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モンスターファミリー
本末転倒再起可能※
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俺は絶体絶命だった。
この店で働き始めてもう何回絶体絶命に陥ったのかわからないが、それでも今は俺の自尊心、社会的地位が危ぶまれる危機に陥っているのは確かだった。
店員専用の便所の個室にて。
モップ片手に身構える俺の目の前には、チューブを手にした元友人の中谷翔太が立ち塞がっていた。
「カナちゃん、脱いで」
「……やだ」
「脱いで」
「嫌だっ!」
そして激しい攻防の末、実力行使に出やがった翔太に思いっきり身ぐるみひっぺがされたのだ。狭い場所じゃ全く役に立たない長物であった。
脱ぎたてほやほやの人の服を抱えた翔太は、寒さやら恐怖やらでぶるぶる震える俺を見下ろす。
「上半身よし、下半身よし、下腹部は…」
頭から爪先まで舐めるように向けられる視線は俺の股間で動きを止めた。服を脱がされようとも、必死に死守したパンツだ。
俺は股間を庇いながら、翔太を睨みつける。
「い……嫌だっていってんだろっ、これ以上してみろ、今度こそ訴えてやるからな!」
「これはカナちゃんのためだって言ってんじゃん、そっちこそ僕にいちいち言われたくないならその警戒心のなさどうにかしなよ!」
「な……っ! 人を能天気アホみたいに言うなよ、俺は……俺だってなあ……!」
「だったらこれはなに?」
伸びてきた翔太の手に思いっきり下着のゴムを引っ張られる。そしてべろんと脱がされそうになり、「ぎゃ!」と悲鳴が漏れた。
「ちょ、おいっ! な、なにして……」
「何って……わからない? メディカルチェックだよ」
「メ……」
メディカルチェックってなんだよ、と突っ込むよりも先に丸出しになったケツを掴まれ思わず変な声が出そうになるのを寸でのところで堪える。
「待て、翔太……っ」
「触れた感じは大分この前よりかはマシになってるけど、あれからは本当に何もないんだよね?」
「っないって、言ってんだろーが……ッ!」
勿論嘘である。あるなんて言えば何されるかわからない。というか現時点でも大分手遅れなのだけれど、それでも閉じかかったケツの穴を触診されればそれだけで背筋がぶるりと震えた。
なにもかもあの日の司の爆弾発言のせいだ。あの日から翔太と言えばこの調子だ。この際非処女だなんだのを誤魔化すつもりはないが、だからと言って会う度にアナルのメディカルチェックをされ軟膏塗られる俺の身になってほしい。
「ないねえ、どうだろ? 僕にバイト先も言わないし、あれだけやめなって言った酒を馬鹿みたいに飲むし、おまけにあんな格好で部屋から抜け出すようなお転婆だし」
「そ、それはお前が気持ち悪いことばっかするかだろうが!!」
「き……ッ! 心外だな、僕は常に脇も甘いどころかがばがばゆるゆるのカナちゃんの代わりになって悪い虫が付かないように頑張ってきたってのに……!!」
「人をガバ(自主規制)みたいに言ってんじゃねえよ!」
「実際そうだったじゃん! 僕が今までなんのためにカナちゃんの貞操を守ってきたと思ってんの?!それをどこの馬の骨かも分からないやつはんかに……」
「やたら女の子にモテないなと思ったらお前のせいか!!」
「いやそれは僕のせいじゃなくてカナちゃんの問題だからね?!」
売り言葉に買い言葉、俺たちは睨み合う。が、やがて我慢を切らした翔太が苛ついたようにバン、と俺の背後の壁を叩いた。そして。
「……っとにかく、今後は僕の目が黒いうちは二度と過ちのないようにしなきゃならないんだよ」
「っ、だ、だからってここまでする必要はねーだろ、そもそも俺のことを少しは信じ……っ」
「僕はもうその手には乗らないからね、そんなつぶらな目で見ても無駄だから」
「……っ、翔太……お前見ないうちにかっこよくなったな」
「露骨な褒めで回避するような手にはもう二度と引っ掛からないよ、あと褒め方も雑過ぎるんだよ」
