
一言で表すなら、紫。紫色の派手な頭に、黒のメッシュ、金色の瞳。どこぞのバンドマンのような派手なその男は、目の前に立ち塞がってる俺を見るなり、「お」と声を漏らす。
「……見つけた」
そう、男が笑ったと思った次の瞬間だった。骨張った手が伸びてきて、頬に触れる。「え?」と思った次の瞬間、べろりと唇を舐められた。それと、間髪入れずに短刀を引き抜いた黒羽が男を切り裂いたのは同時だった。
目の前の男は霧散し、一匹の紫色の蝙蝠が黒羽をからかうように飛び、そして俺の背後に紫髪の男が現れた。
「あっぶねーな。ちょっとした挨拶じゃん、怪我したどうすんの」
「……殺す」
「おー怖い怖い。妖怪の爺どもは短気で困るなぁ」
「けど、流石人間。汗も上手いな」釣り上がった口の端からは尖った牙が覗く。悪びれた様子もなく微笑みかけてくる目の前の男に、今になって自分がされたことに気付く。
キス、と呼ぶにはあまりにも色気がない。寧ろ、味見と言った方が適切か。ごしごしと唇を裾で擦れば、「いい反応」と男は笑う。二発目、黒羽の放った手裏剣を、男はひょいと避けた。タンタンタンと壁に深く突き刺さった手裏剣を一枚引き抜き、男は玩具かなにかのようにそれを指先で弄ぶ。
「まあまあ、別に俺あんたらと戦争したいわけじゃないんだから仲良くしようよ」
「なっ!」と、男は手裏剣を黒羽に投げ返す。危ない、と思う暇もなかった。なんなく短剣の刃でそれを防いだ黒羽に、男は口笛を吹いた。
「やるねえ、ま、親善大使様のお付きならこれくらい当然か」
「口を慎め、無礼者が」
「あ、あの……黒羽さん、落ち着いて……」
ざわつく教室の中。確かに驚いたが、目の前の男からは殺意は感じられない。もしかしたら本当に種族からしてみれば挨拶なのかもしれない。とにかく、黒羽を止める。このままでは教室が壊れてしまう。
「あの……俺に何か用?」
「うん、用。俺、あんたに会いに来たんだ」
「俺に……?」
「親善大使様に頼みがあってさ」
頼み。あまりにも軽い調子で続ける男に、ペースに飲まれそうになったとき、手を握り締められた。
「俺を助けてほしいんだ」
紫髪の得体の知れない男はそう、悩みとは無縁そうな涼し気な顔で笑う。
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「白田君!? っていうか、和真も!? 慎吾まで!? ちょ、やめて! そんな目で見つめてこないで!」
美形ヤンデレ攻め×平凡受け
※この作品は以前ぷらいべったーに載せた作品を改題・改稿したものです
※物語は高校生から始まりますが、主人公が成人する後半まで性描写はありません
転生したら同性から性的な目で見られている俺の冒険紀行
蛍
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ある日突然トラックに跳ねられ死んだと思ったら知らない森の中にいた神崎満(かんざきみちる)。異世界への暮らしに心踊らされるも同性から言い寄られるばかりで・・・
主人公チートの総受けストリーです。
【完結】俺の声を聴け!
はいじ@書籍発売中
BL
「サトシ!オレ、こないだ受けた乙女ゲームのイーサ役に受かったみたいなんだ!」
その言葉に、俺は絶句した。
落選続きの声優志望の俺、仲本聡志。
今回落とされたのは乙女ゲーム「セブンスナイト4」の国王「イーサ」役だった。
どうやら、受かったのはともに声優を目指していた幼馴染、山吹金弥“らしい”
また選ばれなかった。
俺はやけ酒による泥酔の末、足を滑らせて橋から川に落ちてしまう。
そして、目覚めると、そこはオーディションで落とされた乙女ゲームの世界だった。
しかし、この世界は俺の知っている「セブンスナイト4」とは少し違う。
イーサは「国王」ではなく、王位継承権を剥奪されかけた「引きこもり王子」で、長い間引きこもり生活をしているらしい。
部屋から一切出てこないイーサ王子は、その姿も声も謎のまま。
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そんな中、一般兵士として雇われた俺に課せられた仕事は、出世街道から外れたイーサ王子の部屋守だった。
中華マフィア若頭の寵愛が重すぎて頭を抱えています
橋本しら子
BL
あの時、あの場所に近づかなければ、変わらない日常の中にいることができたのかもしれない。居酒屋でアルバイトをしながら学費を稼ぐ苦学生の桃瀬朱兎(ももせあやと)は、バイト終わりに自宅近くの裏路地で怪我をしていた一人の男を助けた。その男こそ、朱龍会日本支部を取り仕切っている中華マフィアの若頭【鼬瓏(ゆうろん)】その人。彼に関わったことから事件に巻き込まれてしまい、気づけば闇オークションで人身売買に掛けられていた。偶然居合わせた鼬瓏に買われたことにより普通の日常から一変、非日常へ身を置くことになってしまったが……
想像していたような酷い扱いなどなく、ただ鼬瓏に甘やかされながら何時も通りの生活を送っていた。
※付きのお話は18指定になります。ご注意ください。
更新は不定期です。
霧のはし 虹のたもとで
萩尾雅縁
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大学受験に失敗した比良坂晃(ひらさかあきら)は、心機一転イギリスの大学へと留学する。
古ぼけた学生寮に嫌気のさした晃は、掲示板のメモからシェアハウスのルームメイトに応募するが……。
ひょんなことから始まった、晃・アルビー・マリーの共同生活。
美貌のアルビーに憧れる晃は、生活に無頓着な彼らに振り回されながらも奮闘する。
一つ屋根の下、徐々に明らかになる彼らの事情。
そして晃の真の目的は?
英国の四季を通じて織り成される、日常系心の旅路。
主人公の兄になったなんて知らない
さつき
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レインは知らない弟があるゲームの主人公だったという事を
レインは知らないゲームでは自分が登場しなかった事を
レインは知らない自分が神に愛されている事を
表紙イラストは マサキさんの「キミの世界メーカー」で作成してお借りしています⬇ https://picrew.me/image_maker/54346
愛していた王に捨てられて愛人になった少年は騎士に娶られる
彩月野生
BL
湖に落ちた十六歳の少年文斗は異世界にやって来てしまった。
国王と愛し合うようになった筈なのに、王は突然妃を迎え、文斗は愛人として扱われるようになり、さらには騎士と結婚して子供を産めと強要されてしまう。
王を愛する気持ちを捨てられないまま、文斗は騎士との結婚生活を送るのだが、騎士への感情の変化に戸惑うようになる。
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