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第二十話 仕事仲間

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 再び、ミッキーの方からブーンという音が鳴りだす。さっきも聴いたスカラビーの羽音だ。
「サトル君、あの3人と何かあったのかは知らないが、殺意を抱くのはやめてくれないかい? スカラビーが君にも反応してしまう」
「すみません」
 ミッキーに言われ、悟は心を落ち着けた。
「あの中に、ムカツク奴がいんの? どれ?」
 ネココが訊いてくるので、悟は垂れ目の男を指さした。
「確か、ヒサシって呼ばれていた気がする。俺がガチャで出る前、暴行されるキッカケを作った奴だ」
「そいつは殴っとかないと!」
 握り拳を作って鼻息を荒くしてるネココを見て、逆に悟は冷静になれた。自分も、こんな感じに興奮していたのかと思うと情けなくなる。何より、正当な理由もなく誰かを殴っていたら、それこそアイツらの同類になってしまう。
「どうやら、ディオニシオが彼らの標的のようだね」
「何でわかんの?」
「スカラビーから送られてくるイメージにあったんだよ、ネココ君」
「部長、しっつもーん!」
「何だい、モア君」
「部長が危ない奴が来てるってわかるのに、何でディオニシオは逃げようとしないのかなぁ~? あの人も、その虫を持ってるんだよねぇ~?」
 確かに、ディオニシオは逃げようとせず、自分の像の前で知り合いらしき人物と談笑している。近くには彼のユニットもいるが、殺意を持った3人組が近づいているのに、気づいている様子はない。
「これは、おかしい……」
 ミッキーはハッとすると、皆を手招きした。
「みんな、ここに集まってくれ! 彼を死なせるわけにはいかない」
 社員が集まるとミッキーは『空間転移』で外へと移動した。場所は病院の玄関で、ディオニシオがいる像の前とは少し離れている。急な転移だったので、近くにいた医療スタッフも巻き込まれ、彼女たちは何が起こったのかと互いの顔を見合わせていた。
「モア君、今のは最高に良い質問だった。あの3人の『能力解析』を頼むよ。ネココ君、悪いけどディオニシオを守ってくれ。君が一番スピードがある。サトル君は私の傍から離れないように。コブ君は念のため、『形態投影』で相手の顔を写しておいて」
 それぞれが返事をし、指示された行動に移る。とはいえ、悟にはすべきことが無く、その場に待機することになった。
 ネココは不本意な顔をしつつも、ディオニシオに向けて走り出した。3人が手ぶらということで、少し油断しているところもあったが、遠距離系の能力を使う可能性は少しだけ頭にあった。
 だが、リザードマンは右手を天にかざすと弓と矢を出現させた。
「『物質転送』だ!」
 悟がネココに向けて叫ぶ。それは自分の指紋が残ってる物を呼び寄せるスキルで、元同僚のジェホシュが使うのを何度か見たことがあった。
「くたばれ、ディオニシオ!」
 リザードマンが弓を引くと、矢はディオニシオ目がけて飛んでいった。叫ばれて初めて彼らの存在に気が付いたディオニシオは、振り向きざまに矢が視界に入って仰け反る。
「危ないっ!」
 ネココがディオニシオを思い切り蹴飛ばす。放たれた矢はディオニシオの像に当たって落ち、蹴られたディオニシオはゴミ箱に頭から突っ込む。
 その光景を見て、モアが疑問に思う。
「あれ、蹴らなくても当たらなかったんじゃないかなぁ~?」
「モア殿が仰る通りです。矢のコースはディオニシオ氏から外れていましたからね。それがわからないネココ殿ではないと思うのですが……」
「蹴りたかっただけ?」
