アダルトな大人

田原摩耶

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土砂降り注ぐイイオトコ

譲歩した結果※

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「うっ、うぅ…………」

 じわりと広がる下腹部の熱がただただ不快で、恥ずかしさのあまりに涙ぐんだ時、ぴくりと司が反応するのがわかった。
 そして突然服から顔を出す司。ようやく止めたかと思えば今度はまじまじと人の面を眺めてくる司になんだかもう余計居た堪れなくなった。

「…痛かった?」
「いてぇよ、いてぇに決まってんだろ馬鹿…っ」

 泣いてるなんてみっともなくて、顔を見られたくなくて顔を逸らそうとすれば司に頬を掴まれる。

「……ごめん」

 それは何に対する謝罪なのか。
 言いながら、目の淵の涙を舐め取る司にビックリしたけど、こんなことされて許せるほど俺は寛容でもない。
 司のせいでシャツも伸びたし、今はただ司の思い通りになりたくなくて、早い話ちょっとした意地を張った俺は「嫌だ」とつい、その謝罪を拒否した。

「つ、司なんて…嫌いだ……っ!大嫌いだっ!」

 口から出たなんとやら。
 気持ちよくなってしまった自分への嫌悪諸共混ざり合い、あまりの快感で少々高ぶっていたのだろう。
 そう口にした瞬間、ぴしりと音を立て司が硬直した。
 目を見開いたまま固まる司。
 つい、翔太との言い合いの癖で嫌いだなんて言ってしまったが、相手が司だということを思い出しハッとしたが時既に遅し。

「あっ、あの、今のは…………」

 悪い、言い過ぎた。
 そう、言い掛けた時だった。

「い゙ッ」

 伸びてきた手に、シャツの裾を思いっきりたくし上げられる。
 顔の傍まで捲くりあげられたシャツの裾。
 露出肌面積ほぼ半裸に等しい状態に陥ってしまった俺は慌てて「司っ」とやつの腕を掴んだ。

「やめ、ろ…っ、この…!」
「…どうやったら原田さんは気に入ってくれる?」
「どう、って…っ、ぁ」

 身動いで、司の腕を引っ張って引き剥がそうとしたところに伸びてきた指にぎゅっと乳首を引っ張られる。
 不意に目に付いた鏡に、赤く腫れ上がった自分の乳首が目に入り、顔が熱くなった。
 慌てて鏡から顔を逸らしたが、司はそれを見逃さなかった。

「……ああ、なるほど」

 ぽつりと、司が何かを呟いた。
 瞬間、肩を掴まれ無理矢理鏡の前へと体を向けさせられる。
 青褪めだ自分の顔がすぐ傍にあって、その背後、伸し掛かるように立つ司と鏡越しに視線がぶつかった。
 その時、確かに鏡の中の司の口元には笑みが浮かんでいて。

「自分がどんだけ感じてんのか見ないとわからないか」

 耳元で囁かれるその一言に、面白いくらい自分の顔が引き攣るのを俺は見た。

「ちょっ、や、だ…っ司……ッ」
「見える?原田さん…これと、これ、ああ…これも、全部、俺がつけたキスマーク」
「んッ、んん…っ!」

 晒された胸元、赤くなった跡をなぞる指先のその艶かしい動きがこそばゆくて、必死に体を捻るが上半身に回された腕に肩を固定されて動けなくなる。
 そんな中、片方だけ不自然に赤くなった乳首を指で捏ねられた。
 瞬間、背筋に震えが走る。

「ここも、赤くなってる。…わかる?こっちだけ腫れてるのが」
「っ、や、ぁ…ッ」
「こっちしか触ってないのに、片方まで勃起するなんて」

 くに、と片方の乳首を柔らかく圧し潰される。
 鏡の中、胸元に這わされた司の手が動くのが余計恥ずかしくなる。
 逃れようと前のめりになろうとすれば、上半身を抱き竦めていた司の腕に押さえ付けられ強引に胸を逸らさせられてしまうハメになった。

