阪奈兄には気をつけろ!

田原摩耶

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おかしいと思います※

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 最悪な目にあった。
 命からがら便所から逃げ出したものの、まだケツの間に熱いブツが挟まってるようで落ち着かない。

「ゆお君、遅かったね? お腹痛いの?」
「う、うん……ちょっとやばいかも」
「え? 大丈夫?」

 ……ごめん、ふゆはちゃん。
 ふゆはちゃんには罪がない分余計嘘を重ねれば重ねるほど罪悪感が募る。
 まじで俺一切悪くないのに。全部あのクソ兄貴のせいなのに。

 そう落ち込んでると、心配そうにこちらを見ていたふゆはちゃんは何か思いついたようにはっとした。

「ね、ゆお君さえよかったら、今日泊まっていきなよ」
「……え」
「だって、体調悪いんだよね? ゆお君の家まで遠いし……あ、それかお兄ちゃんに送ってもらう?」

 思いもよらない誘いに戸惑う暇もなく、ほぼ同時に拷問のような選択肢を突きつけてくるふゆはちゃんに「それは大丈夫」と即答した。
 けど、ふゆはちゃんちにお泊り……とっても魅力的な誘いはあるが、どうしてもあのムキムキ似非爽やかレイプ魔野郎が朗らかな笑顔を浮かべて脳裏に居座るのだ。
 そして俺はぶんぶんと頭を振る。

「……けど、泊まるのは流石にその、申し訳ないから――少し休ませてもらってもいいかな」

 本当だったら遅くならない内に帰る予定だったが、少しくらい長くふゆはちゃんと過ごしても許されるだろう。
 俺の提案に、ふゆはちゃんは「もちろんっ」と嬉しそうに微笑んだ。


 ◆ ◆ ◆


 下心が全くないといえば嘘になる。
 けれど、これは。

 一枚の仕切りの向こうにあるキッチンの方から聞こえてくるふゆはちゃんの声。
 ふゆはちゃんに借りたブランケットをお腹に乗せたまま、俺はリビングのソファーで転がっていた。

 ふゆはちゃんはゆっくりしていいと強引に俺を寝かしつけたが、あまりにも落ち着かない。
 俺の中ではふゆはちゃんの部屋でふたりっきりでゆっくりという感じだっただけに余計。
 因みにふゆはちゃんは今、腹痛に悩まされてるという設定の俺のためにお粥を作ってくれている。女神だ最早。

 けれど、流石にこれはまずい。
 いやなにとは言わないが。

「遊生君」

 と言った側から、ソファーの背もたれ越しに名前を呼ばれ飛び上がりそうにになった。やけに耳障りだけはいいその低めの声。
「ひっ」と顔を上げれば、そこにはあのクソ兄貴がそこにいるではないか。

「具合悪いんだってな。薬は飲んだか?」
「な、な……なんで……」
「なんでって、そりゃここ俺んちだもんなあ」

 なんて言いながら、起き上がる俺の隣にそのままどすりと腰をかけてくる大夏さん。
 慌てて逃げ出そうとしたところを腰を掴まれ、抱き戻される。

 そんなときだ。

「あ、お兄ちゃん。遊生君休んでるんだからうざ絡みしないでよねっ!」

 どうやら大夏さんに絡まれて震える俺の背中に気付いたようだ。キッチンから飛んでくるふゆはちゃんの声に息が止まりそうになる。
 対する大夏さんは一切変わらない、いつもと変わらない涼やかな顔をしていた。

「おいおい。してないだろ、ちゃんと遊生君のこと心配してるんだお兄ちゃんは。なあ、遊生君?」
「……っ!」

 言いながら、ふゆはちゃんの方からはなにも見えないことをいいことに、ブランケットの下に手を突っ込んできた大夏さんはそのまま俺の太ももに手を置くのだ。

「な、……っ、にして……」
「ちゃんと答えてやれよ、冬春、心配するぞ?」
「――ッ」

 ぼそ、とふゆはちゃんに聞こえないように囁かれるその声に震える。
 俺は口の中で舌打ちをし、それからキッチンの方を振り返った。

「……ああ、俺は大丈夫だよ。ふゆはちゃん、心配してくれてありがとうね」
「ほんとー? ならいいけど……すぐお粥作るから待っててね、ゆお君っ!」
「あ、ああ……」

 ああ、太腿をねっとりと撫であげるこの手さえなければもっと純粋な気持ちで喜べたはずなのに。
 ブランケットの下、そのままゆっくりと付け根まで登ってくるその手を必死に抑えながら俺は隣の男を睨みつける。