 モアとコブが話している頃、ディオニシオはゴミ箱から頭を出し、ブルブルと首を振っていた。生ゴミが頭に乗っかったままなので、酷い悪臭が彼についてまわる。
「危なかったですねー、矢が当たるところでしたー」
 ネココが棒読みで話しかける。
「ああ、助かった。ありがとう」
「スカラビーは、持ってないんですかー?」
「もう国に消される心配はないと思って、家に置いて来てしまったんだ。虫は嫌いなもんでね」
 体に着いたゴミを払いながら、ディオニシオが言う。
 そんなやりとりをしてる間にリザードマンは弓と矢を2セット用意し、残る2人に手渡していた。セレモニー目当てに集まっていた人々は、巻き込まれてなるものかと我先に逃げ出し、3人組の近くにいるのはディオニシオのユニットだけとなる。ミッキーはモアの解析が終わるのを玄関付近で待っていた。
「そいつらを捕まえろ!」
 ディオニシオの命を受け、彼のユニットである下半身が蛇の女性と、岩のような肌を持つ男性が3人組に近づくと、金髪の男は両手を広げて自分の周囲に炎の壁を展開した。
「それが彼のアビリティ『爆炎障壁』だよぉ~。でね、スキルは眠気を覚ます『睡眠抑制』」
 モアが早口でまくしたてる。相手の能力がわかったところで、目の前に炎の壁があっては手出しできず、ディオニシオのユニットは身構えるだけだった。
「お前のユニットが接近戦タイプなのは、わかってんだよ!」
 揺らめく炎越しに金髪の男が喋っているのが見える。彼らはディオニシオのユニットに向けて弓を構えていた。
 ビュッと炎の向こうから矢が飛んでくる。矢は炎をまとってディオニシオのユニットたちの体に突き刺さった。彼女たちの体からは血が流れ、悲痛な呻き声が上がる。矢羽が燃えていた為、炎が彼女たちの服へと引火し、徐々に広がっていった。
「部長、あの垂れ目はスキルが『形態投影』で、アビリティは周囲の音を響かせにくくする『消音空間』。リザードマンのスキルはサトルっちが言ったので、アビリティは土地を痩せさせる『養分枯渇』だよ」
「了解、それならいけそうだ。レネーさん、彼らの治療を頼みます」
 ミッキーは相手の能力を知ると、医療スタッフに傷ついたユニットを託し、3人組の前に出て行った。傍から離れないように言われた悟も一緒だ。
「何だ、お前は!? 邪魔をする気か?」
 金髪の男がミッキーに弓を構える。
「訊きたいのはこっちの方だよ。何故、彼を狙う? 理由によっては邪魔をしない」
 明らかに嘘だった。最初から邪魔をする気だが、動機を確認したいのだと、悟は聴いていて思った。
「俺たちはホ地区防犯組合の従業員だった。そこにいるディオニシオが社畜病のことをあれこれ調べなけりゃ、労働省からの委託業務で暮らしていけたものを……。こいつのお陰で俺たちは!」
「会社が組織解体されて失業、か……。真っ当な仕事を始めるチャンスだったのに、逆恨みで殺しに来たと。多くの人を病気にさせたことへの罪の意識もなく、正しい行いをした者を恨むとは、どこまでも腐った連中だ」
 普段よりも低めのトーンでミッキーは相手を罵った。憤慨した金髪の男がミッキーに弓を引く。矢は炎をまとってミッキーに迫ったが、彼の周囲を覆った膜に触れると、そこで静止してポトリと落ちた。スカラビーが持つアビリティ『被膜結界』だ。
「クソッ! 厄介な能力を持ってやがる」
 金髪の男が地面を蹴り上げる。この間に、ディオニシオのユニットは医療スタッフによって火を消され、別の場所へと移されていた。
「そんな奴より、早くディオニシオを!」
 リザードマンが金髪の男を急き立てるのを見て、ディオニシオの傍にいたネココが構える。
「そうだな」
 金髪の男がディオニシオを睨む。彼らが一斉に弓を構えたところで、ミッキーは石を拾って相手に投げつけた。
「痛っ……」
 石はヒサシに当たって落ちた。