「司…ッ」
「可愛い。…もっと触ってって誘ってるみたい」
「ぁ、っ、や、やめろ…ッ」

 鏡に綺麗に映り込む自分の姿が嫌でも目に付いてしまい、必死に首を横に触ろうとするが顎を掴まれ無理矢理前を向かされる。

「目を逸らすな」

 耳元、押し付けられた唇に息が吹き掛けられる。
 鏡越し、司と目があった瞬間体が石のように硬くなった。

「ちゃんと見ろよ、自分の姿」
「いや、だ…っ、嫌だ、つかさ」
「……嫌だ?…………嘘吐き」

 そう、耳元で司の声が聞こえた時だった。
 下半身、射精したばかりだというのに既に硬くなっていたそこを思いっきり鷲掴まれ、「ひい」と声が漏れてしまう。

「ぁ、や、だめっ」
「これ、なに?なんでこんなに膨らんでんの?」
「っ、ひ…ッ」

 生地越しに不自然な膨みをやわやわと揉まれればぴりぴりとした刺激が全身へ走り、面白いくらい全身の筋肉が硬直した。
 反応すればするほど司の手付きが激しさを増し、強弱を付けて全体を指で柔らかく押されればもうなにも考えられない。

「っやだ、つかさ、やめろっ、やめろってばぁ…っ」

 腰から力が抜け、最早立っているというよりも司の腕で無理矢理引き上げられていると言った方が正しいだろう。絡み付く司の指に扱かれ、先程吐き出したばかりである熱が再び下半身に集中するのが自分でもわかった。

「原田さん、前。見て」

 少しでも顔を下げようとすれば無理矢理鏡に向けさせられる。涙で濡れた自分と目があった瞬間、急激に恥ずかしさが込み上げてきて。

「……これ、なに?」

 その言葉と同時にぎゅうっと股間を掴まれ、引っ張られるようなその強い刺激に頭が真っ白になった。

「…俺にもわかるように説明しろよ」

 俺にもわからないというのに、真顔で無茶ぶりしてくる司。
 今日という日ほど男であることを悔やんだ日はないだろう。
 説明と言われても、これはあれだ。どう考えても生理的なあれなわけで男なら仕方ないことで……。

「ひっ、ぅ…ッ!」

 絡み付いてくる指は勃起したその膨らみを揉みくだす。
 逃れようと腰を引けば、背後の司にぶつかってしまった。
 拍子に、ケツの上辺りに嫌な感触が当たる。
 硬い、その感触はどう考えてもあれしかない。

「っ、お、まえ…っ」

 血の気が引き、慌てて司から離れようとするが掴まれた手に無理矢理腰を抱き寄せられ、結果、強制密着。
 もしかしてわざとではないのだろうかと勘繰りたくなるような動きで下腹部のそれを押し付けられ、司の手と下半身に挟まれなんかもう死にそうになる。

「っ、ぅ、や…っ」
「早く」
「うぅぅぅ…」

 俺がもたつけばもたつくほど次第に司の手の動きは大胆になる。
 掌全体を使って柔らかく揉まれる度に腰から力が抜け落ちそうになり、それは俺がやつの言う事を聞くまで止めないつもりなのだろう。たちが悪い。

「……原田さん」

 絶対言ってやるもんか。
 強要されればされるほど俺の反抗心に火が着く。
 けれど、耳朶を舐め上げられたらそんな思考もぶっ飛んでしまった。

「っ、ぁ、や、司…っ司…っ」

 やめろ、と言いたいのに頭が回らなくて、おまけに呂律も回らないわで立っていることすら出来なくて。
 耳は、耳だけは、駄目なのだ。
 耳朶の窪みから耳の裏までねっとりと舌を這わされれば焼けたように熱くなったそこは最早蕩けそうな気配すらあった。
 イケそうでイケないもどかしい下半身の刺激は、限界まで張り詰めた下腹部にとって毒以外の何者でもない。