くそ、最終手段すら効かないだと?どうすれば、と藻掻こうとするのもつかの間。
「っ、のわ……ッ!」
下着のゴムを引っ張られたと思えばおもくそ脱がされるのだ。丸出し状態のケツを慌てて隠そうとするが翔太の手は俺の防御を躱してケツを掴む。
「っ、ぉ、おいっ! 翔太……ッ!」
「指の跡は付いてないみたいだね。けど、ここは……」
むに、と両サイドのケツの肉を割り開くように広げられる尻にたまらず「ぎゃっ!」と悲鳴を上げた。が、翔太のクソ眼鏡野郎は無視。それどころかまじまじと人のケツを見てやがる。
「相変わらず柔らかくなっているのは気に入らないけど、一先ずは肛門は閉じてるし括約筋もちゃんと反応するようになってるね」
「ッ、や、めろ……っどこ触って……ッ!」
「言ったでしょ、メディカルチェックって。……ほら力抜いて。次薬塗るから」
力を抜けと言われて抜けるやつがいるのか。弛緩を促すようにケツの穴、その膨らみを指の腹でこちょこちょされ息を飲む。
「しょ、うた……薬って……」
「軟膏だよ。ほら、これをカナちゃんのお尻の穴に塗り込むんだよ。体温で解けるようになってるから違和感もすぐなくなるものを選んだんだからね」
感謝してよ、とでも言うかのように自分の片方の指に載せた軟膏薬を見せ付けてくるのだ。指ごと捩じ込まれてほら大人しくしろなんてそんなことできるわけないだろ。嫌だやめろと抵抗するが翔太はお構いなしだ。がっちりと腰を掴まれたまま翔太はひくひくと反応しかけていたそこに思いっきり軟膏乗せた指をねじ込んで来やがったのだ。
「ぁ、あぁぁ……ッ!!」
腹の中、にゅぶりとぬめるように侵入してくるその指に堪らず情けない声が漏れてしまう。
「っあ、ぅ、て……め……っ」
「薬、塗ってるだけでしょ。カナちゃんが自分でしないから」
「っ、そ、んな奥まで……っ、やるな、いらねえから……っ、ぁ……ッ?!」
ねっとりの腹の奥、ちんぽの裏側辺りをぐるりと指の腹で撫でられればそれだけでぶるぶると背筋が震えてしまう。
く、くそ、そうだ。その通りなだけに素直に気持ちよくなってしまってる自分の体が憎い……!
「大体、そんなとこ、自分で触れるわけねえだろっ」
「だから、僕が塗ってるんじゃん。ほら暴れないで」
滑るように根本まで入ってきた一本の指に内壁を撫でられ、こそばゆさに「ひっ」と息を呑む。
慌てて逃げようとするが、長い翔太の指から逃れることはできず、ぐにぐにぐにと執拗に薬を
塗り込まれれば背筋が震えた。
羞恥か、それとも薬のせいか。
「いやだ、くそっ、やだ、気持ちわりい、抜けバカッ」
「今まで散々カナちゃんの面倒見てきた僕に対してそんな口聞いていいのかな」
「それは善意で治療してくれる奴のセリフじゃねえだろ、って、ぁ、ちょ、待っ、んんっ!」
二本目の指がわざと入り口を広げるようにして入ってくる。
すでに薬をタップリと塗り込まれ、ぬるぬると滑りやすくなっていたそこは簡単に翔太の指を飲み込んでしまうのだ。
圧迫感と言うよりも、かゆいところに手が届くような心地よさにぶるりと背筋が震えた。
「っ、ふ、ぅ……や、翔太ぁ……っ」
やめろ、この変態眼鏡。
そう翔太の腕を掴もうもした瞬間、指の腹を前立腺で柔らかく揉まれ背筋が震えた。
「ぁっ」と喉の奥から漏れるその声に、翔太の眼鏡か反射する。そしてその口元にはニヤついた笑み。
「何今の声。……ねえ僕手当をしてるんだけど? カナちゃんもしかして感じてる?」
「ちが、っん、んんっ、ゃ……ほんと、やめろ……っ」
「本当に? じゃあなんでここ、大きくなってるの?」
弱いところを集中的に弄られ、エプロンの下、条件反射で頭を擡げていたそこを布越しにぐるりと撫でられただけで腰が大きく引く。
「そ、れは……っ、ぉ、お前だって……ッ!」
といいかけて、何故こいつまで勃起しているのだと血の気が引いた。
こいつの性癖はマリアナ海溝よりも深いと思っていがいくらなんでも見境なさすぎではないか。
「お前っ、離れろッ! 何が善意だ……ッ! ぁ、ゆ、び動かすなぁ……ッ!」
「……言っておくけどカナちゃんが変な声出すから悪いんだよ、僕はあくまで紳士的に対処するつめりだったのにさぁ……」