「その炎を使い続けるのは賢いとは言えないね。こっちが物を投げても引火するわけだから、炎に囲まれて避けられない君らの方が不利じゃないのかい? 何なら、石を布で包んで投げてみようか」
 ミッキーが鼻で笑うと、相手の注意は彼に向いた。
「この野郎!」
 再び金髪の男がミッキーに矢を射るも、張られた『被膜結界』に当たって落ちるだけだった。
「そいつはいいから、ディオニシオを! 奴さえ、社畜病のことを調べて言わなけりゃ……。そう思うと、アイツが生きてるだけで腹が立つ」
 リザードマンが歯を食いしばる。
「ひとつ、訂正させてもらおうか。社畜病のことを調べたのは彼じゃない、私たちだ」
 ミッキーが自分の胸を誇らしげに叩くと、3人は目の色を変えて睨みつけてきた。
「何だと……」
 驚きと怒りで、金髪男の弓を持つ手が震える。
「お前が、お前らがいなければ……」
 ヒサシが口にした言葉に、悟は“お前さえ、いなければ”と睨み返した。その視線に気づいたヒサシは、悟を見て大きな声を上げた。
「あっ! お前、そうだ、間違いない! スキー場でバイトしてた使えない奴だ!」
「何だ、知り合いか?」
「知り合いっつーか、元いた世界で俺、アイツのせいで恥かいたんすよ」
 金髪の男と話しながら、ヒサシは興奮していった。
「お前みたいな、ちゃんと仕事しねぇ~奴がいるから、俺は……」
 そう言いかけたところで、ネココたちが一斉に反論する。
「あんたに何がわかんのよ! サトルは適当な仕事をする奴じゃないんだから!」
「そうだぞぉ~! サトルっちが、ちゃんと仕事する男だから、あんたらが追い詰められたんでしょうに」
「そうですとも。サトル殿の働きぶりは、このエリートである僕に、勝るとも劣らないほどのものでしてね……」
 思いがけない彼女らのフォローに、悟は目頭が熱くなっていった。自分に寄せられている信頼、それを言葉として聴いたのは初めてだった。あの冬の日、スキー場で耳にしたかったのは、こんな自分を擁護してくれる言葉だったのかもしれない。
 悟は彼らの信頼を裏切るまいと、“自分が何とかして”現状を打開しようと考える。
「『感覚共有』を奴らに使えば、俺がダメージを受けることで相手も……」
 捨て身の作戦を提案しようとしたが、ミッキーが肩を叩いて首を横に振った。
「それは許可できない。サトル君が大変なことになってしまうからね。私はね、もう二度と仕事仲間を犠牲にしたくはないんだ」
「でも……」
「心配はいらない。理不尽な相手から部下を守るのは上司の仕事。たまには、そういう仕事をさせておくれよ。ただ、悪いんだけど、私が合図したら一緒に走ってもらうよ」
 そう言ってミッキーが一歩前に出る。相手は弓と矢を置き、新たに転送した剣を手にしていた。
「矢がダメなら、剣でぶった切ってやるぜ!」
 展開していた炎の壁を消すと、金髪の男を先頭に襲いかかってきた。ミッキーはニヤリと笑うと、『空間転移』で悟ごと彼らの後ろへと移動し、隙をついて彼らの星印に触れる。ミッキーのスキル『代理所有』によって、彼らはヒューゴのユニットとなった。
「お前、何を!?」
 彼らが振り向くよりも先にミッキーは悟に行き先を手で合図し、距離を取る為に走り出していた。
 ある程度、彼らから離れるとミッキーは悟を指さして言った。
「ベースユニットをセット!」
 悟の身体が赤い光に包まれ、腕に付いた3つの星がより赤みを増す。
「素材ユニットをセット!」
 今度は3人組を指差す。指された側の身体が青い光に包まれ、星印の色が薄くなっていく。何が行われようとしているのかわかった相手は愕然とした。
「バカな!? お前はユニットじゃないのか!?」
「こ、こんなことが……」
「消えるのは嫌だ!」
 それぞれが叫ぶ中、ミッキーが高らかに言う。
「強化開始!」
