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サディスティック・サディズム
落とし物にご用心!
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四川阿奈に案内されてやってきたは休憩室の向かい側にある男子更衣室だ。
壁際にはぎっしりと鍵付きの個人ロッカーが立ち並んでいるが、誰かの私物だろうか、そんなのお構いなしに脱ぎ捨てられた服や鞄などが放られていた。
充満した香水の匂いに軽い吐き気を覚えつつ、いつぞやお邪魔した運動部の部室と目の前のこの部屋がだぶる。男子高校生並みかそれ以下の散らかり具合。
そんな光景にもすっかり慣れているのかなに食わぬ顔して更衣室に足を踏み入れる四川はそのまま部屋の隅に積まれた段ボールへと近付き、中からくしゃくしゃになったエプロンを取り出し、それをこちらに投げて寄越した。
「ほら、エプロン」
「あ…ありがとう」
なんとか落とす直前でキャッチする。
四川は、ふん、とやっぱり興味なさそうに鼻を鳴らし、そして壁際のロッカーを指さした。
「そっちに名札ついてないロッカーあるからそこに荷物入れとけよ」
四川はそれだけを言って自分のロッカーの前まで行き、適当な椅子に荷物を置いてそのまま着替え始める。
わりと面倒見がいいのかもしれない。
愛想がいいとは言えないがなんだかんだ教えてくれる四川に安堵する。
やつに見倣ってさっそく俺も着替えることにする。……とは言ってもただエプロンを着るだけだ。
四川の言う通り鍵が刺さったままの名札がついていないロッカーを見付けた俺はその中に荷物を入れ、着ていた上着を脱ごうとした。
その時だった。
ごとり。そんな音を立て、上着のポケットからそれは落ちた。
なんということだろうか、何気なく目を向ければそこにはまんま男性器を象った肌色のディルドが転がっているではないか。
説明しよう!店長から財布のついでにディルドをプレゼントされた俺は使用済みのものを放置するわけにもいかずこっそり持ち帰ろうと上着のポケットに突っ込んでいたのだ!不覚!
という冗談はさておきまじでこれはまずいどれくらいまずいかと言えば新しいクラスでうっかり同級生たちに特殊性癖をばれてしまうくらいにはまずいというかまんまじゃねえかこれ。
……よしここは然り気無く何事もなかったかのようにディルドを拾おう。そうすれば四川にバレずに……。
「…」
「…」
って、あの、四川さんめっちゃ見てるんだけど。
やばい、やばい、どうしようと今にも死にそうな顔をする俺とは対照的になに食わぬ顔をした四川は、そのままじっと俺の足元のディルドを見詰め……そしてなにを思ったのか転がるそれを拾い上げる。
「あっ、そ、それは……ッ!」
先程まで自分の中に入っていたディルドを四川が持っている。それだけでも相当寿命が縮みそうになるというのに、やつは触れるだけでは飽き足らずにディルドに鼻を近付けすんと匂いを嗅ぎ出すのだ。
全身の血がカッと、熱くなり、返してくれ、と手を伸ばせば、四川はそれをひょいと躱し、そしてじろりとこちらを見る。
「……なんだよこれ、お前の?」
そうだよ俺のだよさっきまで俺のケツに入れられてたんだよつーか嗅ぐなとテンパる俺だが流石にそれを口に出すほど愚かではない。
間接的に自分の中を嗅がれているみたいでなんだかもう生きた心地がしない。
「ち、違うけど返せよ……っ」
「はあ? 違わねえだろ。お前のポケットから出てきたの見えたんだけど?」
「ぅ、そ、それは……っ」
その、と口ごもった時、取り返そうと伸ばした手首を掴まれ、そのままロッカーに押し付けられた。
ガシャンと音を立て小さく揺れる背後のロッカー。
肩を押し付けられ身動きがとれなくなる。退け、と身じろぐが、四川はそれを無視してすんすんと犬みたいに首筋から胸元、そして下腹部の匂いを嗅ぎ出した。
「っなに」
「なるほどなぁ、さっきからぷんぷんぷんぷん甘ったるい匂いするかと思ったらこれか」