「言えよ」

 焦れたような司の声が、吐息とともに鼓膜に染み込む。
 その低い声に、びくりと体が反応した。
 息が乱れる。汗も、止まらない。立っていることすら出来なくて、ガクガクになった足腰では司が居なくなった途端立てなくなるのが目に見えてる。
 このままでは、本当におかしくなる。
 本能がそう叫ぶのだ、仕方ない。だからこれは別に司が怖くてビビったわけではないし敢えて、敢えて流されてやったのだからノーカンだ。

「っ、勃って、んだよ……っ」

 震える喉を使い、振り絞り出した声は酷く掠れていた。
 それでも、司の耳には届いてたようだ。

「なんで?」

 それでこの反応だからこいつの性格は絶対悪い。

「なんで、って、ぇ…」
「なんで勃起してんの?」
「ぁ…っ?!」

 ぐり、と、勃起したそこを円を描くよう揉まれ、腰が揺れる。
 鏡越し、司と目があった。
 咄嗟に目を逸らそうとした鏡の中、司の大きな手が自分の下腹部を弄るのが目につく。
 なんでそんなことまで言わなければならないのか、全くもって理解できない。理解できないが、このままでは司から離れることが出来ない。
 でも、やっぱり、そんなこと。

「っ、それは…」
「それは?…何?」
「お前の、せいだろ…っ」
「例えば?」
「うぅぅ~~…ッ!」
「原田さん、引っ掻いても駄目だから」

「ちゃんと聞かせて」と、目を細める鏡の中の司。
 その長い指がジッパーに触れるのを見て、全身が緊張する。
 けれど、金具を摘んたまま司は何もしてこなくて。

「原田さん」

 促すように、名前を呼んでくる司に確信する。
 俺がイキそうなの分かってて、焦らすつもりだ。
 何もしてこないのは万々歳なのだが、この状況でそれはただの嫌がらせだ。

 なんだかもう司に玩ばれているようで情けなくて泣きそうだったが、司と我慢比べは自分の身を滅ぼすだけだと知ってしまった今選択肢はなくて。

「つ、かさの…手が気持ち良かったからだよ…っ」

 もうどうにでもなってしまえ。
「なんか文句あんのかよ!」と若干泣きながらそう吠えれば、一瞬、鏡の中の司が嬉しそうに笑った…ような気がした。
 そして次の瞬間、伸びてきた手に顎を掴まれ、無理矢理唇を塞がれる。もう何度目の野郎とのキスかはわからない。カウントするだけ虚しくなるだけだ。
 ちゅ、ちゅ、と音を立て何度も唇を押し付けられる。
 その度に触れた箇所が痺れるように熱くなり、こそばゆい。

「……原田さん…っ」
「っ、つ、かさ、だめ…っ」
「そんなに俺の手、気持ち良かった?」
「ふ、ぁ」

 唇同士が触れ合うくらいの至近距離。
 囁かれるその声に、腰から力が抜け落ちそうになる。

「原田さん、俺と店長どっちが好き?」

 伸びてきた手に耳を撫でられる。
 その指の感触にビックリして「え」と顔を上げた時、軽く引っ張られた耳朶に舌を這わされる。

「っぁ、やっ、司」
「原田さん」
「う、うぅぅ…っ」

 なぜこうもこいつは白黒付けたがるのだろうか。
 鼓膜に直接問い掛けられ、脳味噌へと直接流れ込んでくるその吐息に頭がどうにかなりそうだった。
 そんなの、答えられるはずがない。普通に。

「原田さん」
「比べ、られるわけ…ないだろ…っ」

 そもそも男相手に好きだとかそういうあれはあれなわけであって、俺からしてみたら恋愛対象外なのだ。…そうだと思う。
 首を横に振れば、どういうことなのだろうか。鏡の中の司の顔が僅かに赤くなっている。

「……嬉しい」

 ……嬉しい?