「お、押し付けるな馬鹿ッ! やめ、んぅ、や……ッ!」
やめろ、と押し返そうとしたとき、更に弱いところを責め立てられ声が漏れそうになる。
駄目だ、クソ、俺の体は正直者か。わざと音を立てるように執拗に中を嬲られ、腰がガクガクと震える。
立っていることが困難になり、どん、と背中が壁にぶつかった。
「っ、ぁ、や、翔太……ッも、いいから、そこ……っだいじょ、うぶ……だから……っひ、ぅ!」
「本当? ……どんどん熱くなってくるし、すごい中狭いし……もしかして腫れてるんじゃないの?」
「っ、ぉ、まえ……ッ」
分かってる癖にと睨みつければ、翔太は何か言いたそうな顔をし、そして諦めたように溜息を吐いた。
瞬間、中の指が引き抜かれる。
熱で溶けた軟膏で濡れた指をトイレットペーパーで拭う翔太。
中途半端に弄くられ放置され、唖然としていると翔太はこちらを振り返り、そして鍵を開けたのだ。
「それ、ちゃんと自分で収めておきなよ。……あいつらに見付かると面倒だからね」
「……ぇ」
「何? その顔」
「しょ、うたは」
もっとしてほしい、なんて死んでも言えるわけがない。まさか本当にやめるとは思わなかっただけに混乱する俺に翔太は眼鏡をくい、と直す。
「……後が怖いからね」
俺が本気で嫌がっていると思っているのか。
それとも別の意味があるのか。
俺には分からなかったが、翔太はそれだけ言うと「忘れ物」と軟膏を投げて寄越す。
そしてそのまま出ていく翔太に、悲しきかな一人で便所に閉じ籠りシコシコ励むことになったのだ。
一発抜けばなんとかなるがケツの中がヌルヌルして落ち着かないまま店に戻ることになる。
「くそ、翔太のやつ……」
曲がりなりにも人を勃起させたのだ。
責任取って抜いてくれなんてトンチキを言うつもりはないがせめてオカズの一つや二つ寄越すのが礼儀というものではないのだろうか。
「どうしたの? 痴話喧嘩?」
「なんで痴話……って、紀平さん……っ!」
ぶつくさ言いながら便所から出た時だ。
便所を出て直ぐのそこには壁、ではなく「や」と爽やかな笑顔で手を振ってくる紀平さんがいた。
まさかこんなところで会うことになるなんて。
というか。
「い、いつから、そこに」
「ん?ついさっきだよ。中谷君の『脱いで』の辺りから」
思いっきり最初じゃないか。
血の気が引いた。
となるともしかして全部……。
「薬塗ってもらってたんだって? どこ怪我してるの?」
「え、や、その……ひ、膝小僧を」
「へえ、膝小僧ねえ?」
そう覗き込んでくる紀平さんは見たことないくらい楽しそうな笑顔だ。
普段の爽やかとは違う、まるで玩具を見つけたような笑顔である。
俺はこの笑顔の恐ろしさを身を持って知っている。
「いまの、み……皆には言わないでください」
「言わないよ。そんな面白そうなこと。それにしても、中谷君も酷いことするよね。かなたんを一人残して行くんだからさ」
「まあ、一人で寂しくオナニーするかなたんも可愛かったけどね」耳打ちされるその言葉に顔に熱が集まる。
嫌な汗がどっと滲む。
そうだ、全部聞かれているということは俺がオカズフォルダから無音で動画再生して慰めていたのも聞かれてるわけだ。
「き、紀平さん……っ」
「大丈夫、言わないよ。司君のことも、中谷君のことも。……かなたんがオナニーするとき声デカくなるのも」
「ぅ、ぐ……ッ!!」
聞かれてた。全部。
恥ずかしくて紀平さんの顔を直視することもできなかった。
「あれ家でもそうなの?」
「い、言いません……」
「あはは。照れてるの? 可愛いのに。俺はかなたんみたいに正直な子、好きだよ」
好き、という言葉に心臓が反応してしまう。
するりと伸びてきた紀平さんの大きな手のひらに逃げることも忘れていた。
まるで割れ物かなにかのように優しく頬を指の腹で撫でられ、収まりかけていた熱が膨れ上がる。
「もう大丈夫なの? 俺がちゃんと抜いてあげようか」
ここ、と柔らかく下腹部を撫で上げられ、鼓動がどくりと跳ねた。
低く甘い声には催淫効果すらもあるのだろうか。だとしたら無敵ではないか?