そのままディルドでズボンの上から股間をつうっと撫でられ、堪らず「ひっ」と息を飲む。
すっかり萎えたとはいえ、先程店長に掻き乱された体は思った以上に敏感になっているようだ。布越しの性器への刺激だけでじんと再び全身は火照り出す。
「……どうせ店長から貰ったんだろ?」
「ダメだろ、人から貰ったもんはちゃんと大切に持ってなきゃ」言いながらディルドの先端でぐり、とちんこを潰されピクリと全身が強張った。
やばい、やばいぞこの展開は。
上がる息を必死に整えながら俺は、ディルドを手にした四川の手を退かそうとするが抵抗すればするほど衣類越しにぐりぐりと押し潰され、膝から力が抜けそうになる。
「っ、や、めろ……ってば……」
「こんなもん客の前で落としたら公然猥褻だぞ? そうならねえように、今度は落とさないよう俺がしっかり挿れといてやるよ」
ロッカーと四川に挟まれ、逃げ場のない俺を捕らえたままやつは俺の耳に唇を近づける。そのままれる噛まれる耳朶に、吹きかかる息に、呼吸が一瞬停まった。
――デジャヴ。
それも、最悪なタイプのやつじゃねえか。
この展開はまずい。冗談抜きに。
咄嗟に四川の手を振り払おうとするが、この野郎、めちゃくちゃ力が強い。どうなってんだ、それとも今まで俺が筋トレちゃんと続けなかった弊害か?!
「いらねえよ、おいっ、離せって!」
「はぁ? こんなもん持ち歩くやつがなに恥ずかしがってんだよ。つうか、ありがとうゴザイマスだろうが」
暴れる俺を片手で押さえ付けたまま、四川の野郎は器用に人のベルトを緩めようとする。
「やめろ、おい……っ」
「……チッ、ディルド持ち歩くような変態のくせにいちいち抵抗してんじゃねーよ!」
「だ、だからこれは……っ違くて……」
言いかけて、息を飲む。
緩めたベルト、その下、下着の中にずるりと入ってきた四川の無骨な手に直接尻を鷲掴みにされたからだ。
それだけでも相当なのに、この男、初対面である人のケツに思いっきり指を捩じ込んできやがった。
「ぅ、く、ひ……っ」
「ああ?……何が違うんだよ、なんだこれ、こんなセックスしてきたあとですみてーなぐずぐずのケツで何言ってんだ?お前」
「っ、や、め、……っ、ゆ、び……っ!」
嘘だろ、こいつ。収まりかけていた熱がぶわりと蘇り、頭の中が真っ白になる。咄嗟に四川の腕を引っ張り、なんとか引き抜こうとするが俺が抵抗すればするほどやつは楽しそうに笑うのだ。
「っ、は、……この匂い……やっぱテメエのケツから臭ってんじゃねえか……ッ!」
「んっ、や! めろ……っ、嗅ぐなぁ……っ!」
「んな臭えローション使う方が悪いんだろうが、嗅いでくださいってつもりでケツ出してんだろ」
「んなわけ……ッ」
どうやら完全にこいつの中では俺がマイディルドを持ち歩く変態になっているようだ。
いやまあ普通に考えたらそうだが好きで持ち歩いているわけではない俺からしてみればいい濡れ衣だ。それに、いくらそんな変態だとしても、こんな真似するかよ普通。
ゴツゴツした指が根本まで挿入されたかと思いきや、中を掻き回すように内壁を捏ね繰り回され、全身が跳ねた。
「や、め……んんっ!」
やめろ、と指を引き抜こうとすれば、視界が遮られる。そして、覆い被さるそれに息を飲む。
「っ、ン……ッ?」
見開いたその視界、写るは四川の目だ。
唇に噛み付かれてる、と思ったが、違う。ぬるりとした肉厚な舌が唇に触れ、そこで異常事態であることに気付いた。
ちょ、え、なにこれまじっすか。なんで俺初対面の、しかも野郎にキスされてんの。
「んんっ、んーッ!」
やばい、まずい、なんだこれは。
いや別に初対面でも女の子なら大歓迎だ。美形なら尚更。
しかし、相手は美形は美形でもかわいげの欠片もない男だ。
あり得ない信じたくない俺何気に初チューだったのに初めては夜景の見える公園でしんみりとした空気の中お互いに躊躇いながらのぎこちない初キスって決めてたのに。
なんなんだこれは、今までぐーたらしてた分の天罰か…?!