「あんた、何考えてんだ」
「本当に具合悪いなら俺が送ってやろうかと思ったんだが、なんだ。やっぱ仮病か? 元気そうだな 」
「っ、ぅ、さ、さわるな……足……」
「冬春に言えばよかっただろ? ムラムラして仕方ないだけだって」
「元はといえば、あんたのせいで……っ」
「ん? 俺?」
「と、といれ……帰ってくるの遅かったから……」

 そう口にした瞬間、ほんの一瞬きょとんとした大夏さんだったが、すぐに大きな口を開けて笑った。

「……っ、く、はは……っ! ああ、なるほど、そういうことか。それで“腹痛”な」

 そして、腿を掴んでいた掌がそのまま股間、そして下腹部へとゆっくりと登ってくる。
 くい、と臍の辺りを撫でる指に堪らず身動いだ。

「まあ間違ってはないか?」
「……っ、部屋に戻れよ、こんなの、冬春ちゃんにバレたら……っ」
「大喧嘩になるかもな」
「最低な兄貴だな……っ!」
「まだ付き合ってないんだろ? なら、浮気じゃない。――それに、さっさと君を自分のものにしなかった冬春も悪い」

 下腹部を撫でていた手に股間をそのまま撫でられ、思わず立ち上がりそうになる。
 瞬間、「おっと」と大夏さんは俺の腕を引っ張り、そのまま自分の膝の上に座らせてくるのだ。
 お尻の辺りに押し付けられる大夏さんの下半身に、先程のトイレでの出来事が脳裏を過り、硬直した。

「ん……っ、なに、考えて……」
「なにって、ただ仲良くしてるだけだろ? 君こそ、なに考えたんだ?」
「……っ、……!」
「……はは、真っ赤だな」

 ちゅ、と項にキスをされ、そのまま大夏さんの腕の中に閉じ込められる。
 やめろ、と身動ぐ体を更に背後から抱き竦められ、ホールドされたまま項、そして耳の裏まで舌を這わされるのだ。

「っ、ふ……ッ」
「声我慢してんのもいいな。興奮してきた」
「さ、いていだ、あんた……っ」
「そんなこと言って、遊生も勃起してんじゃねえか」
「っ、ん、う゛……ッ」

 柔らかく下半身を握られた瞬間、内腿に痺れるような刺激が走る。ぴちゃぴちゃと耳を舐められながら、下腹部、スラックスの前を緩めて滑り込んでくる無骨な指先に凍り付いた。

「っ、は、ゃ……ッ」
「声、我慢しないと冬春のところにまで聞こえるぞ」
「……ッ」
「……そーそー、良い子だな」

 よしよし、と下着越しに膨らみかけていた性器を撫でられる。分厚い硬い皮膚で少し強めに撫でられ、腰が震えた。

「っ、ん、んん……っ、ぅ……ッ」
「あれから部屋に戻って、遊生がなかなか来てくれないから冬春の部屋に突撃しようかと思ったんだよ。……けど、しなくて正解だったな」

「こっちのが楽しいわ」と片方の手で俺の胸を弄りながら、大夏さんは喉を鳴らして笑った。
 ケツの下、既にバッキバキになっていたそこがさらに大きく膨らんでるのを感じて血の気が引く。

「正気、か、あんた……っ」
「ずっと待ってたのに遊生は俺の部屋に来てくれなかったからなあ、お陰様でこのザマだよ。イライラして堪んねえ、なんならこの場で犯したいくらいだ」
「っ、ぁ、くそ、くるってる、ぁ、あんた……っ」
「人聞き悪いな。俺は素直なだけだぞ?」