 強化素材として選択された彼らの姿がスッと無くなり、悟を包む赤い光が強まった。悟の身体は心なしか、筋肉質になったように感じられる。
「これって?」
「強化だよ」
 訊くまでもなく、わかっていた。素材にしたユニットを犠牲にすることで、ベースとしたユニットを文字通り強化する。問題はマ国の人間ではないミッキーが使ったことにあるが、彼の能力である『代理所有』からしてイレギュラーなので、悟も大体の想像はついていた。
「前にも言った通り、『代理所有』は所有者の代理としてユニット契約するスキルだ。私は進化しているから上書きもできる。代理でユニット契約をできるんだから、強化や進化も代理として行えても不思議はないだろ?」
 淡々と話しながらも、ミッキーは消えた者達が残した武器を手に取り、感慨深げに眺めていた。
「強化素材となったユニットは“いなくなる”……。そのことに躊躇いがないわけではないんだ、これでもね」
「誰も責めたりなんかしませんよ」
「そうかい」
 ミッキーは軽く笑った。
「まぁ、私がしなくても、いずれは強化の場面を見ることになったと思うよ。ヒューゴさんが自分に課してるユニットのルールがあるからね。ひとつ、使えないと判断したら直ちに素材にする。ふたつ、所有するユニットには強化の瞬間を必ず見せる。みっつ、素材にしたユニットの今後をお祈りする……。こんなルールを課す理由は、そのうち本人が言うだろう」
 危機を脱したと判断したディオニシオがミッキーに歩み寄る。
「いやぁ~、助かったよ。このお礼は、いつの日にか精神的に……」
 ミッキーの背中をポンポンと叩くと、ディオニシオは治療を受けている自分のユニットの元へ行き、彼女たちが役に立たなかったことを叱責し始めた。それを見ながらモア、コブ、ネココがミッキーの元に集まってくる。
「なんか、ああいうのヤダよねぇ~」
 ディオニシオを見てモアが言う。
「うちだって、怒る時は怒るよ」
「えぇ~、部長も怒るの? ひぃ~、怖いよぉ~」
 縮こまって震える素振りを見せるモアに仲間たちが笑う。
「不測の事態にも関わらず、みんなよくやってくれたと思う。危険手当はつかないと思うけど、ヒューゴさんたちにも報告しとくよ。ところで、サトル君」
「はい」
「君、自分一人で何とかしようって、思わなかったかい?」
「……思いました」
 ミッキーは口をへの字にして、悟の頭に手をのせると髪をグシャグシャにした。
「ダメだよ、そういう風に自分一人で抱え込んじゃ。仕事はね、みんなでするものなんだ。みんなで分け合って効率よくね。リスクを独り占めしてはいけないよ、私の元同僚のように……」
「はい、気をつけます」
「相変わらず生真面目な返答だね。覚えてるかい? 遊び心のこと」
 悟は思い出した。
 彼らがハーフであることを知った日、銀の含有率に絡めて、100%の脆さを話している。真面目9割で遊び心1割とは言わないが、真面目100%では息が詰まって心が折れてしまう。だから、自分が強くいられる心のパーセンテージを探そうと……。
「たまには気をつけます。すぐには切り替えられそうにないんで……」
「うん、それでいい。それじゃ、彼女をスコウレリアまで送ろうか」
 悟の答えに満足したミッキーは『空間転移』を使わずに、歩いて病室にいるチガヤの元へと向かった。


「ここで大丈夫だから。色々ありがとう」
 『空間転移』でスコウレリア第三事務所の前まで来ると、チガヤは礼を言って頭を下げた。
「今日は、すみませんでした」
「ミッキーさん、そのことはもういいよ……。それじゃ、またね」
 手を大きく振って、チガヤは自宅へと駆けて行った。その手には、変人限定ガチャのチケットが握られている。
「これで一区切りだね、我が社の仕事も」