「ふ、ぅ……ッんん……ッ」
必死に唇を閉じ舌の侵入を拒もうとするが、俺が口を閉じることで行き場を失った四川の舌はべろりと俺の唇を舐め、そのまま薄皮に吸い付く。
ちゅ、ちゅ、とわざと小さなリップ音をたてて一方的な唇への愛撫を繰り返してくる四川に堪えられなくなった俺はつい唇を開いてしまった。敗因は恐らく、いや十中八九それだろう。
「んっ、ぅうッ」
瞬間、ぬらりと唾液で濡れた長い舌が開いた僅かな隙間から咥内へと潜り込み、そのまま縮こまっていた俺の舌に絡み付いてくるのだ。
差し込まれた舌が邪魔で口を閉じるにも閉じれず、もがく。
つか、キスってこんななのか……?!
少女漫画も全部嘘じゃねえか、こんなの、ただの捕食だ。
「ふ、ぅ、んむ……ッ! んんう……っ!」
ジュルっ!と音を立て唾液ごと舌を吸われ、咥内縦横無尽にしゃぶられればそれだけで頭がどうにかなりそうになる。腰が震え、後退る俺を上から押さえつけるように角度を変え、舌をしゃぶらされるのだ。その間もケツの穴まで弄られ、ガクガクと痙攣する下腹部、確実に近付いてくる絶頂に気付いた俺は堪らず四川の舌に噛み付いた。
ガリッ。そんな音を立て、思いっきり閉じてしまった顎の間、噛んだ四川の舌はびくりと跳ねた。
そして、じわりと咥内に広がる甘い鉄の味。
瞬間、四川は俺を突き飛ばす。
「……ってぇな、糞……っ! なにすんだよ、てめぇ」
「そ、それはこっちの台詞だ……っ! なんなんだよ、お前といいあの店長といい……ホモしかいないのかよこの店はっ!」
「俺はホモじゃねえ! 穴があればいいんだよ!」
「な……尚更最悪じゃねーか! 開き直んな……!」
こいつ、店長をフォローするどころか逆ギレしてきやがる。やっぱケダモノじゃねえか、なんなんだこいつは。
このままでは本当に穴にされかねない、開かされた掛けた下着を慌てて履き直しながら俺は四川を睨みつけた。
「っ、こ、この……犯罪だぞ! この……っ!」
「ああ? ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃうっせえな、ディルド持ち歩いてるようなドスケベチビが何言ってんだ犯すぞ!!」
「ち……っ?!」
チビだと、この俺を……!
高校のときから唯一平均よりは高い身長を長所としていた俺にとってその言葉はプライドを傷付けるもので。
「ちょ……ちょっと俺よりでかいからって調子乗ってんじゃねーよ、ホモ! ホモ野郎! バーカ!! この、四川アナル……」
言い終わるよりも先に、すぐ隣からゴッ!!と、凡そ聞かないような凄まじい音が聞こえた。
恐る恐る視線を横に向ければ、そこには四川の拳により思い切りひしゃげたロッカーさんがいるではないか。
「……縛って泣かすぞコラ」
なんだ?!四川アナルが駄目だったのか?!