 俺の腰を抱き締めたまま、わざと勃起したそれを押し付けてくるように揺さぶってくる大夏さんに思わず俺は口を塞いだ。

「ほら、こうしてるとヤッてるみたいじゃないか?」
「っ、ん、ふ、ぅ……っ」
「は……やべ、全然収まんねー。……おい冬春、あとどんくらい掛かりそう?」

 言いながら、俺に腰をぐいぐいと押し付けてくる大夏は突然リビングにいるふゆはちゃんに向かって声をかける。
 嘘だろ、と青ざめる俺のことなんて知らず、俺達がなにしてるかも気付いていないらしいふゆはちゃんは「えー? あと十分くらいかなあ」と返してきた。

「そうか、じゃあそれまでちょっと遊生君部屋で休ませてくるわ」
「え? どうしたの?」
「少し腹やべーんだってさ。できたら呼んでくれ」

 何を言ってるのだこの男は。
 絶句する俺の口を塞いだままいけしゃあしゃあととんでもないことを抜かす大夏さんに、「えっ?!大丈夫なの?」とふゆはちゃんの心配そうな声が聞こえてきたが「大丈夫、横になってたら平気なるやつだから」と何故か代わりに堪える大夏さん。
 ――気づいてくれふゆはちゃん、俺が一言も発していないことに!

「そっかあ……わかった、頑張って美味しいお粥作ってるね、お兄ちゃんも遊生君に変なことしないでよね」
「おー、わかったわかった」
「約束だよ!」
「了解了解任せろ」

 現在進行形だ、ふゆはちゃん!されてる!俺!

 という声は大夏さんに塞がれたまま、ふゆはちゃんに届くことはなかった。
 とうとう俺は助けを求めることもできぬまま、大夏さんに抱えられリビングから連れ出されてしまう。



 ――阪奈家ニ階、大夏さんの部屋前。

「っ、おろせ、おろせ……っんむ゛ッ」

 大夏さんに軽々と荷物かなにかのように肩で持ち上げられながらも、俺は必死に最後の抵抗を試みた。けれど、それも大夏さんに口を塞がれることで呆気なく封じられてしまう。

「むぐ、むぐう……っ!!」
「ほ~ら遊生君、腹いてーんだったら無理すんなよ」

 大人しくしねえとな、と笑う大夏さん。どさくさに紛れてケツを揉んでくる大夏さんにもう俺は生きた心地などしてなかった。
「ん、むぅ~~ッ!」という俺の断末魔は虚しく阪奈家の二階に響き渡り、それを無視して大夏さんは自室の扉を開く。


 ――大夏さんの部屋の中。

 扉を開けた瞬間、『如何にも男の部屋です』という籠もった男臭さにもう俺の気分は下がりまくっていた。
 そのまま部屋の奥のベッドまで連行され、くしゃくしゃのシーツの上にそのままどさりと放り投げられるのだ。

「っ、ぷは……っ!」

 顔面着地をなんとか免れ、慌てて上半身を起こして体勢を立て直す。そして、ベッドに乗り上げてこようとしていた大夏さんを睨んだ。

「は、ぁ、あんた……っ、こんなことして……っ!」

 許されると思ってるのか、と言いかけた矢先だった。
 問答無用で下半身に伸びてきた手に、そのまま下着ごと履いていたスラックスを剥ぎ取られそうになり「おい!」と思わず声すらも裏返ってしまう。

「な、い、いきなり、こんな……っ」
「あーわかったわかった。一旦挿れさせてくれ、遊生だって痛いことされたくねーだろ?」

 ほら、と言いながら背後にぴったりとくっついてくる大夏はそのまま剥き出しになった人のケツを撫でるのだ。
 この男、最低なことは重々承知の上ではあったがまさかここまでとは思わなかった。

「っ、や、いやだ、って……っ!」
「初めてのやつは誰だってそういうんだよ。なあ、遊生」

 言いながら、背後に立つ大夏はそのまま唾液で濡れた指で人の肛門を広げるのだ。
 性器を擦りつけられるときとは違う、更に繊細な動きで伝わってくる刺激に全身が緊張した。