ドクドクと加速する鼓動に耐えきれず、俺は紀平さんの腕を掴んだ。
「だ、大丈夫……です……っ」
この前の媚薬事件とは訳が違う。
流されたら駄目だ、そうなけなしの理性で断れば紀平さんは俺の耳に触れるのだ。
そして。
「……本当に?」
軽く引っ張られ、開いた耳の穴。
鼓膜に直接注ぎ込むかのように囁きかけられる言葉にぶるりと腰が揺れた。
きっと俺が女の子だったら腰砕けになってるかもしれない。が、俺は男の子だ。
こくこくこくと何度も首を縦に振れば、紀平さんは、ふっと微笑んだ。
先程までの意地の悪い笑みではなく、いつもの休憩室で見せる笑顔だ。
「ま、それならいいけど。……店長がなんかバタバタしてたみたいだから手伝ってあげてね」
まるでなにもなかったかのようにそれだけを言い、手を振る紀平さん。
どうやら見逃してくれるようだ。
内心ほっとする反面、あまりにも引き際が良い紀平さんに出鼻挫かれたような気持ちにもなった。
「……っと、その、ありがとうございました」
失礼します、と紀平さんに頭を下げ、俺はそのまま慌てて店内へと向かった。
「そこでお礼言うんだ?……俺に?」
この店で働き始めてもう何回絶体絶命に陥ったのかわからないが、それでも今は俺の自尊心、社会的地位が危ぶまれる危機に陥っているのは確かだった。
店員専用の便所の個室にて。
モップ片手に身構える俺の目の前には、チューブを手にした元友人の中谷翔太が立ち塞がっていた。
「カナちゃん、脱いで」
「……やだ」
「脱いで」
「嫌だっ!」
そして激しい攻防の末、実力行使に出やがった翔太に思いっきり身ぐるみひっぺがされたのだ。狭い場所じゃ全く役に立たない長物であった。
脱ぎたてほやほやの人の服を抱えた翔太は、寒さやら恐怖やらでぶるぶる震える俺を見下ろす。
「上半身よし、下半身よし、下腹部は…」
頭から爪先まで舐めるように向けられる視線は俺の股間で動きを止めた。服を脱がされようとも、必死に死守したパンツだ。
俺は股間を庇いながら、翔太を睨みつける。
「い……嫌だっていってんだろっ、これ以上してみろ、今度こそ訴えてやるからな!」
「これはカナちゃんのためだって言ってんじゃん、そっちこそ僕にいちいち言われたくないならその警戒心のなさどうにかしなよ!」
「な……っ! 人を能天気アホみたいに言うなよ、俺は……俺だってなあ……!」
「だったらこれはなに?」
伸びてきた翔太の手に思いっきり下着のゴムを引っ張られる。そしてべろんと脱がされそうになり、「ぎゃ!」と悲鳴が漏れた。
「ちょ、おいっ! な、なにして……」
「何って……わからない? メディカルチェックだよ」
「メ……」
メディカルチェックってなんだよ、と突っ込むよりも先に丸出しになったケツを掴まれ思わず変な声が出そうになるのを寸でのところで堪える。
「待て、翔太……っ」
「触れた感じは大分この前よりかはマシになってるけど、あれからは本当に何もないんだよね?」
「っないって、言ってんだろーが……ッ!」
勿論嘘である。あるなんて言えば何されるかわからない。というか現時点でも大分手遅れなのだけれど、それでも閉じかかったケツの穴を触診されればそれだけで背筋がぶるりと震えた。
なにもかもあの日の司の爆弾発言のせいだ。あの日から翔太と言えばこの調子だ。この際非処女だなんだのを誤魔化すつもりはないが、だからと言って会う度にアナルのメディカルチェックをされ軟膏塗られる俺の身になってほしい。