「えっ、あっ、ちょ!待って!司ッ!…んんっ」

 ひょっとしてこいつな何か勘違いしているのではないのだろうか。慌てて確認しようとするが、問答無用で唇を塞がれ言葉は掻き消される。
 先程の優しく、触れ合うだけのキスとは違う。酸素ごと奪うよう、唇を貪られる。

「ふっ、んぅう…ッ」

 その間にも下半身に這わされた司の手にベルトを緩められ、ズボンも降ろさずに緩んだウエストから下着の中に手を突っ込まれた。
 そして一回射精してしまったそこは案の定大惨事になっているわけだ。

「っんん」
「……すげえ濡れてる」

 やめろその言い方…!!
 精子やら先走りやらでぐちょぐちょに汚れてしまったそんな中、躊躇いもなくまさぐってくる司の指に、凝りもせず勃起した性器を掴み出される。

「っつか、さ…ぁ…ッ!」
「苦しいだろ。…取り敢えず1回出すから」

 取り敢えず?!取り敢えずってなんだ?!
 さも二回目があるかのような司の言葉に戸惑うのも束の間、絡み付いてくる細くしっかりとした指はゆっくりと俺のを扱き出す。

「っ、待っ、ぁ、あっ、んんっ!」

 輪っかを作った司の手に、根本から先端までを締め付けられる度に息が詰まりそうになった。
 鏡に映った自分のものが司の手の中でさらに膨張してるのが視界に入り込み、羞恥で体が熱くなる。

「…すごい、どんどん溢れてくる」
「言、うな…ぁ…っあぁッ!」

 反り返った裏筋、浮かぶ血管を指で擽られた瞬間脳天から爪先へと電流が流れる。堪らず背後の司に凭れ掛かった時、腰に回されたもう片方の手に下半身を固定され。

 矢先、

「っ、ぁ、だめ、ゆっくり、ゆっくりぃ…っ!」

 溢れ出す先走りを全体へと塗り込むようよう、強弱付けて扱き下ろすその手の動きは次第に激しさを増す。
 自分の下半身から発せられる濡れた音は便所内にやけに大きく響き、耳を塞ぎたくなるが司の腕にしがみつくのがやっとだった。

「ふ、あ、ぁああ…っ!」

 止めどなく競り上げてくる快感に耐えられるような図太さは持ち合わせていない。
 絞り出すよう、全体を締め付けられたその瞬間、俺は呆気なく司の手の中に射精してしまう。

「…っん、んんん…っ!」

 溜まりに溜まっていたものを吐き出した瞬間、頭が真っ白になった。
 気持ちいい、とかそういうのよりもようやく息苦しさから解放されたというのが大きかった。
 だからだろう、自分がどこに出したのかそれに気付くのに少々時間が掛かってしまったのだ。
 汚れないよう、掌で精液を受け止めてくれたようだ。どろりと司の手に溜まったものを見て、ようやく俺は自分の仕出かしたことに気付く。

「……」
「っ、あ、わり………」

 というかなぜ俺が謝らなければならないのかわからないが、脊髄反射で謝りかけた矢先だ。
 目の前で掌に舌を這わせ、湯気立てるそれを舐め取る司に思わず「は?!」と声を上げてしまう。

「っ、馬鹿、なにし…」
「美味しかった」
「んなわけ…んんんっ!」

 ねえだろ、と言いかけた矢先、顎を掴まれキスされる。
 今度は丁度開いていた口に舌を捩じ込まれ、瞬間、咥内いっぱいに広がる独特の味。
 司の舌から流し込まれる形容し難いその味に全身から血の気が引く。

「ぅううっ!」

 ばしばしと司を叩けば、やつはすぐに唇を離した。

「…美味しい?」
「ま、ずい…」
「そ?甘くて美味しいよ。…ハチミツみたいで」

 美味しい、と濡れた自分の唇に舌を這わせる司にぞっとする。
 少なくとも俺には青臭さと塩の味しか感じなかったのだが味覚の個人差とは恐ろしいものだと思った。まる。

「まだ出そうだな」
「ぅ、え」
「もう勃起し始めてる」

 口の中の精液を吐き出そうとしている矢先、「ほら」と伸びてきた司に擡げ始めていた性器を軽く持ち上げられる。
 わざと見せつけるようなその動作に、視界に入ったそれから慌てて顔を逸らせば尿道口から溢れる濁った液体を指で拭われた。