「っ、う……っ、や、やめろ、大夏さん……っ」
「は……ッ、可愛いアナルだよなあ、本当。処女感堪んねえわ」

 言いながら、ガサゴソと大夏さんが背後で動く。なにをしてるのかと確認する余裕もなかった。次の瞬間、広げられた肛門になにかをねじ込まれた。体温に溶けていくそれがなんなのか理解したときにはなにもかもが遅かった。
 大夏の指が躊躇なく肛門の中にねじ込まれたのだ。

「ッ、う、あ……ッ!」
「……っ、ほら、逃げんなって。後からきつくなるのは嫌だろ?」
「っ、う゛……ッ!」 

 ケツに異物など、それも大夏の指ほどの太いものをねじ込まれることなんて初めての経験だった。
 ジェルを内壁に塗り込むように中を行き来する大夏の指。関節部分の凹凸が引っかかるだけでも恐ろしく全身がこわばり、それなのに拒もうとしてもジェルの助けもあってスムーズに入ってくるから余計恐ろしかった。
 
「っ、ひ、ぅ゛……ッ」
「ほら、痛くはないだろ?」
「っ、や゛、いやだ、気持ち悪いぃ……ッ!」
「こういうのは慣れだ、ほら、ちゃんと息を吐け」

 大夏さんが指を動かす度に腹の中で粘着質な音が響き、頭がどうにかなりそうだった。
 緊張と恐怖のあまり収縮する下半身、その肛門を執拗に中で広げるように指を動かされ、その圧迫感に苦しくなって見悶える。が、大夏さんはそんなことも気にせずたっぷりとジェルを馴染ませ、そして準備を終えると俺の中から指を引き抜いたのだ。

「っ、ひ、う」

 その抜けていく指の太い関節部分が引っかかる感触だけでも、あまりにも鮮明に、あまりにも生々しく脳に焼き付いてくる。
 このままじゃ犯される。逃げなければ。
 そう震える下半身に必死に力を入れ、ケツを丸出しのままベッドから逃げ出そうとしたときだった。

「ん? 何やってんだ、遊生」

 すぐに大夏さんに捕まり、そのままベッドの上へと引き戻されてしまう。そして、そのままうつ伏せに転がされた。
 再び高く腰を持ち上げるように掴まる下半身。つい先程まで大夏さんの指で慣らされ、些か柔らかくなっていたそこに押し当てられる“例のアレ”の感触にただ目の前が真っ暗になっていく。

「まさか、今更逃げられると思ってねえよな」

 背後から覆い被さってくる大夏さんに俺は命の危険を感じていた。嘘、この家に来てからずっとそんなものは感じていた。

「っうそ、待て、やだっ」
「やだじゃねえって、大人しくしろ~?」

 そんな注射を嫌がる子供をあやすような口調で、大夏さんは人のケツをよしよし撫でる。そしてそのまま引き寄せられた瞬間、肛門に宛てがわれる質量のあるそれに「ひっ」と息を飲んだ。

「ま゛ッ」

 待ってくれ、とか、待て!とか、多分そんな感じを言おうとしたつもりだった。
 振り返ろうとした次の瞬間、指とは比にならない物体がケツの穴を無理矢理こじ開け、入ってこようとしているのだ。

 俺は呼吸することを忘れていた。ジェルもなんの意味もない、でかすぎる。多分今ので俺のケツ終わったのではないか、そう思えるほどの異物感に耐えきれず、ベッドのシーツにしがみついた。

「ぃ゛……ッい゛、ぐうう゛……ッ!」
「……ッ、ぁ゛~~っ、これこれ! は……っ、まじチンポ千切れそうでたまんねえわ……っ!」

 最悪、最悪だ。それ以外なにも考えられない。
 背後、それとケツの穴から響いて聞こえてくる大夏さんの声に脳がバグる。ゼリーで慣らされてようが、あまりにも許容オーバーのそれは奥へと進む度に俺の内壁ごと引っ張っていく。それがめちゃくちゃ嫌で、嫌なのに、脳の奥までかき回されるような力づくでこじ開けられていく感覚が怖くて、受け入れることしかできない。