ブチ切れ四川に俺はなんか塩をかけられたナメクジのように縮身に縮んでいた。どこがとは言わないが。
壁際にはぎっしりと鍵付きの個人ロッカーが立ち並んでいるが、誰かの私物だろうか、そんなのお構いなしに脱ぎ捨てられた服や鞄などが放られていた。
充満した香水の匂いに軽い吐き気を覚えつつ、いつぞやお邪魔した運動部の部室と目の前のこの部屋がだぶる。男子高校生並みかそれ以下の散らかり具合。
そんな光景にもすっかり慣れているのかなに食わぬ顔して更衣室に足を踏み入れる四川はそのまま部屋の隅に積まれた段ボールへと近付き、中からくしゃくしゃになったエプロンを取り出し、それをこちらに投げて寄越した。
「ほら、エプロン」
「あ…ありがとう」
なんとか落とす直前でキャッチする。
四川は、ふん、とやっぱり興味なさそうに鼻を鳴らし、そして壁際のロッカーを指さした。
「そっちに名札ついてないロッカーあるからそこに荷物入れとけよ」
四川はそれだけを言って自分のロッカーの前まで行き、適当な椅子に荷物を置いてそのまま着替え始める。
わりと面倒見がいいのかもしれない。
愛想がいいとは言えないがなんだかんだ教えてくれる四川に安堵する。
やつに見倣ってさっそく俺も着替えることにする。……とは言ってもただエプロンを着るだけだ。
四川の言う通り鍵が刺さったままの名札がついていないロッカーを見付けた俺はその中に荷物を入れ、着ていた上着を脱ごうとした。
その時だった。
ごとり。そんな音を立て、上着のポケットからそれは落ちた。
なんということだろうか、何気なく目を向ければそこにはまんま男性器を象った肌色のディルドが転がっているではないか。
説明しよう!店長から財布のついでにディルドをプレゼントされた俺は使用済みのものを放置するわけにもいかずこっそり持ち帰ろうと上着のポケットに突っ込んでいたのだ!不覚!
という冗談はさておきまじでこれはまずいどれくらいまずいかと言えば新しいクラスでうっかり同級生たちに特殊性癖をばれてしまうくらいにはまずいというかまんまじゃねえかこれ。
……よしここは然り気無く何事もなかったかのようにディルドを拾おう。そうすれば四川にバレずに……。
「…」
「…」
って、あの、四川さんめっちゃ見てるんだけど。
やばい、やばい、どうしようと今にも死にそうな顔をする俺とは対照的になに食わぬ顔をした四川は、そのままじっと俺の足元のディルドを見詰め……そしてなにを思ったのか転がるそれを拾い上げる。
「あっ、そ、それは……ッ!」
先程まで自分の中に入っていたディルドを四川が持っている。それだけでも相当寿命が縮みそうになるというのに、やつは触れるだけでは飽き足らずにディルドに鼻を近付けすんと匂いを嗅ぎ出すのだ。
全身の血がカッと、熱くなり、返してくれ、と手を伸ばせば、四川はそれをひょいと躱し、そしてじろりとこちらを見る。
「……なんだよこれ、お前の?」
そうだよ俺のだよさっきまで俺のケツに入れられてたんだよつーか嗅ぐなとテンパる俺だが流石にそれを口に出すほど愚かではない。
間接的に自分の中を嗅がれているみたいでなんだかもう生きた心地がしない。
「ち、違うけど返せよ……っ」
「はあ? 違わねえだろ。お前のポケットから出てきたの見えたんだけど?」
「ぅ、そ、それは……っ」
その、と口ごもった時、取り返そうと伸ばした手首を掴まれ、そのままロッカーに押し付けられた。
ガシャンと音を立て小さく揺れる背後のロッカー。
肩を押し付けられ身動きがとれなくなる。退け、と身じろぐが、四川はそれを無視してすんすんと犬みたいに首筋から胸元、そして下腹部の匂いを嗅ぎ出した。
「っなに」
「なるほどなぁ、さっきからぷんぷんぷんぷん甘ったるい匂いするかと思ったらこれか」
そのままディルドでズボンの上から股間をつうっと撫でられ、堪らず「ひっ」と息を飲む。