「ないねえ、どうだろ? 僕にバイト先も言わないし、あれだけやめなって言った酒を馬鹿みたいに飲むし、おまけにあんな格好で部屋から抜け出すようなお転婆だし」
「そ、それはお前が気持ち悪いことばっかするかだろうが!!」
「き……ッ! 心外だな、僕は常に脇も甘いどころかがばがばゆるゆるのカナちゃんの代わりになって悪い虫が付かないように頑張ってきたってのに……!!」
「人をガバ(自主規制)みたいに言ってんじゃねえよ!」
「実際そうだったじゃん! 僕が今までなんのためにカナちゃんの貞操を守ってきたと思ってんの?!それをどこの馬の骨かも分からないやつはんかに……」
「やたら女の子にモテないなと思ったらお前のせいか!!」
「いやそれは僕のせいじゃなくてカナちゃんの問題だからね?!」
売り言葉に買い言葉、俺たちは睨み合う。が、やがて我慢を切らした翔太が苛ついたようにバン、と俺の背後の壁を叩いた。そして。
「……っとにかく、今後は僕の目が黒いうちは二度と過ちのないようにしなきゃならないんだよ」
「っ、だ、だからってここまでする必要はねーだろ、そもそも俺のことを少しは信じ……っ」
「僕はもうその手には乗らないからね、そんなつぶらな目で見ても無駄だから」
「……っ、翔太……お前見ないうちにかっこよくなったな」
「露骨な褒めで回避するような手にはもう二度と引っ掛からないよ、あと褒め方も雑過ぎるんだよ」
くそ、最終手段すら効かないだと?どうすれば、と藻掻こうとするのもつかの間。
「っ、のわ……ッ!」
下着のゴムを引っ張られたと思えばおもくそ脱がされるのだ。丸出し状態のケツを慌てて隠そうとするが翔太の手は俺の防御を躱してケツを掴む。
「っ、ぉ、おいっ! 翔太……ッ!」
「指の跡は付いてないみたいだね。けど、ここは……」
むに、と両サイドのケツの肉を割り開くように広げられる尻にたまらず「ぎゃっ!」と悲鳴を上げた。が、翔太のクソ眼鏡野郎は無視。それどころかまじまじと人のケツを見てやがる。
「相変わらず柔らかくなっているのは気に入らないけど、一先ずは肛門は閉じてるし括約筋もちゃんと反応するようになってるね」
「ッ、や、めろ……っどこ触って……ッ!」
「言ったでしょ、メディカルチェックって。……ほら力抜いて。次薬塗るから」
力を抜けと言われて抜けるやつがいるのか。弛緩を促すようにケツの穴、その膨らみを指の腹でこちょこちょされ息を飲む。
「しょ、うた……薬って……」
「軟膏だよ。ほら、これをカナちゃんのお尻の穴に塗り込むんだよ。体温で解けるようになってるから違和感もすぐなくなるものを選んだんだからね」
感謝してよ、とでも言うかのように自分の片方の指に載せた軟膏薬を見せ付けてくるのだ。指ごと捩じ込まれてほら大人しくしろなんてそんなことできるわけないだろ。嫌だやめろと抵抗するが翔太はお構いなしだ。がっちりと腰を掴まれたまま翔太はひくひくと反応しかけていたそこに思いっきり軟膏乗せた指をねじ込んで来やがったのだ。
「ぁ、あぁぁ……ッ!!」
腹の中、にゅぶりとぬめるように侵入してくるその指に堪らず情けない声が漏れてしまう。
「っあ、ぅ、て……め……っ」
「薬、塗ってるだけでしょ。カナちゃんが自分でしないから」
「っ、そ、んな奥まで……っ、やるな、いらねえから……っ、ぁ……ッ?!」
ねっとりの腹の奥、ちんぽの裏側辺りをぐるりと指の腹で撫でられればそれだけでぶるぶると背筋が震えてしまう。
く、くそ、そうだ。その通りなだけに素直に気持ちよくなってしまってる自分の体が憎い……!