「……っ、ゆお」
「っ、う゛、抜いてッ、抜いてえ……ッ!」
「泣いてんのか? 可愛いなあ、本当」

 顎を掴まれ、背後から覆い被さってくる大夏さんに顔を覗き込まれる。
 まずい、と思ったときには手遅れで、そのままやつに唇を塞がれる。

「ん゛……ッ、ふ、ぅ゛、うう゛~~ッ!」

 次の瞬間、ごりゅ、と嫌な音を立てて閉じた肛門の奥まで性器に一気に穿かれた。顎下を掴まれたまま、ねじ込まれる舌とケツにずっぽりとハメられた性器に俺は何がなんだかわからなくなってしまっていた。

 大夏さんはそんな俺を見下ろしたまま、興奮したように更に休むどころか中の形を慣らしていくが如く容赦なく腰を打ち付けてくる。その度に腹の中でグチャグチャと音を立てジェルは溶けて体液と混ざっていくのだ。

「ぉ゛ッ、ぐ、……ッ! ひっ、」
「……っ、は、悪い、苦しいよなあ……大丈夫、そのうちわけわかんなくなってくるから」

 今まで抱いてきた女の子たちはこんな気持ちだったのかと今まで寝た子たちの顔が走馬灯のように流れていく。
 が、それもすぐ、ばちゅん!と最奥までねじ込まれた大夏さんの性器により力ずくで現実へと引き戻された。

「ぉ゛……~~――ッ!」

 なんだ、これ。
 手足が痺れたみたいに力入んねえ。
 チンポで串刺しにされたまま動けなくなる俺に、背後で大夏さんは笑う。いつものからっとした笑い方ではなく、嫌なタイプの。

「あー……、ここか? ここが好きなのか、遊生は」
「ぃ゛……っ、ぁ゛ッ、ぎ……ッ!」
「へえ、奥突かれんの好きなのか」
「まっへ、ま゛ッで、おねがッ、ぁ゛……ッ!」

 ずる、とケツの中の粘膜ごと引きずり出されそうになったと思った次の瞬間、一気に脳天まで突き上げられ、全身が弓なりに仰け反った。
 あまりの衝撃にぴんと伸び、爪先に力が入る。数秒、意識が確かに空の彼方の方まで飛んでいっていた。が、それもほんの一瞬。そのまま大夏さんに腰を掴まれたまま、大夏さんはそのまま腰を打ち付けるのだ。

「っ、あ゛ッ、や、まっ、ぁ゛ッ、いやだ、ぬ゛ッ、ぅ゛ッ!」

 内臓が押し上げられ、全身の筋肉が突っ張ったみたいに緊張する。やばい、なにこれ、まじ、なにこれ。今までセックスしてきてごめんなさい。

「おいおい……っ、そんなに泣くことないだろ、なあっ!」
「う゛、ぉ゛え゛ッ!」

 じぬ゛、殺される。チンポで殺される。
 全身の毛穴が開いて汗が玉のように溢れ出す。呼吸の仕方も分からず口を開閉させることしかできない俺の頭を抱き締めた大夏さんは、「ほら、息しろ息」とそのまま顔を上げさせ、口を塞いで来るのだ。ひっくり返る視界。まじで、死ぬ。

「う゛、ぉ゛ぼ……ッ!」

 上と下、性器と舌で塞がれる。喉奥まで入ってきた舌に器官を無理矢理こじ開けられ、人工呼吸するみたいに息を吹き込まれればもうわけわかんねえ。
 溺れるみたいに藻掻く俺に「よしよし」とそのまま頭を軽く撫でた大夏さんは、再び腰を動かし始めるのだった。