すっかり萎えたとはいえ、先程店長に掻き乱された体は思った以上に敏感になっているようだ。布越しの性器への刺激だけでじんと再び全身は火照り出す。
「……どうせ店長から貰ったんだろ?」
「ダメだろ、人から貰ったもんはちゃんと大切に持ってなきゃ」言いながらディルドの先端でぐり、とちんこを潰されピクリと全身が強張った。
やばい、やばいぞこの展開は。
上がる息を必死に整えながら俺は、ディルドを手にした四川の手を退かそうとするが抵抗すればするほど衣類越しにぐりぐりと押し潰され、膝から力が抜けそうになる。
「っ、や、めろ……ってば……」
「こんなもん客の前で落としたら公然猥褻だぞ? そうならねえように、今度は落とさないよう俺がしっかり挿れといてやるよ」
ロッカーと四川に挟まれ、逃げ場のない俺を捕らえたままやつは俺の耳に唇を近づける。そのままれる噛まれる耳朶に、吹きかかる息に、呼吸が一瞬停まった。
――デジャヴ。
それも、最悪なタイプのやつじゃねえか。
この展開はまずい。冗談抜きに。
咄嗟に四川の手を振り払おうとするが、この野郎、めちゃくちゃ力が強い。どうなってんだ、それとも今まで俺が筋トレちゃんと続けなかった弊害か?!
「いらねえよ、おいっ、離せって!」
「はぁ? こんなもん持ち歩くやつがなに恥ずかしがってんだよ。つうか、ありがとうゴザイマスだろうが」
暴れる俺を片手で押さえ付けたまま、四川の野郎は器用に人のベルトを緩めようとする。
「やめろ、おい……っ」
「……チッ、ディルド持ち歩くような変態のくせにいちいち抵抗してんじゃねーよ!」
「だ、だからこれは……っ違くて……」
言いかけて、息を飲む。
緩めたベルト、その下、下着の中にずるりと入ってきた四川の無骨な手に直接尻を鷲掴みにされたからだ。
それだけでも相当なのに、この男、初対面である人のケツに思いっきり指を捩じ込んできやがった。
「ぅ、く、ひ……っ」
「ああ?……何が違うんだよ、なんだこれ、こんなセックスしてきたあとですみてーなぐずぐずのケツで何言ってんだ?お前」
「っ、や、め、……っ、ゆ、び……っ!」
嘘だろ、こいつ。収まりかけていた熱がぶわりと蘇り、頭の中が真っ白になる。咄嗟に四川の腕を引っ張り、なんとか引き抜こうとするが俺が抵抗すればするほどやつは楽しそうに笑うのだ。
「っ、は、……この匂い……やっぱテメエのケツから臭ってんじゃねえか……ッ!」
「んっ、や! めろ……っ、嗅ぐなぁ……っ!」
「んな臭えローション使う方が悪いんだろうが、嗅いでくださいってつもりでケツ出してんだろ」
「んなわけ……ッ」
どうやら完全にこいつの中では俺がマイディルドを持ち歩く変態になっているようだ。
いやまあ普通に考えたらそうだが好きで持ち歩いているわけではない俺からしてみればいい濡れ衣だ。それに、いくらそんな変態だとしても、こんな真似するかよ普通。
ゴツゴツした指が根本まで挿入されたかと思いきや、中を掻き回すように内壁を捏ね繰り回され、全身が跳ねた。
「や、め……んんっ!」
やめろ、と指を引き抜こうとすれば、視界が遮られる。そして、覆い被さるそれに息を飲む。
「っ、ン……ッ?」
見開いたその視界、写るは四川の目だ。
唇に噛み付かれてる、と思ったが、違う。ぬるりとした肉厚な舌が唇に触れ、そこで異常事態であることに気付いた。
ちょ、え、なにこれまじっすか。なんで俺初対面の、しかも野郎にキスされてんの。
「んんっ、んーッ!」
やばい、まずい、なんだこれは。
いや別に初対面でも女の子なら大歓迎だ。美形なら尚更。
しかし、相手は美形は美形でもかわいげの欠片もない男だ。
あり得ない信じたくない俺何気に初チューだったのに初めては夜景の見える公園でしんみりとした空気の中お互いに躊躇いながらのぎこちない初キスって決めてたのに。
なんなんだこれは、今までぐーたらしてた分の天罰か…?!
