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3.リーゼVSそれぞれ

推し色

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「ふふふふふふ。この赤い苺の色はアレクサンドラ様で、こっちの黄金色の栗は、殿下……うふふふふふふ」

 リーゼは、苺と栗を皿の上に並べながら、じーっとできる限り顔を近づけて見つめていた。
 そしてそんな様子を、少し離れたところからエドヴィン王子、アレクサンドラ、そしてニーナが見物していた。

「リーゼ嬢の奇妙な姿勢はなんだ?」
「推し色で遊んでいるのです」
「「推し色??」」

 アレクサンドラにもエドヴィン王子にも、全く馴染みのない言葉だった。

「はい。リーゼ様曰く、色を推しに例えることで、その色を見るだけで推しを思い出せるから常に幸せになれる、とのことです」
「「どういうこと??」」

 色を推しに例えてなんちゃら、の部分が、アレクサンドラとエドヴィン王子には全く理解できなかった。

「私もですね、正直リーゼ様の思考回路がまっっっっっっったく、意味不明なのですが」
「随分力を込めて言うんだな」
「……ほら、見てください」

 ニーナの促しに、アレクサンドラとエドヴィン王子が再びリーゼを見ると……。

「あ、あれは何をしてるんだ……?」

 リーゼが、栗を動かしながら、ぶつぶつと笑みを浮かべて何かを言っているようだった。

「あれはですね、栗をエドヴィン殿下に例えて、妄想してますね」
「「妄想?」」
「あーあの顔は、あれです。殿下がアレクサンドラ様を口説いている様子を脳内再生している顔です」
「「なっ!?」」

 ニーナはそれから、わざと無表情で説明した。
 今、手元にはリーゼ特製の手のひらサイズ彫刻がない。
 なので、推しをイメージした色を用いて、2人の恋愛シチュエーションをあれこれ脳内で作り上げている。
 苺と栗の位置は、リーゼの脳内で推しカプに変更されており、ちょっとくっついたり、重なったりしていた。
 そこまでを、真顔でないとまともにニーナは話せそうになかった。
 詳細は割愛したが、リーゼの脳内がとんでもないお花畑状態なのは、よーく知っていたから。
 それらの話が終わった時、リーゼの推しカプ2人は、疲れ切った顔をしていた。
 ニーナは同情したくもなったが、ふとこのタイミングで思った疑問を、エドヴィン王子にぶつけた。
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