「か……ッ、ふ……ッ!」
「泣くな遊生、処女奪った代わりにたくさん気持ちよくしてやるからな」
「ぃ……いや、いら、な゛、ぁ゛……っいらな゛、ぁ゛……ッ!!」

 苦しいのに拒むことも出来ない。
 粘膜中を、掻き回され、摩擦される。エラ張った亀頭で収縮した肉壁を刺激され、感じたことのない感覚に恐怖がこみ上げた。

「は、ぁ゛……ッ、あぐ、……ッ、ぅ゛……ッ!!」

 亀頭の引っかかるぎりぎりまで引き抜かれる大夏さんの性器。圧迫するものがなくなって息をつく暇などなかった。大夏さんは俺が呼吸器官を確保できたのを確認して、そのまま一気に腰を打ち付ける。
 声をあげることもできないまま、性器で串刺しにされたような衝撃に目の前が真っ白になる。

「ま゛、あ……――ッ」

 待って、という言葉は二度目の衝撃によって掻き消される。
 腹部へがっちりと回されたその腕に抱きしめたまま、更に追い打ちをかけるように腰を叩きつけられた。肉が潰れるような音とともに自分の肉体なのに自分の体ではないかのような乖離感。
 その衝撃を理解するよりも容赦なく突き上げられる天井に声をあげることもできなかった。

「っか、ひゅ……ッ」
「は……ッ、浅えからすぐ奥までトントンできちゃうな、遊生の体は」
「ん゛に゛……ッ!!」

 何も考えられなかった。顔を汚すのが汗なのか涙なのか涎なのかもわからない。肩口に顔を埋めたやつはそのままぴったりと背中にくっついたまま、乱暴に人の体をまるでオナホかなにかのように腰を打ち付けるのだ。その度に腹の中で肉が潰れ、ジェルだったものと大夏さんの体液が混ざりあってグチャグチャになる。
 痙攣する下半身、ピストンの度ぼこりと腹に浮き上がる性器の凸を大夏さんは愛しそうに撫で、そして目を剥いて泡吹きかけていた俺の頬にキスをするのだ。みっちりと詰まった馬鹿みてえな太さにまでなった性器。それで、ぐりゅ、と更に奥を押し上げる。

「ここ、男の子宮口。……覚えとけよ、遊生」

 そう白い歯を見せて微笑む大夏さんは、確かに俺には悪魔に見えた。
 いや、この場合は――俺を殺しにきた死神だろうか。


 どれくらいこうしているのか、自分でも分からなかった。
 何度腹の中で出されたかも分からない精液の塊は、ピストンの度に掻き混ぜられる。
 大夏さんにオナホみたいに腰を掴まれたまま、腹の奥まで力づくで犯される。
 いっそのこと、気を失えたらどれだけよかっただろうか

「っぉ゛、ぐ……ッ! ひ、ぅ゛」
「……っは、遊生ぉ~……っ、お前となら無限にヤれるわ、俺」
「っ、う゛、ひ……ッ」
「なあ、お前もそうだよな」

 ごりゅ、と臍の裏側を亀頭で押し上げられる。圧迫される前立腺。大夏さんの低めの声が余計腹の中に響いてどうにかなりそうだった。
 わけもわからないまま、大夏さんの圧に負けてこくこくと頷き返せば、大夏さんは満足そうに笑って、そしてよしよしと俺の腹を撫でるのだ。上から圧迫され、中のものの形がより鮮明になる。「うっ」と呻く俺を笑い、再び大夏さんが腰を打ち付けたときだった。
 トントンと、遠くから階段を上がってくる音が聞こえてきた。
 そして、

『お兄ちゃーん、ゆおくーん、できたよ~!』

 ――ふゆはちゃんだ。
 もしかしてなにか聞かれてるのではないかとぎょっとする。
 一瞬動きを止めた大夏さんだったが、俺の口を掌で塞げば再び腰を動かし始めるのだ。

「……ッ、ふ、ぅ゛……ッ!」
「おー、わかったー」
「ん゛、ぅ゛……ッ!」

 突き上げられる度に勝手に漏れ出そうになる声を必死に抑えようとする俺とは対象的に、大夏さんはいつもと変わらない様子でふゆはちゃんに答えるのだ。
 冗談だろ、と思ったが、幸いふゆはちゃんはそれを伝えに来てくれただけのようだ。それ以上なにを言うわけでもなく、そのまま階段を再び降りていくのが聞こえてくる。
 根本まで性器を挿入させた大夏さんはそのまま再び抽挿を再開させた。そして思いの外早く、そのまま俺の腹の中で何度目かの射精を迎えるのだ。