「ふ、ぅ……ッんん……ッ」
必死に唇を閉じ舌の侵入を拒もうとするが、俺が口を閉じることで行き場を失った四川の舌はべろりと俺の唇を舐め、そのまま薄皮に吸い付く。
ちゅ、ちゅ、とわざと小さなリップ音をたてて一方的な唇への愛撫を繰り返してくる四川に堪えられなくなった俺はつい唇を開いてしまった。敗因は恐らく、いや十中八九それだろう。
「んっ、ぅうッ」
瞬間、ぬらりと唾液で濡れた長い舌が開いた僅かな隙間から咥内へと潜り込み、そのまま縮こまっていた俺の舌に絡み付いてくるのだ。
差し込まれた舌が邪魔で口を閉じるにも閉じれず、もがく。
つか、キスってこんななのか……?!
少女漫画も全部嘘じゃねえか、こんなの、ただの捕食だ。
「ふ、ぅ、んむ……ッ! んんう……っ!」
ジュルっ!と音を立て唾液ごと舌を吸われ、咥内縦横無尽にしゃぶられればそれだけで頭がどうにかなりそうになる。腰が震え、後退る俺を上から押さえつけるように角度を変え、舌をしゃぶらされるのだ。その間もケツの穴まで弄られ、ガクガクと痙攣する下腹部、確実に近付いてくる絶頂に気付いた俺は堪らず四川の舌に噛み付いた。
ガリッ。そんな音を立て、思いっきり閉じてしまった顎の間、噛んだ四川の舌はびくりと跳ねた。
そして、じわりと咥内に広がる甘い鉄の味。
瞬間、四川は俺を突き飛ばす。
「……ってぇな、糞……っ! なにすんだよ、てめぇ」
「そ、それはこっちの台詞だ……っ! なんなんだよ、お前といいあの店長といい……ホモしかいないのかよこの店はっ!」
「俺はホモじゃねえ! 穴があればいいんだよ!」
「な……尚更最悪じゃねーか! 開き直んな……!」
こいつ、店長をフォローするどころか逆ギレしてきやがる。やっぱケダモノじゃねえか、なんなんだこいつは。
このままでは本当に穴にされかねない、開かされた掛けた下着を慌てて履き直しながら俺は四川を睨みつけた。
「っ、こ、この……犯罪だぞ! この……っ!」
「ああ? ぐちゃぐちゃぐちゃぐちゃうっせえな、ディルド持ち歩いてるようなドスケベチビが何言ってんだ犯すぞ!!」
「ち……っ?!」
チビだと、この俺を……!
高校のときから唯一平均よりは高い身長を長所としていた俺にとってその言葉はプライドを傷付けるもので。
「ちょ……ちょっと俺よりでかいからって調子乗ってんじゃねーよ、ホモ! ホモ野郎! バーカ!! この、四川アナル……」
言い終わるよりも先に、すぐ隣からゴッ!!と、凡そ聞かないような凄まじい音が聞こえた。
恐る恐る視線を横に向ければ、そこには四川の拳により思い切りひしゃげたロッカーさんがいるではないか。
「……縛って泣かすぞコラ」
なんだ?!四川アナルが駄目だったのか?!
ブチ切れ四川に俺はなんか塩をかけられたナメクジのように縮身に縮んでいた。どこがとは言わないが。
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