「大体、そんなとこ、自分で触れるわけねえだろっ」
「だから、僕が塗ってるんじゃん。ほら暴れないで」
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「いやだ、くそっ、やだ、気持ちわりい、抜けバカッ」
「今まで散々カナちゃんの面倒見てきた僕に対してそんな口聞いていいのかな」
「それは善意で治療してくれる奴のセリフじゃねえだろ、って、ぁ、ちょ、待っ、んんっ!」
二本目の指がわざと入り口を広げるようにして入ってくる。
すでに薬をタップリと塗り込まれ、ぬるぬると滑りやすくなっていたそこは簡単に翔太の指を飲み込んでしまうのだ。
圧迫感と言うよりも、かゆいところに手が届くような心地よさにぶるりと背筋が震えた。
「っ、ふ、ぅ……や、翔太ぁ……っ」
やめろ、この変態眼鏡。
そう翔太の腕を掴もうもした瞬間、指の腹を前立腺で柔らかく揉まれ背筋が震えた。
「ぁっ」と喉の奥から漏れるその声に、翔太の眼鏡か反射する。そしてその口元にはニヤついた笑み。
「何今の声。……ねえ僕手当をしてるんだけど? カナちゃんもしかして感じてる?」
「ちが、っん、んんっ、ゃ……ほんと、やめろ……っ」
「本当に? じゃあなんでここ、大きくなってるの?」
弱いところを集中的に弄られ、エプロンの下、条件反射で頭を擡げていたそこを布越しにぐるりと撫でられただけで腰が大きく引く。
「そ、れは……っ、ぉ、お前だって……ッ!」
といいかけて、何故こいつまで勃起しているのだと血の気が引いた。
こいつの性癖はマリアナ海溝よりも深いと思っていがいくらなんでも見境なさすぎではないか。
「お前っ、離れろッ! 何が善意だ……ッ! ぁ、ゆ、び動かすなぁ……ッ!」
「……言っておくけどカナちゃんが変な声出すから悪いんだよ、僕はあくまで紳士的に対処するつめりだったのにさぁ……」
「お、押し付けるな馬鹿ッ! やめ、んぅ、や……ッ!」
やめろ、と押し返そうとしたとき、更に弱いところを責め立てられ声が漏れそうになる。
駄目だ、クソ、俺の体は正直者か。わざと音を立てるように執拗に中を嬲られ、腰がガクガクと震える。
立っていることが困難になり、どん、と背中が壁にぶつかった。
「っ、ぁ、や、翔太……ッも、いいから、そこ……っだいじょ、うぶ……だから……っひ、ぅ!」
「本当? ……どんどん熱くなってくるし、すごい中狭いし……もしかして腫れてるんじゃないの?」
「っ、ぉ、まえ……ッ」
分かってる癖にと睨みつければ、翔太は何か言いたそうな顔をし、そして諦めたように溜息を吐いた。
瞬間、中の指が引き抜かれる。
熱で溶けた軟膏で濡れた指をトイレットペーパーで拭う翔太。
中途半端に弄くられ放置され、唖然としていると翔太はこちらを振り返り、そして鍵を開けたのだ。
「それ、ちゃんと自分で収めておきなよ。……あいつらに見付かると面倒だからね」
「……ぇ」
「何? その顔」
「しょ、うたは」
もっとしてほしい、なんて死んでも言えるわけがない。まさか本当にやめるとは思わなかっただけに混乱する俺に翔太は眼鏡をくい、と直す。
「……後が怖いからね」
俺が本気で嫌がっていると思っているのか。
それとも別の意味があるのか。
俺には分からなかったが、翔太はそれだけ言うと「忘れ物」と軟膏を投げて寄越す。
そしてそのまま出ていく翔太に、悲しきかな一人で便所に閉じ籠りシコシコ励むことになったのだ。
一発抜けばなんとかなるがケツの中がヌルヌルして落ち着かないまま店に戻ることになる。
「くそ、翔太のやつ……」
曲がりなりにも人を勃起させたのだ。