「ひっ、ぁ…っ」
「これならローション要らないな」

 耳元で囁かれたその言葉に、まさかと青褪めだ矢先だった。
 下着をずり下げられたかと思った矢先、離れた司の手は腰に回される。

「っ、ぁ、っや、つかさっ、待…んんぅっ!」

 待って、と口を開いた瞬間、言葉も待たずに肛門に指を押し当てられる。
 精液やらなんやらを絡ませ濡れた司の指は窄まった周囲を擽り、ついこそばゆさで力が抜けそうになった瞬間ぬるりと体内へ侵入してきやがった。

「っ、ふ、ぁ、ああ…っ」

 体の中、入り込んでくる指を押し出そうと、せめて侵入を制止しようと力むがそれは司を愉しませるだけのようだ。

「原田さん、俺の指美味しい?」
「っ、わかるわけ、ねえっ、だろ…っ」
「ああ…一本じゃ足りないか」

 違う、そういう意味じゃない。
 そう慌てて訂正しようと振り返ろうとした瞬間、すでに一本の指を飲み込んだそこに数本の指が押し当てられる。

「っ、ちが、待て!おい!」
「違わないだろ」
「っ、ひ、っ、ぅ、んぅう…ッ!!」

 問答無用。捩じ込まれる複数の指に、息が止まりそうになる。
 痛い、のもあるけど、それ以上に苦しくて。
 堪らず目の前の洗面台にしがみつく。
 指先はまだいい、司の指は細く長いが、それでも関節部分の凹凸がハッキリしているため、それがひっ掛かる度に中が擦れて腰が震える。

「っ、や、だ、抜いて…っ司……っ」
「俺の指、嫌?」

 あ、やばいまたなんか地雷踏んでしまった。
 ケツを掴む司の指に力が入って、ぎゅっと握られた瞬間根本まで思いっきり捩じ込まれ全身が飛び上がりそうになった。

「っ、ぁ、や、だめ、だめ…っ!」
「おかしいな。こんなに吸い付いてくるのに」
「っ、ふ、やぁ、あぁっ」

 指を引き抜かれたかと思えば思いっきり捩じ込まれ、その度に奥を抉られる。
 ぐちゃぐちゃと音を立て、激しく中を摩擦されれば痛みなんて吹っ飛びそうになって、痙攣する下半身、逃げようとバタつくが腰を固定した司の手は離れない。

「っやめ、いっ、ぁ、司っ」
「原田さん、動かないで。ちゃんと解さないとダメだ」
「んんんぅっ!」

 中の筋肉を指で刺激される度、下半身から力が抜けそうになる。
 落ち着くどころか激しさを増す指の動きに息吐く暇もなくて、目の前が白ばむ。下腹部が焼けるように熱くなって、這いつくばるように洗面台にしがみつく。
 掻き混ぜられる度に腹の中いっぱいに響く音に目が回りそうになって、止めどなく押しかけてくる刺激に麻痺し始めてきた脳味噌は恐らく3分の2はどろどろに蕩けているのではないだろうか。

「っ、や、あ、苦しっ、や、つか…さぁ…っ!」

 力がまともに入らず、それは呂律も例外ではない。
 それでも必死に司に縋れば、一瞬、体の中の司の指がぴくりと反応した。

「…苦しい?」
「っは、ぁ……っんん」

 こくこくと頷き返す。
 司の動きがと止まり、ようやく呼吸が出来るようになった時、ずるりと指が引き抜かれた。今度こそ肺いっぱいに空気を取り込む。

「…悪い、あんたのこと考えてなかったな」

 どうやら中が切れていたようで、赤くなった自分の指に目を向けた司は僅かに眉尻を下げる。ようやく冷静になってくれたようだ。

「司……」

 これで話が通じる、そう安堵し掛けた時だった。
 ジッパーが下がる音とともに勃起した性器を取り出す司は何事もなかったかのような顔をして反り返るそれにこれまたいつの間にかに取り出した小さなボトルの中のそれを垂らし始める。何事もなかったかのように。やつは。

「これでいい?」

 いや全く良くないです。
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