 ミッキーが背を伸ばして深呼吸する。彼にしてみれば、今までやってきたことが、ようやく形になった日なのだ。
「部長、しっつもーん」
「何だい、モア君」
「これからの仕事は?」
「第一に治療方法の確立、そのための更なる能力者探し。病気に対する正しい知識を広めること。あとは……」
 今後の業務を確認するミッキーの袖をネココが引っ張る。
「バトルは?」
「出たいのかい? ん~……まぁ、考えておくよ。こんな能力者募集とか、社畜病のことを解説しながら戦うとか、社の宣伝よりも、そっちに重きを置くことになるだろうけど」
「うわっ、面倒……」
 しかめっ面のネココに皆が苦笑する。
 そこへ、身長140cmほどの男の子が歩いてくる。イネスのユニット、ペペだった。彼と会うのは、イネスの夫ナサリオに『脳内映写』をして以来だった。
「あっ、あなた方は……」
 悟たちに気づいて、ペペが駆け寄ってくる。
「お久しぶりです。あのときは、変人に関するアドバイス、ありがとうございました」
「アドバイス? ああ、変人の定義か……」
 ミッキーは“どんな人が変人か”という問いに、適当に答えたことを思い出して頭を掻いた。あの質問は、ペペがガチャで出るユニットを限定する能力のひとつ、『変人限定』を持っていたことに端を発する。
「それにしても、こんなところで会うなんて奇遇だね。仕事かい?」
「はい。スコウレリアのガチャ神殿で、限定能力を使って欲しいと言われて……。ミッキーさんたちも?」
「ああ。仕事で来たけど、こっちは終わったから、先に帰らせてもらうよ」
「はい、それでは」
 会釈して去っていくペペが「今度こそ、完璧な仕事を……」と言うので、気になった悟が追いかけて肩を叩く。
「前に仕事で何かあった?」
「以前、限定ガチャを回した人に怒られてしまいまして……。こんなの変人じゃないって」
 そのときのことを思い出したのか、ペペは項垂れてしまった。悟は彼の目線まで腰を落として話し始める。
「だから今度は完璧に、か……。気持ちはよくわかるつもりだ、俺も似たようなもんだから。でもさ、人相手の仕事で完璧ってのは、無いと思った方が楽にやれるよ。そうやって自分を追い詰めると、期待に応えられるかどうかで、頭が一杯になってしまわないか?」
「確かに……」
「ガチャを回す人と一緒になって、どんな変人が出るかワクワクした方が、完璧を追い求めるより楽しいし、結果もついてくるって。そのくらいの楽しみを持って仕事しても、バチは当たらない。相手が望む変人か不安なら、ガチャを回す人に訊いてみるのも手かもな」
 そう言って、悟はコブから貰ったイブキの画像を取りだした。
「この人は?」
「まぁ、何というか、とある人達が口を揃えて変だと語った“折り紙つきの変人”だ。お守り代わりに渡しておくよ、いい変人が出るように」
「ありがとうございます!」
 晴れやかな顔になったペペは、悟に頭を下げると神殿に向かって歩き出した。それを見て、ネココが悟に駆け寄る。
「あんなの渡して、またイブキって人が出たらどうすんの? 限定ガチャって、能力者のイメージによるんでしょ?」
「大丈夫だろう。ガチャで出るのは、今いる世界を離れたいって思った人だけだ。向こうに帰りたくて帰った奴が、また離れたいとか思ってないだろう。そもそも、何かに入っていなくちゃいけないわけだし……」
「そっか……」
 悟は自分で言っておきながら、“普通の人はそうだが、変人だとわからないな”と思ったが気にしないことにした。
「お~い、帰るからおいで~」
「はい」
 ミッキーが呼ぶので悟は“仕事仲間”の元へと走った。
 同じ場所で働いているだけの“同僚”とは違う、互いに信頼し合う“仕事仲間”の元へと――
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