責任取って抜いてくれなんてトンチキを言うつもりはないがせめてオカズの一つや二つ寄越すのが礼儀というものではないのだろうか。
「どうしたの? 痴話喧嘩?」
「なんで痴話……って、紀平さん……っ!」
ぶつくさ言いながら便所から出た時だ。
便所を出て直ぐのそこには壁、ではなく「や」と爽やかな笑顔で手を振ってくる紀平さんがいた。
まさかこんなところで会うことになるなんて。
というか。
「い、いつから、そこに」
「ん?ついさっきだよ。中谷君の『脱いで』の辺りから」
思いっきり最初じゃないか。
血の気が引いた。
となるともしかして全部……。
「薬塗ってもらってたんだって? どこ怪我してるの?」
「え、や、その……ひ、膝小僧を」
「へえ、膝小僧ねえ?」
そう覗き込んでくる紀平さんは見たことないくらい楽しそうな笑顔だ。
普段の爽やかとは違う、まるで玩具を見つけたような笑顔である。
俺はこの笑顔の恐ろしさを身を持って知っている。
「いまの、み……皆には言わないでください」
「言わないよ。そんな面白そうなこと。それにしても、中谷君も酷いことするよね。かなたんを一人残して行くんだからさ」
「まあ、一人で寂しくオナニーするかなたんも可愛かったけどね」耳打ちされるその言葉に顔に熱が集まる。
嫌な汗がどっと滲む。
そうだ、全部聞かれているということは俺がオカズフォルダから無音で動画再生して慰めていたのも聞かれてるわけだ。
「き、紀平さん……っ」
「大丈夫、言わないよ。司君のことも、中谷君のことも。……かなたんがオナニーするとき声デカくなるのも」
「ぅ、ぐ……ッ!!」
聞かれてた。全部。
恥ずかしくて紀平さんの顔を直視することもできなかった。
「あれ家でもそうなの?」
「い、言いません……」
「あはは。照れてるの? 可愛いのに。俺はかなたんみたいに正直な子、好きだよ」
好き、という言葉に心臓が反応してしまう。
するりと伸びてきた紀平さんの大きな手のひらに逃げることも忘れていた。
まるで割れ物かなにかのように優しく頬を指の腹で撫でられ、収まりかけていた熱が膨れ上がる。
「もう大丈夫なの? 俺がちゃんと抜いてあげようか」
ここ、と柔らかく下腹部を撫で上げられ、鼓動がどくりと跳ねた。
低く甘い声には催淫効果すらもあるのだろうか。だとしたら無敵ではないか?
ドクドクと加速する鼓動に耐えきれず、俺は紀平さんの腕を掴んだ。
「だ、大丈夫……です……っ」
この前の媚薬事件とは訳が違う。
流されたら駄目だ、そうなけなしの理性で断れば紀平さんは俺の耳に触れるのだ。
そして。
「……本当に?」
軽く引っ張られ、開いた耳の穴。
鼓膜に直接注ぎ込むかのように囁きかけられる言葉にぶるりと腰が揺れた。
きっと俺が女の子だったら腰砕けになってるかもしれない。が、俺は男の子だ。
こくこくこくと何度も首を縦に振れば、紀平さんは、ふっと微笑んだ。
先程までの意地の悪い笑みではなく、いつもの休憩室で見せる笑顔だ。
「ま、それならいいけど。……店長がなんかバタバタしてたみたいだから手伝ってあげてね」
まるでなにもなかったかのようにそれだけを言い、手を振る紀平さん。
どうやら見逃してくれるようだ。
内心ほっとする反面、あまりにも引き際が良い紀平さんに出鼻挫かれたような気持ちにもなった。
「……っと、その、ありがとうございました」
失礼します、と紀平さんに頭を下げ、俺はそのまま慌てて店内へと向かった。
「そこでお礼言うんだ?……俺に?」
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