「……っ、は、ぁ……っ」

 そして、ベッドの上で震えていた俺の背中をそっと撫でる大夏さんは「だってよ遊生、動けるか?」などと聞いてくるのだ。
 そんなこと、俺の状況を見ればわかるはずだ。

「っ、ぉ゛、や゛……っ、むり゛」
「おいおい、俺の妹の手料理は出来立てで食ってもらわねえと。可哀想だろ、あの子が」

「ほら、一旦中断だ」そう言って、大夏さんは俺の肛門から萎えた性器を引き抜く。瞬間、栓を失った肛門からはごぷりと腹を満たしていた精液が漏れ出すのだ。

「っ、ぁ、……ッ」
「おお、すげーたくさん出たな。久し振りだわ、こんなに出たの」

「相手が遊生だからだろうな」と笑いながら、いつの間にかベッドの下へと落ちていた俺の下着を拾った大夏さん。
 ベッドの上、脱力して動けなくなる俺の下半身を捕まえた大夏さんはそのまま強引に下着を履かせてくるのだ。
 ぬち、と嫌な感覚に「ひう」と思わず声が漏れる。精液で下着が汚れ、張り付くような感覚に青ざめた時、大夏さんはそのままスラックスも履かせてくるのだ。

「あ、や……っ」
「よし、そのまま行くぞ」

 ぬる、とぬめる下半身。下着が汚れようが、精液が溢れようが構わない。そう言わんとする大夏さんの態度にただ背筋が震えた。


 ◆ ◆ ◆


 ――阪奈家一階。

「あ、ゆおく……って、ちょっ、本当に大丈夫?!」
「ご、めん……ふゆはちゃん……」

 おまたせ、と俺は下半身を抑えたまま、大夏さんに連れられてリビングまでやってきた。
 歩く度に太もも伝って足首まで精子が落ちていってるような錯覚を覚え、気が気でない。そんな俺を見て、ふゆはちゃんは一層心配そうな顔をした。

「え、え、無理しなくてもいいんだよ?」
「遊生君が冬春の飯食いたいんだってよ。できたのか? お粥は」
「それならいいけど、一応ね。ほら、……味は自信あるんだけど、ゆお君大丈夫?」

 食べれそ?と上目遣いで覗き込んでくるふゆはちゃん。その距離に驚いて、思わず後退ったとき、腰が抜けそうになった。
 寸でのところで大夏さんの腕に抱き止められる。

「きゃっ! だ、大丈夫……? ごめんね、驚いた?」
「あ、いや、その……」
「まだ本調子じゃねえみたいだけど、食うくらいならできるだろ」

「なあ、遊生君」と大夏さんの目がこちらを見下ろす。じっとりと絡みつくようなその視線は蛇のようで、下半身に向けられるそれに思わず俺はさっと顔を逸らす。
 すると、代わりに伸びてきた手に思いっきり尻を掴まれた。

「……っ!」
「ゆお君、大丈夫……?」
「う、うん……大丈夫……だから……っ」

 この男、と大夏さんの方を見ることもできなかった。目の前にふゆはちゃんがいるにも関わらずすり、と股の間に指をねじ込んでくる大夏さんに声が震える。
 大夏さんの指が下半身を行き来する度に、ぐち、ぬちゅ、と濡れた音が響き、ふゆはちゃんに聞こえてるのではないかと生きた心地がしなかった。

「だったらいいけど、無理そうだったら言ってね。残りはお兄ちゃんに食べさせるからっ」
「う、うん……ありがと、ふゆはちゃん」
「そうだぞ遊生君、無理すんなよ。内臓は大事だからな」
「……ッ」

 ――こいつ、まじで。
 滲む汗を拭うことも、下着を変えることも許されないまま地獄の食卓が始まった。
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